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侵入強盗致傷の少年院送致で、抗告審が短期処遇を付したケース

家庭裁判所(原審)が、住居への強盗致傷事案について、第1種少年院の収容を「短期とするのは不適当」と判断しました。

しかし、本件の東京高裁(抗告審)が少年院の収容期間は「短期処遇が相当」として、家庭裁判所の判断を覆しました。

本件は、家庭裁判所(原審)の長期処遇が、高等裁判所(抗告審)で短期処遇に変更される、数少ない事例といえます。

1 事案の概要 ~ 東京高裁令和2年7月16日決定

本件は、少年が共犯らと共謀して、深夜に一般民家へ侵入した強盗致傷の事件です。

被害者である高齢女性に対し、馬乗りになり口を手で塞ぎ、両足を養生テープで縛るなどして、現金約1万6500円とリュックサック(時価約1万7600円)を奪い、被害者に肋骨骨折などの全治約2か月の傷害を負わせました。

また、その直後に刃体長約7.07cmのカッターナイフを正当な理由なく携帯していました。

なお、犯罪グループは、SNSの闇サイトを介した集団で、少年の友人1名を除くと、他の共犯者らとは、本件犯行以外でのつながりはありませんでした。

2 裁判所の判断

1 家庭裁判所(原審)の判断

  • 少年の行為は非常に粗暴かつ危険で悪質性が高い。
  • 報酬欲しさに重要な役割を果たし、犯行後もカッターナイフを所持し続けたことは悪質。
  • 主体性・自律性に乏しく、周囲に同調しやすい性格が不良交友や逸脱行動に繋がった。
  • 保護処分歴はないが、社会内での更生は困難であり、少年院収容による矯正教育が必要。
  • 第1種少年院送致とするが、短期の処遇勧告は付さない

この原審に対して、付添人(弁護士)は、主に以下の点を指摘して抗告をしました。

①少年の計画段階での関与は皆無で、かつ、実行でも侵入時に窓を割る行為や被害者の傷害の原因となる身体の抑え込み、被害品の強取行為といった中心的な行為は他の共犯者らが行っており、少年は従属的な関与であったこと、
②両親による被害弁償がなされていること、
③鑑別結果通知書や少年調査票によると、短期集中的な矯正教育によって一定の改善が見込まれると指摘されていること等。

2 東京高等裁判所(抗告審)の判断

結論

家庭裁判所の決定(第1種少年院送致)の処遇判断自体は妥当と認め、抗告を棄却。

ただし、収容期間の長期処遇判断は合理性を欠くとして、短期処遇が相当であると判断しました。

理由

(1) 少年の保護処分歴の有無

  • 少年には保護処分歴がなく、これまでの非行歴も軽微であった。
  • 重大な非行は今回が初めてであり、再非行の可能性は限定的と評価。

(2) 少年の素行の乱れと非行性の程度

  • 少年の素行の乱れは比較的最近のものである
  • 不良な価値観の取り入れが進んでいるとは認められず、急激な非行性の深化は見られない

(3) 反省と更生への意欲

  • 少年は反省の態度を示しており、事件をきっかけに自己の行動を振り返る姿勢がある。
  • ただし、自己の責任の大きさへの十分な理解は不十分であり、更なる反省が必要とされた。

(4) 保護環境(家庭環境)

  • 少年と両親の関係は良好であり、両親も更生への強い意欲を示していた。
  • 両親は示談金の支払いなどに積極的に関与し、家庭での指導環境の改善が見込まれた。

(5) 示談の成立

  • 被害者との間で示談が成立しており、少年や両親が被害弁償に真摯に取り組んでいた。
  • ただし、示談成立によって非行の重大性が軽減されるものではないと判断。

3 原審と抗告審の評価の違い

少年の非行の程度の評価の在り方、保護環境についての分析、評価が、結論を分けたものと思われます。

少年に対する収容処遇の場合には、少年の自由を拘束するものであることから、謙抑的な運用が行われています。

特に本件のように、鑑別結果の処遇意見と異なる処遇選択をする場合には、鑑別結果の根拠が不十分であることを強く示すことが求められます。

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