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少年審判の手続~進行手順や弁護士と共に準備すべきことは?

少年事件における「少年審判」手続を解説します。

少年審判に臨むあたっては、付添人(弁護士)とともに事前準備を行うことが必要不可欠です。

この記事でその理由を詳しく説明します。

第1 審判の準備の重要性

少年事件では、全ての事件が家庭裁判所へ送致されます(全件送致主義)。

家庭裁判所では、裁判官による記録の精査、調査官による調査、観護措置の要否の判断、鑑別技官による鑑別等が行われつつ、これらと並行しながら、審判開始をするか否かが判断されます。

審判開始決定がされると少年審判手続の中で、少年に対する処分が言い渡されます。

裁判官は、少年審判手続が始まる前から、もっといえば家裁送致された段階から記録に目を通すことができます。

そして審判開始決定がされた事案では、記録を読み込み、調査官の意見も聞いているので、審判が始まる前から処分の結論が決まっていることがほとんどです。

そのため、家庭裁判所への送致前後から十分な準備をすることが非常に大切になってきます。

なお、非行事実を否認する事件の場合は手続きの流れが異なってくるので、以下では、非行事実を争わない事件を前提にしています。

少年審判手続の流れを解説しました

第2 家庭裁判所送致の事前確認

事件が家庭裁判所に送致されると、裁判官調査官は、記録に目を通すことが可能になります。

記録は基本的に捜査機関が集めた証拠や資料が中心になるので、こちらの言い分が反映されているとは限りません。

伝えたい事項がある事案では、早期に何らかの申し入れを検討する必要があります。

そのため、家裁送致日事前に把握しておくことが重要です。

家裁送致には、警察や検察などの捜査機関からの送致、児童相談所からの送致などがありますが、当然に家裁送致日を事前に教えてくれるわけではありません。

検察庁に送致されている事件であれば、担当検察官が教えてくれることはあります。

勾留されている事件であれば勾留期間の満期日までに家裁送致されるのである程度の予想はできます。

しかし、勾留されていない在宅事件ですと、事前連絡なしに知らない間に家裁送致されていることがあります。

そのため、担当検察官へのこまめな確認が必要です。

児童相談所が家庭裁判所に送致する場合も、こまめな確認が必要なことは同様です。

もっとも、家裁送致日の特定の日ですら教えてもらえないこともあります。

第3 家庭裁判所送致の後

1 裁判所の動き

事件が家裁送致され受理されると、事件の配転などのほか、調査官による受理選別(インテイク)が行われます。

この段階で、少年や保護者に書面照会を行う書面照会事件か、書面照会に加え短時間の面接を行う簡易面接事件か、通常の調査を行う事件かなどに選別をするとされています。

選別ののち、裁判所が具体的な調査に進むことになります(少年法8条)。

この選別の段階や調査の初期の段階で、観護措置を取るべきかという判断もなされます。

その観点からしても、観護措置が懸念される事案では、家裁送致の早い段階で観護措置をしないよう申し入れることも考えられます。

2 観護措置

勾留されている場合

勾留されている事件では、少年が家裁に到着してから24時間以内観護措置をしなければならないとされています(少年法17条2項)。

そのため、家裁裁判所送致日当日に、裁判官が審問手続を行い観護措置をとるかいなかを決定します。

したがって、観護措置をとられないようにするためには、事前に家庭裁判所送致日を確認し、家裁送致日当日前に、観護措置をとるべきではない意見書の提出準備証拠の提出準備をしておく必要がありますし、家裁送致日当日は裁判官と面談する等の時間をできるだけ確保できることが望ましいです。

この観点からしても、家裁送致日を事前に確認しておくことが非常に重要になってきます。

在宅事件(勾留されていない場合)

身体拘束されていない在宅事件である場合、観護措置をとられない事案が多いです。

もっとも、家庭裁判所が観護措置をとる必要があると判断した時は、観護措置をとられてしまうことがあります(「身柄引上げ」などと呼ばれることがあります。)。

身柄引上げがされる場合には裁判官が少年に対して審問手続を行う必要がありますので(少年審判規則19条の3)、まず家庭裁判所に呼び出され、観護措置の決定がされた場合にはそのまま少年鑑別所に収容されることになります。

身柄引上げがされるかどうは事案によりますが、家裁送致後から間もない時期に家庭裁判所から呼出しの通知があった場合には注意が必要です。

呼出の趣旨が、調査官などが少年や保護者と面談して事件のことなどを聞きたいというだけの話なのか、身柄引上げを検討している全体なのか、確認をする必要があります(ただし、積極的に事前に教えてくれない可能性はあります。)。

在宅事件で、身柄引上げを裁判所が検討している事件においても、呼び出される日より前に、観護措置をとるべきではない意見書の提出準備、証拠の提出準備をしておく必要がありますし、家裁送致日当日は裁判官と面談する等の時間をできるだけ確保できることが望ましいことは勾留されている事件の場合と同様です。

