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特定少年に2年の保護観察(収容可能期間を1年間)とした非現住建造物等放火の事例

本決定のポイント

特定少年に対する保護処分として、①少年院送致、②2年の保護観察、③6ヵ月の保護観察の3つが規定されています。

特定少年に対する保護処分は、①少年院送致、②2年の保護観察、③6ヵ月の保護観察の三種類が規定されています。

本件は、犯行動機、態様等の犯情に加え、保護処分歴がないことや犯行後の情況、少年の性格、年齢、環境等を考慮して刑事処分以外の措置を相当を認め、②2年の保護観察としました。

2年の保護観察を選択する場合には、1年以下の範囲内において「犯情の軽重を考慮して」遵守事項違反が認められる場合少年院に収容することができる期間を定めなければならず(少年法64条2項)、本件では1年とされました(この期間は基本的には1年とされることが多いとされます)

なお、保護観察の処遇の実効性の点で、犯情の軽重を考慮して2年の保護観察が許容される場合には、基本的には、少年院収容の可能性がない6ヵ月の保護観察ではなく、少年院収容の可能性がある2年の保護観察を選択すべきとされており、本件も原則に従った判断がなされたものといえます。

1 事案の概要 ~ 宮崎家裁令和4年7月14日決定

少年は、共犯者らと共謀の上、正当な理由がないのに、令和4年△月×日午前1時15分頃、廃業したホテル○○に、機械室出入口ドアの開口部から進入し、同ホテル(鉄筋コンクリート造陸屋根4階建、延べ床面積2770.66平方メートル)に放火しようと考え、更にAと共謀の上、同日午前1時25分頃から同日午前1時34分頃までの間に、同施設3階×号室ほか2か所において、畳に寝かせた障子にライターで点火するなどして火を放ち、その火を壁、天井等に燃え移らせ、よって、前記×号室を全焼させるなどしたものである

2 検察官に送致する理由

1 主文

少年を2年の○○保護観察所の保護観察に付する。

少年法66条1項の決定により少年院に収容することができる期間を1年間とする。

2 処遇の理由

本件のうち第1は、特定少年については、少年法62条2項本文により検察官に送致するのが原則とされているが、その内容は、当時18歳1か月の少年が、深夜に、心霊スポットで肝試しをするため、友人ら10名と廃業ホテルに侵入した上、このうち1名と共に、火をつけてその場を盛り上げようと考え、少年のライターを用いてその1室を全焼させるなどしたものであるところ、調査の結果、①このような犯行の動機・態様や焼損範囲が広いとまではいえず、また、生命・身体等に対して生じた公共の危険も非現住建造物等放火の事案の中では小さいといえる犯行の結果といった犯行内容を中心とした検討に加え、②少年はこれまで軽犯罪法違反で事案軽微により審判不開始にされたことがあるのみで保護処分歴がなく、犯行を認め、反省の態度を示していることなどといった犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情という①以外の事情も考慮の上、保護処分を許容し得る特段の事情があると認められ、同項ただし書により、刑事処分以外の措置を相当と認め、保護処分を選択することとする。

その上で、本件非行の犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内において、非行の原因及び態様並びに少年の資質、環境、これまでの生活歴、行状等に照らすと、少年の健全な育成を期するためには主文の保護観察に付し、専門家による指導を受けさせることが必要である。

また、本件非行の犯情に鑑み、主文のとおり収容することができる期間を定めることが相当である。

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