• 取引先が代金を支払ってくれない。
  • お金を貸した相手が全然返してくれない。
  • ぼったくりバーで、高額なお金を支払ってしまった。
  • 暴行事件などの加害者が治療費すら払ってくれない。
  • 水道工事に来た費用が高すぎたので、一部でも返して欲しい。

弁護士に依頼するほどの金額ではないと思いながらも、お金のトラブルを解決したいと思っている方はたくさんいらっしゃいます。

このような場合に、できるだけ裁判手続のハードルを下げて、誰もが利用できる手続として想定されているのが、この少額訴訟です。

この記事では、便利な少額訴訟の制度の説明と、自分でできるようにやり方を説明できればと思います。

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詳細は🔗顧問弁護士の推奨する活用法をご覧ください。

簡易裁判所における債権回収手段(訴訟、調停、少額訴訟、支払督促)

🔗「簡易裁判所で民事トラブル解決 ー4つの手続ー」(裁判所HP)

 

簡易裁判所には少額訴訟に限らず、裁判制度を利用しやすいように、調停支払督促も準備されており、手間を惜しまなければ自分でできます!

この記事では、その中でも少額訴訟にスポットを当てます。

第1 少額訴訟とは?概要と特徴

1 少額訴訟の利用が推奨される場合は?

少額訴訟とは、60万円以下金銭の支払いを求める請求だけに利用でき、原則として1回の期日で審理を終えて判決する特別な制度です。

60万円以下の基準は、「元本で、利息や遅延損害金を加えると60万円を超えてしまう場合であっても、少額訴訟を利用できます。

特徴的なことは、原告の言い分が認められる場合でも、分割払、支払猶予、遅延損害金免除の判決を言渡すことがある点です。

なお、通常の裁判と同じように、判決の前に和解によって終了することもあります。

特別な制度であるために独特のルールが存在します。

  • 1年間に利用できる回数制限がある(年間10回まで)
  • 1回の期日で取調べができる証拠しか提出できない
  • 被告には通常裁判で争う権利が保障されている
  • 裁判所の判決に対し、通常の裁判のように「控訴」して争うことができない
  • 被告の居住が分からないと利用できない

①1年間に利用できる回数制限がある(年間10回まで)

個人の方にはあまり縁がない規定と思いますが、1年を通じて利用回数に制限があることは念のためご留意ください(裁判所の訴状のひな形には、少額訴訟の利用回数を記載する欄があります)。

何回か少額訴訟を利用する機会があり、慣れてきた場合には、意識しないといけないかもしれませんね。

②1回の期日で取調べができる証拠しか提出できない

証拠には、契約書や合意書、メールやLINEの履歴、録音データなどの物証と、証人や当事者などの人証があります。

物証は、提出をすればこの要件を満たすものがほとんどです。

これに対し、人証は、裁判期日に出廷しないと取調べができません

裁判当日に出廷できない方は、取調べができない証拠となります(証明力は弱くなりますが、陳述書によって代用する方法はあり得ます)。


③被告には通常裁判で争う権利が保障されている

少額訴訟は、1回の期日で判決が出ますので、しっかりと争う手続ではありません。

そのため、被告との対立が激しい場合には、被告が主張の正当性を訴えるために通常裁判を希望する可能性が高いでしょう。

特に事前交渉の段階から、被告に弁護士が就いているような場合には、少額訴訟の手続を執っても、通常訴訟に移行する可能性が高く、かえって迂遠な手続となってしまう可能性があります。

【参考】 民事裁判(訴訟)の流れを弁護士が分かりやすく解説~「訴える」債権回収
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通常裁判(第1審)の手続の流れを解説します
https://ik-law.jp/minjisaiban/

④裁判所の判決に対し、通常の裁判のように「控訴」して争うことができない

通常の訴訟で出された判決に納得がいかない場合、控訴して争うことができます。
これは、1審で判決を書いた裁判所とは異なる裁判所に審議してもらう権利が保障されています。

しかし、少額訴訟では、異議を申立てることができますが、少額訴訟の判決を担当した裁判所と同じ裁判所による審理となります。

しっかりと争う手続保障よりも、簡易迅速性を重視した制度設計の表れといえるでしょう。


⑤被告の居住が分からないと利用できない

被告の住民票住所地に訴状を送っても、「あて所に尋ねあたりません」などとして、居住していない場合があります。

このような場合、被告の住民票住所地の現況調査をし、住んでいない事実を確認できた場合には、通常の裁判であれば「公示送達」などと呼ばれる方法で手続を進めることができます。

しかし、少額訴訟においては、この公示送達を利用することができません
そのため、相手方の居所が不明(住民票を追っても分からない)の場合には、少額訴訟を利用することができません。

まとめ

このような特徴から、少額訴訟による解決が適さない場合も想定できます。

ただ、特に被告の出方(通常訴訟を希望するかなど)は予想できないものでもあるため、迷ったら積極的に利用する、という姿勢で臨むべきと考えています。

✍ 少額訴訟を利用すべき場合 ~ 積極的に活用しましょう!!

