不動産の売買における心理的瑕疵(事故物件など)について、裁判例を基に解説します。

賃貸借については国土交通省のガイドラインが策定され、取引の目安が分かりやすくなりましたが、売買取引においては個別性が強く、一律な基準(何年経てば告知しなくてよいか等)を定めにくいという特徴があります。

家を取壊しても、心理的瑕疵は消えないの?告知義務の期間は何が基準なの?と不思議に思う女性の絵。
弁護士 岩崎孝太郎

不動産の売買において「過去に人が亡くなった」という心理的瑕疵は、明確なルールがないため非常にトラブルになりやすい問題です。

「建物を解体して更地にすれば瑕疵は消えるの?」、「何年前の出来事まで告知すべき?」といったご相談をいただきますが、これらは物件の状況によって法的な結論が大きく変わります。

今回は、心理的瑕疵が問題となった裁判例を俯瞰することで、裁判所が「何を重視して責任の有無や損害額を決めているのか」、売主にはどのような法的責任が発生するのかを分かりやすく解説します。

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第1 心理的瑕疵の有無が問題になった裁判例

1 目的物の「現況」と「利用目的」が問われた裁判例

心理的瑕疵は「その空間で生活することへの嫌悪感」が根底にありますので、買主がその物件を「居住用」、「投資用」、「取壊し前提」のいずれの目的で購入したかは、裁判所の重要な考慮要素です。

特に買主が自ら居住する目的で購入した場合、買主は「継続的に生活する場」として利用し、居住の快適性、心地よさ、安らぎを期待しているため、瑕疵が認められやすくなります。

番号裁判年月日事案の概要判決文(判決の要旨)
1平成7年5月31日
(東京地裁)
買主が福島県の山間農村地にある土地・建物を永住目的で購入した。
しかし、約6年11か月前に元所有者が本件建物付属の物置内で農薬を飲んで自殺行為に及び、病院で死亡していた事実が判明した。
永住目的の購入であり、そのような歴史的背景を有しない建物と同様に買い受けるということは通常人には考えられないとして、瑕疵担保責任に基づく契約解除代金返還を認めた。
2平成元年9月7日
(横浜地裁)
小学生の子供がいる夫婦が永続的な居住目的でマンションの1室を購入した。
しかし、6年3か月前に、その部屋のベランダで売主代表者の妻が縊首自殺していたことが判明した。
建物は継続的な生活の場であり、家族が永続的に居住するには妥当性を欠き、「損害賠償をすればまかなえるものでもない」として契約解除違約金の支払いを命じた。
3平成11年2月18日
(大阪地裁)
買主が、建物を解体し新築して転売する目的で土地・建物を購入した。
建物を解体した後に、平成8年に売主の母親が建物内で首つり自殺していたことが判明した。
建物が解体されたことで心理的欠陥の対象は特定できない一空間に変容しており、さらに転売目的であることも考慮し、通常一般人が新たに建築された建物を居住に適さないと感じる程度には至っていないとして、隠れた瑕疵には該当しないと判断した。
4平成25年7月3日
(東京地裁)
買主が全29室の収益物件(賃貸マンション)を購入した。
決済の約6か月前に1室で居住者が自殺していたが、売主らは管理会社から「事件性のない自然死」と報告を受けており買主に伝えていなかった。
収益物件であることを前提に、該当居室の1年目の賃料収入喪失やその後の減額割合(50%)などを算定し、収益性の観点等からの自殺減価として600万円の損害賠償を認めた
5平成20年4月28日
(東京地裁)
買主が収益目的で1棟の賃貸マンションを購入した。
しかし、2年前に前所有者の娘が当該マンションから飛び降り自殺をしていた事実を、売主が知りながら告知しなかった。
飛び降り自殺は収益物件であっても客観的に経済的不利益を生ずる可能性がある事実として告知義務違反を認定。
自殺による減価を25%とみて、2,500万円の損害賠償を命じた。
6令和6年10月18日
(東京地裁)
買主が投資目的で居住用マンションの1室を購入したが、契約の約1年7か月前に元所有者が妻とともに当該室内で自殺していたことが判明した。サブリース契約により減額なく家賃を得て投資物件として機能しているとしても、将来の売却時に投下資本の回収ができない(差損が生じる)見込みがあるとして、例外的に投資目的でも契約不適合による契約解除を認めた。

