Question

不動産売買で「手付金」を支払うと聞きますが、手付金とはどのようなものなのですか?

Answer

不動産の売買契約を結ぶとき、買主が売主に対して「契約締結の証し」として渡すお金が手付金です。

似た言葉に、「頭金」がありますが、性質が異なります。

頭金との違い
手付金
 ⇒ 契約時に渡す「担保的なお金」。後日、売買代金の一部に充当されます。


頭金
 ⇒ 住宅ローンを借りずに自己資金で支払う部分。決済時に残代金とまとめて渡します。

弁護士 岩崎孝太郎

不動産売買における「手付金」の概要を、弁護士の観点から解説致します。

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第1 手付とは?不動産売買契約の流れ

1 手付金の概要と存在意義とは?

不動産の売買契約を結ぶとき、買主は売主に対して「手付金(てつけきん)」を支払うのが一般的です。

手付金とは、売買代金の一部を前払いするだけでなく、契約の成立を確認し、契約を守るための「担保」として預ける金銭のことです。

たとえば、3,000万円のマンションを購入する場合、契約時に100〜300万円程度の手付金を売主に渡します。
残りの代金は後日(決済日)に支払います。

日本の不動産取引では、特段の合意がなければ解約手付の性質を持つと民法上解釈されます(民法557条)。

つまり、買主が契約を解除したいときは手付金を放棄し(手付流し)、売主が契約を解除したいときは手付金を2倍にして返す(倍返し)というルールが適用されます。

買主の手付解除 ⇒ 手付金を「放棄」する

支払った手付金を返してもらえなくなることを承諾して、契約を解除します。
損害賠償は不要です。

売主の手付解除 ⇒ 手付金を「倍返し」する

受け取った手付金の2倍の金額を買主に返して、契約を解除します。
損害賠償は不要です。

手付金による契約解除の仕組(手付放棄(手付流し)・倍返し)のイラスト説明図。

(手付)
第557条 
第1項 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額現実に提供して、契約の解除をすることができる。
ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。

🔗「民法」(e-Gov法令検索)

手付金が存在する理由(存在意義)とは?

不動産のような高額な取引では、「契約後・決済前」の期間が数週間〜数ヶ月に及びます。

この間に、売主・買主いずれかが気持ちを変えたり、資金の問題が生じたりすることがあります。

手付金は「契約を真剣に守るためのコスト」を事前に支払わせることで、軽率な契約や一方的なキャンセルを防ぐ機能を果たしています。

2 手付解除の時間的制約

「相手方が契約の履行に着手」するまでしか解除できません(民法557条1項)
相手方が契約の履行(売買に向けた実質的な行為)を開始した後は、手付解除はできません。

具体的に「履行に着手」とは、たとえば以下の行為をいいます。
・売主側:物件の引渡し準備、登記手続きの開始、ローンの完済など
・買主側:残代金の準備(融資実行)、引越しの手配、ローン申込み後の本審査通過など

履行着手の後は、手付解除の選択肢はなくなります。
解除するには相手方の同意か、損害賠償(違約金の支払)しかありません。

3 申し込み証拠金との違いは?

手付と似たような役割を果たすものに、「申込証拠金」があります。

申込証拠金は、不動産購入の「申し込み」の意思を表明するために支払われるもので、主に売主との優先交渉権を獲得する役割を果たします。

申込証拠金の支払によって、買主は本気で購入検討していることを示すことができ、売主にとっては買主の本気度を確認して、契約交渉を円滑に進めることができます。

不動産売買は、大きく以下の流れで進みます。

不動産売買契約kでは、売主が募集広告を開始した後、購入希望者が申込証拠金を支払って、優先交渉権を取得し、検討を始めます。
まだ契約締結に至りませんが、購入しようと契約段階に進むと、この売買契約成立の段階で交付するものが手付です。
そして、履行期に残代金の支払いと物件の支払いをします。

この流れ図で分かるように、申込証拠金は、契約締結の前段階で支払いをするもので、契約締結時に支払われる手付金とは異なるものです。

そのため、申込証拠金は、契約締結とならなかった場合には、全額返金されることが一般的です。

金額も、申込証拠金は、10万円以内に設定されることが多く、少額となっていることが多いです。

【手付金と申込証拠金の違い】

手付金と申込証拠金の違い。
手付金は、契約成立の証拠・解除権の行使の目的で、契約締結時に支払われる。契約解除時に放棄、もしくは倍返しにより返還ができます。物件価格の5~10%が相場として多いです。
これに対して、申込証拠金は、購入意思の表明を目的とするもので、契約締結前に支払います。基本的に全額返還されるもので、相場としても5~10万円程度が多いです。

3 宅建業法による注意点

手付金の額の上限(宅建業法39条)

