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家族のクレジットカードやETCカードを使うと犯罪?名義人の承諾があっても詐欺罪になるケースを解説

家族や知人のクレジットカードやETCカードを、本人の了承を得て利用したことはないでしょうか。

「承諾があるのだから問題ないはず」と考えがちですが、近年の裁判例では、名義人の承諾があったとしても詐欺罪や電子計算機使用詐欺罪などの成立が問題となった事例もあります。

本記事では、平成16年最高裁判例を出発点として、近時のクレジットカード・キャッシング・ETCカード利用に関する裁判例を整理し、刑事責任が問題となる場面や弁護活動のポイントについて解説します。

※ 本記事は、一般的な考え方や運用等をご紹介するもので、全てに賛同するわけではありません。

※ また、公開日の情報を基に作成しています。

目次

家族名義のクレジットカードやETCカードを利用する際の法的リスク(詐欺罪など)と関係性を示した概念図
名義人の承諾があっても、店舗やシステムに対しては「なりすまし」となり、法的リスクが生じ得ます。

1 他人のカード利用を巡る法的諸問題

(1) 問題の所在|なぜ「承諾」があっても犯罪になり得るのか

ア カードシステムの「個別の信用」と「同一性」

クレジットカードやETCカード、キャッシュカードを用いた取引は、カード会社や金融機関が「カード名義人本人」に対して与えた個別の信用を基礎としています。

会員規約上、カードの所有権は発行会社に帰属し、会員は善良なる管理者の注意をもってカードを管理し、他人に貸与・譲渡することは厳格に禁じられています。

イ 加盟店・金融機関の保護

カードを利用して商品を購入する際、加盟店は「提示者が名義人本人であること」を前提に商品を交付します。

また、ATMでのキャッシングや、ETCレーンの通過においても、システム側は「正当な権限を有する名義人が利用している」という前提で事務処理を行います。

この前提が崩れる場合、加盟店や金融機関に対する欺罔(あざむくこと)や、システムへの虚偽情報の入力が問われ得るという理屈になります。

(2) 適用され得る主な条文

ア 詐欺罪(刑法246条1項)

「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。」。

クレジットカードを加盟店で提示して買い物をした際に適用され得ます。

イ 電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)

「人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不当な指令を与えて……財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り……財産上不法の利益を得……た者は、十年以下の懲役に処する。」。

ETCカードの利用や、オンライン決済に適用され得ます。

ウ 窃盗罪(刑法235条)

「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」。

ATMから現金を引き出す行為に適用され得ます。

(3) 家族カードとの違い

ア 家族カードとは

なお、クレジットカードを利用している方であれば、「家族カード」という制度を耳にしたことがあるかもしれません。

家族カードは、カード会社が家族による利用を前提として正式に発行するカードです。

家族カード会員は、カード会社の定める手続を経て登録されており、規約上も利用が認められています。

イ 本人名義のカード貸与とは法的に異り得る

これに対し、本会員名義のクレジットカードそのものを家族に貸して利用させる行為は、多くのカード会社の会員規約では禁止されています。

そのため、「家族が使った」という点は同じでも、本記事では、家族カードの利用と本人カードの貸与は法的に異なる問題として整理します。

ウ 本記事で問題とする場面

本記事で問題とするのは、家族カードではなく、名義人本人に発行されたカードを他人が利用する場面を前提としています。

この場合、名義人の承諾があった場合であっても、刑事責任が問題となり得ます。

2 学説における議論の状況

(1) 積極説(詐欺成立を肯定する見解)

クレジットカードシステムは名義人本人の個別的な信用を基礎としているため、名義人を偽る行為自体が、加盟店に対する欺罔行為にあたるとする考え方です。

名義人の承諾の有無にかかわらず、加盟店が「名義人本人でないと分かっていれば商品を交付しなかった」といえる限り、詐欺罪が成立すると考えます。

(2) 消極説(詐欺成立を否定・制限する見解)