2 事件・事故の「性質(死因)」と「場所」が問われた裁判例

人の死の内容(殺人か、自殺か、自然死か)や、それが専有部分か共用部分かによって、嫌悪感の度合いが大きく変わります。

建物内で自殺を図って病院に搬送されて死亡したとしても、自殺を図った場所が瑕疵になり得ると判断している例もありますので(裁判例9)、心理的瑕疵の検討にあたっては個別的な検討が必要になります。

番号裁判年月日事案の概要判決文(判決の要旨)
7令和4年8月18日
(東京地裁)
買主が建物を購入した。
契約の約5年前に売主の父が当該建物内で死亡し、死後1週間以上経過して腐敗が進行した状態で発見され、特殊清掃が行われていた。
死因は病死等の自然死と推認されるものの、遺体が長期間放置されて腐敗が進み特殊清掃が行われた事情は、国土交通省のガイドライン等に照らしても心理的瑕疵(隠れた瑕疵)に当たると認定し、損害賠償を命じた。
8平成22年1月29日
(名古屋高裁)
不動産競売で買受人がマンションの1室を落札した。
しかしその後、室内で前所有者の腐乱死体(死後4か月以上経過)が発見されたため、売却許可決定の取消しを求めた。
死因が自殺か病死等かにかかわらず、長期間遺体が残置され腐乱し強烈な異臭を放っていたことは、物理的損傷を生じさせる上、周辺住民に広く知れ渡っているため交換価値を著しく低下させるとし、民事執行法上の「損傷」に該当すると認めて決定を取り消した(実質的白紙撤回)。
9平成23年5月25日
(東京地裁)
買主が建築中のマンションの1室を購入する契約を締結した。
その後、建築中に共用部分のエレベーターシャフト内で、作業員2名が約42m落下して死亡する事故が発生した。
建設工事中の事故であり殺人事件等とは同視できず、買主の専用部分から離れた共用部分での発生であることから、社会通念に照らし住み心地に重大な影響を与える瑕疵が存在するとは認められないとして請求を棄却した。
10平成26年4月15日
(東京地裁)
上記と同じマンション(同一の転落事故について、別の買主が提訴した事案)。
別の部屋を購入していた法人の買主が「心理的嫌悪感を抱く重大な事故である」として契約解除や手付金返還を求めた。
事故は購入した専有部分ではなくエレベーター設置前の地下1階ピット部分(共用部分)で発生したものであり、居住や仕事場として利用するという契約目的は達成できるため、客観的価値の下落は生じていないとして契約解除を否定した。
11平成25年3月29日
(東京地裁)
建売業者が宅地を購入したが、約1年4か月前に敷地内に駐車した車の中で練炭自殺していた事実が後日判明した。契約書の特約条項からみて、車中での練炭自殺という事実は明確な瑕疵であり、近隣住民の記憶にも残っているため瑕疵は消失していないと認定し、土地価格の20%(868万円)の下落を認めた。
12平成21年6月26日
(東京地裁)
買主が賃貸マンションを購入した。
購入後、1年11か月前に元所有者の娘が居室で睡眠薬を多量に飲み、搬送先の病院で2〜3週間後に死亡した事実が判明した。
室内で直接死亡したわけではなく、首吊り等の場合とも社会的な受け止め方が異なること、事件から期間が経過し社会的にほとんど知られていなかったことなどから、瑕疵としては「極めて軽微なもの」になったと判断し、代金のわずか1%に相当する損害のみを認めた。

3 事件からの「経過期間」、「周辺環境(風化度)」、「建物の取壊しの有無」が問われた裁判例

心理的瑕疵は「時の経過」と「記憶の風化」、そして「対象物の滅失(取壊し)」によって影響力が変化します。

ただし、売買の目的物が土地で、事件や事故のあった建物が解体されたとしても、その土地に瑕疵があると認定している裁判例もありますので、個別具体的に検討していくしかありません。

