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少年鑑別所に収容されるケースとは?流れや所内での生活について解説

 少年鑑別所とは、どのような所ですか?

 少年鑑別所は、少年審判のために少年を収容し、処分を決めるための観察を行う施設です。
 少年鑑別所法3条には、少年鑑別所の3つの目的が記載されています。

  • 鑑別対象者(少年)の鑑別を行うこと
  • 家庭裁判所による観護措置などにより少年鑑別所に収容される少年に対し、必要な観護処遇を行うこと
  • 非行及び犯罪の防止に関する援助を行うこと

このうち、1つめの目的である「鑑別」は、少年鑑別所に特有のものです。

ここでの鑑別とは、心理学や教育学などの専門知識を有する鑑別技官が心理検査などを実施し、非行に至った原因を解明し、非行を繰り返さないための方針を立てることを意味します。

少年鑑別所は、単に少年を隔離する施設ではなく、少年にとって適切な処分を決めるために必要な施設なのです。

以下では、少年鑑別所に収容されるのはどのような場合かを説明したうえで、収容までの流れや鑑別所内での生活について詳しく解説します。

第1 少年鑑別所に収容されるのはどのような場合? 

 少年鑑別所に収容されるのは、勾留期間の終了後家庭裁判所で観護措置決定がされた場合です。

少年事件全体に中における少年鑑別所の手続的位置づけ。
家裁送致後の手続となります。
全体の手続の中における少年鑑別所の位置づけ

少年が事件を起こして逮捕・勾留された場合、勾留期間が終了すると少年は家庭裁判所に送致されます。
そこで、家庭裁判所は、観護措置もしくは在宅観護の決定を行います。
ただ、実務的には、在宅観護が執られることはほとんどありません。

勾留期間が終了し、少年は家庭裁判所へ送致されます。
家裁へ送致された後は、観護措置として鑑別所に行くか、在宅にて観護措置を進めるのかが決められます
家庭裁判所により観護措置と在宅観護かが決められます

逮捕・勾留の流れは、少年と成人とで同じ手続きです。
つまり、逮捕から48時間以内検察官に送致され、その後、最大で20日間勾留されます。

成人の場合、勾留期間を終えると検察官が起訴・不起訴の判断を行いますが、少年事件では、家庭裁判所が観護措置もしくは在宅観護を決定するのです。

少年事件では、成人と異なり少年の要保護性が重視されます。

要保護性とは、少年の性格や環境などから、少年が将来的に再び非行に走ってしまう危険性のことです。

家庭裁判所に送致された段階で、少年の要保護性が高いと判断される場合には、観護措置決定がされます。
逮捕・勾留された少年が観護措置を避けるには、要保護性が減少していることをアピールしなければなりません。

要保護性の減少をアピールするには、弁護士だけでなく家族の協力も重要です。
成人の場合は、事件についての示談が成立しているか、被害の程度は大きくないかなどが重視されますが、要保護性が重視される少年事件では、家族の協力による家庭環境の整備も重視されます。

第2 少年鑑別所に収容される期間

少年鑑別所に収容される期間は2週間で、継続の必要があるときには1回に限り更新が認められます。
観護措置がなされると、ほとんど全てのケースで更新手続きがされるため、更新分と合わせて4週間収容されることになります。

ほとんどのケースで期間が延長されるのは、少年鑑別所では鑑別のためのプログラムが決められているからです。
鑑別技官によるテストなどのプログラムは、更新を前提として作成されます。

なお、重大事件において、証人尋問や精神鑑定が必要な場合には、さらに2回の更新が可能です。
この場合、収容期間は最大で8週間となります。

少年事件の観護措置期間は、法律的には2週間と規定されていますが、実務上は基本的に4週間として運用されています。さらに特別更新が2回可能とされ、最大56日間の延長ができます。
観護措置の期間。基本的に4週間です。

✍ 観護措置の期間

観護措置は、「4週間」と覚えましょう!!

第3 少年鑑別所と少年院との違い

少年院は、少年審判における最終的な処分の結果として収容される施設です。

一方、少年鑑別所は、処分内容を決めるための鑑別を行う施設なので、処分内容が決まる前の段階で収容される施設です。

つまり、少年鑑別所は、少年を少年院に送るのか、それとも社会で更生の機会を与えるのかを裁判所が判断するための材料を集める場所と言えます。

少年院に送致された少年は、少年院で社会生活に適応するための矯正教育を受けます。

このとおり、少年鑑別所と少年院は、収容される時期も役割も全く異なる施設です。

【関連記事】 少年院~どのような所?種類、入所基準、入所期間等を解説します。
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少年院に入る基準や種類、期間などを解説します。
https://ik-law.jp/case/kasai/syonenin/

第4 少年鑑別所に収容されるまでの流れ

1 逮捕・勾留

逮捕・勾留された少年は、最大で23日間の拘束を受けます。
勾留期間が終了すると、全ての少年は、家庭裁判所に送致されます。

逮捕から48時間以内に検察官送致され、24時間以内に勾留されます。
勾留は10日間され、さらに10日間は勾留延長される可能性があります。
少年事件の場合、この勾留が終わった後は、成人事件の場合と異なり、基本的には家庭裁判所へ送致されます。
逮捕・勾留から家庭裁判所までの流れ(最大23日間)

2 家庭裁判所送致

家庭裁判所では、観護措置もしくは在宅観護の決定がされます。
逮捕・勾留を経て家庭裁判所に送致されたケースでは、観護措置決定を受ける可能性が高いです。

観護措置決定を受けた少年は、少年鑑別所に通常は4週間収容されます。

在宅観護となった少年は、この時点で社会に戻ることができます。

在宅観護となった少年も、この時点で事件が終結する訳ではありません。
観護措置、在宅観護いずれのケースでも、少年審判について審判不開始もしくは審判開始の決定がされます。

