悪質なリフォーム訪問販売被害に遭い、すでに8日間が経過しているためにクーリング・オフを利用できずに悩んでいる老齢の女性。

リフォーム工事の訪問販売被害では、クーリング・オフが有効な手段であることは、インターネットの普及などにより、よく知られるようになりました。

ただ、被害回復を図る手段は、クーリング・オフだけではありません。

訪問販売は、非常に消費者被害が生じやすい取引のため、特定商取引法において民事、行政、刑事、それぞれに規制を設けています。

弁護士 岩崎孝太郎

「被害に気付いてから8日経っています。もう諦めるべきですか?」

このようなご相談を受けることがよくあります。

悪質なリフォームの訪問販売に対抗する手段は、クーリング・オフだけではありません。

リフォームの訪問販売詐欺から被害回復を図るために、ぜひとも知っておきたい特定商取引法を、弁護士が分かりやすく解説します!

訪問販売のリフォーム詐欺
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第1 訪問販売と特定商取引法(特商法)

1 特定商取引法とは?

特定商取引法(特商法)とは、これまでに多くの消費者被害やトラブルを起こしてきた取引について、その「取引類型」に着目して規制をしています。

各取引類型に該当した場合の民事ルールや行政規制、刑事罰を定めています。

特商法には、下の7つの類型が規定されており、訪問販売もその中に入っています。

クーリング・オフを中心に、悪質な訪問販売に対して、特商法を活用して被害回復を図ることは多く、消費者にとって非常に心強い味方といえます。

特定商取引法の対象となる取引類型であり、訪問販売が規定されている。

🔗「特定商取引法ガイド」より引用

2 訪問販売の危険性

訪問販売は、不意打ち性と密室性の2つの危険性があります。

消費者が予測しないタイミングで事業者が自宅を訪れ、慎重に検討することができない状況が作り上げられてしまいます。

また、営業担当者が外部から隔離された密室空間で販売活動を行うため、消費者に対しての心理的な圧力がかかってしまいます。

訪問販売では、「なかなか断れなかった」、「強引に押し切られてしまった」など、強引な営業マンによる被害が生じやすいです。

何の心の準備もなく、密室であることを利用し、建築知識もない一般人を騙してリフォーム工事を行うことは、非常に悪質な手口です。

訪問販売の被害回復は、この特定商取引法から考えていきます。

3 訪問販売に対する特商法の規制(全体像)

特定商取引法(特商法)には、民事的ルール、行政規制、刑事罰の3つの観点から訪問販売を規制しています。

消費者被害が生じやすい訪問販売について、特定商取引法を法律を設け、契約を取消しやすくする民事制度や、業者が守るべき規制を定める行政規制、そして違反した場合の刑事罰を定めています。

悪質な訪問販売による被害救済は、この特定商取引法(特商法)を中心に考えていきます。

第2 被害回復を図る手段を知る(民事)

訪問販売に対する検討順として、①クーリング・オフ、②特商法による取消し、③消費者契約法による取消し、④民法による取消しを考えます。

1 クーリング・オフ(特定商取引法9条)

クーリング・オフの特徴

クーリング・オフとは、訪問販売を受けた消費者が、無条件に契約の申込みを撤回できること、つまり契約を解消することができることをいいます。

ポイントは、騙されたとか、脅されたとかの理由などなくても、契約を解消できることです。

クーリング・オフは、特定商取引法の解約手段の1つですが、真っ先に思い浮かべて欲しい手段のため、クーリング・オフは別立ての項目を設けています。

クーリング・オフはスピード勝負(契約日から8日以内にすること)

クーリング・オフの弱点は、法定の要件を備えた契約書を作成したときから、8日を経過した場合には、クーリング・オフができなくなることです。

この8日の算定は、書面を受領した日を含めて計算しますが、クーリング・オフの通知を発送(発信)すればよく、8日以内にリフォーム工事業者に届いている必要はありません。

