触法少年(14歳未満)が少年院送致された事例(わいせつ事案)
14歳未満の少年(触法少年)が、わいせつ事案により少年院送致された事例をご紹介します。
触法少年に対しては、心身の成長が未熟な年齢であることから、刑事処分の対象外とされており、少年院送致される事例も多くありません。

本件では、14歳未満の触法少年が少年院送致される際の判断基準が示され、特に非行の常習性や資質上の問題が大きく影響することを示しており、重要な参考事例といえます。
本件が示すように、福祉的処遇が困難な場合に、矯正施設での教育を通じた更生が必要であるとした裁判所の判断は、少年法の実務における重要な指針となります。
1 事案の概要 ~ 東京高裁平成27年7月3日決定
本件は、中学1年生の少年(当時12歳9か月~13歳1か月)が同級生の女子生徒たちに対して、強制わいせつや児童ポルノ製造などの非行を繰り返した事案です。
具体的な非行事実としては以下の通りです:
- A女に対するわいせつ行為
- 放課後に人けのない場所に呼び出し、服の上から乳房を触る。
- その後も無理やり服を脱がせ全裸にし、乳房を触るなどの行為を繰り返した。
- B女に対するわいせつ行為と児童ポルノ製造
- 公民館のトイレに連れ込み、下着姿にして乳房や性器を触る。
- さらに、携帯ゲーム機で乳房を撮影し、その画像を印刷。
- その他のわいせつ行為
- 別の同級生に対しても胸を触るなどの非行を行い、これが発覚の契機となった。
少年は児童相談所で一時保護されるも、指導を素直に受け入れず、反抗的な態度を取り続けたため、家庭裁判所に送致されました。
2 裁判所の判断
1 家庭裁判所の判断
裁判所は以下の観点から、少年の初等少年院(第1種少年院)送致を決定しました。
非行の態様と悪質性
- 少年は嫌がる被害者を無理やり呼び出し、わいせつ行為や撮影を繰り返しており、非行の内容は極めて悪質。
- 非行行為を行う際に躊躇した様子が見られず、常習性が顕著。
少年の資質と問題性
- 少年には次のような資質上の問題があるとされました:
- 他者の気持ちを想像し、共感する力が欠けている。
- 自己統制力が乏しく、自己中心的な考えに陥りやすい。
- 精神科診断では、「高機能自閉症スペクトラム障害」「素行障害(性的逸脱行動)」「衝動性障害」などが指摘されました。
福祉的・開放的処遇の限界
- 児童相談所での一時保護や指導を経ても少年の内省が十分に進まず、家庭内の指導だけでは対応が困難と判断。
- 矯正教育を実施するために、少年を現在の環境から切り離し、規制された枠組みの中での教育が必要とされました。
医療と矯正教育の選択
- 精神疾患の診断を受けた少年について、医療的対応を優先すべきとの主張がありましたが、裁判所は矯正教育を優先。
- 実際には医療少年院に送致され、医療と教育の双方が実施される環境が整備されている点が重視されました。
2 抗告審(東京高裁)の判断
抗告審でも、原決定を支持し、以下の理由で抗告を棄却しました:
- 少年法第24条1項ただし書に基づき、「特に必要と認める場合」に該当すると判断。
- 少年の常習性と資質上の問題性から、家庭での指導では限界があると認定。
3 本件の解説
本件裁判例は、年少の触法少年(14歳未満)に対する初等少年院送致の基準や意義を考えるうえで重要です。
1 少年法の「特に必要と認める場合」の適用
少年法第24条1項ただし書では、14歳未満の少年に対する少年院送致が「特に必要と認められる場合」に限られています。
本件では、次の事情がその要件を満たすものとされました:
- 非行内容の悪質性と常習性。
- 少年の抱える資質上の問題が深刻で、通常の福祉的処遇では改善が困難。
この規定は、児童福祉機関先議の原則と福祉的アプローチを重視する少年法の理念に基づくものであり、本件ではその限界を超える深刻な事情があると認定されました。
2 医療と教育のバランス
少年の精神疾患(高機能自閉症スペクトラム障害、衝動性障害など)が非行に大きく影響していることが指摘されましたが、裁判所は医療的対応だけでなく矯正教育を必要と判断しました。
医療少年院での処遇が選択された点は、医療と教育の融合を図る現代の少年法運用の一例といえます。
3 家庭環境の影響
少年の父親は、写真を発見した後も少年の行動を完全には管理できず、家庭環境における更生の限界が示されました。
家族の監護意欲があっても、指導力不足が少年の問題解決を阻害していた点が重要視されました。