カード会社への代金決済が滞りなく行われるのであれば、加盟店に実質的な財産的損害はないとして、形式的な名義の偽りだけで処罰することに慎重な考え方です。

同一生計の親族間での利用などは、名義人本人の利用と同視しうるとして、実質的違法性が欠ける(処罰に値しない)とする見解もあります。

3 平成16年最高裁判例の解説

(1) 事案の概要:名義人に成り済ましたガソリン給油

ア 事件の背景

被告人は、知人から預かった(あるいは不正に入手した)他人名義のクレジットカードを用い、ガソリンスタンドで従業員に対し名義人本人であるかのように装って給油を受け、売上伝票に署名しました。

イ 被告人の主張

被告人は、カードの使用について名義人(あるいは預かっていた人物)から許諾を得ていた、あるいは得ていると誤信していたと主張しました。

(2) 最高裁判所の結論(平成16年2月9日第二小法廷決定)

ア 判断の要旨

最高裁は、カード規約上名義人のみが利用可能であり、加盟店に本人確認義務が課されている事実関係の下では、

「被告人は,本件クレジットカードの名義人本人に成り済まし,同カードの正当な利用権限がないのにこれがあるように装い,その旨従業員を誤信させてガソリンの交付を受けたことが認められるから,被告人の行為は詐欺罪を構成する。仮に,被告人が,本件クレジットカードの名義人から同カードの使用を許されており,かつ,自らの使用に係る同カードの利用代金が会員規約に従い名義人において決済されるものと誤信していたという事情があったとしても,本件詐欺罪の成立は左右されない。

と判示しました。

イ 結論

有罪(詐欺罪成立)

名義人の承諾の有無という「内的な事情」よりも、加盟店に対する「外的な偽り(名義の詐称、名義人本人であるとして正当な利用権限があるように装う行為)」が重視された点に留意を要する判決です。

(3) 平成16年判例で残されていた課題

平成16年決定は事例判断であり、名義人以外の者がカード等を利用した場合でも、詐欺罪の成立が否定される場合があり得るかは課題として残されたままになっています。

平成16年決定の判例解説では、

  • 加盟店が、クレジットカードの使用者から名義人本人ではないことを告げられた上で、あえてその利用を許した場合には、少なくとも加盟店との関係では詐欺罪は成立しないと考えられる(因果関係や、欺罔行為がなく構成要件が否定される余地がある。)。
    • もっとも、加盟店は、名義人以外の者の使用を許すことは加盟店規約違反となることから、仮に黙認するとしても、その対象、は実際上、…名義人の配偶者等に限られる。
  • そうではない場合には構成要件該当性自体は否定し難く、実質違法性の問題として、個別具体的な事案に即して違法性阻却の有無の問題になる

という趣旨の整理がされていました。

その場合には、名義人との人的関係、クレジットカード使用の経緯、態様等の諸般の事情を総合考慮して考えることになると指摘されています。

4 その後の下級審判例の推移と最新動向

(1) キャッシングと窃盗罪(長崎地判令和6年9月4日)

ア 事案の概要

  • 被告人が、➀アプリで知り合った相手から同人名義のクレジットカードの交付を受け、②同カードを使用してATMでキャッシング機能を使って現金を引き出しました。
  • また、③別の機会にATM現金20万円を引き出した点も問われました。
  • ➀について詐欺罪、②・③について窃盗罪が問題になりました。
  • 裁判所は、欺罔行為を認定できないとして➀を無罪、相手が承諾をしていた可能性を否定できないとして、その前提で②・③について判断をしました。

イ 裁判所の判断

  • キャッシングについて|有罪(窃盗罪成立)
    • キャッシングは個別の信用に基づく新たな貸付であり、利用者と会員の同一性は金融機関にとって重要であるため、承諾があっても窃盗罪を構成するとされました。
  • 預金引き出し(キャッシュカード)について|無罪
    • 預貯金の引出しは、先に述べたキャッシングとは異なり新たな契約を締結するものではなく、口座残高を上限として、所定の払戻限度額の範囲で預貯金を引き下ろす行為
    • ATM管理者である金融機関…はATM機での現金の引出しに関しては、利用者の利便性や取引の大量処理に係る経済的効率性を重視し、…不正使用である場合等を除いて、所持人が所持しているカードが正規に発行されたカードであることや暗証番号の入力等の定型的な処理により…同一性を確認しカードの使用が名義人の意思に基づくことを確認することで、預貯金の引出しに応じているのが実情
    • ATM管理者は、当該口座内の現金が振込詐欺等の被害者が振り込んだものであるなど特別な場合については、別としても、そうでなければ、払戻権限のある真正なキャッシュカードが利用されていることを条件として、ATM機から現金を引き出すことを包括的に承諾していると解するのが相当である。

