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少年の恐喝・強盗罪~逮捕された場合の流れと付添人活動について

少年の恐喝・強盗事件にはどのような特徴がありますか?

恐喝罪と強盗罪は、暴行・脅迫を手段として被害者の財物を奪う犯罪です。

少年の場合には、いわゆるカツアゲから発展した事件が多く、店舗や住宅に侵入する形の強盗事件は成人と比較すると少ない傾向にあります。

令和5年版の犯罪白書によると、令和4年に検挙された少年の恐喝事件は320件、強盗事件は245件でした。

少年事件の総数は2万1,401件で、全体の割合では、恐喝事件と強盗事件を足しても2.6%程度となっています。

恐喝罪と強盗罪の違いは、暴行・脅迫の程度です。

暴行・脅迫の際に、ナイフやバットなどの武器を使用すると、重い強盗罪が成立してしまう可能性があります。

強盗罪は、5年以上の有期懲役という重大犯罪であるため、前歴がなくても少年院送致となることも少なくありません。

また、行為時に18歳もしくは19歳の特定少年が強盗罪で検挙されたときには、原則逆送事件の対象犯罪に規定されています。

第1 少年による恐喝・強盗事件の現状

令和5年版の犯罪白書によると、令和4年に恐喝罪と強盗罪で検挙された少年は、併せて565件となっています(恐喝事件320件、強盗事件245件)。

年間で1万1,000件を越える窃盗事件と比較すると検挙数は少ないものの、恐喝・強盗事件は、重大事件として重い処分を下される可能性が高いです。

成人の強盗事件は、コンビニ強盗や銀行強盗、住居に侵入しての強盗などが多くなっています。

一方、少年の恐喝・強盗事件は、いじめやカツアゲなど学校生活の中で発生する事件の割合が大きいです。
それ以外では、お金の貸し借りや男女関係のもつれから恐喝や強盗に発展するケースもあります。

令和3年の少年法改正では、特定少年(18歳もしくは19歳の少年)が犯した死刑、無期又は短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件が原則逆送事件となりました。

強盗罪は、5年以上の有期懲役という短期1年以上の懲役に当たる罪の事件であるため、18歳・19歳の少年が強盗事件を起こすと原則逆送事件の対象になりますので、少年審判ではなく刑事裁判を受けることになります。

ただ、「原則」逆送事件とはいっても、ほとんどのケースで逆送(刑事事件)になるわけではなく、実際には犯情や少年の要保護性によって判断されていますので、必ずしも逆送事件となる運用が行われているわけではありません。

個々の具体的なケースに応じ、逮捕段階では強盗罪として扱われていたものが、傷害罪窃盗罪として扱われることもあります。

【参照】令和5年版犯罪白書|法務省

第2 恐喝罪・強盗罪とは?

恐喝罪と強盗罪は、どちらも被害者を脅して財物を奪う犯罪です。

恐喝罪の「恐喝」とは、相手の反抗を抑圧するに至らない程度の暴行又は脅迫によって、相手方を畏怖させて、財物を交付させることを言います。

たとえば、素手の暴力によって、相手を怖がらせてお金をカツアゲしたようなケースは、恐喝に当たるでしょう。

一方、強盗罪は、相手の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫によって財物を交付させたときに成立します。

恐喝罪と強盗罪との違いは、暴行・脅迫の程度です。

たとえば、逃げ道のない場所でナイフを突きつけて金銭を交付させたときには、強盗罪が成立する可能性が高いでしょう。

暴行・脅迫の程度が、相手の反抗を抑圧する程度に至っているか否かは、犯行態様だけでは判断できません。

恐喝と強盗は、犯行時刻や犯行場所、加害者・被害者の体格や年齢、周辺の状況などを総合的に考慮して区別します。

恐喝罪と強盗罪は、法定刑に大きな差があります。

恐喝罪は、10年以下の懲役となっていますが、強盗罪は、5年以上の有期懲役(5年以上20年以下)です。

強盗罪となれば少年審判でも重い処分が予想されます。

(強盗)
第236条 
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2 
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

(恐喝)
第249条 
人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

🔗「刑法」e-Gov法令検索

【引用】刑法|e-Gov法令検索

第3 少年が恐喝罪・強盗罪で逮捕された場合の流れ

1 捜査段階(逮捕→勾留)

