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継続的契約関係を期間満了や約定解除、更新拒絶などにより終了させる場合、契約書の文言通りに終了できない場合はありますか?
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企業間の継続的な取引契約の解除・更新拒絶をする場合、契約条項の中に、一定の予告期間を置いた上での解約手続を規定している場合であっても、「やむを得ない事由」、「取引関係の継続を期待し難い重大な事由」、「正当な事由」等(言い方は色々とあります)を満たさない限り契約の終了を認めないという裁判例は多く存在します。
どのような事情があれば契約が終了するかについて「やむを得ない事由」等が要求されるかは一律に決まるものではなく、多くの裁判例では取引実績や相手への期待・依存度といった個別の事情が摘示され、「当事者の合理的意思解釈」から導かれています。
以下、具体的な裁判例を概観していきます。
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第1 はじめに ~ 継続的契約の類型
継続的契約といっても、非常に多義的なものです。
一般に、「時間の経過に伴って債権債務関係を発生させる契約」などと定義されます。
典型的な継続的な契約は次の類型が挙げられます。
- 継続的供給契約
- 継続的役務提供契約
- 継続的融資契約
- 保証契約
- 組合契約
- フランチャイズ契約
- 保険解約
- 代理店・特約店契約
- 請負契約
- ライセンス契約
これらを見ても想像できるように、継続的契約と共通項を見出しても、それぞれの契約に特徴があり多様なもので、一律の理解をするには難しい面が挙げられます。
実際に、民法(債権関係)改正の際に、継続的契約の更新拒絶について「正当な事由」の明記が検討されていましたが、具体的な基準を示した最高裁判例がなく、適用範囲が不明確、一律に適用される規定を設けるべきではないこと等を根拠として、見送られています。
しかし、継続的契約において、契約書の文言通りのままの解釈が行われているかというと、実際にはそうではないため、実務の動き(裁判例)を概観したいと思います。
第2 継続的契約の終了に対し、歯止めをかけた事例
以下の紹介する裁判例(②は仮処分決定)は、継続的契約に対して自由な解除を認めず、契約の継続性に拘束力を認めています。
他裁判例との違いとして(注:末尾に参考裁判例を紹介)、多くの裁判例は、継続的契約の終了を求める場合に相手方当事者の契約違反を主張し、それが「やむを得ない事由」などに該当することで契約が終了とされています。
しかし、以下の2事例は、いずれも被解消者の債務不履行等は認定されていません。
①については損失補償を認め、②については「やむを得ない事由」を根拠として契約終了までの猶予期間を認めています。
①東京地裁平成22年7月30日
【事案の概要】
原告が、被告との間でA社のワインを日本における独占的に輸入・販売することを内容とする販売代理店契約(期間の定めなし)を締結して、18年間にわたりA社のワインを日本に輸入して販売してきました。
しかし、被告から平成17年1月5日ころ、原告に対し同年4月末日限り本件販売代理店契約を解約して○○の販売代理店を変更する旨通知しました。
本件のように、期間の定めのない継続的な取引において販売代理店に債務不履行がない場合に、ワイン会社(被告)がこれを解消しようとする場合の解除の要件をどう解すベきかが問題となりました。
本件販売代理店契約は解除の要件について定めはなく、Yは4ヵ月の予告期間を定めて本件販売代理店契約を解除したのに対し、Xは少なくとも1年の予告期間を要すると主張して争いました。
【判決要旨】
「原告において将来にわたって被告のローズマウントが継続的に供給されると信頼することは保護に値するものであるから、被告が本件販売代理店契約を解約するには、1年間の予告期間を設けるか、その期間に相当する損失を補償すべき義務を負うものと解される。」「しかるに、被告が損失を補償しないまま予告期間を4か月とする本件解約をしたのは、本件販売代理店契約上の上記義務に違反するものであって、債務不履行に当たる。」と判示しました。
