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薬物と少年事件~現状と保護者や弁護士ができること

少年の薬物事件にはどのような傾向がありますか?

近年、薬物事件で検挙される少年の人数は急増しています。
その原因は、大麻取締法で検挙される少年の数が増加を続けているためです。

大麻は、SNSの普及によって手軽に入手できる状況にあります。
覚せい剤と比べると危険性は低いとの安易な考えから、大麻に手を出してしまう少年も増えています。

大麻の事件を減らすには、大麻が覚せい剤などと同様に危険な薬物であることを周知させる必要があるでしょう。

今回は、少年の薬物事件の現状や大麻取締法について解説したうえで、少年の薬物事件における付添人活動の内容を紹介します。

第1 少年の薬物事件の現状

少年の薬物事件による検挙は、全体の人数では減少しています。

かつては、昭和50年代をピークにシンナーを中心とした薬物事件が多くありましたが、現在では、シンナーや覚せい剤の事件は多くありません。

一方、少年が大麻取締法違反で検挙されるケースは年々増加しています。

大阪府警によると、大阪府内で令和3年中に大麻取締法違反で検挙された少年は、令和2年中の124人から150人に増加したとのことです。

参照:🔗大阪府警察「少年の大麻事犯について」

大麻事件は、大阪に限らず全国的に増加しています。
警察庁の発表によると、令和4年に大麻事件で検挙された少年の人数は、912人でした。

5年前の平成29年は297人で、わずか5年で3倍もの数字となっています。

参照:🔗警察庁「令和4年における組織犯罪の情勢 第2章:薬物情勢」

少年の大麻事件が増加しているのは、SNSの普及で大麻の入手が容易になったことに加え、「大麻は合法」などの誤った理解が広まっていることが原因と考えられます。

外国では大麻が合法とされている国もあり、「大麻は安全」と考えている少年も少なくありません。

しかし、大麻は、日本においては違法薬物であり、乱用すると呼吸障害精神障害など心身に悪影響を与える危険なものです。

少年の大麻事件と向き合うためには、大麻について正しく理解しなければなりません。

下の図を見ても、大麻が若年層にいかに浸透しているかが分かります。

大麻事件の検挙人数🔗「【図解】時事ドットコム」より引用

第2 大麻とは?大麻取締法とは?

大麻とは、大麻草由来の薬物で、マリファナとも呼ばれます。

大麻は日本の法律では、大麻取締法麻薬及び向精神薬取締法によって規制される違法薬物です。

大麻取締法で規制を受ける「大麻」とは、大麻草及びその製品のことをいいますが、大麻草の成熟した茎や種子は規制の対象から外されています(大麻取締法第1条)

第一条 
この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。
参照:e-GOV法令検索

近年、大麻由来のCBD製品が人気を集めていますが、流通しているCBD製品は、大麻草の成熟した茎や種子から抽出された成分を使用しているため、大麻取締法の規制対象ではありません。

CBD製品が合法でも、大麻が合法な訳ではありません。

また、CBD製品でも大麻由来のTHCと呼ばれる成分が含まれる場合には違法となるため、使用には注意が必要です。

大麻取締法では、大麻の栽培輸出入所持譲り受け譲り渡しを禁止しています(大麻取締法24条、24条の2)。

第二十四条 
大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。

第二十四条の二 
大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。

参照:e-GOV法令検索

大麻取締法では、大麻の「使用」は規制されていません。

また、都道府県知事の免許を受けた者は所持や栽培が認められています。

このことから、少年の間で「大麻は合法」との誤った理解が広まっているのです。

しかし、尿検査により大麻の使用が明らかになれば、大麻を所持譲り受けたと考えられるため、大麻取締法違反として検挙される可能性が高いです。

大麻の所持は、営利外目的の場合で5年以下の懲役、営利目的の場合だと7年以下の懲役となる重大な犯罪といえます。

少年が大麻事件の当事者とならないためには、大麻についての甘い考えを捨てることが重要です。

「大麻だけど葉の成分は使ってないから大丈夫。」、「使用だけなら禁止されていないから大丈夫。」などとの甘い誘惑は断ち切らなくてはなりません。

薬物の見た目から成分はわかりませんし、使用から所持や譲り受けに関わっているとして捜査対象となることも少なくありません。

第3 薬物事件と付添人(弁護士)活動

ここでは、少年が薬物事件で検挙された場合にどのような処分が予想されるのか、それに対して付添人としてどのような活動を行うべきなのかを解説します。

1 少年が薬物事件で検挙されるとどうなる?

少年であっても、薬物事件で検挙されると、逮捕・勾留される可能性が高いです。

逮捕から48時間以内に検察庁に送致され、24時間以内に勾留決定が行われます。

勾留されると最大で20日間の身体拘束を受けることになります。

勾留期間が終了すると、少年審判までの間は観護措置で少年鑑別所に留置される可能性が高いです。

薬物事件の取り調べでは、入手ルートと交友関係について明確にできるかが重要です。

入手ルートや交友関係を偽る、隠すなどの供述をすると反省の態度が見られない、再犯のおそれが高いとして、勾留が長引いたり、最終的な処分結果に影響を与えたりする可能性もあるでしょう。

初犯で営利目的がない場合には、処分の結果としては保護観察となるケースが多いです。

一方で、繰り返し薬物事件で検挙されたり、営利目的であったりする場合には、少年院送致など重い処分が予想されます。

2 付添人活動の内容

少年の薬物事件についての付添人活動としては、身体拘束からの早期解放を目指すことはもちろんですが、薬物事件で事実関係に間違いがない場合、一定期間の身体拘束を受けることは避けられません。

薬物事件の付添人活動として最も重要なのは、少年の再犯をいかに防止できるかという点です。

入手先やその他薬物関係者との関係を断絶するには、少年自身だけでなく家族による監視も重要です。

安易に薬物使用を繰り返さないため、少年の就労環境や家庭環境を整備し、少年が社会内で更生できるような環境作りが必要となります。

また、少年自身が薬物の恐ろしさを知るために、薬物に対する正しい知識を教えることに加え、病院への通院や自助グループへの参加も検討すべきです。

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