宅建業者が売主となる場合、手付金の額は売買代金の2割(20%)以内に制限されています。

たとえば5,000万円の物件なら、手付金は最大1,000万円までです。
これを超える手付金の受領は法律違反となります。

必ず「解約手付」の性質が認められる

宅建業者が売主の場合、当事者間で「解約手付ではない」と特約しても、その特約は買主に不利な場合は無効となります(同法39条3項)。

つまり買主は、自ら手付を放棄することで原則いつでも解除できる権利が保護されています。

手付金等の保全措置(宅建業法41条・41条の2)

宅建業者が売主の場合、一定額以上の手付金を受領するときは、保証保険や銀行保証などによる保全措置が義務付けられています。

万一、業者が倒産しても買主の手付金が守られる仕組みです。

  • 未完成物件:代金の5%超 かつ 1,000万円超の受領前に保全が必要
  • 完成物件 :代金の10%超 かつ 1,000万円超の受領前に保全が必要

手付の信用供与の禁止

宅建業者は、手付金について分割払い・後払いを承諾したり、貸し付けることによって契約締結を誘引することを禁じられています(同法47条3号)。

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第2 手付解除の方法 ~ 注意すべきことは?

1 買主からの手付解除

買主が手付放棄をする場合には、すでに手付を交付していますので、売主に手付を放棄して契約を解除する旨の意思表示をすれば良いです。

取引実務においては、買主が仲介業者を通して、売主に対し買主の手付解除の意思を伝達することがあります。

しかし、仲介業者は、買主の代理人でも売主の代理人でもありませんので、仲介業者を通じて売主に対し手付解除の意思を伝達したことが買主による手付解除の意思表示にあたるのか争われるリスクがあります。

そのため、買主が手付解除をする場合には、配達記録付内容証明郵便にて、直接売主に手付解除の意思表示を行うことが望ましいです。

2 売主からの手付解除

売主が手付解除をする場合、手付の倍額を現実に提供(実際に用意して渡せる状態にすること)しなければなりません。

口頭で「返すよ」と言うだけでは不十分です。

この点について重要なリーディングケースが、最高裁判所平成6年3月22日判決です。

最高裁平成6年3月22日判決 — 事案の概要

売主が「手付の倍額を返す」と口頭で申し出ただけで(実際には金銭を準備・提供せず)、契約を解除しようとしました。

これに対して買主が「適法な解除ではない」と主張し争われた事案です。

最高裁の判断(ポイント)
最高裁は、売主による手付解除が有効となるためには、単に口頭で「倍返しする」と伝えるだけでは足りず、現実に手付の倍額を現実に提供(実際に持参するなど、受領できる状態にすること)しなければならない、と判示しました。

すなわち、売主が「倍返しします」と言葉だけで解除を告げても、買主はその解除を拒否することができます。

この判決の意義は、売主による安易な手付解除から買主を保護する点にあります。
もし口頭申告だけで解除できるなら、売主は「もっと高く売れる買主が現れたから解除する」といった行動を簡単に取れてしまいます。
現実の資金提供という要件を課すことで、そのような軽率な解除を防いでいます。

実務上の注意

売主が手付解除を行う際には、実際に手付倍返し分の現金(または振込)を用意し、買主が受領できる状態で提供することが必要です。

買主が受領を拒んだり、面談の機会を設けることを拒否したり、買主に手付金を振り込もうとして銀行口座を聞こうとしても返答がないなど、手付の倍額を現実に提供することが困難な場合があり得ます。

売主が買主に対して手付の倍額の提供ができないままに手をこまねいていると、その間に買主が売買契約の「履行に着手」したり、手付解除の特約の期限を徒過し、売主が手付解除を逸することになりかねません。

そのため、売主は、手付の倍額を現実に提供し、かつ、これを立証できるように、持参した銀行保証小切手の写し、立会者の陳述記録書を調え、買主がその受領を拒んだ場合には念のために供託を行い、内容証明郵便をもって買主に対し手付の倍額を提供した事実を記載して契約解除の意思表をしておくことが大切です。

3 (参考)手付の分割支払いと手付解除の場合は?

「手付金を一括で払うのが難しいので、分割にしてほしい」という要望が買主からなされることがあり、手付を分割して支払うことを「手付分割」と呼びます。

しかし、ここには法律上の重要な問題が潜んでいます。

手付金が未払い・分割中の状態で買主が手付解除を申し出た場合、「放棄すべき手付金」が何円なのかが問題になります。

裁判例も分かれており、①あくまでも支払い回数を分割したにすぎず、手付金は約定の総額を基準とすべきと判示したもの(名古屋地判昭和35年7月29日)、②手付の要物性から交付された手付の限度での成立を認めるもの(大阪地判昭和44年3月28日)、同様に③手付契約の要物性から手付の一部が交付されても手付総額について手付契約は成立しないものと判示したもの(大阪高判昭58年11月30日)があり、解釈が定まっている状況とは言い切れません。