②札幌高裁昭和62年9月30日決定
【事案の概要】
農機具販売業を営むXは、農機具製造業者であるYと北海道地域におけるY製造の田植え機などの販売総代理店契約を締結していました。
同契約の有効期間として、昭和57年10月1日より昭和58年9月30日までとし、3か月前までに申出なければ同一条件で1年継続し、その後も同一とする旨の条項が定められていました。
昭和62年6月22日、Yは契約満了の同年9月30日に契約を終了させ、自ら北海道地域での販売を開始する旨を通告しました。
そのため、Xは、Yの通告は無効であるとして仮処分申請をしました。
【決定文の要旨】
XがYの製造する農機具を買い取って販売する独占的販売総代理店契約において、有効期間を1年とし、期間満了3か月前に当事者の申出がない限り更に1年延長する旨の条項が定められている場合であっても、右契約が継続的供給契約の性質を有し、右条項は自動延長に主眼があって、契約条項見直し期間の意味程度しかなく、甲は、長期間に亘る継続的営業活動を前提として約1億2000万円にのぼる買取農機具等の在庫を保有し、右契約の終了により莫大な損害を被るなどの事実関係のもとにおいては、右条項は契約を存続させることが当事者にとって酷であり、契約を終了させてもやむを得ない事情がある場合に契約を告知し得る旨を定めたものと解すべきである。
⇒ 昭和63年9月30日までの契約存続を認めました。
②の決定文では、「解約により十数年に亘って形成してきた田植機の販売利権をすべて失い、企業の存立に重大な影響を与えかねない」一方、解消者は「何ら犠牲を払うことなく開拓した販売権益を手中に収めることができ、極めて不合理である」と判断されています。
契約解消が著しく公平に反する場合の制限装置として、契約解消を制限しようとしていますね。
第3 継続的契約の終了についての著名な裁判例
一般に資生堂事件、花王事件と呼ばれる事件を紹介します。
両者ともに、最高裁までいっているものの、継続的契約の解消については最高裁で判断されていませんので、いずれも該当部分の高裁判決文を引用します。
両者共に契約違反を理由に中途解約条項を根拠とした解約ですが、資生堂事件においては「やむを得ない事由」が解約には必要と明言したのに対し、花王事件においては「やむを得ない事由」は不要としています。
ただ、判断構造は異なるように見えても、花王事件においても一般条項違反の有無を検討しており、両事件においても結論に至る過程で考慮された具体的な事情はほぼ共通しているように思えます。
1 資生堂事件(最三判平成10年12月18日)
(原審)東京高判平成6年9月14日
【事案の概要】
化粧品特約店契約に関し、被控訴人(特約店)が対面販売を行う義務に違反し、カタログ販売を始めました。
控訴人(資生堂)からの再三の是正勧告に従わなかったため、中途解約条項を根拠として被控訴人に対し出荷を停止しました。
そのため、控訴人は商品引渡しを受ける地位確認、商品の引渡しを請求しました。
【判決の要旨】
本件特約店契約はいわゆる継続的供給契約と解されるところ、このような契約についても約定によって解除権を留保することができることはいうまでもない。
しかし、後記のように、本件特約店契約は、1年という期限の定めのある契約であるとはいえ、自動更新条項があり、通常、相当の期間にわたって存続することが予定されているうえ、現実にも契約期間がある程度長期に及ぶのが通例であると考えられること(控訴人との契約も28年間という長期間に達している。)、各小売店の側も、そのような長期間の継続的取引を前提に事業計画を立てていると考えられること、また、本件特約店契約は、それに付随して資生堂化粧品専用の販売コーナーの設置や、顧客管理のための台帳の作成、備え付けが義務付けられるなど、商品の供給を受ける側において、ある程度の資本投下と、取引態勢の整備が必要とされるものであり、短期間での取引打ち切りや、恣意的な契約の解消は、小売店の側に予期せぬ多大な損害を及ぼすおそれがあること、なお、前記解約条項に基づく解除が行われるのは極めて例外的な事態であることなどからすれば、30日間の解約予告期間を設けているとはいえ、前記のような約定解除権の行使が全く自由であるとは解しがたく、右解除権の行使には、取引関係を継続しがたいような不信行為の存在等やむを得ない事由が必要であると解するのが相当である。