番号裁判年月日事案の概要判決文(判決の要旨)
13平成12年8月31日
(東京地裁八王子支部)
買主が家族で居住する家を建てるため農山村地帯の土地を購入した。
しかし、約50年前にその土地上の建物内で凄惨な殺人事件が発生しており、建物解体後も土地は未開発のまま放置されていた。
約50年前の事件であっても、特異な猟奇性を帯びており、農山村地帯で地元住民の記憶に忘れずに残っていたことから、一般人が「住みたくない」と感じるのは自然であると判断し、隠れた瑕疵を認定した(代金全額の賠償)。
14昭和37年6月21日
(大阪高裁)
買主が土地・建物を購入したが、7年前に前所有者が建物と廊下で接続された座敷蔵内で首吊り自殺していた。
その座敷蔵は売買時にはすでに取り壊され新たに物置が設置されていた
事件から7年が経過し、自殺現場であった座敷蔵も取り除かれ、事実を気にしない買受希望者が多数いたことから、もはや一般人が住み心地のよさを欠くと感じる合理性はないとして、瑕疵を否定した。
15平成18年12月19日
(大阪高裁)
買主が建売住宅を建設する目的で土地を購入した。
その後、約8年前に土地上にあった建物(解体済)内で、女性が殺害される事件が起きていたことが判明した。
殺人は残虐性が大きく心理的欠陥の存在自体は認めたが、建物が既に取り壊されており、事件から8年以上経過して嫌悪すべき心理的欠陥は相当程度風化していることを考慮し、損害額を売買代金の5%に減額して認定した。
16平成29年5月25日
(東京地裁)
買主が土地・建物を購入したが、10年以上前に当時の所有者が建物内で首吊り自殺をしていた。
その間に所有者が複数回変わっていたが、売主は事実を知りながら告げなかった。
周辺が古くから居住する高齢者が多く閉鎖的であり、建物が建て替えられていないことなどから、10年以上経過しても嫌悪感は保護に値するとし、時間の経過や所有者の変遷は告知義務を否定する理由にならないとして契約解除違約金を認めた。
17平成26年6月19日
(高松高裁)
マイホーム建築目的の買主が仲介業者を通じて土地を購入した。しかし、20年以上前に土地上にあった建物内(解体済)で首吊り自殺があり、説明がなかった。四半世紀が過ぎ、建物も解体されていたものの、別の殺人事件と関連付けられ今なお近隣住民の記憶に残っていたため説明義務違反を肯定。ただし差額損害は否定し、交渉機会を奪われたことへの慰謝料(各85万円)のみを認めた。

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第2 法律上の争点が問題になった裁判例

1 瑕疵担保の免責特約が問題になった裁判例

瑕疵担保責任に関する規定は、任意規定のため、特約によって排除(売主の責任免除)をすることが可能です。

ただし、売主が瑕疵の存在を知っていた場合には、特約によっても瑕疵担保責任を免れることはできません(民法572条)。

宅建業者が自ら売主となる売買契約において、物件の不具合に対する責任(契約不適合責任)の期間は、「目的物の引き渡しの日から2年以上」とする特約のみ認められています。
それ以外の、買主様に不利となる特約を定めたとしても法律上無効となります(宅建業法40条1項、2項)。

不動産の契約書では、「現状有姿で売り渡す」などの文言を見かけます。

ただ、この文言だけでは、一般的に心理的瑕疵の免責まで含めたものとは理解されていませんので、売主側は特に注意が必要です。

番号裁判年月日事案の概要判決文(判決の要旨)
18平成22年1月28日
(横浜地裁)
買主が賃貸マンションを購入し引渡しを受けた当日に、1室で賃借人が縊死しているのが発見された。
契約には「引渡し前に火災、地震等の不可抗力により滅失又は毀損した場合は、売主の負担とする」との危険負担の特約があった。
特約の「毀損」は物理的毀損に限定されず自殺のような交換価値の減少も含み、心理的瑕疵は自殺発生と同時に生じるため、死体発見が引渡し後であっても引渡し前に毀損が生じたと解釈し、売主負担とする特約の適用を認めた。
19平成9年8月19日
(浦和地裁川越支部)
買主が土地・建物を購入したが、契約の5か月前に建物内で売主側の親族が首つり自殺をしていた。
契約書には「建物の老朽化等のため隠れた瑕疵につき一切担保責任を負わない」との免責特約があった。
居住用建物で最近起きた自殺という心理的欠陥は「隠れた瑕疵」に該当し、老朽化等を理由とする免責特約が予想する範囲を超えているため、この特約によって売主は責任を免れないと判断した。