  • 60万円以下の金銭債権を有していること
     ⇒ 基本的に、債権額が60万円以下ならば、全件検討してみましょう
  • 裁判所に「エイッ!」として判断してもらい、早期終結したい場合
  • 相手に弁護士などがついておらず、主張の対立が激しくない場合
  • 相手の就業場所や住所が分かっている場合

2 少額訴訟の手続の流れ

少額訴訟は、相手(被告)が通常訴訟を希望しないことが第一条件になります。

次に、少額訴訟の判決に対し、「異議」を述べた場合には、少額訴訟を担当した裁判所と同じ裁判所による通常裁判の手続が行われます

具体的には、異議後の手続は、1回で結審するわけではありません

さらに、異議後の手続で出された判決に対しては不服申立てができませんので、その判決が確定してしまうことには注意しましょう。

少額訴訟の手続の流れ

🔗「少額訴訟手続について」(法務省HPより)

第2 少額訴訟のやり方

1 少額訴訟の具体的な流れを理解する

訴状、証拠書類の提出

簡易裁判所へ訴状証拠書類の一式を提出します。
訴状には収入印紙を貼り、郵便切手を同封します。

提出する裁判所は、原則として被告の住所地を管轄する簡易裁判所です。
【参考】🔗「裁判所の管轄区域」(裁判所HP)

裁判所に訴状を提出することで、裁判は始まる。

裁判所は提出された訴状、証拠等をチェックして、修正が必要な事項や不足事項などがあれば、原告に対して補正の連絡をします。

特に問題がなければ、裁判所は裁判期日を原告と調整し、被告に対し、訴状の副本と一緒に口頭弁論期日呼出状、少額訴訟手続の内容を説明した書面、答弁書用紙、事情説明書といった書面を同封して発送します。

STEP
1

被告からの反論の提出

原告は訴状を提出し、被告は答弁書を提出し、第1回期日を迎える。
通常訴訟と同様に、原告は訴状を、被告は答弁書を提出します。

裁判所からこの訴状一式が届くと、被告はこれに対して答弁書という反論書を提出します。

また、どうしても裁判期日に差し支える場合には、期日を調整します(容易に期日変更が認められるわけではありませんので、ご注意ください)。

答弁書は、裁判所に2通送っても良いですし、裁判所・原告に各1通送っても良いです。

被告は、この答弁書を提出しないで、かつ、裁判期日にも出廷をしないと、欠席裁判として敗訴判決が言渡されてしまいます。
言い分がある場合には、しっかりと答弁書に反論を記載します。

事実関係に大きな争いがある場合には、少額訴訟を拒否して、通常裁判手続を受けることの選択もできます

STEP
2

裁判期日における審理・判決

少額訴訟は、通常の裁判と異なり、映画やドラマに出てくる法廷ではなく、ラウンドテーブルという裁判官も当事者同じテーブルを囲んで裁判期日が行われます。

原告から訴状と証拠の提出、被告から答弁書と証拠の提出があり、裁判官による審理が行われます。

少額訴訟が開かれる法廷(ラウンドテーブル)の様子。

🔗「本庁庁舎探検!!」(裁判所HPより)

 

