会員制のゴルフクラブを退会して預託金の返還を請求した場合に、据置期間の延長決議がなされていることを理由に、返還期限が到来していないと反論されることがあります。

この据置期間を延期するゴルフクラブの反論は、認められないことがほとんどです(但し、延期について個別に同意をした場合は、原則として延期が認められます)。

据置期間の延長に関連する裁判例を基に、どのようなケースで紛争が生じ、それに対して裁判所がどのような判断をしたのか、概観します。

弁護士 岩崎孝太郎

この記事では、据置期間の延長が争われた裁判例を紹介します。

実事例を通した解決法をイメージいただくと共に、注意点について解説します。

紹介する裁判例の一覧

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第1 中途入会者の預託金返還期限について

1 事案の概要(東京地裁平成28年5月29日判決)

被告が経営するゴルフクラブの会員権が、①正会員権と、②グリーン会員権に分割されました。

従前から会員であった原告Aが、②グリーン会員権を原告Bに譲渡しました。

原告Bは、原告Aより譲受け、ゴルフクラブ会員となる際に、現行の会則承認書面に署名押印した上で入会をしました。

会則には、預託金据置期間は、20年間であり、その起算日は中途入会日の翌日であることが記載されています。

その後、原告A及び原告Bは、被告宛に、本件クラブの退会及び預託金返還を求める通知を発送しました(原告Bは、中途入会日から20年を経過していませんでした)。

2 裁判所の判断

結論

原告A・・・〇
原告B・・・✖

原告Aの請求は認容。

これに対し、原告Bの請求は、中途入会日から20年経過していないことを理由として、棄却しました。

理由(原告Bについて)

被告は、「預託金据置期間は、20年間であり、その起算日は中途入会日の翌日であること」と明確な記載のある入会資格条件確認書や現行会則承認書面を原告Bに提示し、原告Bの署名押印を得た、・・・被告が(原告Bの入会後20年間の)預託金据置期間を主張することが信義則上許されないとはいえない、と述べています。

名義書換手続は、既存会員のクラブ会員権を承継することを前提にして、新規会員が中途での入会契約を締結します。

もっとも、預託金の返還時期については、前会員の返還時期が承継されるのではなく、中途入会契約締結に伴って、中途入会日から起算されることを明確にした事例といえます。

今回の紹介事例の中では、唯一の会員側の敗訴事例です。

預託金の返還時期は、(契約や規約の内容にもよりますが)自身の入会日から起算され得ることは、念頭に置くべきでしょう。

第2 預託金の返還に取締役会の承認が必要とする規定の効力(東京地裁平成27年11月18日判決)

1 事案の概要

原告が、ゴルフ場を経営する被告に対して、退会する旨の通知と共に入会保証金の返還を請求しました。

これに対して、被告が、本件ゴルフクラブの会則には、被告の取締役会の承認を得て入会保証金を返還する旨の規定があり、原告に対する返還については承認していないとして、入会保証金の返還を拒否しました。

2 裁判所の判断

原告の請求を認めました。

「原告が入会保証金の返還について被告の取締役会の承認を得なければならないことを要件とすると、入会保証金の返還を、その債務者である被告の意思にのみに係らしめることになるのであって、被告の取締役会の承認を要するとする本件会則・・・は、民法134条に鑑みて、入会保証金の返還の要件として効力を有するものではなく、単にその返還に当たっての事務処理上の手続を定めたものにすぎないと解釈されるべきである」と述べました。

(随意条件)民法134条
停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。

🔗「民法」(e-Gov法令検索)


第3 理事会決議による据置期間を延長する決議の効力が否定された事例(東京地裁平成29年2月10日判決)

1 事案の概要

被告ゴルフクラブの会員であった亡き父を相続した原告が、被告に対して預託金の返還を求めました。

平成12年に亡き父は、被告ゴルフクラブを退会しました。

その際に入会保証金を4分割し、2口分の保証金は優先的に早期に返還を受ける一方、残る2口分については償還期限を15年延長することに同意しました。

具体的には、「私は、今般、・・・1分割は1ヵ月、2分割分は3ヵ年、3,4分割は15年以内に償還の確約を選択し、私所有の本件会員権を新規入会保証預託金証書に差し替える事に同意します。又、当クラブ会則第7条に基づき、据置期間が信証券発行後15年に延長される事に同意致します。」と記載された同意書を差入れました。

平成27年において、被告は新会則7条に基づき、理事会の承認を得て入会保証金の据置期間を15年間延長することが提案され、承認可決されたとして、被告は請求の棄却を求めました。

争点

亡き父は、本件入会保証金の償還期限を、(平成12年から15年延期されたのみならず)平成27年から15年間延長することに同意していたか?

