1 電子消費者契約法とは

正式には、「電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律」といいます。

第1条と第2条が趣旨と定義のため、事実上「第3条」の1つのみの法律です。

この法律は、ネット取引でうっかりミスをしてしまった消費者を救済するために設けられた法律です。

2 どのような内容が規定されているか

消費者がマウスなどの機器の操作を誤って、意図しない申込みをしてしまうことがあります。
そのような場合は、民法95条の錯誤規定によって、契約は取り消せます。

しかし、民法の規定では、事業者から、消費者に「重大な過失」がある場合には契約は有効であるとの主張ができることになります。

このため、BtoCの電子商取引においては、消費者がこのようなミスを起こさないよう、事業者側に申込み内容などの意思確認をするための措置を設けるようにさせています。

仮に事業者が、適切な意思確認措置を設けていない場合には、消費者は契約を取り消せることにしました。

(電子消費者契約に関する民法の特例)
第3条 
民法第95条第3項の規定は、消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について、その意思表示が同条第1項第1号に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであり、かつ、次のいずれかに該当するときは、適用しない。ただし、当該電子消費者契約の相手方である事業者(その委託を受けた者を含む。以下同じ。)が、当該申込み又はその承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、その消費者の申込み若しくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合は、この限りでない。
一 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該事業者との間で電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行う意思がなかったとき。
二 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる内容の意思表示を行う意思があったとき。

3 事業者に求められる「確認を求める措置」とは、どのようなものでしょうか

 具体的には、

① 確定的な申込みとなる送信ボタンが存在する同じ画面上に意思表示の内容を明示し、当該ボタンをクリックすることで申込みの意思表示となることを消費者が明らかに確認することができる画面を設定すること


② 確定的な申込みとなる送信ボタンを押す前に、申込みの内容を表示し、そこで訂正する機会を与える画面を設定すること

が考えられます。

現在、一般的に②の方法により、入力画面とは別に「最終確認画面」として申し込みの内容を表示し、そこで訂正する機会を与える画面を設ける仕組みが主流になっています。

そのため、「最終確認画面」が表示されることが一般化され、入力画面上のボタンのクリックは最終的な意思表示ではないと消費者が思い込む可能性が高まっている実情を踏まえるならば、①の方法は、ユーザー目線に立っているとは言い難く、法律的な問題はないとはいえ、推奨できるものではありません。

4 確認を求める措置が「必要がない旨の意思の表明」(3条)とは

電子消費者契約法において、事業者が確認を求める措置を講じた場合だけでなく、消費者がそのような措置を必要ないと事業者に明らかにした場合には、その消費者に対して事業者は「重大な過失」があることを主張することができるようになります。

しかし、この「意思の表明」とは、消費者がその自主的な判断により、自ら積極的に確認措置の提供が必要ではないことを事業者に明らかにするという趣旨で、その認定は慎重になされます。

具体的には、「確認画面がなくてもよい場合にはこちらをクリック」というように確認画面が不要である旨の文章を記載したボタンをクリックさせることまで最低限必要となり、「確認措置を必要としない旨表明します」というボタンをクリックしなければ商品を購入できない場合のように、事業者が意図的に誘導しているような場合には「意思の表明」には該当しません。

さらに、意思の表明の有無については、事業者が主張立証責任を負担しています。

そうすると、本条項の適用を想定する設定については、実務上消極的にならざるを得ないものと考えます。

ネットショップで購入する際に、注文内容の確認画面が出てきますが、それもこの法律に基づいた行為だったのですね!