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幇助犯とは?共同正犯との違いと成立要件・実務上の争点

「頼まれて手伝っただけなのに、共犯として逮捕された」
刑事事件では、幇助犯(従犯)か、共同正犯かによって、結果は大きく変わります。

幇助犯は、正犯よりも刑が必ず軽くなる一方で、その成立範囲は広く、判断を誤ると不当に重い責任を負わされかねません。

本記事では、幇助犯の基本構造から、実務上争われる論点、判例・裁判例の傾向、そして刑事弁護の現場で重視される防御ポイントまでを、弁護士の視点で詳しく解説します。

※ 本記事は、一般的な考え方や運用等をご紹介するもので、全てに賛同するわけではありません。

※ また、公開日の情報を基に作成しています。

幇助犯(ほうじょはん)の概念と仕組みを示す図解イラスト。正犯(実行行為者)の実行行為に対し、幇助犯(従犯)が物理的(道具提供・見張り等)または心理的(助言・激励等)な幇助行為を行うことで、その実行を促進・容易化し、犯罪結果(法益侵害)に至る因果関係の流れを矢印で示している。また、右下の枠内で「共同正犯との違い」として、共同正犯は「自己の犯罪」として実行(正犯意思あり)、幇助犯は「他人の犯罪」を手伝う(正犯意思なし・従属性)という比較も図示されている。
幇助犯は、正犯の実行行為を「手助け」する役割です。
物理的な提供だけでなく、心理的な後押しも含まれます。

1 幇助犯(従犯)の概要

幇助犯とは、正犯者が犯罪を実行しようとする際に、その実行行為以外の行為によって正犯の実行を容易にさせることをいいます。

刑法上は「従犯(じゅうはん)」と呼ばれ、共同正犯や教唆犯とは異なる独自の役割を担う共犯形式です。

(1) 広義の共犯と狭義の共犯

日本の刑法体系において、2人以上が犯罪に関与する形態は「広義の共犯」と定義されます。

ア 共同正犯(刑法60条)

「2人以上共同して犯罪を実行した者」であり、全員が「正犯」として扱われます。

イ 狭義の共犯(教唆・幇助)

これに対し、教唆犯と幇助犯は「狭義の共犯」に分類されます。

これらは、正犯者の存在を前提として初めて成立するものであり、正犯に対して「従属的」な地位にあるものと解されています。

(ア) 教唆犯(刑法61条)

「人を教唆して犯罪を実行させた者」です。

他人に犯罪を実行する決意を生じさせる行為を指し、正犯と同じ刑が科されます。

(イ) 幇助犯(従犯・刑法62条)
  • 「正犯を幇助した者」を指します。
    • 実行行為を行っていない点で共同正犯と区別されます。
      • 厳密には、共謀共同正犯との区別は別途問題になり得ます。
        • この点は、自己の犯罪を行う意思(正犯意思)の有無で区別するのが有力といってよいでしょう。
    • 実行行為者の決意の存在が前提となっている点で教唆犯と区別されます。
  • 手段・方法
    • 他人の犯罪を手伝う意思(幇助の故意)を持って、有形(道具や場所の提供など)・無形(情報の提供など)の手段により、正犯の実行を容易にする行為です。
      • 作為・不作為(作為義務を前提とするのが一般的理解)も問わないとされます。
      • 多様かつ不限定になるため、処罰に値するものか限定する作業が重要になると考えられています。

(2) 刑罰の規定(刑法62条・63条)

幇助犯の法的根拠は以下の条文に定められています。

ア 刑法62条(幇助)

ほう助)
第62条
1 正犯をほう助した者は、従犯とする。
2 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。

1項において「正犯を幇助した者は、従犯とする」と規定されています。

また、2項では「従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する」としています。

イ 刑法63条(従犯減軽)

(従犯減軽)
第63条
従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。

「従犯の刑は、正犯の刑を減軽する」と定められています。

これは、幇助犯が「他人の犯罪」を手伝ったにすぎないため、正犯よりも責任が軽いことを反映した「必要的減軽」規定です。

2 幇助犯が処罰される趣旨・理論的根拠

なぜ自ら直接手を下していない者が処罰されるのか、その実質的な理由は刑法学上の重要な論点です。

(1) 処罰の根拠:因果的共犯論(惹起説)

現在の通説は、幇助犯の処罰根拠を「因果的共犯論(惹起説)」に求めています。

ア 基本的な考え方

  • 幇助犯が処罰されるのは、その者の行為が、正犯者の実行行為を媒介として、法益侵害という結果(犯罪結果)との間に因果性を持つためと考える立場です。
  • 法益を直接侵害した正犯を助けることで、間接的に法益を侵害した点に非難の根拠があります。
    • ただし、幇助には、物理的な因果性のみならず心理的な因果性も問題になるため、ここでいう因果性は、結果と行為の相当因果関係とまでの意味合いとまでは考えられていないように思います。
  • 因果性については、結果を促進・容易にしたかという観点から考える立場が有力とされています。
    • 「幇助行為が実行を容易にしたかという因果関係」と説明されることもあります。

