少年刑務所への収容とは?少年院との違い、手続の流れや生活について
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少年刑務所とは、どのようなところですか?
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少年刑務所は、16歳以上20歳未満の受刑者を収容する刑事施設です。
少年が犯罪を犯した場合、家庭裁判所の審判によって処遇が決まります。
しかし、一部の重大事件では、成人の刑事事件と同じく刑事裁判で判決が下されます。
この刑事裁判で実刑判決を受けた少年が収容されるのが少年刑務所です。少年が刑事裁判で実刑判決を受けた場合でも、少年の年齢が14歳以上16歳未満のときには少年刑務所ではなく少年院に収容されます。
また、少年刑務所に収容されたときに20歳未満であれば、20歳を越えても引き続き少年刑務所に収容されます。少年刑務所には懲役刑の執行として収容されるため、少年であっても刑務作業を行わなければなりません。
一部では少年の特性に合わせた教育も行われますが、少年刑務所では刑務作業が生活の中心となります。
第1 少年刑務所とは?
少年刑務所とは何かを理解するには、少年院との違いを知ることが重要です。
ここでは、少年刑務所と少年院との違いを説明したうえで、刑事施設とは何かを解説します。
1 少年刑務所と少年院の違い
少年刑務所は、16歳以上20歳未満の少年の受刑者を収容する刑事施設です。
少年刑務所が成人の刑務所と区別して設置されているのは、成人の受刑者と接することによる悪影響を排除するとともに、少年の特性に応じた処遇を行うことを理由としています。
少年法では、少年の受刑者について次のように規定し、成人の受刑者とは場所を分けて刑を執行することを求めています。
(懲役又は禁錮の執行) 第56条 懲役又は禁錮の言渡しを受けた少年(第三項の規定により少年院において刑の執行を受ける者を除く。)に対しては、特に設けた刑事施設又は刑事施設若しくは留置施設内の特に分界を設けた場所において、その刑を執行する。 引用:e-Gov法令検索 |
一方で、少年院は、家庭裁判所から保護処分として送致された少年の矯正教育を行う施設です。
少年院では、教育プログラムや職業訓練によって少年に矯正教育を施し、少年を社会に適応できる状態で社会復帰させることを目的としています。
少年刑務所と少年院との最大の違いは、少年刑務所が刑事施設であるのに対して、少年院は矯正施設であることです。
少年刑務所では、刑務作業が生活の中心になるのに対し、少年院では刑務作業自体がありません。
少年院では、少年の年齢に応じた義務教育や、職業訓練が生活の中心となります。
なお、刑事裁判で実刑判決を受けた少年も、年齢が14歳以上16歳未満の場合には、少年刑務所ではなく少年院に収容されます(少年法56条3項)。
2 刑事施設とは何か
刑事施設とは、刑務所、少年刑務所及び拘置所を総称するもので、受刑者などを収容する施設のことを言います。
起訴されて刑事裁判にかけられると、刑が確定するまでの間は拘置所に収容され、実刑判決が確定すると刑務所に収容されます。
少年院は、少年審判の保護処分によって送致される施設なので刑事施設ではありません。
【関連記事】 少年院~どのような所?種類、入所基準、入所期間等を解説します。
第2 少年刑務所に収容されるのは、どんな場合?
通常、少年事件の手続きでは、家庭裁判所の審判によって少年の処遇が決定されます。
【関連記事】 「少年審判」とは? 手続の流れや、どんな処分が下されるか?
しかし、家庭裁判所が刑事処分相当と考えるときには検察官送致が選択され(いわゆる逆送)、成人と同じ刑事裁判で判決が下されます。
刑事裁判で実刑判決を受けた少年は、少年刑務所に収容されることになります。
裁判所が検察官送致を選択するのは、次の3つの場合です。
- 罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき
- 一定の重大な罪を犯したとき
- 少年審判の終局までに少年が20歳に達した場合
1つ目のケースの具体例としては、少年が犯罪を繰り返していて、少年院への収容では改善が見込めない場合などが挙げられます。
2つ目の一定の重大な罪について、従来は、16歳以上の少年が故意の犯罪行為で被害者を死亡させた場合に限定されていました。
その後、令和4年1月施行の改正少年法により、18、19歳の少年が、死刑、無期又は短期1年以上の懲役・禁錮の罪を犯した場合も含まれるようになりました。
具体的には、強盗罪、強制性交罪(いわゆる強姦)、強制わいせつ致傷罪、各種放火罪などが、新たに逆送の対象となりました。
改正前には、強盗罪を犯した場合でも、反省の態度や示談の経過によっては、少年審判で不処分となることもありましたが、現在の法律では、逆送されて刑事裁判を受けることになるのです。
3番目の少年が20歳に達した場合については、逆送後に実刑判決を受けても、少年刑務所ではなく成人の刑務所に収容されます。
第3 少年刑務所での生活
ここでは、少年刑務所での生活について詳しく解説していきます。
1 少年刑務所では何をするの?
