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契約書に暴力団排除条項(暴排条項)や反社会的勢力の排除などという文言を目にしますが、実際にこの条項を適用したり、この条項が問題になった場面を経験したことがありません。
このような暴力団排除条項や反社会的勢力の排除を規定する条項は、契約書の中に盛り込む具体的な意義は何でしょうか。
意義がある場合には、どのような内容があれば良いでしょうか。
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Answer
契約書に暴力団排除条項(暴排条項)や反社会的勢力の排除の条項を設ける意義は、
- 暴力団等との取引関係が生じてしまった場合に、事後的に契約を解消する根拠になってくれます
- 暴力団等と交渉する際のツールになってくれます
- そもそも暴力団との取引関係の発生自体を防止する効果があります
- 取引から排除する対象を明確にすることで、警察からの情報提供も受けやすくなります、
- 契約の当事者が暴力団関係者に該当しない旨の確約をさせる条項(表明確約条項)を規定すれば、契約の相手方が暴力団や反社会的勢力に該当しないことの確認の一助になります、
- 多くの暴排条例において事業者の努力義務として、契約の相手方が暴力団等でないことを確認すべき義務や、暴排条項を契約書に盛り込むべきが規定されていますので、企業のレピュテーションリスクへの対策にもなります、
などが挙げられます。
このように、暴力団との関係を遮断するうえで、暴排条項の導入は最重要の対応項目となります。
暴排条項を定める上では、以下のような内容があることが望ましいです。
- 排除対象者
☑暴力団関係者の定義は適切なものになっているか
- 表明確約条項
☑暴力団関係者に該当しないことの表明確約条項はあるか
- 無催告解除
☑相手方等関係者が暴力団関係者であった場合に本契約を無催告で解除できるような条項になっているか
- 関連契約からの解除
☑本契約の関連契約の関係者に暴力団関係者がいる場合に、是正措置をとることができるような条項になっているか
☑この是正措置を拒否された場合に本契約を解除することができるような条項になっているか
- 不動産取引の場合
☑契約対象物件を暴力団事務所として使用することを禁止する条項があるか
☑この禁止規定に反した場合に本契約を無催告で解除できる、または買戻しすることができるようになっているか
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1 暴力団排除条例の状況
多くの暴排条例において、事業者の努力義務として暴排条項を契約書に盛り込むべき義務が規定されています。
たとえば、東京都暴力団排除条例では、18条において、事業者が取引に際して契約を取り交わす場合に、契約の相手方や代理人、契約締結を媒介する者その他の関係者が暴力団関係者に該当しないことを確認すること、相手方等が暴力団関係者に該当する場合の無催告解除条項を契約書に規定すること等を求めています。
また、特に不動産取引の場合は、当該不動産を暴力団事務所として利用されないように確認すべきものとされ、暴力団事務所として使用していることが判明した場合等には、契約を無催告解除できることを契約書に規定するよう求めています(都条例19条)。
暴力団排除条項について、暴追センターにアップされている雛形を添付します。
暴追センターHPより引用
2 暴排条項の内容について
⑴ 排除対象者として規定する者
全銀協の暴力団排除条項参考例では、以下の8つの類型に属する者を反社会的勢力と規定しており、参考にすると良いと思います。
- 暴力団
- 暴力団員
- 暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者
- 暴力団準構成員
- 暴力団関係企業
- 総会屋等、社会運動等標ぼうゴロまたは特殊知能暴力集団等
- その他これらに準ずる者
- その共生者5類型
「5年」の根拠について
貸金業法(6条1項6号)や廃棄物の処理及び清掃に関する法律(14条5項2号)など、17の業法において、暴力団員ではなくなってから5年を経過しない者を一律に業の主体から排除しています。
契約自由の原則が働く民間企業において、暴力団員をやめて5年以内の者を取引から排除することは、このような法律が5年以内の者の危険性を認めている裏付けでもありますので、それに倣うことには合理性があるといえるでしょう。
共生5類型
共生5類型とは、以下に該当する場合には、その者が類型的に暴力団に便宜を図り、その威力等を利用し自己の利益を拡大させるいわゆる「共生者」の類型に該当し、まさに「暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有する」と言えます。
- 暴力団員等が経営を支配していると認められる関係を有すること
- 暴力団員等が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること
- 自己、自社もしくは第三者の不正の利益を図る目的または第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に暴力団員等を利用していると認められる関係を有すること
- 暴力団員等に対して資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること
- 役員または経営に実質的に関与している者が暴力団員等と社会的に非難されるべき関係を有すること
⑵ 表明確約保証
取引相手の属性確認は、属性審査業務を通じて行います。この審査業務の一環として表明確約条項を契約書に盛り込みましょう。
この表明確約条項は、これに違反した場合の契約解除がより行いやすくなるだけでなく、虚偽の表明確約を行うことによって取引関係に入ったものとして詐欺罪として刑事立件できる場合もあり、その意味でも暴力団関係者との契約締結の抑止力は大きいものです。
⑶ 無催告解除条項
都条例18条2項1号は、契約書によって契約を締結する場合には、契約の相手方が暴力団関係者と判明した場合には、無催告で解除できる条項を定めておくことを努力義務としています。
無催告解除が認められるのは、一般的に、重大な義務違反がある場合や催告をするのが無駄である場合、継続的取引契約において信頼関係が破壊された場合などがありますが、相手方が反社会的勢力に該当した場合には、そもそも催告することが無駄であり、その事実自体が信頼関係を破壊するものといえます。
⑷ 関連契約からの排除
都条例18条2項2号・3号は、直接の取引先だけでなく、その下請人等の関連契約の相手方等が暴力団関係者と判明した場合には、関連契約の解除等の措置を講じるよう求め、求めに応じない場合には本契約解除できるよう求めています。
関連契約とは、下請け契約の他には、本契約に関連して相手方が締結する業務委託契約等が考えられます。
(条項サンプル)
甲又は乙が、本件契約に関連して、第三者と下請又は委任契約等(以下、「関連契約」という。)を締結する場合において、関連契約の当事者又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、甲又は乙は相手方に対し、当該関連契約の解除その他の必要な措置を講ずるよう求めることができる。 |
⑸ 不動産取引の場合
都条例19条では、特に不動産取引において、都内に所在する不動産を譲渡、貸付、あるいは地上権の設定をする場合に、取引対象不動産が暴力団事務所に使用されないことを事前に確認すること、不動産が暴力団事務所に使用された場合には契約を無催告解除または買戻しできる条項を定めておくべきことも定めています。
これは、売買、賃貸された不動産が暴力団事務所に利用された場合には、周辺住民に著しい悪影響を及ぼすことになるため、その防止策として求められています。
そのため、不動産の使用目的を相手方から聴取して記載させたり、暴力団関連での使用が確認された場合には、無催告解除または買戻しができる条項を設ける対策が求められます。
【参考】東京都暴力団排除条例
(事業者の契約時における措置)
第18条
事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。
2 事業者は、その行う事業に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする。
一 当該事業に係る契約の相手方又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は催告することなく当該事業に係る契約を解除することができること。
二 工事における事業に係る契約の相手方と下請負人との契約等当該事業に係る契約に関連する契約(以下この条において「関連契約」という。)の当事者又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は当該事業に係る契約の相手方に対し、当該関連契約の解除その他の必要な措置を講ずるよう求めることができること。
三 前号の規定により必要な措置を講ずるよう求めたにもかかわらず、当該事業に係る契約の相手方が正当な理由なくこれを拒否した場合には、当該事業者は当該事業に係る契約を解除することができること。
(不動産の譲渡等における措置)
第19条
都内に所在する不動産(以下「不動産」という。)の譲渡又は貸付け(地上権の設定を含む。以下「譲渡等」という。)をする者は、当該譲渡等に係る契約を締結するに当たり、当該契約の相手方に対し、当該不動産を暴力団事務所の用に供するものでないことを確認するよう努めるものとする。
2 不動産の譲渡等をする者は、当該譲渡等に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする。
一 当該不動産を暴力団事務所の用に供し、又は第三者をして暴力団事務所の用に供させてはならないこと。
二 当該不動産が暴力団事務所の用に供されていることが判明した場合には、当該不動産の譲渡等をした者は、催告することなく当該不動産の譲渡等に係る契約を解除し、又は当該不動産の買戻しをすることができること。