2 当事者の「隠蔽(背信性)」が決定打となった裁判例

心理的瑕疵の客観的評価以前に、売主側が事実を知りながら嘘をついたり隠したりした信義則違反(背信的行為)が重く評価された裁判例です。

番号裁判年月日事案の概要判決文(判決の要旨)
20平成21年11月26日
(大阪地裁)
買主がマンションの1室を購入したが、8年前に他殺疑いの死亡や飛び降り自殺が発生していた。
契約時、買主側の仲介業者が売主の管理者に「過去に問題がなかったか」と尋ねたにもかかわらず、管理者は事実を秘匿した
売主と同視すべき管理者が、過去の事件を知りながら「過去に何か問題がなかったか」との問いに対して積極的に秘匿し告知しなかったことは、信義則上の告知義務違反(債務不履行)に当たると判断し、契約解除違約金の支払いを命じた。

3 「仲介業者」の調査義務の限界が争点になった裁判例

売主本人の責任とは別に、「間に入った仲介業者は、どこまで独自に調査して買主に伝える義務があるのか」という職務範囲が争われた裁判例です。

番号裁判年月日事案の概要判決文(判決の要旨)
21平成18年7月27日
(東京地裁)
買主が建物取り壊しを前提に土地・建物を購入した。
売主は競売で物件を取得していたが、物件明細書等にあった自殺に関する記載を見落としており、仲介業者も事実を知らなかった。
競売で取得して転売する売主には物件明細書等を精査する注意義務があり過失責任を認めたが、仲介を専門とする業者には売主と同様の精査義務まではないとして、仲介業者の責任を否定した。
22平成22年3月8日
(東京地裁)
不動産業者が更地を購入し新築分譲を開始した直後、約4年前に元々建っていた建物で焼死事故があった事実が判明した。売主には告知義務違反を認めたが、仲介業者については、外観から認識できる範囲で調査し情報提供する義務を負うにとどまり、それ以上に独自に調査して報告する注意義務までは負わないとして、調査義務違反を否定した。

第3 心理的瑕疵と売主への法的責任について

1 契約の解除が認められるか

契約の解除が認められるためには、「その瑕疵(心理的欠陥)があるために、契約をした目的を達することができない」と判断される必要があります 。

具体的には、契約締結前に事故物件であることを知っていれば買わなかったこと、損害賠償でまかなえるものではないこと、瑕疵の存在が契約目的を著しく阻害する、などの主張立証が必要になります。

解除が認められた裁判例では、主に以下の3つの理由(認定のポイント)が挙げられています。

①「永住・居住目的」であり、心理的嫌悪感が極めて強い

買主が自ら(または家族と)長く住む目的で購入した場合、心理的嫌悪感が直接的に影響するため、解除が認められやすくなります。

  • 【1】東京地裁 平7.5.31
    買主が「永住目的」で購入しており、「そのようないわくつきの建物を…買い受けるということは、通常人には考えられない」として解除を認めました。
  • 【2】横浜地裁 平元.9.7
    小学生の子供がいる家族が「永続的な居住の用に供するため」に購入した事案。
    「損害賠償をすれば、まかなえるというものでもない」と判断され、解除が認められました。

②売主が事実を秘匿した(背信性が高い)

売主の態度が悪質であった場合、契約関係を維持することが困難とみなされ、解除の理由となります。

  • 【20】大阪地裁 平21.11.26
    買主側が契約前に「過去に何か問題がなかったか」と直接質問したにもかかわらず、売主側(実質的管理者)が事件を知りながら「特に問題ない」と嘘をついて秘匿しました。
    この強い背信性(告知義務違反)が重視され、解除が認められました。

③投資目的であっても「将来の売却差損」が明らかであること

投資用・収益物件の場合は「賃料の下落」という損害賠償で解決されることが多いですが、例外的に解除が認められることもあります。

  • 【6】東京地裁 令6.10.18
    投資目的で購入し、現在も家賃は減額されずに入ってきている状態でした。
    しかし、自殺から約1年7ヶ月しか経過しておらず心理的瑕疵が希釈化されておらず、将来この物件を売却して投下資本を回収しようとした際に「相応の差損が生じることが見込まれる」ため、契約内容に適合しないとして解除が認められました。

2 損害賠償はどこまで認められるか

契約解除をしないで(契約解除が認められない場合を含め)損害賠償をする場合に、どの程度の賠償が認められるのかを俯瞰します。

基本的には、心理的瑕疵は売買価格の減価要因となりますので、買主が支払った売買価格と瑕疵の存在を前提として評価される適正価格・客観価格との差額が損害となります。

損害額の立証にあたっては、瑕疵の存在を前提とした売買契約当時の適正価格については、不動産鑑定士による鑑定評価書によって立証してくことになります。

①代金の20%〜25%程度が認められるケース(影響が比較的大きい場合)