イ 責任共犯論との対立(歴史的経緯)

  • かつては、共犯者が正犯者を犯罪に引き込み、その人間を堕落させた点に処罰根拠を求める「責任共犯論」が唱えられていました。
  • しかし、現在では、正犯者が有罪か否かに関わらず、違法な法益侵害を惹起した事実を重視する因果的共犯論が主流となっています。

(2) 因果性の二つの側面

因果的共犯論に基づけば、幇助行為は正犯者の行為を「容易に」したり「促進」したりする必要があります。

ア 物理的因果性

  • 犯行に必要な道具(凶器や合鍵)の提供や、犯行現場への送迎など、物理的に実行を容易にする場合を指します。
  • 実際にその道具が犯行に使われた場合、物理的因果性が認められます。

イ 心理的因果性

  • 助言や激励により、正犯者の犯意を強化・維持させ、犯行を実行しやすくする心理的影響を指します。
  • 例えば、見張り役が現場にいることで正犯者が安心して犯行を遂行できた場合、物理的な手助けがなくても心理的な因果関係が認められることがあります。

3 幇助犯の成立要件に関する学説と判例の議論

幇助犯の成立には、客観的要素と主観的要素の両方が必要です。

(1) 幇助行為の内容

幇助行為は非常に多様であり、道具や場所の提供といった「物理的幇助」だけでなく、助言や激励により正犯の犯意を強める「心理的幇助」も含まれます。

ア 物理的幇助の例

  • 犯行に不可欠な道具(凶器や合鍵)を貸し出す、犯行現場まで車で送迎する、見張りを行うなどの行為です。

イ 心理的幇助の例

  • 正犯者の犯行の決意を強化したり、精神的に勇気づけたりする行為です。
  •  判例(大判昭7.6.14刑集11巻797頁)では、殺意を有する者を激励したケースで幇助の成立を認めています。
  • また、見張り役が現場にいることで正犯者が安心して実行できる場合も、心理的幇助(犯意の維持・強化)にあたると解されています。

(2) 幇助行為と因果関係(客観的要件)

判例によれば、正犯の実行を「容易にした」あるいは「促進した」といえる程度の関連があれば足ります。

ア 因果関係の程度

  • 正犯が既に犯行を決意していても、その実行を容易にしたのであれば幇助は成立します。 また、幇助行為がなければ犯罪が成立しなかったという強い条件関係までは不要とされています。
  • 東京高判平2.2.21判タ733号232頁
    • 犯行予定場所の倉庫の音が漏れないように目張り行為をしたところ、正犯者が計画を変更して当該倉庫を使用せずに犯行に及んだ事案
      • 「被告人の目張り等の行為が、それ自体、Aを精神的に力づけ、その強盗殺人の意図を維持ないし強化することに役立ったことを要する」「被告人の目張り等の行為がそれ自体Aを精神的に力づけ、その強盗殺人の意図を維持ないし強化することに役立ったことを認めることはできない」として、幇助の成立を否定しました。
    • 正犯者が目張り行為の事実を認識した事実も認定されず、心理的因果性も肯定しえない事案でした。

イ 不作為による幇助

  • 何もしないことが幇助にあたるためには、その者に犯罪を阻止すべき「作為義務」があることが前提となります。
  • 不作為の幇助を肯定した例として、札幌高判平成12.3.16判タ1044号263頁があります。

(3) 幇助の故意(主観的要件)

ア 幇助行為の認識と幇助の意思

幇助犯が成立するためには、客観的幇助行為を行う認識に加え、正犯を幇助する意思が必要とされています。

イ 幇助の意思の内容

  • 幇助する意思とは、正犯の実行行為と結果を認識するとともに、自己の幇助行為が正犯の実行を容易にすることを認識することと考えられています。
  • 最決平29.12.25判タ1447号70頁
    • 殺人未遂の幇助の意思が争点となった事案で、「「人の殺傷が生じ得ること」を想起することが可能であるというにとどまり抽象的な結果発生の認識可能性をいうものにすぎ」ない等指摘して一審の判断を覆し、幇助の意思を認定できないとした控訴審の判断を是認した事例があります。

4 幇助犯をめぐる主要な論点と裁判例の傾向

(1) 片面的幇助

  • 正犯者が、自分が助けられていることを知らない場合に幇助犯が成立するかという問題です。
  • 例えば、正犯者が気づかないうちに、犯行現場の鍵をあけておく行為などがこれに該当します。
  • 判例(大判大14.1.22刑集3巻921頁)は、正犯者が賭博場を開くことを知って、正犯者に何も告げずに客を案内した行為について、賭博場開帳罪の幇助を認めています。

(2) 中立的行為による幇助(日常的行為の幇助)