ウ 結論

  • キャッシングについては平成16年最決の趣旨を及ぼして有罪としつつ、単なる預金の払い戻しとは区別する判断を示しました。

(2) 家族間のETCカード利用と電子計算機使用詐欺罪

ア 大阪地判令和6年5月8日(有罪事例)

  • 概要
    • 同居する兄弟名義のETCカードを、名義人が同乗していない状態で使用し、虚偽の情報を与えたことで、高速道路の通行料金の割引を受け、財産上不法の利益を受けたとされた事案です。
      • カード利用者は暴力団員関係者とされています。
    • 高速道路営業規則には、以下のような規定がありました。
      • 「ETCカードによる高速道路の料金の支払いは、通行の都度、クレジットカード会社から貸与を受けている本人が乗車する車両1台に限り行うことができます。」という規定
      • 「当該ETCカードの名義人と異なる者が当該ETCカードを使用し、又は使用しようとした場合には、ETCカードによる料金の支払いの取扱いETCカードによる料金の支払いの取扱いを停止し、利用者に他の支払手段による支払いを求めることができる」という規定
    • クレジットカードのETC利用規定には、以下のような規定がありました。
      • 「ETCカードは、ETCカード上に表示された会員本人のみが利用することができる。」という規定
      • 「会員は、貸与されたETCカードを善良なる管理者の注意をもって使用・保管し、ETCカード上に表示された会員本人以外の者に、譲渡・質入その他の担保提供・貸与・寄託等のためにETCカードの占有を移転することはできない」という規定
  • 結論|有罪
    • 『虚偽の情報』(刑法246条の2)とは、電子計算機を使用する当該システムにおいて予定されている事務処理の目的に照らし、その内容が真実に反する情報をいう。
      • 利用料金を徴収する高速道路の管理会社及びETCカードの発行元である会社いずれも、本件ETCカードをカード名義人以外の者が使用することを禁止していること

        両社はETCカードの名義人以外の者がETCカードを使うことはできないとの共通認識を有していること

        等を指摘し、ETCシステムにおいて、名義人の同乗は事務処理の重要な前提であり、これを偽ることは「虚偽の情報」の提供にあたるとされました。
    • なお、可罰的違法性があるかという観点として、暴力団排除条項の潜脱という観点も指摘されました。
      • カード利用者は本来ETCカードを利用できないにもかかわらず、カード名義人のカードを利用することができた点を指すものと考えらえます。
      • なお、実際の料金は、利用者が名義人に代金を渡し、名義人の口座から引落される形で支払われていたようです。

イ 大阪地判令和7年1月14日(一審無罪事例)

