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「少年審判」とは?手続の流れや、どんな処分が下されるか?

 少年審判とはどのような手続ですか。

 少年審判とは、少年にどのような処分を与えるかを最終的に決定する手続です。

 少年審判において、「非行事実」と「要保護性」が審理され、不処分保護処分検察官送致の中から処分等が選択されます
 ただ、最終処分が決定できない場合、まだ審理を継続する必要がある場合には、試験観察期間を設けることがあります。

 ほとんどは、事件が家庭裁判所に送致された日から起算して、3週間後の後半、もしくは4週間後の前半に審判期日が指定されます。

少年事件の手続における審判の位置づけ。
少年事件における審判~家裁において処分を決める手続となります

 審判は、家庭裁判所で、裁判官、書記官、少年、少年の保護者、付添人(弁護士)、調査官が出席して非公開で行われます。
 一般にイメージする法廷と異なり、コンパクトで段差もほとんどなく、裁判官と少年が同じ目線で向き合えるように設計されています。

少年審判の様子。出席する当事者。

🔗裁判所HPより引用

【当日の手続の流れ】
裁判官により、
①少年の氏名・年齢・住居などの確認(人定質問)、
②少年に対する説明、
③非行事実の要旨の告知と少年の弁解の聴取、付添人の意見聴取、
④非行事実の審理、
⑤少年の要保護性の審理、
⑥少年に対する処分決定、
の流れで進むのが一般的です。

 通常、1回40分~60分程度で、事実関係に争いがない事件では1回の審判で保護処分の決定まで行われます。

【審判期日が終わった後の流れ】

 収容処遇となった場合には、付添人(弁護士)は審判後に少年と面会して、処分内容や抗告制度の説明、抗告意思の確認などを行います。

 在宅処遇となった場合には、そのまま待合室などで付添人(弁護士)は、処分の内容や理由を説明し、今後の手続などを説明します。

 保護観察処分となった場合には、審判期日終了後、書記官又は調査官から少年及び保護者に対して保護観察についての説明がなされます。説明後にそのまま保護観察所に出頭して保護観察の手続を執ることが多いです。

処分名処分基準
不処分少年に処分を課さない場合に選択
保護処分審判を経ても要保護性がある程度以上ある場合に選択
 ⇒ 保護観察児童自立支援施設等送致少年院送致の3種類がある
検察官送致家庭裁判所が調査・審判の結果、少年に刑罰を科すのが相当であると判断した場合
児童福祉機関送致
(児童福祉手続)
要保護児童であると判断された場合

 以下、より詳しく説明いたします。

第1 少年審判の特徴

 少年審判は、成人の刑事事件と比較して、次のような特徴があります。

  • 職権主義的審問構造をとっており、裁判所が自ら主導的に事件の調査や心理を行うこと
    ⇔ 成人事件では、検察官と弁護人の当事者主義的構造といわれます。
  • 予断排除原則や伝聞法則の適用がなく、裁判官が審判期日の前からあらゆる証拠に触れることができること
    ⇔ 成人事件では、裁判官は裁判前には起訴状という書面しか見ることができず、証拠に触れることができません。
  • 少年審判で科される保護処分は教育的な措置であること
    ⇔ 成人事件は、刑罰を与えるための手続です。

という特徴があります。

 これらの特徴を受け、大人の成人事件とは全く異なる手続となっています。

第2 観護措置の期間制限

 成人の刑事裁判では、逃走、証拠隠滅の恐れがある場合など身柄を拘束して審理する必要性がある場合には、被告人を拘置所・留置場等に勾留して審判することができます。

 これに対して、少年審判では、勾留ではなく少年を少年鑑別所に収容する観護措置で対応しています

 成人の場合は、勾留の延長更新について制限はありません。

 もっとも、少年の場合は、禁固以上の刑に当たる非行事実の認定に関して、証人尋問等を行う事件では、特別更新が2回までに限られ、最長でも56日間と限定されています

成人の身体勾留(拘束)の原則
成人事件における身体拘束の決まり
少年事件における身体拘束の規則
少年事件における観護措置期間

第3 審判非公開の原則と要式性の排除

1 審判非公開の原則

 少年審判は、発達途上の少年の再非行防止、立ち直りを目指して行われます。
 そのため、少年や関係者が真相・真意を述べやすいように非公開とされています。

2 被害者の傍聴・意見陳述

 故意の犯罪行為による致死傷、過失運転致死傷等(傷害は生命の危険が生じたものに限定)の犯罪・触法事件については、被害者の申出を受けて審判の傍聴を許可する特則があります。