本件特約店契約の解除に至る経緯をみても、控訴人(注:花王)はまず、被控訴人(注:特約店)の行っていた販売方法の改善勧告をし、その後、双方とも代理人である弁護士を通じて折衝を重ね、一旦は被控訴人も控訴人との本件特約店契約に沿う販売方法をとることを約束しながら、依然としてそれに反する販売方法を継続し、控訴人の再三にわたる右約束の実行の要求を拒否し、カタログ登載を除くその余の従前の販売方法を変える意思を持たなかったものであることからすれば、被控訴人の本件特約店契約に定められた販売方法の不履行は決して軽微なものとはいえず、継続的供給契約上の信頼関係を著しく破壊するものであり、本件では、右契約を解除するにつきやむを得ない事由があるというべきである。
2 花王事件(最三判平成10年12月18日)
(原審)東京高判平成9年7月31日
【事案の概要】
化粧品特約店契約において、花王(控訴人)の特約店である被控訴人が、契約上のカウンセリング販売を行う義務、及び卸売販売の禁止規定に違反した疑いが出てきたが、被控訴人(特約店)は合理的説明をせず、疑惑を深める対応を行ったため、被控訴人は契約上の中途解約条項を根拠として契約を解除し、商品の出荷を停止しました。
そのため、被控訴人(特約店)が商品の引渡しを受ける地位確認と商品の引渡しを求めました。
【判決文】
本件特約店契約は、化粧品の継続的供給契約であるが、この存続期間中に、当事者の一方からこれを解約することができるとする解約権の留保は、契約自由の原則から許容され、法的に効力を有することはいうまでもない。
本件契約書15条2項は、30日以上の解約予告期間を設けているだけで、解約事由を定めていないから、一方当事者は、諸般の事情に照らして、信義則に違反し、又は、権利の濫用に当たり、あるいは、強行法規違反等の理由で公序良俗に反するといったいわゆる一般条項による制約があることは格別、そうでない限り、契約期間の満了前であっても、右条項の解約権に基づき、解約事由を挙げることなく、本件特約店契約を解除することができると解されるのである。継続的供給契約であることなどを根拠にして、右の解約権の行使には、契約関係を継続し難いような不信行為の存在などやむを得ない事由を必要とするとの見解は、採用しない。
そこで、本件解約が信義則に違反し、権利の濫用に当たり、あるいは、公序良俗に違反して無効となるか否かについて検討するに・・・、
本件解約の意図ないし動機が被控訴人に卸売販売の疑いがあったのに、それを解消しないどころか増幅したことにあって、被控訴人主張のような被控訴人の値引販売を阻止するためのものとは認められないこと、本件特約店契約は花王化粧品の再販売価格を維持するためのものとは認められないこと、被控訴人が、本件特約店契約に違反して〇〇〇に対する卸売販売を行っており、その違反事実の継続性、大量性に加え、控訴人からの度重なる質問に対しても具体的販売方法を明らかにせず、しかも、本件特約店契約におけるカウンセリング販売及び卸売販売禁止の約定の効力を争っていて、控訴人との信頼関係は既に破壊されているといえることを考え合わせると、控訴人のした本件解約が不当な目的をもってされたとか、その前提事実を欠くといったものではないことは明らかであるから、被控訴人が購入代金の支払を遅滞したことがなく、被控訴人が控訴人以外から花王化粧品を仕入れることは困難であり、本件解約は被控訴人に大きな損害を与えることが推察されることなどを含む、被控訴人が第二の三2一4で主張する諸事情を考慮しても、なお、本件解約が信義則に反し、又は、権利の濫用に当たるということはできないし、他にそのような事情を認めるに足りる証拠はない。