  • 概要
    • 事実婚の妻名義のETCカードを、夫らが妻の同乗なしに使用した点について、電子計算機使用詐欺罪が問題になった事案です。
      • なお、利用した夫は暴力団関係者とされています。
    • 道路を管理する法人の高速道路営業規則やETCカードに関する利用規定には、おおむね大阪地判令和6年5月8日の事案のと同様の規定がなされていました。
  • 結論|無罪
    • クレジットカードと紐づくETCカードについて、クレジットカードの枠組みと同じく、基本的には名義人本人以外の使用は予定されていないとしました。
    • 他方、ETCカードの名義人本人の使用であることの確認が、クレジットカード使用の場合と同程度にはされておらず、…虚偽の情報を与えたか否かの判断に当たって、一定程度考慮すべき事情にはなるとしました。
      • その上で、同一生計を営む事実婚の夫婦間での本件ETCカードの貸与は、関係性のない第三者に対する貸与とは異なり、名義人本人に対する個別的な信用を基礎に信用を供与するクレジットカードシステムの趣旨に反するとは直ちにいえない等とし、(同一生計の範囲内で営む消費生活の一部として)名義人の使用と同視する余地も十分にあるもの等判断しました。
    • また、暴力団排除条項の潜脱については、名義人の同乗なく、ETCカードを使用したのは、…約3か月間で18日間であり、その頻度が特に高いものとは評価できない…暴力団員である者に利用させるため名義人本人の必要とは別にETCカードの発行を受けたという事情はないことから、暴力団排除条項を潜脱する意図で本件ETCカードを取得したものではなく、取得後の利用実態を踏まえても、暴力団排除条項の潜脱を専ら意図した使用がされてきたとは評価できないとしました。
    • 結論として、本件各行為が「本件各行為が処罰に値するだけの虚偽の情報を与えたものということはできない」としました。
    • 事実婚夫婦という密接な関係にあり、生活費も共通であったことから、「名義人本人の利用と同視しうる」とされました。また、同乗なしの利用が犯罪になる旨の周知が不十分である点も考慮されました。

ウ 大阪高判令和8年1月20日(差し戻し判決)

  • 概要|上記令和7年無罪判決の控訴審です。
  • 結論|一審破棄・差し戻し
    • 高裁は、暴力団の活動に伴う移動に使われていた点を重く見て、「夫婦間の貸し借りと単純に評価できない」と認定し、カードは不正利用されたと判断したとされています。
    • その上で、1審判決が判断していない争点があるとして、審理を差し戻しました。

5 弁護士から見た課題と実務対応

(1) 実務上の課題

ア 「成り済まし」の認定回避

平成16年最決の枠組みからすれば、加盟店に対面でカードを提示する際、「名義人本人である」と黙示的にでも表示したと認定されると、詐欺罪の成立(少なくとも構成要件該当性)を回避することは困難なのが実情です。

イ 電子計算機使用詐欺における「虚偽」の定義

ETC利用のように人を介さない取引では、システムの事務処理目的(誰を決済当事者とするか)に照らして、名義人の不適合がどこまで「虚偽」とされるかが争点となります。

ウ 可罰的違法性の壁

家族間での日常的な貸し借りが「一億総犯罪者」 を生むという批判がある一方で、暴力団関係者の利用など、別の不法な目的(暴排条項の潜脱等)が絡むと、裁判所は厳しく処罰する傾向にあります。

(2) 弁護士としての実務対応

ア 事実関係の緻密な分析

(a) 名義人と利用者の関係性(同一生計か、親族か)

(b) 利用の経緯と目的(日常的な買い物か、遊興費か)

(c) 決済状況(代金が遅滞なく支払われているか)

これらの要素を整理し、名義人本人の利用と同視できる特段の事情を主張することが考えられます。

イ 「欺罔行為」の否定

例えば、セルフレジでの利用や、あらかじめ店側に「家族のカードである」と告げていた場合など、店側を「名義人本人である」と誤信させる行為がなかったことを立証することが重要です。

ウ 情状弁護と示談

万が一、構成要件に該当すると判断される場合でも、名義人の確実な承諾があり、経済的実害が皆無であることを強調し、不起訴処分や執行猶予を目指すことが考えられます。

6 まとめ

クレジットカードやETCカードは、単なる決済手段ではなく、カード会社が名義人本人に与えた信用を基礎とする制度です。

そのため、名義人の承諾があったとしても、他人が利用した場合には詐欺罪、窃盗罪、電子計算機使用詐欺罪などが成立する可能性があります。

もっとも、同一生計の家族間利用などについては、近時の裁判例でも判断が分かれており、個別事情によって結論は大きく異なります。

少なくとも、ご家族のカードを利用したい場合は、正規の手続きで「家族カード」を発行することが、法的リスクを回避するうえで、望ましいといえるでしょう。

他人名義カードの利用について警察から事情聴取を受けている場合や、逮捕・起訴された場合には、早期に刑事弁護を取り扱う弁護士へ相談することをお勧めします。

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