少年事件に強い弁護士 今できるサポートを
ブログ

「試験観察」とは?少年・保護者や付添人(弁護士)は何をするか?

試験観察とは、どのような処分をいいますか?

家庭裁判所は、保護処分を決定するために必要があると認めるときに、決定をもって、相当の期間、少年を調査官の観察に付することができます(少年法25条1項)。

この調査官の観察に付すことを試験観察と呼びます。

審判日において、少年を直ちに保護観察処分に付すにはまだ再非行の恐れが大きいと思われる一方、少年院送致決定まで行わずとも更生の可能性がありそうという場合になされる中間処分になります。
このような特性から、試験観察は、少年院と保護観察の判断で迷うような場合に、少年院送致をギリギリ避ける場合に選択されるというイメージが強いです。

審判において試験観察が付される場合には、試験観察期間を終えた後に再度審判が開かれ、試験観察期間の結果を踏まえ、再度の審判において、保護観察や少年院送致などの結果が決まっていく。
試験観察が行われる場合の流れ(試験観察を経て、再度審判が開かれる)

付添人(弁護士)や家庭裁判所調査官が、相当の期間、少年を指導、監督、教育して要保護性(再犯の恐れ)の解消、軽減を図り、結果が良好であれば保護観察不処分がなされます。

これに対して、結果が不良であれば、少年院送致が終局処分としてなされます。

少年事件の全体の流れにおける試験観察の位置付け

このような特性から、以下のような場合が、積極的に活用されるイメージです。

【試験観察が活用される具体的例】

  • 保護処分の種別を決定するには時期尚早のため、少年の調査を継続したい場合
  • 少年院送致前に少年の社会内での更生可能性を見出せそうな場合

第1 試験観察の方法

1 種類

 試験観察には、在宅で行う在宅試験観察と、適当な施設や団体に補導を委託する補導委託とがあります。

 さらに補導委託には、少年を自宅等に居住させながら、保護司、児童委員などに補導を委託する「補導のみ委託」と、補導委託先に居住しながらの補導を委託する「身柄付き補導委託」があります。

試験観察の方法には、在宅で行われるものと、補導のみを委託する補導のみ委託、身柄も含めて委託をする身柄付き委託とが用意されています。
試験観察の方法~在宅と補導委託がある

2 在宅試験観察

在宅試験観察とは、少年が自宅等で居住しながら行われる試験観察のことです。

少年は、定期的に家庭裁判所において調査官との面接を行うほか、日記、反省文などの課題が課されることもあります。

3 補導委託

補導委託先は、各地の家庭裁判所が独自に開拓した篤志家等によって成り立っています。

ただ、近年は、補導委託先が減少しており、補導委託先の空きがないとの理由で補導委託を前提として試験観察を行うことができないという事態も発生しています。

そのため、補導委託による試験観察を検討する場合、補導委託先を自身で見つける努力も時に必要となります。

身柄付き補導委託

身柄付き補導委託には、委託先で働くタイプ(飲食店や建築業、クリーニング工場等)と、委託先から勤務先や学校へ通勤・通学するタイプ(教会や更生保護施設、自立援助ホーム等)があります。

4 試験観察の期間

一般的には、在宅試験観察の場合には3~4ヵ月程度が目安となります。

これに対して、補導委託の場合には、補導委託先での生活に慣れる期間が必要となるために、4~6ヵ月程度が目安になります。

ただ、あくまでも目安であり、中には1年を超えるものもあります。

第2 試験観察中の当事者・関係者のすること

1 少年

この試験観察の結果によって、審判の結果が変わりますので、今一度生活を見直す機会にして欲しいと思います。

身柄拘束をされていた事件では、いったん拘束が解かれることによって、気が緩み、非行を行っていた仲間との交流を再開させるなどの問題行動を起こすことがありますので、特に注意が必要です。

2 両親、親族等

少年の問題点や更生に必要な支援、援助が何であるかを付添人と共に共有し、少年の更生に必要な協力を行っていきます。

3 家庭裁判所調査官

調査官は、定期的な面接を行います。
そのうえで、遵守事項を定めたり、条件を付けたり、日記・反省文などの宿題を課すなどの行為を通じて、少年の観察を行います。

調査官の報告を基にして、審判が決まるといっても過言ではありません。

特に問題行動等がなければ、おおむね保護観察処分となり、場合によっては不処分となります。

第3 試験観察における付添人(弁護士)の活動

1 試験観察を目指す付添人活動

弁護士(付添人)の視点として、少年院送致をギリギリ避ける場合に主張する場合が想定できます。

その場合、非行の内容(被害結果、少年の関与の程度)、少年の反省状況示談交渉の状況からして少年院送致は重過ぎる点を主張します。

さらに、この少年の具体的な状況からすれば少年院送致などの終局処分を直ちにするよりも、引き続き、調査官による調査や付添人を含む関係者による働きかけや環境調整を行った方が、少年の立ち直りが見込めるし、少年にとってよりよい終局処分が期待できることを主張します。

2 試験観察中の付添人活動

弁護士(付添人)は、少年本人、保護者(両親)、家庭裁判所調査官との連絡をとって情報を共有します。

基本的には、少年と保護者の環境調整の成果を、調査官と正確に共有し、終局処分を見据えて積極的に裁判所に情報を提供します。

最終審判の期日が決まったら、終局処分について、調査官や裁判官と事前に協議し、付添人の意見を提出します。

家庭裁判所への送致後
少年審判手続における当事者
「少年審判」とは?手続の流れや、どんな処分が下されるか?
家庭裁判所への送致後
保護観察処分とは?(少年事件の手続)家庭裁判所の審判で言渡し
家庭裁判所への送致後
少年鑑別所に収容されるケースとは?流れや所内での生活について解説
家庭裁判所への送致後
少年院(保護処分)
少年院~どのような所?種類、入所基準、入所期間等を解説します。
家庭裁判所への送致後
少年刑務所への収容とは?少年院との違い、手続の流れや生活について
家庭裁判所への送致後
少年審判手続の弁護士による解説
少年審判の手続~進行手順や弁護士と共に準備すべきことは?
家庭裁判所への送致後
少年事件における刑事裁判と保護処分の違い。
少年の刑事(逆送)事件における弁護活動~成人事件や少年保護事件との相違点 
保護観察事例
少年事件の審判例、刑事裁判事例を紹介、解説します。
窃盗(万引き)で第1種少年院送致が取消され、保護観察となった事例
保護観察事例
少年事件の審判例、刑事裁判事例を紹介、解説します。
被害者の背部を飛び蹴りして金品を奪った強盗保護事件で、少年院送致とした原審を取り消した事例(差戻審で保護観察に)
保護観察事例
少年事件の審判例、刑事裁判事例を紹介、解説します。
強制わいせつ事件の少年院送致が処分不当で取り消され保護観察となった事例
保護観察事例
少年事件の審判例、刑事裁判事例を紹介、解説します。
窃盗等での少年院送致が取消 ⇒ 保護観察とされた事例