直近の事件であったり、心理的嫌悪感が強く残っていると判断された場合は、売買代金の2割〜2割5分程度の減価が認められています。

  • 【11】東京地裁 平25.3.29(車中での練炭自殺)
    契約の約1年4ヶ月前に発生。
    近隣住民の記憶にも残っており、土地価格の少なくとも20%(868万円)の下落を認めました。
  • 【5】東京地裁 平20.4.28(収益物件での飛び降り自殺
    2年前の事故。
    自殺物件による減価を25%とみて、5年間定額法などで算定し、1億7,500万円の物件に対して2,500万円(約14%強)の損害を認定しました。
  • 【21】東京地裁 平18.7.27(建物取壊し前提)
    約1年4ヶ月前の自殺。
    建物取壊し前提のため価格への影響は少ないとしつつも、競売の評価書などを参考に売買代金の25%(262万5,000円)の損害を認めました。

②代金の1%〜10%程度が認められるケース(影響が限定的・風化している場合)

事件から長期間が経過している、建物が既に取り壊されている、あるいは収益物件で賃料への影響が限定的である場合などは、金額にもその要素が反映されています。

  • 【15】大阪高裁 平18.12.19(8年前の殺人)
    殺人のため心理的欠陥は認めたものの、事件から8年以上経過し、建物も取壊し済みで「相当程度風化している」として、代金の5%(約75万円)にとどめました。
  • 【4】東京地裁 平25.7.3(収益物件の自殺)
    該当の居室(減価率50%)と直下の居室(10%)のみに影響を限定し、物件全体に対する減価率を約0.6%〜1%程度と算定。
    代金3億9,000万円に対し600万円(約1.5%)を認定しました。
  • 【12】東京地裁 平21.6.26(睡眠薬自殺・病院死)
    室内で服毒したものの病院で死亡しており、事実もほとんど知られていないことから瑕疵は「極めて軽微」として、代金の1%(220万円)のみを認めました。

③慰謝料や実費のみが認められるケース

  • 【17】高松高裁 平26.6.19
    20年以上前の自殺。差額損害は認めず、説明義務違反によって交渉の機会を奪われたことに対する慰謝料等として、買主ら各85万円(計170万円)のみを認めました。

3 違約金の請求をすることはできるか?

瑕疵担保責任(契約不適合)に基づいて契約解除し手付金返還請求をするだけでなく、契約書に定められた「違約金条項」に基づいて違約金(代金の10〜20%など)まで請求できるでしょうか。

以下のように、売主の債務不履行(告知義務違反など)が認定され、それが原因で契約が「解除」された場合に認められた裁判例があります。

  • 【20】大阪地裁 平21.11.26
    買主側から「過去に問題はなかったか」と聞かれたのに、売主側が死亡事件を積極的に秘匿した事案。
    信義則上の告知義務違反(債務不履行)による解除を認め、原状回復(代金返還)とともに違約金(代金の1割、280万円)の支払いを命じました。
  • 【16】東京地裁 平29.5.25
    10年以上前の自殺を告知しなかったことが債務不履行に当たるとして、契約解除と違約金(代金の20%、160万円)の支払いを命じました。
  • 【2】横浜地裁 平元.9.7
    瑕疵担保責任による契約解除を適法とし、手付金(500万円)の返還と違約金(代金の20%、640万円)の支払いを命じました。

しかし、心理的瑕疵の問題は、売主の不法行為(故意による告知義務違反)を理由に損害賠償請求されるべきであり、債務不履行解除に適用される違約金条項に基づいて違約金を請求することは、認められないことが多いように思料します。

  • 【6】東京地裁 令6.10.18
    契約不適合による解除自体は認められましたが、違約金の請求については「この違約金条項は『履行遅滞』(遅れているが後から履行できる場合)による解除を前提としたものであり、履行の追完が不可能な本件(過去の自殺をなかったことにはできない)には適用されない」として、違約金の請求は棄却されました。

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第4 よくあるご質問

心理的瑕疵(事故物件)の告知義務は、過去何年前の事件まで対象になりますか?

売買取引においては、明確な「何年前まで」という法律上の基準はありません。

賃貸借取引ではガイドラインにより「おおむね3年」という目安がありますが、売買では事件の重大性(殺人か自殺か等)や周辺環境によっては、10年以上前、あるいは50年前の事件であっても告知義務(心理的瑕疵)が認められた裁判例があります。

事故があった建物を解体して「更地」にすれば、心理的瑕疵は消えますか?

