ぼったくりバー、ぼったくりキャバクラでの被害報告を多く受けるようになりました。
 もっとも、被害金額が必ずしも多額とも言い切れず、専門家による適切な助言を受ける機会を得られない方々も多くいらっしゃいます。

 そのため、この記事により、私が相談・依頼を受けた場合の対応策を記載します。
 ぼったくり被害の対応でも、弁護士に依頼すれば、最低でも40万円程度は準備しないといけないでしょう。

 費用対効果の点から弁護士に依頼できずとも、労力は要するかもしれませんが、ご自分でも対応できます
 ここに書き切れないポイントなどもありますが、行き詰まったら弁護士の法律相談などを活用すれば、相談料だけで済みます。

 但し、注意点もあります。
 店舗において領収証なくして現金払いしてしまったケースは、被害回復は極めて困難です。
 お店がホームページを持って、しっかり営業しているところならば争う余地があります。
 しかし、ぼったくり店は看板すらないようなお店もあり、そのような場合は回収を諦めざるを得ないでしょう。

 仮に支払をするにしても、クレジットカードの方がまだ争う余地があることの方が多いでしょう

 この記事で、1人でも多くの方が不当な被害と戦えることを願っています。
 特に、「よくある誤解」をしている方々にお読みいただきたいです!!

✍ よくある誤解!!

  • 全く記憶がないので、被害回復は不可能だと思っている。
  • 酔い過ぎてしまった自分が悪いと思っている。
  • 警察に「詐欺」での立証が難しいと言われ、もう払うしかないと思っている。
  • 消費者生活センターからも自業自得と説明を受け、支払義務から逃れないと思っている。

店舗での対応により、場合を分けて考えます

(参考記事)【ぼったくりバー・キャバクラ被害の対応】弁護士が解説!!
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ぼったくりバー・キャバクラの実態と裁判例などを説明します。
https://ik-law.jp/blog/bottakuri/

第1 店舗において「①支払未了」である場合

 店舗において「①支払未了」であれば、現場対応として申し分ありません
 店舗が後日、請求を行ってきても毅然と拒否すれば良いです

 お店の支払いを拒むためには、警察を呼ぶことが何より大切です。

 支払未了で退店できた場合で、警察に連絡をしていない場合でも、警察には連絡をしておきます
 ぼったくり請求を行った時点で、少なくとも詐欺罪の未遂は成立しており、警察に被害届(被害相談)をしなければならない理由があります。

第2 店舗において「②クレジットカードで支払った」場合(裁判を通して解決を目指します!)

 一番被害相談の多い類型になります。
 支払済みである点は、決して良い状況とは言えません。

 多くのケースは、サイン自体はしている、もしくは暗証番号を押して決済をしているものと思います(⇒そうでなければ、カード会社と補償適用を争う余地があります)。
 もしかしたら、警察や消費者センターなどで、「ご自分が悪い。」として相手にされなかったかもしれません。
 私もよく飲みますので、なかなか酒飲みには厳しい社会だなぁと感じることもあります。

 現在、ぼったくりと戦えるほぼ唯一の道は、「裁判」だと考えています
 ぼったくり被害に対する裁判所の姿勢は、司法の世界で働く一人として誇りに思っています。

 以下、具体的に説明します。

1 何より最優先に行うべきこと(緊急性Max)

  • 警察に対し、被害申告をします。
  • クレジットカード会社に対し、ぼったくり被害に遭った事実を申告し、自身への請求を止めてもらいます。
    当日の決済明細を開示してもらうよう請求します。
    同時に、カード会社から店舗への支払いも止めてもらいましょう(なかなか止めてくれませんが)。
  • 🔗消費者生活センターに被害申告をし、消費者生活センターからカード会社に連絡をしてもらいます。

警察への被害申告

 何よりもまず警察に連絡をします。
 警察に一番早い連絡は、「110番」です。

 ほとんどの場合、警察は被害届の受理はしてくれないでしょう。
 しかし、それでもやむを得ません

 被害相談をした事実を残しておくこと、これが大切です(裁判でも証拠提出します)