また、法定の要件を満たさない契約書等であれば、8日間のカウントはスタートしません。
つまり、8日を経過していたとしても、クーリング・オフが可能です。

リフォーム工事業者が、クーリング・オフを妨害するために虚偽の説明をしたり、脅したりした場合にも、8日間のカウントはスタートしません。

クーリング・オフができるかの大まかな判断基準

クーリング・オフができるかを検討するにあたっては、契約日から8日間を経過しているかを中心に、期間制限が本当にスタートしているといえるのかを、しっかりと検討しましょう。

クーリング・オフの要件を考えるにあたっては、契約から8日以内か?法定書面に不備があるか?クーリング・オフ妨害行為があるか?を検討することになります。

2 特定商取引法による取り消し

クーリング・オフ以外にも、特定商取引法は消費者に武器を与えています。

過量販売についての撤回・解除権

独居の高齢者に対して、不要なリフォーム工事や備品の売りつけを次々に行い、多額の被害が生じるケースが社会問題化しています。

そこで特定商取引法は、事業者が消費者に対して、消費者がその商品を通常必要とする量を超えて契約を締結させる行為を禁止しています(特商法7条4号、9条の2)。

具体的には、消費者が1つや2つで十分な商品を、必要以上に大量に購入させるような勧誘や、高齢者に対して、本人の意向を無視して過剰な数量の購入を迫る取引などが該当します。

日本訪問販売協会が、過量に当たらない分量の目安を公表しており、住宅リフォーム(屋根や外壁等のリフォーム全般)については、「原則、築年数10年以上の住宅1戸につき1工事」とされています。

【参考ページ】
🔗「通常、過量には当たらないと考えられる分量の目安」について(公益社団法人日本訪問販売協会)

過量販売を原因とする撤回・解除は、クーリング・オフの規定を準用しています(特定商取引法9条の2第3項が同法9条3項から8項までを準用)。

そのため、事業者は、損害賠償や違約金などの請求はできませんし、引き取り費用は事業者の負担となります。

また、事業者が申込証拠金や契約金などを受け取っていたときは、事業者に返還を求めることができます(事業者に返還義務があります)。

さらに、事業者には、無償での原状回復義務があります。

ただ、期間制限があり、契約の時から1年で権利を行使できなくなりますので、注意してください(除斥期間)。

不実告知等による取消権

事業者による不当な勧誘を禁止するため、事実と異なる説明(不実告知)事実の不告知を禁止しています(特商法6条)。

たとえば、シロアイがいないにもかかわらず、「この家にはシロアリがいる。」と不実告知をすることです。

事実の不告知の例では、床下換気扇を3台設置すれば十分なのに、適正設置台数を説明することなく、10台分の契約を提案して販売する場合が挙げられます。

事業者に不実告知等がある場合、契約を取り消すことができ、契約は当初にさかのぼって無効になります。

契約に従って履行したものがあれば、各当事者はそれぞれ返還義務を負います。

つまり、消費者は代金の返還を求めることができる一方、受領した消費等があれば、それを返還する義務を負います。

行使の期間制限について、追認できるときから1年で時効により消滅し、契約締結時から5年の除斥期間があります。

消費者契約法4条の取り消しや、民法の詐欺取り消しも可能なことがありますが、より消費者の救済を広げるため、取り消しの対象がより広いものとなっています。

ただ、取り消しの効果について、クーリング・オフでは使用利益の返還が不要、商品の返還費用は事業者負担となりますので、クーリング・オフに比べるとやや劣る面があります。

3 消費者契約法による取り消し

消費者契約法でも、事業者の不当な勧誘行為によって消費者が契約の申込み、承諾の意思表示をした場合について、取り消しの規定(🔗消費者契約法4条)が定めています。

具体的には、以下のような行為が対象となります。

消費者契約法において定められている取り消しができる不当な勧誘類型。

誤認類型として、不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知がある。
困惑類型として、不退去、退去妨害、退去困難場所への同行、相談連絡を威迫する妨害、不安に付け込む行為、好意の感情の利用、判断力の低下につけこむ行為、霊感等に関わり不安を煽る行為、契約前の債務内容の実施、契約前の行為の損失請求がある。
過量販売類型もある。
消費者契約が規定する取消可能な行為類型