 また、審判期日において、裁判所は、被害者の申出により、被害感情や処分についての意見を述べることができます。

3 要式性の排除

 審判は、少年・保護者に対して、非行の反社会性・反道徳性、事件の重大性等について十分説明・指摘し、その生活態度、考え方、性格、行動傾向の問題点などを指摘して反省を求め、その責任の自覚、更生の意欲を喚起する役割があります。

 そのため、少年審判は、この役割をより機能させるため、手続の順序、方式など厳格に定められている刑事裁判とは異なり、裁判官の幅広い裁量を認めています(要式性の排除)。

 実際にも、裁判官は刑事裁判と異なり、少年審判では法服を着ていません。

 少年の状況、事件の内容・性質に応じて、できるだけ分かりやすく、少年が話しやすいように、教育的な効果を最大限上げるように、適切な手続進行を行うための要請に基づきます。

4 審判傍聴と要式性排除のまとめ

審判非公開の原則少年審判を非公開とする原則。関係者の出席は適切な時期を選び、必要な限度で許可。
審判傍聴の特則審判の傍聴は、原則禁止。
故意の犯罪行為による致死傷、過失運転致死傷等(傷害は生命の危険が生じたものに限定)の犯罪・触法事件については、被害者の申出を受けて審判の傍聴を許可する特則。
要式性の排除刑事裁判のような手続の要式性(一定の方式に従うよう求めること)を排除し、裁判官の幅広い裁量を認めるもの。

第4 審判期日の出席当事者

1 裁判官、書記官、少年

 法律上、裁判官書記官少年本人が出席して行うものとされており、この三者がいないと審判を開くことはできません。

2 調査官

 原則として審判に出席しますが、裁判所の許可を受けた場合には欠席することがあります。

 特に在宅事件などは、出席しないこともあります。

3 保護者

 保護者は、審判に出席するものとされ、呼び出しをすることは必要不可欠ですが、保護者が欠席しても審判を行うことはできます。

4 付添人(弁護士)

 保護者と同様に期日の通知は必要的とされますが、出席しなくても期日を開くことはできます。

5 その他に出席がある場合

 教員雇用主や保護者以外の親族など、裁判官が相当と認める者については、審判への出席が許可されることがあります
 特に、少年が中学生の場合には、担任の先生が出席することが多いです。

 また、保護観察・試験観察が予定されている場合には、雇用主となる予定の者や補導委託先の職員等が出席することもあります。

第5 審判手続

1 審判の流れ

人定質問・黙秘権告知・非行事実の告知とそれに対する少年・付添人の陳述
非行事実の審理
証人尋問、少年本人質問など
要保護性の審理
少年本人質問、保護者・関係者への質問など
調査官・付添人の処遇意見の陳述、少年の意見陳述
意見の読み上げは行われず、提出した書面の通りとして終わることが多いです
決定の言渡し
審判の時間は、非行事実に争いがなく、1回の審判で決定まで言渡す事件の場合、40~60分程度が多いです

2 人定質問・黙秘権告知

 開廷すると、まず裁判官が少年に対して人定質問をします
 この人定質問は、少年本人だけでなく、保護者に対しても行うことが一般的です。

 そして、人定質問の後、黙秘権の告知が行われます。

3 非行事実の告知とこれに対する陳述

 続いて、裁判官非行事実を読み上げ、これに対する少年の陳述が行われます。 

 少年本人の陳述の後に、付添人(弁護士)も陳述します。

 ただ、付添人の場合には、事前に意見書を提出していることが多く、「意見書の通りでよしですね?」と確認だけで終わることがほとんどです。

4 非行事実・要保護性の審理

 少年事件の多くの場合は、非行事件について争いがありません。

 そのため、非行事実の確認を行った後は、要保護性の審理に入るケースがほとんどです(また、非行事実と要保護性の審理は明確に区別されない場合も多いです)

 要保護性の審理は、裁判官から少年に対して質問を行い、次に付添人(弁護士)が少年にとって重要と思われる事実や裁判官の質問から漏れた事実などについて質問します。

 その後に、調査官が補充して質問することも多いです。

 