第4 継続的契約の終了において考慮される事情とは
資生堂事件判決、花王事件判決以降においても、販売店契約、継続的供給契約など収益事業の前提となる継続的契約について、契約条項として明文で定められていない「やむを得ない事由」、「正当事由」、「合理的な理由」などを解消の要件として追加している裁判例はいくつも見受けられます。
他方で、花王事件の原審判決のように、これらの要件を追加することなく、合意をそのまま有効と認めたうえで、信義則や権利濫用などの一般条項のみによる解約の制限について判断している事例も多くあります。
継続的契約の拘束性を考えるにあたっては、被解消者にとっての損害を考慮しつつ、他方で、長期間の時の経過により事業自体にトラブルが発生したり、事業から撤退したい場合に契約離脱の自由を保障する、という観点を持って考えることが大切になりますね。
以下は、裁判例において考慮されていることが多い要素をピックアップしています。
- 契約書の文言に従った解釈・運用がなされる
- 基本は当事者の意思の表れである契約書に基づいた運用がなされます。
- 当事者の合理的意思解釈からの制限あり
- 契約が長期間継続する中での事情変化、取引の前提となっていた事実の変化、取引解消により過大な損害が発生するなどの場合に解消が制限されることがあります。
考慮要素として、次のようなものが裁判例にて取り上げられています。
①契約の存続期間(長期間継続しているか)、
②自動更新条項があるか(継続への期待はあるか)、
③契約の継続が当初から予定されていたか、
④継続的契約にあたりどのような事業計画を立てていたか、
⑤被解消者に与える経済的打撃の程度(経済的依存度)、
⑥取引に向けた投資の程度(人的物的取引体制)、
⑦営業実績の程度(固定客のフリーライドになるか)、
⑧取引のサイクルが契約期間より長いか、
⑨他の取引に転用可能か、
など、種々の要素が考慮されています。
第5 実務において留意すべきこと
1 契約の交渉過程
いかなる経緯で契約締結に至ったのかは、重要な考慮要素となります。
⇒ 契約を存続させたいならば、なるべく長期間の契約にする、自動更新条項を入れる、解約に正当事由を求める、
⇒ 契約を解約する自由(離脱する自由)を確保したいならば、自由に解約できる文言を求めている、フリーハンドで契約更新できないことを説明している、
などの、交渉経緯があったことを立証できるように、相手とのやり取りを残しておきましょう。
具体的な証拠としては、メールのやり取りや、契約締結に至る議事録などが想定されます。
2 契約文言について
契約の継続を望む立場の場合
自動更新条項を入れる、契約の終了においては「正当事由」、「やむを得ない事由」が必要であることを入れる、投下資本回収を前提とした長期間の契約にする、解約する場合には損失補償の条項を加える、などがあると良いです。
契約の立場上、なかなか条項として入れないとしても、契約の終了にあたっては、先に資本投下している点や当該契約に経済的に大きく依存していることを相手方が知っているかなどの点は考慮されますので、交渉過程においてその事情を伝えておくことは重要です。
終了(契約からの離脱)を望む立場の場合
逆に、積極的な理由なく解約できることを明確にする、自動更新条項を置かない、契約満了時には再契約にする(契約条件を見直す)、などの文言にて契約書を作成できるように進めていくのが良いです。
また、どのような場合には取引を継続しないかを事前に想定して、売上目標を設定したり、販売義務とまではいかずとも最低水準を設定するなども検討して良いでしょう。
3 契約期間中の留意点
裁判所は、契約履行中の当事者の態度も考慮要素としています。
そのため、相手方の契約違反(支払遅延、納品遅延等)がある場合に、放置せずに警告、是正要求することは、いずれの立場(契約の存続を求める場合も、終了を求める場合も)において大切なことです。
4 簡単なまとめ
最後に、次の項目で裁判例をいくつか紹介します。