4 民法による取り消し

判断力不足に乗じた訪問販売の禁止(→詐欺取り消し)

🔗特定商取引法7条5号は「訪問販売に関する行為であつて、訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益を害するおそれがあるもの」と規定します。

これを受けて、同法施行規則に「若年者、高齢者その他の者の判断力の不足に乗じ、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結させること」(🔗同法施行規則18条2号)が定められています。

そして、違反行為をした事業者に対し、主務大臣は必要な措置をとるべきことを指示することができるとされます。

この「若年者、高齢者その他の者」には、未成年者、ご老人だけでなく、精神障害者、知的障害者、認知障害、成年被後見人、被保佐人、被補助人は該当します。

さらに「判断力の不足」には、合理的経済人として損得を計算できない判断力の不足を指すと考えられます。

上記に該当する取引がなされた場合には、詐欺による意思表示(民法96条1項)として、取消すことができます。

事業者は、「乗じ」ていないとして、判断力の不足に気が付かなかった等の反論をするでしょう。

これに対しては、一見して判断力の不足を見て取れる事情を立証したり、工事代金があまりに不当に高額であること、次々に契約を繰り返していることなど、取引の実情に応じて、判断力が不足していることを合理的に推認できる事情を主張・立証していきます。

不法行為責任(損害賠償請求)の追及

さらに、事業者による説明が全くの虚偽である場合や、修繕の方法が杜撰すぎる場合など、契約責任の追及を超えて、不法行為による損害賠償請求も積極的に検討するべきと考えています。

5 消費者トラブルの考察視点と今後の対策

その契約は消費者が求めているものか?~「適合性の原則」

B to Cの取引において、顧客に適合しない勧誘をしてはならないという、いわゆる適合性の原則があります。

訪問販売では「顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行うこと」(🔗特定商取引法施行規則18条3項)は禁止され、消費者基本法でも事業者は「消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮すること」(🔗消費者基本法第5条1項3号)が求められます。

具体的には、次のようなケース挙げられます。

  • 消費者の知識、経験に適合しているか?

    たとえば、独居の高齢女性宅への訪問販売で、屋根、外壁、床下補強、風呂・トイレ、台所のリフォーム等を行い1200万円のクレジット契約を組ませた違反例があります。

  • 消費者の財産の状況に適合しているか?

    たとえば、無職で年金生活をしている高齢者に、不要不急の家屋塗装工事などを1週間に5件、約60万円の契約をさせた違反例があります。

  • 消費者の購入目的へ適合しているか?

    長期契約を結ばせる事案や、不要不急の商品を購入させる事案は購入目的に適合しているか、疑わしいものといえます。

このような適合性の原則に反すると思われる取引に対しては、詐欺による取り消しや、過量販売による取り消しによる対抗措置を講じるべきです。

今後の備えとして(成年後見制度や民事信託の活用)

悪質な業者、取引から消費者を守り、その被害を回復するための法律は存在します。

ただ、必ずしも被害回復が奏功するわけではありませんので、高齢者が独居している場合など、今後の対策を講じることも検討しましょう。

具体的には、判断能力が低下(認知症の進行)している場合には、成年後見制度を活用するのも1つの手段です。

また、住居(不動産)が高齢の親の名義になっている場合には、不動産信託契約設定し、不動産の所有者をお子様に移すなどの対応もあります。

第3 行政上の規制を知る

1 訪問販売に対する措置(行政処分)

事業者が行政処分を受けたとしても、返金などが付随してなされるわけではありません。

ただ、行政規制に違反した勧誘態様は、事業者の違法性を裏付けるものとなりますので、知っておいて損はありません。

訪問販売に関する措置(行政処分)としては、主務大臣による指示と業務停止命令があります。

訪問販売に対する行政処分には、①指示と②業務停止命令があります。
訪問販売に対する行政処分の種類

指示とは、行政の指導のことで、行政機関が、事業者が自発的に業務改善することを期待して、行政目的を実現するように働きかける行為を言います。

業務停止命令とは、行政機関が事業者の法令違反が著しい場合などに期限付きで業務の一部又は全部を停止することを命じることをいいます。

処分事例を見ると、3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月などがよく見受けられ、長いものでは18ヵ月、21ヵ月なども見られます。

