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美人局による恐喝保護事件により第1種少年院へ送致された事例(送致に対する抗告棄却)

いわゆる美人局によって恐喝をした少年が、第1種少年院送致された事例を紹介します。

付添人(弁護人)からは、家庭裁判所に送致されていない余罪(バイクによる共同危険行為)を認定していることから、審理の対象になっていない事件を認定して考慮することが不当だと抗告を申立てましたが、棄却されました(棄却により、少年の少年院送致が確定しました)。

1 事案の概要 ~ 東京高裁平成29年12月19日決定

少年が、共犯少年2名と女性1名と共謀し、出会い系サイトで知り合った被害者と性交させて、それをもとに被害者から金品を恐喝しようと企てました。

そして、路上で被害者を取り囲んで、胸ぐらをつかみ、「俺の彼女に何してくれてんだよ。2人になれるとこに行こうか。」などと言って、別の場所に連れていき、「てめえ、何してくれてんだ。金いくら持ってんだ。財布の中身確認してみろよ。」など、語気強く金品の交付を要求して被害者を怖がらせ、被害者からキャッシュカード1枚、クレジットカード1枚を恐喝しました。

2 裁判所の判断(東京家裁・高裁)

1 原判決(東京家裁の判断)

本件非行は、いわゆる美人局であって、被害者の負い目に付け込む悪質な非行です。

少年は、共犯少年らと遊んでいるときに美人局を持ちかけられると、やりたくない気持ちもありつつも、嫌われたくない、度胸がないと思われるのが嫌だ、という気持ちから本件非行に加わりました。

少年は、美人局を内容とする恐喝保護事件で試験観察を経て保護観察決定を受け、その保護観察中であったにもかかわらず、過去に一緒に窃盗保護事件を起こした共犯少年と夏祭りで再会すると、交際を復活させ、△月×日には同人を含めてバイクで共同危険行為に及び、その6日後に本件犯行に及びました。

このような経緯に、不良顕示的な考えから抜け切れず、規範意識も十分でなく、目先の楽しさを求め、安易な方向へ流れる少年の問題点が顕著に表れています。

少年は、前件保護観察決定後、保護司と連絡を密に取るなど指導に従う姿勢を示していたことは評価すべきであるが、保護観察によっては少年の問題が改善できなかったことは処遇上重視すべきです。

また、前件の試験観察時にも、終盤生活の乱れが見られたことを考える必要があります。

そうすると、本件は共犯少年から持ちかけられた話であり、被害者と距離を取るなど少年の関与には消極的な面が見られること、少年が交友関係を見直すことを決意していること、担当保護司の紹介により就労先が確保されていること、少年の両親転居を含めた更生のための具体的手立てを考えていることといった原審付添人指摘の事情を考慮しても、在宅処遇はもはや有効とは言い難いです。

今回は、少年を第1種少年院に収容し、非行や不良交友、不良顕示的価値観に対する抵抗感を持たせ、責任感を養うような教育を行うことが必要です。

2 東京高裁の判断(付添人の抗告に対し)

上記東京家裁の判断に対し、付添人(弁護士)は、本件非行に至る経緯の一つの事情としてバイクの共同危険行為を認定しているが、同事実は非行事実として送致されておらず、審理の対象にもなっていないとして抗告を申立てました。

これに対して、東京高裁は、「原決定を見れば、所論指摘の共同危険行為について触れた部分が、本件非行に至った経緯から窺われる少年の行動傾向等の問題性を表す一事情として指摘されているに過ぎないものであることは明らかであり、原決定が、これを実質的に審判対象として扱ったとも、処遇選択のための重要な事実と評価したとも認められないから、所論は理由がない。」として、抗告を棄却しています。

さらに以下のように、少年院送致が妥当である理由を付加しています。

「一件記録に照らせば、本件における処遇選択上最も重要視すべきなのは、いわゆる美人局を内容とする同種事案で試験観察を経て平成29年△月に保護観察に付されていた少年が、その決定後6か月足らずの保護観察期間中に、再び美人局を内容とする悪質な本件非行に及んだという点にある。

この事情は、それだけで少年の要保護性の高さや、もはや在宅処遇は少年の更生に向けた有効な選択手段足り得ないことを強く推認させる。

所論に鑑み更に検討するに、本件非行において、少年が、直接の脅迫や金品要求はしておらず、被害者から距離を取るように行動していたといった関与に消極的な面があるととは確かであるが、上記の同種事案で保護観察中であったのに、安易に共犯少年らに加担して同種の非行を繰り返したという経緯から窺われる少年の問題性は大きいし、少年に対する調査および鑑別結果において、少年に、交友関係で不良性を誇示して自分を強く見せようとする態度が依然として強く、虚勢や見栄を張るところがあること、その場の雰囲気に流されて行動し、その責任や後先のことを十分に考えようとしない傾向があること、非行に対する抵抗感が依然として希薄であることといった点が指摘されていることも踏まえれば、少年の要保護性の程度は高い。

更に、前件の保護観察に対する少年の姿勢には一定程度評価すべき点があるとはいえ、結局本件非行に至っていることや、既に述べてきたところに照らせば、少年の更生を図るためには、在宅処遇ではなく、施設に収容して教育を行う必要がある。

3 少年審判についての解説

少年保護事件における審判の対象は、非行事実要保護性の双方です。

少年審判の対象は、非行事実と要保護性です。
少年審判の対象

審判の対象となる要保護性とは、犯罪的危険性矯正可能性保護相当性の3つの要素で構成されます。

要保護性は、犯罪的危険性、矯正可能性、保護相当性の3つにより構成されています。
「要保護性」の3つの要素

少年保護手続は、再非行の危険性の解消を目的とします。

少年に対して、どのような保護処分がふさわしいかを検討するにあたっては、その少年の非行性、つまり少年の現在の性格、環境に照らして、将来再び非行に陥る危険性犯罪的危険性)を解消するために必要な処分を選択することになり、また、保護処分により犯罪的危険性を解消できる可能性矯正可能性)が少年に認められ、さらに少年の処遇にとって保護処分が最も有効・適切な手段であること保護相当性)が認められることが必要と考えられます

要保護性の中核をなすのは犯罪的危険性で、その有無・程度の判断に際しては、非行時の対応と回数、原因・動機、共犯事件における地位と役割分担、非行発年齢、補導歴・非行歴の有無、家庭裁判所における保護処分歴の有無、心身の状況、知能・性格、反省の有無、保護者の有無と保護能力、職業の有無・種類やそれまでの転職回数、学校関係、交友関係、反社会集団との関係の有無、家庭環境、地域環境、行状一般等の事情を総合して判断されるべきものとしています

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