記録の閲覧謄写

事件が家裁送致されると家庭裁判所にある記録の閲覧謄写をすることが可能になります(少年審判規則7条の2)。

警察署などで供述調書を作成している場合にはその内容が自分の言い分を反映しているものなのか、どういった証拠が存在するのかを知ることができるようになります。

調査官は記録を見ることができるため、記録を十分に検討した上で面接が行われます。

調査官との面接等にあたっても事前に情報格差を埋めることは重要といえます。

そのため、早い段階で記録の閲覧謄写をするべきといえるでしょう。

もっとも、審判開始決定前は、裁判所の許可を得なければ、閲覧謄写が認められないため、必ず記録を閲覧謄写できるとは限りませんので、注意が必要です。

また、審判開始決定後の許可を要しない閲覧謄写は付添人にのみ認められており、付添人から少年や保護者に伝えられる事項には制限が生ずることもあるので、留意は必要です(少年審判規則7条3項)。

観護措置について解説しました

第4 少年鑑別所による鑑別

1 鑑別とは?

少年事件では、家庭裁判所の求めに応じて、少年鑑別所鑑別を行うことがあります(少年鑑別所法17条1項1号)。

鑑別においては、「医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識及び技術に基づき、鑑別対象者について、その非行又は犯罪に影響を及ぼした資質上及び環境上問題となる事情を明らかにした上、その事情の改善に寄与するため、その者の処遇に資する適切な指針を示す」とされています(少年鑑別所法16条1項)。

調査すべき事項として「その者の性格、経歴、心身の状況及び発達の程度、非行又は犯罪の状況、家庭環境並びに交友関係、在所中の生活及び行動の状況(鑑別対象者が在所者である場合に限る。)その他の鑑別を行うために必要な事項に関する調査を行う」とされています(少年鑑別所法16条2項)。

調査方法としては、「鑑別を求めた者に対して資料の提出、説明その他の必要な協力を求める方法によるほか、必要と認めるときは、鑑別対象者又はその保護者その他参考人との面接、心理検査その他の検査、前条の規定による照会その他相当と認める方法により行う」とされています(少年鑑別所法16条3項)。

少年鑑別所について解説しました

2 鑑別の内容とは?

観護措置を取られた場合

鑑別では、入所後にすぐ行われる、身体検査面接心理検査に基づいて鑑別方針が設定され、各少年に応じた鑑別が実施されることになります。

その後、さらに面接や個別検査を行うこともあります。

さらに、少年に関する対人関係の特徴を把握するため、行動観察が行われることもあります。

在宅(観護措置がない)場合

在宅事件においても、鑑別が行われることがあります(在宅鑑別)。

この場合、少年が少年鑑別所等に来所する方法で行われます。

3 鑑別判定について

調査を終えると、鑑別所としての結論が判定会議にて決定(鑑別判定)されます。

判定会議では、少年審判のおおよそ1週間前に行われるとされています。

鑑別判定では、鑑別対象者の、心身の状況や、行動観察の特徴資質上環境上の問題点、問題点を改善するための必要な処遇等について判定がされます。

必要な処遇等には、保護観察収容保護など、少年審判の結論と同じような判定が出されます。

家庭裁判所も、鑑別判定の内容を参考にはしますが、拘束力はありませんので、鑑別判定と同じ結論に少年審判がなるとは限りません。

4 鑑別結果通知書

鑑別の結果については、鑑別結果通知書にまとめられ家庭裁判所に提出されます(少年鑑別所法17条2項)。

家庭裁判所の少年調査票(社会記録)につづられることになります。

鑑別結果通知書は付添人も閲覧することができますので、少年審判の準備にあたって閲覧を検討する必要があります。

第5 家庭裁判所調査官による調査

1 書面による照会

家庭裁判所調査官による調査が始まると、書面による照会が行われることがあります。

家庭裁判所から書面が届き、質問事項に回答するよう求められることになります。

少年に対する照会書には、非行事実の事件を起こしたことに間違いはないか、事件の原因や今事件に対して考えていることなどの質問が記載されていることが多いです。

保護者に対する照会書には、少年や保護者の経歴、保護者から見た少年の性格、保護者の事件に対する認識などの質問が記載されていることが多いです。

書面による照会に対する回答にあたっては、自責の念に駆られて自分のことをやってもいない事やったなどと書いて悪く見せたり、本当は書くべきプラスになる事情を遠慮して書かなかったりすることがないように注意が必要です。

家庭裁判調査官は書かれていることを基本的にそのまま受け止めるからです。

その意味では、書面による照会に対しても十分に準備をする必要があるでしょう。

なお、この書面による照会は、少年や保護者だけではなく、被害者に対して行われることもあります。

2 少年との面接

通常、面接が必要と考えた事件では、書面による照会が行われた後に調査官との面接も実施されます。

面接の内容や回数は事案によります。

非行事実の事件をしたかどうか、事件の原因は何か、これからどう生活をしていけばよいかといった点は聞かれる可能性が高いです。

面接の中で、さらに書面などによって課題を与えられ、次回の面接までに回答を求められるようなこともあります。

在宅事件の場合でも、この面接に、付添人の同席が認めらないことがほとんどです(事案によっては調査の最初と最後だけ同席が認められることがあります。)。

書面による照会と同様ですが、家庭裁判調査官は、話したことを基本的にそのまま受け止めます。

自責の念に駆られて自分のことをやってもいない事をやったと話して悪く見せたり、本当は話すべきプラスになる事情を遠慮して話さないといったことがないように注意する必要があります。