裁判では、1件あたり1時間30分から2時間程度かかるようです。
そして、この日に判決言渡しまで進みます

なお、判決の前に、和解協議も行われることが多いようです。

STEP
3

異議が出た場合

少額訴訟の判決に対しては、判決の送達をされた日の翌日から起算して2週間以内に、その判決をした裁判所に異議を申立てることができます。

異議を申立てると、少額訴訟の判決を書いた裁判所と同じ裁判所が担当しますが、通常訴訟手続によって審理されます。

つまり、第1回だけで審理が終わる手続ではなく、双方の主張立証が尽きるまで審理は行われます。

異議を申立てた後の通常裁判での判決は、終局決定となり、控訴などの不服申立てをすることができません

STEP
4

異議が出なかった場合

少額訴訟の判決に対しては、判決の送達を受けた日から2週間以内に異議が出なければ、判決は確定します。

つまり、原告が勝訴した場合には、その判決に基づいて強制執行などの手続を執ることができます

少額訴訟における強制執行は、簡易裁判所において手続を行うことができますので、その少額訴訟の簡易裁判所に問い合わせると良いでしょう。

STEP
4
【参考】 「強制執行」~債務名義、執行文、送達証明書を準備し権利の実現へ
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判決に基づいて、債務者の財産から強制的に回収する!
https://ik-law.jp/kyoseishikko/
【参考】 債務者の財産の探し方~「財産開示手続」、「第三者からの情報取得手続」の活用!
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判決に基づいて、債務者の財産を調べる術!
https://ik-law.jp/zaisankaiji/

2 提出書類(訴状、証拠類)

裁判所に提出する必要書類は、次の内容で全てです。

  1. 訴状 (収入印紙も)
    ~(裁判所用1通+被告の人数分) 例:被告1人なら、計2通
  2. 証拠書類
    ~ 訴状と同数を準備します。
  3. 郵券
    ~ 必要な郵便切手を同封します。
  4. 資格証明書
    ~ 当事者に法人や未成年がいる場合に必要になります(いなければ不要)。

①訴状

訴状(「そじょう」)を提出することで、裁判の手続が始まります。

訴状の作成方法(記載事項)は、裁判所のホームページに書式と記載例がありますので、これを利用するのが一番間違いない方法でしょう。

一番下にまとめたリンクを記載します(この記事の末尾)。

訴状には、裁判所提出用と、被告用を準備します

被告には、各1通必要となりますので、被告の人数分を用意します。
被告が1名であれば裁判所用と合計で2通となり、被告が2名いる場合には、裁判所用と合計で3通となります。

※裁判費用として、請求する金額に応じた収入印紙が必要になります
 少額訴訟では、最大6,000円です。

②証拠書類

訴状と一緒に、裁判所用と被告用の証拠書類も同封します。
つまり、訴状と同数を用意します

契約書や合意書などの書面があればよいですが、ない場合であれば、メールやLINEの履歴などで契約の存在を合理的に推認できる資料を提出します。

他に、相手が一部を支払ったならば、その入金履歴(預金通帳の写しなど)や領収証の写しなども証拠になります。

裁判官は、基本的に訴状と証拠しか見ることができません。

そのため、提出しようか迷う証拠があれば、裁判官に事件の全体像を理解してもらうために、基本的には提出する方向で考えて良いと思います(証拠資料は、絞り過ぎない方が良いでしょう)。

③郵券

裁判所に提出した訴状一式は、被告に郵送します。
また、判決なども裁判所に受領しに行かなければ、郵送となります。

この費用を原告は最初に立替える必要があります。

🔗「郵便切手一覧表」(東京簡易裁判所HP)

④資格証明書

当事者に法人がいれば、「代表者事項証明書」などの法人登記簿を法務局で入手します。

また、未成年者がいれば、「戸籍謄本」を入手します。

戸籍謄本は、訴状提出後に、裁判所の受領印が押された訴状の控えを区役所等に提出して入手します。

【参考】🔗注意事項「訴状を提出するにあたって必要なもの」(裁判所HP)

3 まとめ ~ これを参照すれば提出OK

以上の必要書類については、以下のサイトを参考にすることで全て準備ができます。

不明点は、市役所、区役所などの弁護士無料相談を活用する、または、裁判所に直接聞きに行くなどすれば、必ず解決できると思います。

✍ 少額訴訟はこれで大丈夫!!

①訴状の書式、記載例
 🔗「民事訴訟・少額訴訟で使う書式」(裁判所HP)

②必要な収入印紙の費用
 🔗「手数料額早見表」(裁判所HP)

③郵券
 🔗「郵便切手一覧表」(東京簡易裁判所HP)
 東京簡裁の例ですが、郵券については厳格な扱いをしている裁判所は少なく、これを揃えれば全国の裁判所で通用すると思います。

④管轄(どこの簡易裁判所に提出するか)
 🔗「裁判所の管轄区域」(裁判所HP)
 原則として被告の住所地を管轄する簡易裁判所に提出します。

弁護士に債権回収を依頼する:手続の流れと費用(着手金・成功報酬)
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「債権回収」記事の一覧(目次)と、当事務所の弁護士費用
https://ik-law.jp/saikenkaisyulawyer/

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