クレジットカード会社への連絡

 多くの場合、サインか暗証番号により決済をしていると思いますので、カード会社の補償対象外になります(カードの管理責任を問われてやむなしのケースに該当します)。
 そのため、カード会社に対しては、店舗と法律的な解決をするまで、①支払猶予をお願いし、②当日の決済明細と店舗情報の開示を依頼します
 なお、法的手段として支払停止の抗弁をもってカード会社と交渉をすることも想定できそうですが、ぼったくり被害のケースでは要件を満たさないことが多いと思いますので、これはあくまでもお願いベースの対応となります(割賦販売法に規定されている支払停止の抗弁は、1回払いでは適用されません)。

 弁護士が介入するか、消費者生活センターからの連絡であれば、支払猶予に応じてくれるカード会社が多いようです。

 これに対し、カード会社があくまでも請求を行う場合には、支払拒否を強行するしかありません。
 事故扱いや延滞金が発生しますが、ここで支払ってしまうと、支払済のお金は店舗より回収するよりなく、被害回復が極めて困難になります

 そのため、カード会社には、本件がぼったくりであること、裁判で店舗と争っていくことを粘り強く伝え、状況を理解してもらうしかありません。

消費者生活センターへの連絡

 ぼったくり被害に遭った事実を伝え、カード会社への対応も、消費者生活センターを通して行ってもらえないか相談します。

 現実問題として、けんもほろろな対応をされることも少なくないようです。
 ただ、ぼったくりの被害者であれば、消費者生活センターへ相談に行くことは当然の行動です。

 せめて、相談に行った事実を残してもらうようにします(裁判で証拠提出します)

2 被害回復までの手続・流れ

 警察やカード会社への連絡・対応を終えたら、カード会社からの連絡(開示資料)を待ちます。

 多くの場合、店舗情報(屋号・住所・電話番号)と当日の店舗側の手控え(料金明細)しか情報がありません。
 カード会社に対し、裁判を起こすために必要な情報(店舗屋号の運営者は誰か、個人か会社か?)の開示をさらに行います。 

カード会社に対し、より詳細な情報を開示するよう依頼
店舗名は屋号にすぎません。その屋号を運営者が誰であるかについての情報を明らかにするように再度開示を依頼します。
屋号の情報だけでは裁判ができませんので、運営者情報が必要な理由を説明します。
警察に対し、風俗営業の届出に係る登録情報の開示請求
カード会社への開示請求と並行して、警察にも開示請求をします
24時以降に酒類提供の営業をするには、風営法の届出をしていますので、その届出情報を入手します。
これは誰でも請求できます。ただ、稀に登録していない悪質業者もいます。
店舗に対し、支払義務がないこと(支払拒絶)の通知を発送
ぼったくりであることの指摘をします。
相手と減額交渉(「減額に応じてくれないと裁判を起こしますが、それでも良いですか?」)をします。
ただし、減額に応じる店舗は少ないと思います。
ここでは、訴訟前に店舗側がどんな主張をしているか、郵送物はしっかり届くかの確認をします。
店舗に対して、訴訟提起(裁判)へ
店舗に対し、支払義務は存在しないことの確認を求める or 料金の返還請求の訴えを提起します
裁判の結果資料をカード会社に提出し、その結果に従って精算手続を行う
長く感じるかもしれませんが、これにてぼったくり被害の一連の回復手続が完了となります。
但し、カード会社があくまでも決済した金額を請求してきて、ぼったくり店舗から被害回復を図るよう求める場合には、店舗から金銭を回収するか、カード会社と交渉等をしなくてはならず、これだけで終わるわけではありません。
これがぼったくり被害をより一層複雑かつ回復困難にしています。

