保護観察処分とは?(少年事件の手続)家庭裁判所の審判で言渡し
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少年審判により、「保護観察」と言われました。
これはどのようなものでしょうか? -
保護観察は、少年院や施設などに入らず、ある一定期間、決められた約束ごとを守りながら自宅で日常生活を送る処分をいいます。
この保護観察の間は、保護観察官や保護司による生活全般や交友関係などについて指導、支援を受けなくてはなりません。
期間中には、ボランティア活動(公共の場所における清掃活動、福祉施設での介護のお手伝い、壁面の落書き消しなど)に参加することもあります。決められる約束事(「遵守事項」と呼びます)としては、再び非行に走らないよう健全に生活態度を守る、定期的に保護観察官・保護司の面接を受ける、生活状況を申告する、引っ越したり旅行したりする場合には事前に許可を受けるなどの内容が挙げられます。
この遵守事項を守れない場合には、保護観察官による調査が行われ、場合によっては少年院に入らなくてはならない場合もあります。
第1 保護観察の内容
1 保護観察の内容
保護観察とは、少年を施設に収容せず、保護観察所の行う指導監督と補導援護(職業補導・就労援助、生活環境の改善・調整、生活指導等)によって、社会内処遇での改善更生を図る処分をいいます。
指導監督は、面接を中心に定期的に接触を持つ方法で行われ、保護観察所の保護観察官が直接行うこともありますが、多くの場合は、少年の住所がある地域を担当する保護司(民間ボランティア)に委ねられます。
そのため、少年が月に2,3回程度、担当の保護司のもとを訪問し、近況を報告し、様々な指導を受けます。
保護司は、保護観察官の指示や連絡に従って少年や少年の家族と接触、指導し、毎月1回、少年の状況を保護観察所に報告し(保護観察経過報告書)、再犯、所在不明などの特別な事故が発生した場合にも報告を行います(事故報告書)。
2 保護観察の種類と期間
保護観察の期間は、原則として少年が20歳に達するまでとされ、その期間が2年に満たない場合(少年審判時に18歳以上の場合)には、2年とされます。
ただし、保護観察所長は、少年について保護観察を継続する必要がなくなったと認める時は保護観察を解除するものとされ、また少年の改善更生に資すると認める時は、期間を定めて保護観察を一時的に解除することができるとされています。
種類 | 対象 | 実施期間 | |
1 | 一般保護観察 | 「2~4」以外の者 | 20歳まで (2年に満たない時は2年) |
2 | 一般短期保護観察 | 反社会集団に加入しておらず、非行性、資質、環境の問題点が大きくない者 (処遇勧告を受けた者) | 6~7か月 |
3 | 交通保護観察 | 「4」以外の交通事件の少年 | 6か月以降で解除を検討 |
4 | 交通短期保護観察 | 交通事件の少年で一般非行性が乏しく集団処遇に参加できる者 (処遇勧告を受けた者) | 3~4か月 |
たとえば、一般保護観察の場合、保護観察の成績が良好で、心身の状況や環境等に問題がなく保護観察を継続する必要がないと認められれば、概ね1年程度で解除となることが多いです。
3 遵守事項
保護観察に付された少年には、それぞれ遵守事項が定められます。
遵守事項には、一般遵守事項(健全な生活態度を保持すること、保護観察官・保護司の指導監督を誠実に受けること、一定の住居に居住すること等)と、犯罪の種類や少年の資質等に応じて特別に定められる特別遵守事項があります。
交通保護観察の場合は、交通法規をよく守ること等の特別遵守事項が定められます。
特別遵守事項は、保護観察所の長は、定められた特別遵守事項を記載した書面を少年に交付しなければならないとされます。
遵守事項については、これを守らないがために、少年院送致や児童自立支援施設・児童養護施設送致になる場合もあります。
🔗法務省HP「保護観察所」より引用
第2 保護観察の種類による保護観察の内容等
1 一般保護観察
一般保護観察の対象となるのは、一般事件(交通事件以外の事件)により保護観察に付された少年で、短期保護観察相当の処遇勧告がなされていない少年です。
一般保護観察における処遇内容は、保護観察開始時に保護観察対象者ごとに作成される保護観察実施計画に従い、保護観察官や保護司による指導監督・補導援護を中心として行われます。
段階的処遇制度(事件の重大性や処遇の難易度に応じて体系的な処遇を行う)は、保護観察対象者を4段階に区分し、それぞれに適した処遇を行います。