  • 「道具屋が泥棒に包丁を売る」「タクシー運転手が強盗犯を現場まで運ぶ」といった、日常的・業務的な行為が幇助になるかという、近時の最重要論点の一つです。
    • 「ソフトウエアの提供」や「日常的な商品の販売」が犯罪に利用された場合に幇助犯となるかが争点となります。
    • 日常的・業務的な行為が幇助となり、可罰性を有するとすれば、日常生活・企業活動等の業務が委縮することになることから、範囲を限定する必要があります。
  • Winny事件最高裁決定(最決平23.12.19刑集65巻9号1380頁)
    • 著作権侵害に利用可能なソフトを公開した行為につき、最高裁は当該ソフトの性質を検討した上、以下の基準を示しました。
      • まさに技術開発を委縮させるリスクをはらんだ事案でした。
    • 判旨では以下のような要件が示されました(但しその射程は慎重に捉える必要があります)
      • (事案で問題となったソフトの性質を検討の上)かかるソフトの提供行為について,幇助犯が成立するためには,一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況が必要であり,また,そのことを提供者においても認識,認容していることを要するというべきである。
        • ソフトの提供者において,当該ソフトを利用して現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識,認容しながら,その公開,提供を行い,実際に当該著作権侵害が行われた場合
        • 当該ソフトの性質,その客観的利用状況,提供方法などに照らし,同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で,提供者もそのことを認識,認容しながら同ソフトの公開,提供を行い,実際にそれを用いて著作権侵害(正犯行為)が行われたとき
    • 最高裁で無罪が確定しています。

5 共同正犯と幇助犯の区別(幇助犯区別型)

実務上、最も激しく争われるのが、「共同正犯か幇助犯か」という点です。

(1) 判断の分水嶺:正犯意思

裁判実務では、その犯罪を「自己の犯罪」として行ったのか(正犯意思)、「他人の犯罪」を手伝ったにすぎないのか(幇助意思)が区別の基準となります。

(2) 具体的な考慮事情

この基準については様々な見解がありますが、裁判実務では、主観説を採用し、主に、以下の事情に、犯罪の性質・内容を総合的考慮して判断していると考えられています。

  • ① 共謀者と実行行為者との関係
    • 組織関係
    • 上下関係
    • 勧誘・被勧誘
  • ② 犯行関与の動機・経緯
    • 犯罪の実現に向けた利害関係の有無・程度
    • 利得の有無・金額・割合
    • 積極性
  • ③ 共謀者と実行行為者との意思疎通の状況
  • ④ 共謀者の具体的役割の内容
    • 分担行為の重要性
    • 非代替性
  • ⑤ 施行前後の徴憑行為
    • 犯跡隠ぺい行為
    • 分け前の約束と実際に受け取った金額・割合
    • 実行行為者からの事後報告
    • 実行行為後に続く行為への参加等

6 弁護士から見た課題と実務対応

(1) 幇助といえるかの検討

幇助は、有形・無形・作為不作為を問わず、物理的因果性のみならず心理的因果性を有する場合にも認められ得るとされています。

そのため処罰範囲が拡大しがちな傾向があります。

当該事案で、因果性を有するものといえるのか、作為義務があると言えるのかなど十分な検討が求められます。

(2) 正犯性を争う

強盗や殺人の「共同正犯」として起訴された場合でも、その役割が従属的であることを示すことで、判決において「幇助犯」へと認定落ちを主張することが考えられます。

これにより、必要的減軽(刑法63条)を適用させ、実質的な刑期の大幅な短縮を目指します。

正犯性を争う際には、正犯意思がないことを、既に述べた考慮要素と考えられている事情の観点から緻密に検討することが求められます。

(3)「故意」の立証をめぐる困難

幇助の故意は被告人の内心の問題であるため、捜査機関は客観的な状況から故意を立証しようとします。

当時どのような認識でいたのか、正犯者からどのような説明を受けていたのかを、接見での聞き取りや客観的証拠(LINEのやり取り等)から緻密に検討することが求められます。

また、内心である以上、供述が重要な証拠となります。

そもそも取調べに応ずるべきか、応ずるとして話をするべきなのか、といった対応を慎重に検討する必要があります。

(4) 共犯者の引き込み供述への対策

他の共犯者が、自分の責任を軽くするために、協力者を「共謀した仲間」として供述するリスクがあります。

公判での証人尋問を通じ、他の共犯者の供述が信用できないことを浮き彫りにしていく必要があります。

7 まとめ

幇助犯は「手伝っただけ」という感覚とは裏腹に、実務では共同正犯と紙一重で争われます。
評価を誤れば、本来負う必要のない重い刑責を課される危険があります。

もし、幇助にすぎない関与を「主犯」として扱われそうになっている場合には、初動対応から重要になってきます。
事実関係・供述・証拠を精査し、幇助犯への認定落ち、あるいは無罪・不起訴を視野に入れた弁護活動が重要です。
お早めにご相談ください。

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