2 裁判所の判断

原告の請求を認め、平成27年から15年延長することの同意はないものと判断しました。

亡き父が平成12年に差入れた同意書において、「新会則及び理事会決議による入会保証金の償還期限到来後の預託金据置期間延長について、同意」すると記載されているのみであり、その文言からは、15年経過後の更なる延長についても同意する趣旨であるかについては判然としない。

被告が主張する「新会則及び理事会決議による償還期限到来後の預託金据置期間の延長」の意味するところは、将来的に、償還期限が到来しても、(天変地異や被告の経済状態の変動など、新会則7条が規定する要件はあるものの)理事会の決議があれば、一方的に据置期間が15年も延長されてしまうものであって、被告の経済状態等によっては繰り返し延長され、・・・入会保証金が永遠に償還されない可能性も含むものであるから、平成12年・・亡き父が、直ちにこれを容認したと考えることも疑義がある。

被告は、亡き父は、「新会則」に従うことにも同意しており、会則7条によって、理事会決議により据置期間が延長されることに同意しているとも主張するが、以上で述べたことからすれば、「新会則」に同意するとの文言をもって、亡き父が、平成27年から15年の据置期間延長に同意したものとは認められない。

形式的には、新会則に対して「同意した書面」があることで、理事会決議による延長決議に従わざるを得ないようにも思われるケースです。

もっとも、同意書の趣旨として、理事会決議による再度の延長をも容認したものとされれば、被告の恣意的な運用により永遠に預託金(保証金)が返ってこない可能性もあります。

そのため、亡き父の同意の効力は、同意書の時点から15年間に限られ、再度の延長まで同意したものとは認められない、と事実認定をしました。

個別の同意書面がある場合であっても、据置期間の延長に対して、合理的な制限をかけている点で参考になります。

第4 会員総会の議案に賛成する行為が個別同意にならないとされた事例(名古屋高裁平成21年9月10日判決)

1 事案の概要

原告(控訴人)は、被告(被控訴人)が経営するゴルフ場のクラブ会員です。

ゴルフクラブは、会員らに対して定時会員総会の招集通知を発送し、預託金について、被告の財務状況に応じて用意された返還資金を、預託金の返還を求める会員らで案分し、複数年にわたって分割返還する内容の議案を提案しました。

原告は、定時会員総会には欠席しましたが、書面で議案に賛成すると回答し、議案は賛成多数で可決されました。

被告は預託金の返還について、賛成した会員には議案のとおりに返還をし、反対した会員には議案の法的拘束力が及ばないとして、個別に返還方法を協議していました。

その後、原告はゴルフクラブの退会を申出て、被告に対して預託金の一括返済を求めましたが、被告は一括返還する義務はないとして、一括返還を拒否しました。

第1審判決(名古屋地判平21.2.24)は、請求を棄却

議案が可決され、被告がそれを承諾したのであれば、少なくとも賛成会員らと被告の間では、議案の内容に従った方法で返還を受ける旨の合意が成立したものと認めるのが相当であるとして、原告の請求を棄却しました。

2 裁判所の判断

名古屋高裁は、次のように述べて、原告(控訴人)の一括請求を認めました。

通常、議案に対する議決権の行使をする会員の意思としては、その結果が団体法理(多数決)により処理され、すべての会員が一律にその結果に法的に拘束されることを前提としているものと解するのが相当であり、「議案に反対した会員がその結果に法的に拘束されなくとも、議案に賛成した会員に限り、会員の権利義務に関し、ゴルフ場経営会社との間で、個別的に当該議案に沿う内容の合意をする。」という意思を有していたとすることはできないというべきである。

したがって、原告が本件議案に賛成する旨の議決権行使書を本件ゴルフクラブに送付したからといって、本件預託金の返還方法について、原告と被告との間で個別的に本件議案に沿う内容の合意がなされたとすることはできない。

弁護士 岩崎孝太郎

最高裁の裁判例は、預託金会員制ゴルフクラブについて、据置期間を延長するには、会員の個別的承諾が必要と判示しています(最一小判昭61年9月11日)。

この名古屋高裁の判決は、ゴルフクラブの社団性を否定した上で、原告の意思解釈について、昭和61年の最高裁判決に沿って検討を加えました。

その上で、預託金の返還方法について、原告と被告で個別的に議案に沿う内容の合意がされたとすることはできないと判示しました。

本件は、ゴルフクラブの社団性や原告の意思解釈について、原判決(名古屋地裁)と本判決(名古屋高裁)で判断が分かれており、非常に興味深く参考になる事例とされています。

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