少年刑務所は、懲役刑の執行のための収容施設なので、少年刑務所では刑務作業が生活の中心です。
(参考)🔗「刑務作業」(法務省のホームページ)
ただし、少年刑務所は、少年を成人の受刑者とは隔離して少年の特性に応じた処遇を行うことも目的としています。
そのため、更生のための教科指導や職業訓練も生活の中に組み込まれています。
教科指導では、基礎学力が不足している少年に対して、小中学校の義務教育に順ずる教育・指導を行います。
学力の向上を目指す受刑者は、高等教育に準じた教育を受けることも可能です。
一部の少年刑務所では、高等学校の通信課程を受けることもできます。
職業訓練では、木工、縫製、理容、農業など社会復帰してすぐに使えるスキルを身に付けられます。
刑務作業の中でも、職業訓練の意味合いも併せ持つ作業を担当できるように配慮されることもあるようです。
2 少年刑務所でのスケジュール
少年刑務所では、規則正しい生活が強制されます。
細かいスケジュールは、少年刑務所ごとに異なります。
概ね午前7時前には起床し、午前8時から午後5時ころまでが刑務作業や教科指導、職業訓練に充てられ、午後9時ころには就寝時間となります。
午後5時以降の時間は、読書をするなどの自由時間です。
自由時間には、テレビの視聴時間も設けられています。
3 少年刑務所での面会
少年刑務所では、家族や少年刑務所によって認められた人との面会も可能です。
家族以外であっても、学校の先生や雇用主などは面会が認められやすいです。
面会は無制限に認められるわけでなく、回数は月に2回以上、時間は1回あたり30分程度で、少年刑務所の判断による制限を受けます。
たとえば、川越少年刑務所では、面会は月に2~7回、面会時間は30分程度という制限がされています。
第4 少年刑務所に収容される期間
少年刑務所に収容される期間は、刑事裁判の判決によって決まります。
少年院については収容期間が決められていませんが、少年刑務所は、刑事裁判の判決の執行として収容される施設のため、収容される期間は判決で決められます。
少年刑務所に収容されるのは、重大事件を犯して逆送によって刑事裁判を受けた少年です。
そのため、少年刑務所に収容される期間は、長期間となるケースが多いです。
ただし、少年は、成人に比べて早期に更生する可能性があるため、少年を対象とした刑事裁判の判決では不定期刑が選択されます。
不定期刑とは、刑期を確定せずに言い渡す判決のことを言います。
少年を対象とした刑事裁判の不定期刑では、「懲役10年以上15年以下」といったように、長期と短期を定めた不定期刑が言い渡されます。
第5 少年刑務所に収容されるまでの手続の流れ
少年が刑事裁判を受けて、少年刑務所に収容されるまでの流れは次のとおりです。
1 逮捕・勾留
少年事件で逮捕・勾留されると、少年は、逮捕から勾留までに最大3日間、勾留で最大20日間の拘束(逮捕から勾留まで最大で通算23日間の拘束)を受けることになります。
勾留期間が終了すると、重大事件の被疑者であっても、いったんは家庭裁判所に送致されます。
2 家庭裁判所送致
少年の送致を受けた家庭裁判所では、少年に対する観護措置を決定します。
観護措置が決定されると基本的には4週間、少年鑑別所に収容されることになります。
家庭裁判所では、観護措置の期間中に少年が犯した犯罪の内容や家庭環境などの調査を行い、少年審判を開始するか、少年を検察官へ送致するかの選択をします。
3 検察官送致(逆送)
家庭裁判所による調査の結果、罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときには、少年審判ではなく検察官送致が選択されます。
1⃣16歳以上の少年が故意の犯罪行為で被害者を死亡させた場合、
2⃣18、19歳の少年が死刑、無期又は短期1年以上の懲役・禁錮の罪を犯した場合、
⇒ 【原則】として検察官送致の決定が行われます。
4 刑事裁判
検察官送致の決定を受けた少年は、成人と同じく刑事裁判によって判決が下されます。
刑事裁判で実刑判決を受けると、16歳以上20歳未満の少年は少年刑務所に収容されることになります。
第6 少年刑務所に収容されるのを避けるには?
少年刑務所への収容を避けるには、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
逆送の可能性がある少年事件では、成人の刑事手続きと同様に、取調べ対応や被害者との示談交渉が重要です。
逮捕・勾留によって身体を拘束された少年は、大きな不安を抱えることになるため、少年の味方としての弁護士の役割は大きなものがあります。
少年事件・刑事事件における弁護士の役割には、次のようなものが挙げられます。
- 逮捕・勾留からの早期釈放を目指す
- 被害者との示談交渉を行う
- 検察官や裁判所に有利な事情を提示する
弁護士は、取り調べに対するアドバイスを行ったり、外部との橋渡しになったりすることで、少年の不安を和らげ、少年が不適切な処分を受けることがないよう最大限の活動を行います。
お子さまが少年事件の被疑者となってしまった場合には、少年事件の経験が豊富な弁護士にご相談ください。
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