【参考】
🔗「執行事例」(特定商取引法ガイド)

2 行政処分の対象行為

訪問販売に関する事業者の行為で、訪問販売取引の公正・購入者の利益を害するおそれがあるものが対象となります。

主には、以下のものがよく問題となります。

  • 訪問販売における氏名等の明示義務(特商法3条)

    消費者が商品の購入等の勧誘を受けているという明確な認識を持ち得るようにしなければなりません。
    突然訪問して、「屋根が劣化して雨漏りの恐れがあるので、修理した方がいいですよ」と言うのは、明示義務に違反します。

  • 再勧誘の禁止等(特商法3条の2)

    契約を断っているのに、継続して勧誘を行った場合は、再勧誘の禁止規定に違反することになります。

  • 書面の交付(特商法4条、5条)

    たとえば、クーリング・オフの規定は、赤枠・赤字8ポイント以上の活字で記載するなどルールがあります。
    ルールの遵守がなされていない書面では、書面に不備があります。

  • 不実告知、事実不告知、威迫・困惑(特商法6条)

    シロアリがいる、屋根瓦が割れているなど、事実に反する言動は、不実告知に該当します。

  • 債務不履行(特商法7条)

    有効に契約解除をされているにもかかわらず、すでに受け取った代金を返還しなければ、債務不履行となります。

3 (参考)建設業法との関係

屋根だけの修理のような場合(建設業法施行令1条の2に規定する「建築一式工事以外の建設工事」に該当)、一件の請負代金が500万円以上となれば、建設業の許可が必要になります。

もっとも、高額な悪質被害の例では、たとえば、契約書が400万、350万、450万円などと分割され、形式的には建設業法違反を回避する外観を作るものがあります。

請負代金の金額は、合計額で判断されますので、工事を分割して各契約が500万円未満としても、無許可業者が請け負うことはできません。

このような場合は、営業停止等の処分(建設業法28条)や、刑事罰(建設業法45条、47条)など、建設業法との関係でも責任追及を検討すべき場合があります。

第4 刑事罰を知る

リフォーム工事の訪問販売では、特定商取引法の刑事罰と、刑法の詐欺の2つが検討できます。

訪問販売で刑事罰を考える際は、①特定商取引法違反と、②刑法の詐欺の2つを思い浮かべます。

特定商取引法違反(70条1項)では、契約の際などに不実のことを告げたときは、3年以下の懲役、又は300万円以下の罰金(両方併科もあり)が科されます。

また、工事の必要もないのに、嘘を述べてリフォーム工事の契約をし、お金をだまし取った場合は、詐欺(刑法246条1項)にも該当し、10年以下の懲役に科されます。

弁護士 岩崎孝太郎

警察では、特定商取引法違反は生活安全課が、詐欺は知能犯係が担当となりますが、連携して捜査にあたります。

高齢者が被害者となっていることも多く、事業者にどのような勧誘を受けたのか、その証拠を揃えることに難儀するケースが多くある印象です。

できるだけ早期に、事業者からどんな言葉を言われたのか、会話のやり取りをメモ書きで良いので残しておきたいです。

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第5 当事務所への無料相談と弁護士費用

1 訪問販売のリフォーム工事詐欺を弁護士に相談する

弁護士 岩崎孝太郎

訪問販売のリフォーム工事は、工事の必要性が全くないにもかかわらず、言葉巧みに高齢者を騙したり、強引に契約を迫るなど、極めて悪質なケースばかりです。

ぼったくり被害に対しては、特定商取引法を中心に、クーリング・オフ以外にも消費者に武器を与えてくれる規定が様々あります。

泣き寝入りすることなく、ぜひ専門家にご相談ください。

2 当事務所の弁護士費用(リフォーム詐欺)

当事務所の弁護士費用は、初回相談料無料、着手金も無料。
報酬金として、33%(但し、最低33万円)をいただいております。

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そして、依頼者と「共に戦う」集団であることを志向しています。

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