建物を解体しても、必ずしも心理的瑕疵が完全に消えるわけではありません。

買主が転売目的や収益目的の場合は瑕疵が否定されやすい傾向がありますが、重大な事件で近隣住民の記憶に強く残っているような場合には、更地にしても「土地自体」に瑕疵が残存すると判断され、損害賠償が認められることがあります。

自然死や病死(孤独死)の場合でも、買主に告知する義務はありますか?

原則として、事件性のない自然死や病死は心理的瑕疵には当たらず、告知義務の対象外です。

ただし、遺体が長期間放置されて腐敗が進み、特殊清掃や大規模なリフォームが必要になったケースでは、例外的に強い嫌悪感を生じさせるとして、心理的瑕疵(告知義務あり)と認定された裁判例があります。

買った家が事故物件だと後から判明した場合、契約の解除(白紙撤回)はできますか?

条件を満たせば可能です。
無条件でできるわけではなく、「その瑕疵があるために、契約をした目的を達することができない」と認められる必要があります。
過去の裁判例では、「家族で永住する目的で購入した」、「売主が事実を知りながら積極的に隠蔽した」、「将来の売却時に明らかな差損が生じる」といった場合に、契約の解除が認められています。

事故物件であることを隠して売却した場合、売主にはどのようなペナルティがありますか?

売主に告知義務違反(債務不履行や不法行為)が認められた場合、買主から「売買代金の減額(損害賠償)」や「契約の解除」を請求されます。

さらに、事実を知りながら悪質な隠蔽を行っていた場合には、契約書に定められた「違約金(売買代金の10〜20%など)」の支払いを命じられるリスクもあります

マンションのエレベーターや階段など「共用部分」での事故も、専有部分の瑕疵になりますか?

共用部分での事故は、原則として専有部分(室内)の心理的瑕疵にはなりにくい傾向があります。
過去の裁判例でも、建築中のマンションのエレベーターシャフト内で起きた転落事故について、「専有部分とは別個の空間であり、住み心地に重大な影響は与えない」として、買主からの契約解除の請求を否定したものがあります。

契約書に「瑕疵担保責任を負わない」という特約があれば、売主は責任を免れますか?

当事者間の免責特約自体は有効です。
ただ、売主が「事故物件であることを知っていたのに告げなかった場合」は、特約があっても責任を免れることはできません(民法572条)。

また、売主が宅建業者で買主が一般消費者の場合、買主に不利な免責特約は宅建業法により無効となります。

第5 不動産トラブルのご相談は当事務所へお任せください

弁護士 岩崎孝太郎

心理的瑕疵の裁判例を見ていただくと分かる通り、「約50年経過した事件」や「建物を解体して更地にしたケース」であっても、状況によっては瑕疵が認定され、賠償が命じられることがあります。

売買取引においては明確な一律のルールが存在しないため、物件の利用目的、事件の性質、経過期間、周辺環境などを総合的に分析し、個別具体的に見通しを立てる必要があります。

だからこそ、ご自身だけで抱え込まず、専門家による客観的な見立てと戦略的なアプローチが不可欠です。

「購入した物件で過去の事件が発覚し、どう対応すべきか悩んでいる。」、「事故物件を後々のトラブルなく安全に売却したい。」といったお悩みがありましたら、当事務所へご相談ください。
適切な法的アプローチで、最善の解決策をご提案いたします。

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STEP
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相談時に必要なもの

事前に以下のものをご準備いただくと、ご相談がスムーズに進みます。

  • 相談内容の要点をまとめていたメモ
  • ご相談に関する資料や書類
STEP
2

ご相談(初回相談料:1時間あたり1万1,000円)

法律上の問題点や採り得る手段などを専門家の見地よりお伝えします。

問題解決の見通し、今後の方針、解決までにかかる時間、弁護士費用等をご説明いたします。

※ご相談でお悩みが解決した場合は、ここで終了となります。

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3

ご依頼

当事務所にご依頼いただく場合には、委任契約の内容をご確認いただき、委任契約書にご署名・ご捺印をいただきます。

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問題解決へ

事件解決に向けて、必要な手続(和解交渉、調停、裁判)を進めていきます。

示談、調停、和解、判決などにより事件が解決に至れば終了となります。

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委任契約書の内容にしたがって、弁護士費用をお支払いいただきます。
お預かりした資料等はお返しいたします。

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