少年が恐喝罪もしくは強盗罪で逮捕されたときには、逮捕から72時間以内に釈放されるか、勾留されるかが決まります。

勾留が決まると、少年は引き続き留置場に留まり続けることになります。

勾留の期間は、10日間です。

恐喝罪や強盗罪については、被害者との示談交渉が長引いていたり、取り調べなどの捜査に時間がかかったりすることも多く、その場合には、さらに最大で10日間延長されます。

逮捕と勾留の期間を合わせると、最長で23日間の身体拘束を受けることになります。

逮捕期間中は、弁護士でなければ少年と接見できません。

勾留期間中は、一般面会は、1日1組という制限はありますが、保護者や友人も面会ができます。

もっとも、取調べのために検察庁に行くときなどは、面会できないことが多く、毎日面会できるわけではありません。

逮捕・勾留の期間には、弁護士以外には少年への助言や被害者との示談交渉ができないため、恐喝罪や強盗罪のような重大事件では、すぐに弁護士を選任すべきです。

2 家庭裁判所への送致

勾留の期間が終わると、少年は家庭裁判所に送致されます。

このときに、18歳・19歳の少年が強盗事件を起こしたときや、17歳以下でも罪状が重いと判断されたときには、事件が検察官に送致されます(逆送)。

逆送事件以外の場合、家庭裁判所は、観護措置決定で少年を少年鑑別所に収容するか否か、少年審判を開始するか否かの判断を下します。

観護措置決定がされたときには、原則として4週間少年鑑別所での生活を送り、そのまま少年審判を迎えます。

恐喝・強盗事件では、犯情や要保護性によって、少年院送致となる可能性があります。

少年院送致を避けるには、被害者との示談交渉や少年の生活環境調整が重要となるでしょう。

第4 恐喝罪・強盗罪と付添人(弁護人)の活動

恐喝罪・強盗罪で検挙された少年の付添人活動としては、次のようなものがあります。

  • 事件や生活面についての助言
  • 被害者との示談交渉
  • 家庭や学校での環境調整
  • 検察官や裁判官との面談・意見書提出

それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。

1 事件や生活面についての助言

逮捕・勾留された少年は、取調べ対応や自身の生活について、どうしたら良いかわからずに大きな不安を抱えていることでしょう。

付添人は、時間の制限なく自由に少年と接見(面会)できます。

付添人は、不安な気持ちを抱える少年に寄り添い、取り調べに対するアドバイスをしたり、両親や学校など外の状況を伝えたりします。

恐喝・強盗事件では、暴行・脅迫の程度によって罪名が変わるため、どのような状況で犯行が行われたのかを正確に伝えることが重要です。

少年が不利な供述をする前に、付添人が早めにアドバイスを与えることが必要となります。

2 被害者との示談交渉

恐喝・強盗事件では、被害者との示談交渉が成立しているか否かが、処分の結果に大きな影響を与えます。

少年が被害者から奪った金銭や物に対する被害弁償はもちろんのこと、事件によって被害者に精神的な苦痛を与えてしまったことに対する慰謝料も準備する必要があるでしょう。

早期に被害者との示談交渉を成立させることができれば、勾留期間も短く済む可能性もあります。

3 家庭や学校での環境調整

少年審判では、少年が社会復帰したときの家庭学校・職場の環境が重要視されます。

付添人としては、家族と連絡を取り合うのはもちろんのこと、学校や職場についても、少年が戻れるために必要な活動をおこないます。

逮捕・勾留の期間が短く済みそうなときには、あえて学校や職場に事件をふせて、スムーズに社会復帰させることもあります。

退学や解雇によって少年の戻る場所がなくなると、重い処分を受ける可能性が高くなるため、家庭や学校などでの環境調整は付添人にとって重要な活動となるのです。

4 検察官や裁判官との面談・意見書提出

事件の取り調べや調査を受けている少年は、事件の状況や自分の意見を捜査官や裁判官に伝えられないことも多いでしょう。

付添人は、少年や関係者から事件の内容を聴き取って、検察官や裁判官に事件の内容を正確に伝えます。

さらに、被害者との示談交渉の結果や、学校・職場の状況など、少年にとって有利と判断されるような事情についても、余すことなく検察官や裁判官に伝えます。

重い処分を避けたり早期釈放を目指すには、検察官や裁判官との情報共有は欠かせません。

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