ここで紹介するものに限らず、裁判例の多くは、被解消者の債務不履行が認定され、それがために契約終了が有効となっています。
そのため、「やむを得ない事由」などの要件の設定が、どれほどの意味を持つのか疑問に思ってしまうかもしれません。
しかし、結論だけを見ると見誤る恐れがありますが、継続的契約において契約を終了しようとする場合には、必ずしも「契約書の文言通りだから大丈夫!」ということにはならない点に、ご留意いただければと思います。
5 参考裁判例
年月日 | 事案の概要 | 判旨 | |
1 | 東京地裁 R3.7.20 | 空港における総代理店契約 | 本件は,原告が,被告との間で,宮古空港における被告の空港ハンドリング業務及び航空券等発行業務を代理して行うという総代理店契約を締結しその業務を遂行していたところ,被告がした同契約の解約は無効であるとして,原告が同総代理店契約上の地位を有していることの確認を求めました。 本件契約は,1年という有効期限の定めがあるものの,自動延長される旨の条項があり,その委託業務の内容からしても相当期間にわたって契約関係が継続することが予定されていたといえること,実際に,本件業務に係る原告と被告との間の契約関係は原告とEとの間の契約期間も併せると通算で27年余りの長期に及んでいること,原告の収入のほぼ全てが本件契約に基づき被告から支払われる委託手数料によっていたものと認められること,原告と被告との企業規模の差に照らせば,被告において,本件契約26条所定の90日間の予告期間を設けさえすれば,自由に同条に基づく解約権を行使し得るものと解することはできず,本件契約による契約関係を継続し難いやむを得ない事由が認められる場合に限って解約をすることが可能であると解すべきである。 ⇒ 被告がもはや原告との間の信頼関係を維持することはできないとして,宮古空港における運航の安全性を確保するために本件契約を解約するに至ったことにはやむを得ない事由があるものと認められるから,本件解約は有効である。 |
2 | 東京地裁 R2.11.20 | 化粧品の継続的供給契約 | 本件は,化粧品の販売等を業とする原告が,被告との間で,被告が製造する化粧品の継続的供給契約を締結していたにもかかわらず,被告が一方的に解約を通知したと主張して,被告に対し,上記契約に基づき,原告が注文した化粧品の引渡しを受ける地位にあることの確認を求めました。 なお,原告は,継続的契約の解約に当たっては,解約が許される特段の事情が必要である旨主張するが,一律にこのように解する必然性はない。 そして,本件においては,原告と被告との間で本件各契約が締結されており,その契約書に,被告化粧品の販売方法や,これに違反した場合の措置について規定されているところ,被告はこれに則って本件各契約の解約を通知したのであるから,特段の事情を重ねて要求するのは相当でない。 仮に,原告が主張するように,本件各契約の解約には特段の事情が必要であると解したとしても,被告の経営理念やブランド価値の根幹に抵触する可能性があることを認識しながら,特定の顧客に漫然とカウンセリング等を行わない販売活動を継続していたという原告の契約違反の態様は,原告が主張するところの特段の事情と評価されるに十分である。 |
3 | 東京地裁 H28.12.21 | 自動車部品販売店契約 | フォルクスワーゲンの子会社である被告との間で取引基本契約(1年毎に自動更新されるが、6か月前までに更新拒絶を行うことのみ規定されている)を締結し,フォルクスワーゲン製品の販売店を3店舗経営していた原告が,同契約の更新拒絶をした被告に対し,更新拒絶は信義則違反で無効と主張し,取引契約上の権利の存続確認を求めた事案。 裁判所は,原告がフォルクスワーゲン商標を被告との合意や承認もなく,定められた場所も方法も守らず使用したことだけでも無催告解除が許されることも十分あり得る行為であり,故意に比肩すべき重過失があるというべきで,本件更新拒絶が信義則に反して無効とは認められないとし、請求を棄却した事例 |
