保護観察中の遵守事項違反から施設送致(少年院)となった事例
本件は、保護観察中の生活において、無断外泊や深夜はいかい(深夜の歩き回り)の禁止などの定められた遵守事項を守らなかったため、保護観察所長が家庭裁判所に対して、本人を施設(少年院等)に送致する決定を求め、家庭裁判所が試験観察を経た後で、少年院送致を決定しました。
本件では、少年院送致の決定前に、「社会内で改善更生を図ることができるかを見定めるため」として試験観察決定(身柄付き補導委託。少年法25条)がなされました。
「保護観察の保護処分によっては本人の改善及び更生を図ることができない」といえるのかの判断のため、試験観察決定が活用されています。
施設送致申請事件においては、一般保護事件と比べかなり積極的に試験観察が活用されています。
1 施設送致申請とは?
施設送致申請とは、家庭裁判所の決定により保護観察に付された少年(本人)が、①保護観察所長から遵守事項を遵守するよう警告を発せられたにもかかわらず、なお遵守事項を遵守せず、②その程度が重いときに、保護観察所長が、家庭裁判所に対し、本人を施設に送致する決定をするよう求める申請のことをいいます(🔗更生保護法67条2項)。
本件の少年は、本件申請の約1年前に保護観察に付され、一般遵守事項として、「保護観察所の長に届け出た住居…に居住すること」、「転居又は7日以上の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察所の長の許可を得ること」、特別遵守事項として、「深夜にはいかいしたり、たむろしたりしないこと」を設定されていました。
もっとも、保護観察官から複数回注意を受けても長期無断外泊を繰り返して居住すべき住居に居住せず、その間に深夜はいかいを繰り返すなどしたので、保護観察所長から遵守事項違反につき警告(更生保護法67条1項)を受けました。
しかし、少年は、警告から間もない時期であるにもかかわらず、無断外泊を続けて居住すべき住居に居住せず、深夜はいかいをしました。
これに対し保護観察官から厳重注意を加えられても、引き続き居住すべき住居に居住せず、深夜はいかいを繰り返します。
そのため、保護観察所長は、保護観察による更生では無理だと判断し、更生保護法67条2項に基づき、本件施設送致申請をしました。
今回ご紹介する決定は、その申請に対する決定となります。
2 事案の概要 ~ 施設送致の経緯(大阪家裁堺支部平成30年5月10日決定)
少年は、平成28年△月×日○○家庭裁判所において保護観察決定を受け、一般遵守事項として「保護観察所の長に届け出た住居…に居住すること」、「転居又は7日以上の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察所の長の許可を得ること」等、特別遵守事項として「深夜にはいかいしたり、たむろしたりしないこと」等の設定を受けたが、平成29年△月頃から長期無断外泊を頻繁に繰り返し、居住すべき住居に居住せず、その間に深夜はいかいを繰り返しました。
そのため、少年は、同年△月×日、前記一般遵守事項及び特別遵守事項を遵守しなかったことについて○○保護観察所から警告を受けたが、それにもかかわらず、外泊を続けて居住すべき住居に居住せず、遵守事項違反を反復していました。
同年△月初旬には一時的に改善が認められたものの、その後は再び無断外泊等を繰り返すようになり、同年△月×日にも保護観察官からの改善指導を受けたにも関わらず、同月×日から同月×日に帰宅するまでの複数回において、それぞれ外泊をして居住すべき住居に居住せず、深夜はいかいを繰り返し、警告にかかる遵守すべき事項を遵守しませんでした。
2 裁判所の判断
1 主文
施設送致申請事件につき、少年を第1種少年院に送致する。
2 処遇の理由
少年は、前記のとおり、保護観察所から度重なる注意を受けても、健全な社会生活を維持することができずに友人との夜遊びを中心とした怠惰な生活を繰り返し、遵守事項に何度も違反したことから、本件施設送致申請を受けるに至っている。
こうした本件の経過自体、前述した少年の各問題性の大きさや、保護観察の継続による改善更生の困難さを物語るものであるが、少年には、これに加えて、以下のとおりの事実も認められる。
すなわち、当裁判所は、少年が定められたルールを守り社会内処遇で改善更生を図ることができるかを見定めるために少年を○○市内の委託先での身柄付き補導委託に付した。
ところが、少年は、そうした枠組みの下でもなお、無断で○○の保護者宅に戻り委託先を欠勤する、自己の注意不足で勤務日を休みの日と勘違いして欠勤し、試験観察の遵守事項に違反して委託先の元研修生と遠方で遊び深夜に委託先に帰る、注意されても遅刻を繰り返す、友人を呼びよせて遊んだ後、警察に保護されるまでの2週間以上にわたって所在不明となる、といった行動に及んだ。
また、少年は、これらに関し、自己の問題を矮小化し、自分が委託先という両親や信頼できる友人が近くにいない寂しい環境に置かれていたことが原因であって今後実家にいれば寂しくないので職場から逃げたりもしないと思うといった趣旨の供述をするなど、認識は非常に甘い。
このように、少年は、補導委託となる前に保護者がそばにいる環境においても仕事中心の生活を送ることができずに夜遊びを繰り返していたことや、補導委託中に少年の都合による無断欠勤や度重なる遅刻、遵守事項違反等の問題行動を繰り返したことについての、自己の問題点に目を向けることができていない。
遵守事項や社会のルールを破ることに対しての認識の甘さも顕著である。
また、少年の保護者も、少年に甘く、以前の少年と比べればよく頑張っているということのみを過大に強調しがちであり、少年に対する強い指導は期待できない。
こうしたことからすれば、矯正教育によって少年の問題性を改善することのないままに保護観察を継続しても、社会に適応することができなくなって遊興中心の生活に陥り再非行に陥るなどする危険が高く、少年が抱える問題性を社会内で改善していくことは困難といわざるを得ない。
以上の諸事情を総合考慮すると、本人の遵守事項違反の程度は重く、保護観察によっては本人の改善及び更生を図ることができないものと認められる。
少年には、少年院において、十分な規範意識を身に付けさせるとともに、これまでの行動や生活を見直させながら、社会生活を送る上での責任を自覚させ、健全な社会生活を維持できるだけの能力を会得させる必要がある。
もっとも、少年が補導委託後約3か月間にわたり遅刻等をしながらも就労を継続していたこと自体については評価すべきであること、少年には重大な犯罪に傾倒する傾向は認められず、非行性が特に進んだ状態とはいえないことからすれば、短期間の収容によっても所期の目的を達し得ると考える。
3 本件のポイント
施設送致申請の基準
更生保護法67条2項に基づく施設送致申請は、保護観察中の少年が遵守事項を守らず、その程度が重大である場合に行われます。
本件では、複数回の注意や警告があっても改善が見られなかった点が決定に大きく影響しています。
試験観察の役割:
審判前に試験観察(身柄付き補導委託)が行われたことが特徴的です。この手続きは、保護観察の継続可能性を慎重に見極めるためのものです。
試験観察中の少年の行状(無断外泊や遅刻、規律違反)が第1種少年院送致の判断に寄与しました。
再非行のリスク
少年が改善の兆しを見せないまま保護観察を継続すると、再非行に陥るリスクが高いと判断されました。
矯正教育を通じて社会生活に必要な規範意識を身につけさせることが必要とされました。