3 保護者との面接

少年に対する面接が行われる場合、保護者に対する面接も実施されるのが通常です。

面接の内容や回数は事案によります。

少年の面接と同様ですが、少年の生活状況や性格などの資質、保護者が考える非行事実の事件の原因は何か、これからどう少年を指導監督していけばよいかといった点は聞かれる可能性が高いです。

注意点は少年との面接と同様です。

4 意見書の作成

これらの調査や、家裁から送致された記録、鑑別所の鑑別結果、他の機関等への照会を経て、家庭裁判所調査官は少年調査票を作成していきます。

最終的には、少年に対する処遇に関する意見書を作成します。

この意見書には、審判が開始された事案であれば、少年になされるべき処分の内容不処分保護観察少年院送致など)がその理由とともに記載されます。

そして、この意見書は、裁判官が少年審判手続において言い渡す審判(結論)に大きな影響を与えます。

その意味で、調査官による調査は非常に重要となります。

第6 審判開始決定

家庭裁判所に送致されたのち、いずれかの段階で、裁判官による事件の審理を行うかどうか、審判を行うべきかが判断されます。    

観護措置を取られている事案では、調査官への調査命令発令と同時に審判開始決定がされています。

在宅事件であれば、家裁送致後のどこかの段階で判断がなされることになります。

審判不開始には「審判を付することができない」場合の形式的不開始(少年法19条1項前段)と、「審判に付することが相当ではないとき」の実体的不開始(少年法19条1項後段)とがあります。

実体的不開始には、①事案軽微、②別件保護中、③保護的措置による要保護性の解消(裁判官が行う審判手続を経なくとも問題がない)といった場合が考えられます。

在宅事件であれば実体的審判不開始を目指すことが考えられるでしょう。

③保護的措置による要保護性の解消が考えられる事案では、家庭裁判所調査官による、少年や保護者に対する書面照会や面談などの調査等を経て、審判開始決定をするかが判断されることがあります。

もっとも、審判開始の要否については、裁判官や調査官がすでに記録を検討し、結論を決めている、そこまでいかなくとも方向性を定めている場合もあります。

そのため、調査官に率直に方向性を尋ねる、審判不開始が相当であると考える意見書や裏付けとなる資料を早期に提出する必要があります。

第7 審判開始決定後

1 記録の閲覧謄写

審判開始決定後は、実際の審判手続への準備を進めていくことになります。

既に述べたとおり、審判開始決定前は、裁判所の許可を得なければ、閲覧謄写が認められませんが、審判開始決定後は(付添人に関しては)要許可事項ではなくなります。

審判開始決定前に記録を閲覧謄写している場合でも、もう一度記録を確認することが重要になってきます。

2 少年調査票(社会記録)の閲覧

審判開始の数日前には、調査官の意見書も作成され、少年調査票社会記録)が完成されています。

既に述べたように調査官の意見書には、少年の処分についての意見やその理由が記載されており、裁判官もその意見を重視しますから、審判の準備にあたってその閲覧は非常に重要になります。

調査官の意見問題意識を踏まえたうえで、審判手続当日の発言などについて準備することが考えられます。

なお、実務上、少年調査票の謄写は認められていないので注意が必要です。

また、付添人から少年や保護者に伝えられる事項には制限が生ずることもあります(少年審判規則7条3項)。

3 意見書や証拠の提出

既に述べたように審判当日にはすでに裁判官は記録を読み込み、少年に対する処遇も決めていることがほとんどです。

そのため、特に裁判官や調査官と意見が異なる場合には、審判手続当日より前に、意見書を出して調査官や裁判所を説得する必要があります。

意見書を出す時期、回数に制限はありません。

最終的には、少年調査記録を閲覧し、意見書を出すことになりますが、それより前に早めに暫定的な意見書や証拠を出しておくことも十分検討に値します。

第8 調査官や裁判官との面談

家庭裁判所送致の直後、調査官による調査が重点的に行われている期間、審判開始決定前、審判開始決定後から審判までなどタイミングは様々ですが、付添人が、調査官や裁判官に面談を申し入れ、直に意見を伝え協議することが重要になってくることもあります。

意見書や裏付けとなる証拠の提出に加え、実際にコミュニケーションを取り、裁判官や調査官の問題意識を感じ取ることができる場合もあります。

審判や調査官調査の準備としても有用なことがあります。

とくに裁判官は、記録こそ読み込んでいますが、(観護措置の手続を除いては)審判期日当日まで、少年や保護者と直接会うことは、まずありません。

そのため、少年や保護者のキャラクターをつかめていません。

裁判官との面談では「緊張しやすい性格なので、少年には○○というような質問をしてほしい。」、「□□と聞くとうまく答えが出てこないと思うので△△という聞き方をしてほしい。」、「■■について聞いてほしい。」といった話を事前にしておくことで、審判期日当日の質問と受け答えがうまく進むこともあります。

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