3 警察に対する風俗営業の届出に係る登録情報の開示請求について【情報公開条例の利用】

 カード会社に対する開示請求だけでは、無駄に時間を要することも多いため、並行して警察に対し開示請求を行います
 また、警察に詐欺での被害届は無理でも、風営法違反を申告する端緒にもなり得ますので、開示請求は行いましょう。

警察(東京なら警視庁)の情報公開担当へ開示請求書を送ります

 警視庁を例にしますと、警視庁情報公開センターが担当になります。
 下の開示請求書」(🔗申請様式一覧の警視庁ホームページ「東京都情報公開条例」欄の「警視総監宛」)に必要事項を記載し、担当部署宛にファックス、もしくは郵送にて請求します。
 地域により差はあると思いますが、数百円程度の実費で取得できると思います。

 請求した日から一両日程度で、該当の有無の連絡があります。
 該当があれば、2週間程度で写しの交付を受けられます。

【記載要領】

  • 開示請求者の情報を記載。
  • 下枠の1番の欄に「店舗名、住所、電話番号」、「当該店舗についての風俗営業の届出に係る登録情報」と記載。
  • 下枠の2番の欄に「写しの交付」に丸をつけます(裁判で証拠提出するため)。

 (必要書式)🔗「情報公開・個人情報保護・特定個人情報保護(申請様式一覧)」

警視庁 情報公開センター
電話:03-3581-4321(警視庁代表)

風営法の届出情報に該当がない場合

 稀に該当情報がないという回答を受けることがあります。
(接待系の店舗であれば、風営法の届出がないことの情報提供を警察にしましょう。ただ、対応の温度感は、警察官の個人差がかなりあるように感じています。)

 非該当の場合は、各地自治体(区役所・市役所)に対して、食品営業許可の登録情報の開示を請求します
 各地自治体に連絡して、登録情報の開示方法を確認し、手続を進めましょう。

4 訴訟(裁判)提起へ

 店舗の運営者等が特定できたら、いよいよ本番となる訴訟を提起します。
 形としては、債務不存在確認訴訟、もしくは不当利得返還請求訴訟を利用します。

✍ どんな請求を裁判でするか?

 「店舗に支払義務がないから、カード会社への支払義務もない。」との主張は、なかなか通りにくい印象です。そのため、不当利得返還請求訴訟(店舗に不当なお金を返せという請求)が、スタンダードかと考えています。
 その理由は、自称警察官からの電話に対し、電話で自己名義の預金口座の口座番号・暗証番号を知らせ、自宅に訪問してきた別の自称警察官から当該口座に係るキャッシュカードを窃取された後、何者かによってATMから預金を引き出されたという詐欺被害の事案(東京地判令和3.2.19)においてですら、原告(87歳)が金融機関に対し、預貯金者保護法5条に基づく補填金支払請求を求めましたが、原告に「重大な過失」があるとして請求が棄却されています。

 この裁判例から考えると、ぼったくり被害者とはいえ、自らカード決済をしているケースにおいては被害者にも過失があると認定される事案が多いと推測され、基本的にはぼったくり加害者の店舗からの回収を想定していくのが基本と考えられるためです。

 ここまで来たらあと一歩なので、とりあえず作成して裁判所に聞きながら修正をするか、又は弁護士の無料相談などを活用しても良いと思います

 苦労して訴状を作成したと思ったら、今度は訴状が店舗に送達できず、裁判所より現地調査を指示されることもあるでしょう。
 ここは色々とハードルが高いところになってしまいますが、弁護士に外注する費用を削る以上、もうひと踏ん張りですので頑張りましょう!!
 ご自分で和解交渉を含めて対応する場合には、少額訴訟を検討しても良いと思います。

(※)
 訴訟の相手として、店舗だけでなく、クレジットカード会社を入れるかは検討を要します。
 裁判官によっても、対応が異なるように感じていますので、クレジットカード会社があくまでも当方に請求をする場合には、店舗とカード会社の両方を被告にする方法もありますが、支払いの猶予を求める以上の意義を見出しがたく、基本的には消極的に考えるべきでしょう。