 少年に対する質問の後、保護者や出席している関係者(担任の先生や雇用主など)に対しても質問が行われます。

 少年本人に対する質問と同様に、裁判官から質問をし、続いて付添人(弁護士)から質問します。

5 意見の陳述

⑴ 調査官の処遇意見の陳述

 調査官は、審判において、裁判官の許可を得て意見を述べることができます。

 ただ、調査官の処遇意見は、事前に裁判所に提出しているため、審判廷で意見を述べさせることは少ないです。

⑵ 付添人(弁護士)の処遇意見の陳述

 付添人(弁護士)も裁判官の許可を得て、意見を述べることができます。

 付添人の意見は、審判前に意見書を提出していますので、「意見書のとおりでよいですか」と聞かれることが多く、意見書を朗読することまでしないのが一般的です。

⑶ 少年の意見陳述

 最後に、裁判官が少年の意見を求め、少年が陳述します
 自分の気持ちや言い足りないことを述べましょう

6 決定の言渡し

 審判の手続がすべて終了すると、裁判官が決定を言い渡します。

 重大事件ではなく、かつ、非行事実に争いがない事件では、休廷を挟まずすぐに言渡しに移ります

 言渡しでは、少年に対する処分の内容が述べられ、次に処分を決めた理由の説明がされます。

 理由の説明では、非行事実や要保護性の認定判断、処分を決定するにあたって重視した点などが述べられることが多いです。

 この際に、保護処分を言渡されるときは、抗告ができる旨も告げられますので、抗告をするか否かは付添人(弁護士)とよく相談しましょう。

第6 決定(少年の処遇)について

 家庭裁判所による審判手続によって、少年の処遇が決定されます。

 言い渡される処遇については、次の内容となります。

1 不処分

 不処分とは、審判の結果、「保護処分に付することができないとき」、または「保護処分に付する必要がないと認められるとき」になされるものです。

 非行事実が認められない場合や、再非行の危険性がないと判断される場合などに、不処分の決定が言い渡されることがあります。

2 保護処分

⑴ 保護観察

 保護観察とは、少年の居住環境等を変えずに指導監督、補導援護により、少年の改善、更生を図る社会内処遇のことをいいます。

 保護観察には、一般保護観察、一般短期保護観察、交通保護観察、交通短期保護観察の4つがあります。

 種類対象実施期間
一般保護観察②~④以外の者20歳まで (2年に満たない時は2年)
2一般短期保護観察反社会集団に加入しておらず、非行性、資質、環境の問題点が大きくない者 (処遇勧告を受けた者)6~7か月
3交通保護観察④以外の交通事件の少年6か月以降で解除を検討
4交通短期保護観察交通事件の少年で一般非行性が乏しく集団処遇に参加できる者 (処遇勧告を受けた者)3~4か月

 

⑵児童自立支援施設・児童養護施設送致

 児童自立支援施設、児童養護施設送致は、少年を施設に収容する点で少年院送致と同じですが、閉鎖施設の少年院と異なり、開放施設です。

 非行性はそれほど進んでいないが、親からの虐待が背景にあるなど家庭環境の問題が大きい場合に、この処分が選択されることがあります。

 比較的低年齢の少年について、開放的な福祉施設での生活指導が相当と認められたときに選択される決定です。

 児童自立支援施設児童養護施設
対象不良行為またはそのおそれのある児童、家庭環境等から生活指導を要する児童保護者のいない児童、虐待や生活環境等から保護者に監護させるのが適当でない児童
指導内容生活指導、学習指導、対処した児童への相談、自立支援など生活指導、学習指導、家庭環境の調整、対処した児童への相談、自立支援など
施設数58施設585施設
在員約1500人 (定員4000人)約3万人

⑶ 少年院送致

 再非行を犯すおそれが強く、社会内での更生が難しい場合に、少年を少年院に収容して矯正教育を受けさせることが相当と認められたときには、少年院送致が選択されます

3 検察官送致(いわゆる「逆送」)

 罪を犯した14歳以上の少年について、その事件の内容、心身の成熟度、性格、非行歴などから、刑事処分が相当と認められたときにされる決定です。

 調査の結果、少年が20歳以上であることが判明したときもこの決定がされます。

4 その他の場合

⑴ 試験観察

 審判の結果によっても、処遇選択をするにはまだ資料が不足していると思われる場合、少年をある程度の期間、調査官に少年の様子を見極めさせる試験観察に付することができます。

 試験観察を終え、再度審判が開かれ、処遇が決定します。

⑵ 児童福祉機関送致(児童福祉手続)

 18歳未満の少年について、児童福祉機関の指導にゆだねるのが相当と認められたときにされる決定です。

 前述の家庭裁判所の児童自立支援施設等送致が保護処分であるのに対し、この児童福祉機関送致(児童相談所長送致)は児童福祉法上の措置という違いがあります。

家庭裁判所への送致後
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