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第4 不動産売買トラブルに強い弁護士に相談する

1 不動産売買トラブルは弁護士にご相談を

弁護士 岩崎孝太郎

不動産売買は動く金額が非常に大きいため、ちょっとした認識のズレが数百万円単位の深刻なトラブルに発展することも珍しくありません。

本記事でも解説した通り、特に「いつまで手付解除ができるのか(相手が履行に着手したと言えるか)」や「売主側からの正しい手付倍返しの方法」は、当事者間で意見が激しく対立しやすく、裁判に発展するケースも多く見られます。

「手付金を放棄してでも契約を解除したい」、「相手から急に解除を通知されたが適法なのか納得がいかない」といったお悩みを抱えた場合は、ぜひお早めに不動産トラブルに強い弁護士へご相談ください。
状況を法的に整理し、あなたの大切な資産を守るための最善の解決策をご提案いたします。

2 弁護士費用の目安(不動産売買トラブル)

交渉・訴訟の費用(目安)

経済的利益 着手金 報酬金
300万円 以下 最低33万円 17.6%
300万円超 ~ 3000万円 以下 5.5% + 9.9万円
(最低33万円)
11% + 19.8万円
3000万円超 ~ 3億円 以下 3.3% + 75.9万円 6.6% + 151.8万円
3億円 超 2.2% + 405.9万円 4.4% + 811.8万円

※報酬金の最低額は 11万円(税込)となります。
※総額の下限は、交渉44万円~法的手続66万円~、となります。

3 ご不安な方へ|よくいただくご質問

まだ大きなトラブルになっていません。「ちょっと怖い・おかしい」程度の不安や違和感でも相談してよいですか?

もちろんです。
不動産トラブルは、初期対応が非常に重要です。
契約内容の確認や、相手方への最初の通知(内容証明郵便など)を法的に正しく行うことで、被害の拡大を防ぎ、有利に交渉を進められる可能性が高まります。
「不安」・「違和感」の段階でご相談いただくのがベストタイミングです。

相談料はいくらかかりますか?

初回相談料として、1時間以内:1万1,000円を頂いております。
以降、30分以内の延長ごとに5,500円を頂いております。

弁護士費用規定を見ても、よく分かりません。

ご安心ください。
ご相談の際に、事案の内容をうかがった上で、着手金や報酬金について明確なお見積もりをご提示します。
ご納得いただいてから契約となりますので、予測不能な費用が出る心配はありません。

相談方法を教えてください。

以下のいずれかの方法でご相談を承っております。

  • オンライン相談(Google Meetなどを利用します)
  • ご来所による対面相談

※正確な状況をお伺いするため、恐れ入りますが、お電話やメールのみでのご相談は承っておりません。

オンライン相談が可能とのことですが、遠方(地方)からの相談も対応していますか?

はい、もちろんです。
当事務所はGoogleMeetなどのオンラインツールを最大限活用し、全国の不動産売買トラブルに対応しております。

これまでにも、北は札幌市から、南は那覇市や宮古島市まで、遠方のお客様からのご相談・ご依頼実績がございます。
お住まいの地域にかかわらず、専門家による法務サポートを提供いたしますので、どうぞ安心してご相談ください。

相手(売主・買主・不動産会社)と直接話したくありません。弁護士に全て任せられますか?

はい、お任せください。
弁護士がご依頼者様の代理人となると、相手方との交渉窓口はすべて弁護士になります(受任通知を送付します)。
相手方からの連絡にストレスを感じることなく、法的な手続きを進めることができます。

相談の際、どのような資料を準備すればよいですか?

必須ではありませんが、以下の資料をお持ちいただくと相談がスムーズです。

  • 契約書(売買・賃貸借)
  • 重要事項説明書
  • 物件の図面、パンフレット
  • トラブルの内容がわかるもの(写真、メール、相手方からの通知書など)
  • 経緯をまとめたメモ(時系列で何があったか)

不動産業を営んでいます。 不動産実務に詳しい顧問弁護士を探しています。
どのようなサービス(プラン)がありますか?

当事務所は、不動産業者様向けの顧問サービスに特に力を入れております
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    弁護士紹介

    弁護士 岩﨑孝太郎
    弁護士
    岩﨑 孝太郎
    • 1981年生まれ
    • 1997年文京区立第十中学校卒業
    • 2000年私立巣鴨高校卒業
    • 2006年東京大学教育学部卒業
    • 2008年東京都立大学法科大学院卒業
    • 2009年弁護士登録
    • 2024年文の風東京法律事務所を開設
    弁護士 小川弘義
    弁護士
    小川 弘義
    • 1985年生まれ
    • 2004年神奈川県立横浜翠嵐高校卒業
    • 2009年一橋大学法学部卒業
    • 2011年東京都立法科大学院卒業
    • 2012年弁護士登録
    • 2024年文の風東京法律事務所を開設

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