【提出書類一覧】 
 「訴状」・「証拠説明書」・「証拠」は、裁判所用(1部)と相手用(相手の数分)を揃えます。
 相手が1店舗なら、各2部を準備します。

  • 訴状(収入印紙を貼付)
  • 郵便切手(6000円程度 裁判所により異なります)
  • 証拠説明書
  • 証拠書類(「甲1号証」、「甲2号証」と番号を付けます)
  • 法人登記簿(店舗が法人ならば、法務局で登記簿を取得します)

✍ 訴訟提起へ参考サイト

【参考】 民事裁判(訴訟)の流れを弁護士が分かりやすく解説~「訴える」債権回収
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裁判手続の流れを理解しておく!
https://ik-law.jp/blog/minjisaiban/
【参考】 「少額訴訟」やり方や手続の流れは?自分でできる債権回収!
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少額訴訟の制度と、自分で手続ができるようにやり方を解説します!
https://ik-law.jp/blog/syogaku/

第3 店舗において「③現金で支払った場合」~被害回復は絶望的、、、

 店舗において現金で支払済みの場合、単純に飲食代金が不当だという立証だけでなく、相手店舗が任意に返金に応じない場合には、強制執行等により回収しないと被害救済できません。
 現実問題として、被害回復は不可能と思って差し支えないと思いますが、一縷の望みに賭けることもあるでしょう。
 ぼったくり店舗に対して裁判を起こすと、争ってくる店舗が多いため、やはり裁判を行う価値はあるように考えています。

 基本的な対応要領は、クレジットカードでの支払いの場合と一緒です。
 領収証を基にして、警察に対し店舗の風営法の登録情報の開示請求を行い、返金請求 ⇒ 訴訟提起を行います。

 どこかで話し合いによる解決ができればよいですが、できなければ強制執行手続にて回収を図ります。
 ぼったくり店といえど、営業を継続している場合には、「動産執行」といって店舗に乗り込んでレジから現金を回収する方法もあります。
 ただ、このような店舗に現金があるのか不明であり、深夜の執行ともなってしまう可能性も高いでしょうから、まだまだ乗り越えなくてはならないハードルがあります。
 情報開示の結果、店舗が法人であれば、まだ回収可能性はあります

 しかし、店舗経営者が個人事業主であれば、店舗の現金についても66万円まで差押禁止となってしまうため、回復がほぼ不可能と評価しています。

【参考】 「動産執行」不動産でも債権でもない債権回収の最終兵器
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数少ない情報の中でも狙える動産執行も、個人事業主相手には非常に使い勝手が悪い制度です
https://ik-law.jp/blog/dosansashi/

 また、領収証が手元にない場合は、自身の記憶があれば良いですが、「財布から●●円がなくなっていた。」という状況証拠では回復は絶望的です。
 携帯電話のGPSを頼りにまずは店舗の特定を進めるよりありませんが、その記憶すらなければ、諦めるよりありません。

 たとえば、コンビニのATMから30万円を引き出している形跡がある場合、警察に相談に行けば、引き出した時の映像を警察が確認してくれます。
 ただし、本人といえど、その映像を閲覧したり取得することができないため、脅されている状況などが確認できなければ、事件化は難しいです。

 そのため、現金交付した場合で領収証がない場合は、被害発生後にすぐに警察に連絡し、店舗の特定を含め対応を行ってもらっている例外的なケースでないと、諦めるという選択肢を受け入れざるを得ないと考えます

第4 終わりに

 以上が、ぼったくり被害に対して弁護士が介入した場合にできることです。

 「弁護士の資格がないとできない」という行為はないため、自身でも被害回復は可能です。
 そうはいっても、特に訴訟提起は、ハードルが高いでしょう。

 ただ、要所要所で無料相談をやっている弁護士(区役所の相談なども)に相談することで、なんとか打開策を見出して欲しいと思います。

【有料法律相談】 首都東京法律事務所