類型別処遇制度(保護観察対象者が抱える問題に対応した専門的処遇を行う)は、保護観察対象者をその問題性に応じて13種類に類型化し(薬物乱用、暴力団、暴走族、性犯罪など)、類型ごとに処遇指針を定め、その問題性に対応したきめ細やかな処遇を実施します。
この他に、社会貢献活動や社会参加活動の実施が定められた場合に、公共の場所での清掃活動や福祉施設での介護補助活動を行います。
2 一般短期保護観察
一般短期保護観察対象となるのは、一般事件(交通事件以外の)により保護観察に付された少年で、一般短期保護観察相当の処遇勧告がなされた場合です。
法務省の通達により、一般短期保護観察に付されるのは、非行を繰り返す恐れがあるものの、①非行性の進展がそれほど深くないこと、②資質に著しい偏りがないこと、③反社会的集団に加入していないこと、④保護環境が著しく不良でないこと、の4項目に該当し、かつ、特別遵守事項を定めず、一般遵守事項及び生活行動指針のみで処遇を賄うことができる少年であって、短期間の指導監督および補導援護により更生を期待できる者とされています。
一般短期保護観察では、①生活習慣、②学校生活、③就労関係、④家族関係、⑤友人関係、⑥その他の6つの指導領域の中から、当該少年の更生のためにとくに重要なものを選び、具体的な課題を設定して履行させ、その履行状況を毎月報告することが生活行動指針として定められることになります。
その報告に基づいて必要な指導・助言等がなされたり、高齢者の介護活動、創作・体験活動、清掃・環境美化活動等の社会参加活動を行ったりしています。
一般短期保護観察は、概ね6か月以上7か月以内の期間が経過すれば解除が検討されます。これに対し、10か月を超えて保護観察を継続する必要があるときは、保護観察決定をした家裁の意見を聞いたうえで、一般保護観察に切り替えられます。
3 交通保護観察
交通保護観察の対象となるのは、交通関係事件で保護観察に付された少年で、交通短期保護観察相当の処遇勧告がなされていない少年です。
少年事件の中でも、速度超過、無免許運転等の道路交通法違反、危険運転致死傷、自動車運転過失致死傷、車両運転による業務上過失致死傷、自動車の保管場所の確保等に関する法律違反などの交通関係事件は、事件数も多く、また、事件の特性に着目した処遇や教育的措置が必要であるといわれます。
そのため、交通保護観察については、できるだけ交通事件を専門に担当する保護観察官や、交通法規に通じた保護司等が担当するように配慮されています。
交通保護観察では、一般保護観察に準じた指導監督・補導援護(個別処遇)の他、必要に応じて交通法規、運転技術等に関する個別指導、交通道徳の涵養、運転技術の向上を図るための集団処遇が行われ、特別遵守事項としても、当該少年に適した交通に関する事項が定められます。
交通保護観察は、概ね6か月経過後に解除が検討され、一般保護観察よりも短期間で解除する運用となっています。
4 交通短期保護観察
交通短期保護観察の対象となるのは、交通関係事件で保護観察に付された少年で、交通短期保護観察相当の処遇勧告がなされた少年です。
法務省の通達により、交通短期保護観察に付されるのは、非行を繰り返す恐れがあるものの、①一般非行性がないか、またはあってもその進度が深くないこと、②交通関係の非行性が固定化していないこと、③資質に著しい偏りがないこと、④対人関係に特に問題がないこと、⑤集団処遇への参加が期待できること、⑥保護環境が特に不良でないことの6項目に該当し、かつ、特別遵守事項を定めず、一般遵守事項及び生活行動指針のみで処遇を賄うことができる少年であって、短期間の指導監督及び補導援護により更生を期待できる者とされています。
交通短期保護観察は、保護観察所において保護観察官が直接、交通講習等の集団処遇を行い、少年に毎月の生活状況を報告させる方法によって行われます。
担当保護司は指名されず、個別処遇も行われません。
集団処遇は、保護観察期間内に1回から数回行われ、単なる交通講習にとどまらず、集団の相互作用により少年の態度の変容を図ることに主眼を置いた指導がなされます。
交通短期保護観察は、概ね3か月以上4か月以内の期間が経過すれば解除が検討されます。
6か月を超えて保護観察を継続する必要があるときは、保護観察決定をした家裁の意見を聴いたうえで、交通保護観察に切り替えられます。
交通短期保護観察は、担当保護司が指定されず、処遇内容も個別処遇が行われず集団処遇だけですので、通常イメージする保護観察とは大きく異なります。