4 | 東京地裁 H24.2.14 | 生命保険に関する個人募集代理店委託契約の更新拒絶 | 本件代理店契約は自動継続条項を含んでおり相当程度長期間にわたり継続することを予定していたと考えられること,原告は被告の専属的代理店ではないが被告の他は1社と保険代理店契約を締結したにすぎず,被告との間の本件代理店契約が終了した場合は相当程度の経済的影響を受けるおそれがあること,被告は本件訴え提起当初は,解約申入れに関する正当事由の主張をしていたことなどを考慮すると,原告と被告の間においては,遅くとも平成22年3月までの間に,商法30条の規定にかかわらず,本件代理店契約について,解約申入れの場合のみならず,更新拒絶をする場合であっても,「やむを得ない理由」を要する旨の黙示的合意が成立していたというべきである。 そして,本件代理店契約違反ないしこれに準ずる原被告間の信頼関係を破壊する行為は,「やむを得ない理由」に含まれると解すべきである。 |
5 | 福岡地裁 H23.3.15 | 独占的新聞販売契約の更新拒絶 | 新聞販売店契約は,新聞の宅配という重要な役割を特定の個人に独占的に委託することから,被告においても,それなりに信頼できる者を選定して締結しているはずである。そして,前記前提事実及び前記1の認定事実によれば,本件販売店契約は,契約書において当初3年,その後は1年ごとに自動的に更新される契約とされていること,原告は,平成2年11月に,約1200万円の代償金を支払って,被告と新聞販売店契約を締結し,その後も更新を続けていたことがそれぞれ認められるから,被告は,当該契約時及び契約の各更新時において,原告について,販売店を経営する者として適任であると判断していたといえる。 ・・・そうすると,被告が継続的契約である原告との本件販売店契約の更新をしないというためには,正当理由,すなわち原告が本件販売店契約を締結した趣旨に著しく反し,信頼関係を破壊したことにより,同契約を継続していくことが困難と認められるような事情が存在することが必要であるというべきである。 ・・・本件販売店契約には自動更新条項が定められており,実際に同条項に基づいて契約更新が繰り返されてきたのであるから,原告の本件販売店契約の継続に対する期待は大きいということができる。さらに,販売店を始めるに当たり,代償金の支払や店舗等に係る資本投下に加え,経営中には継続的にセールススタッフを用いるなどして読者獲得のための資本投下が必要であることや,資金をかけて獲得した読者に,実際に新聞を販売して投下資本を回収することができるのが数年後になることもあるといった販売店及び本件販売店契約の性質も勘案すると,同契約の更新をしないためには,原告に顕著な背信行為があるなど,契約関係の継続を著しく困難にするような事情が要求されるというべきである。 ⇒ ただ、結論としては原告には販売成績を向上させる経営努力義務に違反する等の背信行為があり、更新拒絶には正当な理由があり、有効とした。 |
6 | 札幌高裁 H23.7.29 | 新聞販売店契約の更新拒絶 | 本件新聞販売店契約の契約期間は3年間と定められているものの、期間満了の3か月前までに一方当事者からの解約申入れがない限り2年間延長される旨の自動更新条項が定められており、さらに、控訴人と被控訴人との間においては、昭和45年10月ころから、概ね3年ごとに新聞販売店契約の更新や自動更新が重ねられている。このような事情を考慮すると、本件新聞販売店契約は、被控訴人と控訴人との信頼関係を基礎として、継続的に続いていくことを前提としていると解されるから、被控訴人がこれを解除又は更新拒絶するためには、販売店の著しい不信行為、販売成績の不良等により、被控訴人と控訴人との信頼関係が破壊されるなど、本件新聞販売店契約の継続を期待しがたい重大な事由が存することが必要であるというべきである。本件新聞販売店契約一七条に規定する解除事由も、当然このことを前提としていると解される。 ⇒ 本件更新拒絶は控訴人の営業成績不良等を理由とするものだが、重大な事由が存するとまで認めることができないから、拒絶理由を欠き無効。 |
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