審判不開始となった場合、この時点で事件は終結します。

観護措置が取られ、少年鑑別所にて4週間過ごした後は、審判不開始となれば、事件が終了します。
審判が開かれた場合は、処遇の決定がされ、今後の手続が決まっていきます。
家庭裁判所に送致され、観護措置がとられた後の流れ

3 少年審判

少年審判では、次のいずれかの処分が下されます。

  • 不処分
  • 保護観察
  • 児童自立施設等送致
  • 少年院送致
  • 検察官送致(逆送)
【関連記事】 「少年審判」とは? 手続の流れや、どんな処分が下されるか?
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少年審判とは、少年にどのような処分を与えるかを最終的に決定する手続です
https://ik-law.jp/case/kasai/shinpan/

第5 少年鑑別所での生活

ここでは、少年鑑別所では何が行われるのか、スケジュールなど少年鑑別所での生活を詳しく見ていきます。

【参考サイト:🔗「少年鑑別所」(法務省)

1 少年鑑別所では何をするの?

少年鑑別所で行われるのは、少年の鑑別観護処遇です。

少年の鑑別では、担当の鑑別技官が少年の資質鑑別行動観察を行います。

少年と鑑別技官との面接(鑑別面接)や、知能テスト・心理テストの結果によって、少年の性格や内面の問題点を明らかにしていくのが、鑑別の中心的な方法です。

収容期間中には、鑑別技官だけでなく、家庭裁判所の調査官も少年との面接を行います。
調査官の面接は、事件の内容や家庭環境、交友関係についての調査が中心となります。

観護処遇とは、少年の健全な育成のために行われる、特性に応じた適切な処遇のことです。
少年鑑別所で規則正しい生活を送らせるとともに、学習支援や講話など少年の課題に応じた教育が行われます。

少年には、運動や読書の時間など、比較的自由に過ごせる時間も与えられています。

少年鑑別所での鑑別結果や生活態度は、少年審判における重要な資料です。
鑑別技官の面接や集団生活の中で、社会生活内での更生が難しいと判断されてしまうような場合には、少年院送致などの処分を受ける可能性が高くなります。

2 少年鑑別所でのスケジュール

少年鑑別所でのスケジュールを、収容期間全体と一日に分けて説明します。

収容期間中のスケジュール

少年鑑別所に収容される4週間の主要なスケジュールは、次のとおりです。

  • 入所のオリエンテーション
  • 鑑別面接(1回目)
  • 集団方式での心理テスト
  • 鑑別面接(2回目)
  • 個別個別での心理テスト
  • 判定会議
  • 鑑別結果通知書の作成

少年鑑別所では、鑑別面接心理テストによって少年の鑑別を行い、その結果を踏まえた判定会議で少年審判の要否や処分についての意見を決定します。

少年審判の処分結果を決めるのは裁判官ですが、鑑別結果通知書の意見は重要視されます。
そのため、少年鑑別所での面接やテストの結果、生活態度は少年審判の結果に大きな影響を与えるのです。

一日のスケジュール

少年鑑別所での一日は、施設によって細かい点は異なりますが、おおむね次のとおりです。

起床は7時で、その後に洗面と朝食の時間があります。
昼食までの時間は、プログラムに沿って、運動や裁判所調査官との面接、心理テストなどをして過ごすことが多いです。

12時に昼食をとったあとは、学習支援、講話、面会、入浴などの時間が設けられます。
17時に夕食を済ませてから、21時の就寝までの時間は自由時間です。
日記を書いたり、読書をしたりして過ごすことになります。

少年鑑別所では集団生活となるため、起床、就寝、食事の時間は固定されています。

3 少年鑑別所での面会

少年鑑別所では、1日に1組だけ15分程度の面会が可能です。
面会が認められるのは、近親者保護者、その他特別に鑑別所に許可された人に限られます。

特別に許可がされるのは、職場の上司先生などです。
友人恋人は基本的に許可されません。

少年の付添人となった弁護士は、面会時間の制限なく少年との面会が可能です。
弁護士との面会では少年鑑別所の職員が立ち会うこともなく、自由なコミュニケーションができます。
少年鑑別所に収容された少年にとって、弁護士は少年の不安を和らげる意味でも重要な役割を担っています。

第6 少年鑑別所に収容されるのを避けるには?

観護措置決定によって少年鑑別所に収容されると、4週間もの間、社会から隔離されてしまいます。
学校生活はもちろんのこと、就職や入試を控えている場合には、少年にとって重大な影響を与えてしまう可能性があります。

少年鑑別所に収容されるのを避ける方法、期間を短くする方法は次の3つです。

  • 捜査段階で逮捕・勾留を防ぐ
  • 異議申立
  • 観護措置取消申立

このうち、異議申立観護措置取消しの申立ては、ハードルの高い手続きです。
観護措置の要件を満たしていないこと、観護措置の必要がなくなったことを主張し、それが認められれば少年鑑別所への収容を避けられます。

申立ての際には、観護措置が少年に与える影響について具体的に主張することも重要です。
就職や受験などで少年に重大な影響を与える場合には、申立てが認められる可能性もあります。

少年鑑別所への収容を避けるうえで最も重要なのは、捜査段階、逮捕・勾留段階での活動です。
被害者のいる事件では被害弁償を済ませる、共犯者のいる事件では共犯者との関係を絶つ家庭環境を整えるなどの活動により、観護措置が必要のない状態にすることが重要です。

そのためには、弁護士と家族の協力が必要不可欠となるでしょう。

少年鑑別所への収容を避けるためには、捜査の早い段階から弁護士に相談することをおすすめします。

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