保全命令(仮差押・仮処分)を受けた債務者には、どのような争う手段がありますか?

保全命令が出されたこと(その根拠)自体がおかしいと争う場合は、保全異議という方法によって争うことができます。

また、保全命令が出された判断自体を争うのではなく、命令が出された後の事情変更を理由に取消しを求めることができます。
これを保全取消しといいます。

これに対し、保全命令の存在を前提として、仮差押の登記等を外す方法として、解放金(お金を積む)という方法があります。

それぞれ解説していきます。

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第1 仮差押・仮処分に不服を申立てる債務者の手段とは?

1 全体像

民事保全命令が発令された場合には、債務者は①保全異議②保全取消しという手段により、その効力を争うことができます。

保全異議・保全取消しの裁判に対しては、保全抗告にて再度争うことが可能です。

なお、保全異議・保全取消が認められると、債権者に不利な内容となりますので、この保全抗告は、債権者もすることができます

また、仮差押の効力自体は否定せず、仮差押登記等の制約を免れる方法として、仮差押解放金を積むという方法があります。

仮差押の入っている不動産は売れないため、不動産の代わりにお金を積んで担保にする代わりに、不動産に入った仮差押登記を消してもらい、不動産を売却する場合などに利用されます。

仮処分解放金も類型によっては可能です。

保全処分に対して、債務者が不服を申立てる手段
保全命令に対して争う債務者の手段(保全抗告は債権者も行えます)

 保全異議、保全取消、保全抗告については、裁判所のホームページの書式が参考になります。
 🔗「不服の申立て等(保全異議,保全取消し,保全抗告)」(裁判所HP)

2 保全異議

保全異議とは、債務者が、民事保全手続の審理(被保全権利、保全の必要性等)のやり直しを求めるものです。

異議自由は、被保全権利の不存在、保全の必要性が乏しいこと、管轄違い、担保額が低すぎること、解放金が高すぎること、保全命令の内容が不当であること等が挙げられます。

保全異議では、すでに債務者に保全命令が発せられているため、密行性は必要ないので、当事者の手続保障から、少なくとも1回は双方立ち合い可能な審尋期日を経て決定が出ます。

この保全異議の決定は、保全命令の①認可、②変更、③取消しの3種類があります。
認可は、保全命令を維持します。逆に、③取消しは保全命令を覆すものです。

認可決定の例】
 債権者債務者間の〇〇地方裁判所令和〇年(ヨ)第〇号仮差押命令申立て事件について、同裁判所が同年〇月〇日にした仮差押命令を認可する。
取消決定の例】
 申立て事件について、同裁判所が同年〇月〇日にした仮処分命令を取り消す。債権者の本件仮処分命令申立てを却下する。

ただ、保全異議の申立てだけでは、保全命令の効力は失われません。

保全執行の停止を求めるためには、執行停止の裁判を求めなければなりませんが、その要件は「保全命令の取消しの原因となることが明らかな事情及び保全執行により償うことができない損害を生ずるおそれ」(民保法27条)と非常にハードルは高いです。

3 保全取消し

保全取消し、保全異議と異なり、保全命令を発令した判断自体を争うのではなく、その後に生じた事由を根拠として保全命令の取消しを求めるものです。

この取消しには、①本案の訴えの不提起等による保全取消し、②事情の変更による保全取消し、③特別の事情による保全取消しの3つがあります。

①本案の訴えの不提起等による保全取消し

保全命令はあくまでも暫定的なもので、その後に本案訴訟が予定されていることから、債権者に早く被保全権利の審理を求める(一定期間内に本案の提起を命じる)申立てができます。

これを起訴命令の申立てといいます。

この期間内に債権者が訴えを提起しなかった場合には、もはや保全命令を維持する必要性はありませんので、保全命令の取消しが認められます。

②事情の変更による保全取消し

発令後の事情が変わったことを根拠として、取消しを求めることができます

具体的には、被保全権利の消滅(履行した、相殺した、解除をした等)や、本案で債権者が敗訴した場合などが挙げられます。

また、保全の必要性が消滅したものとして、債務者の資力回復、債権者が被保全債権について十分な担保を取得したこと、債権者が本訴を取下げたこと、長期間放置していること等が挙げられます。

③特別の事情による保全取消し

これは仮処分だけが対象となります(仮差押えは対象外で、利用できません)。

仮処分命令により償うことができない損害を生ずる恐れがあるときや、保全すべき権利の実現について金銭補償をもって足りる場合に認められます。

ただ、実務上はほとんど用いられておらず、仮処分解放金が利用されているようです。

4 保全抗告

さらに、保全異議・保全取消しの裁判に対して認められる不服申立方法が、保全抗告です。

この「保全抗告」は、保全異議・保全取消しの裁判に対して行うものですので、債権者・債務者の両方から求めることができます。
なお、民事保全の迅速性から、保全抗告についての裁判に対しては、さらに抗告はできません

まとめると、次の表のようになります。

 債権者債務者
保全命令の発令された場合 保全異議・取消し
保全却下決定が出た場合即時抗告 
保全異議・取消で保全命令が取消された場合保全抗告 
保全異議で保全命令が認可・保全取消で却下された 保全抗告
保全命令後の債権者・債務者の不服申立て手段の一覧図

5 仮差押解放金

 仮差押命令が出ると、主文に「仮差押解放金」が定められます。

 具体的には、次のような記載がなされます。

【主文例】
 債権者の債務者に対する上記債権の執行を保全するため、別紙物権目録記載の債務者所有の不動産は、仮に差押える。
 債務者は、金〇〇円を供託するときは、この決定の執行の停止又はその執行処分の取消しを求めることができる。
仮差押命令の主文例

債務者に支払資金はあるはずなのに仮差押をされ、売却予定だった不動産が売れなくなってしまった場合や、取引先への債権を仮差押されると経済的信用が疑われてしまうような場合に、解放金を供託し、仮差押を外すことができます

なお、債務者には供託金(解放金)の取戻請求権がありますが、仮差押の代わりに、この取戻請求権に仮差押の効力が及ぶことになります。

6 仮処分解放金

仮処分の場合には、一般的に解放金の定めがなされるのではなく、被保全債権が金銭の支払いで満足される場合に、解放金を定めることができます。

仮処分解放金の場合、本案で勝訴すれば、債権者は排他的に供託金の払渡しを受けられます(仮差押の場合は、他の債権者との競合を許します)。

仮処分解放金が定められる場合、つまり金銭の支払いで満足される場合とは、具体的には詐害行為取消権に基づく不動産の抹消登記請求権や、譲渡担保契約に基づく物の引渡請求権などがあります。

第2 債権者にとっての保全命令

債権者にとって、保全命令の申立てをして認められなかった場合即時抗告によって争うことができます。

【参考】 民事保全~裁判での権利実現を確実にする「序章」
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保全手続(仮差押・仮処分)ついて解説します
https://ik-law.jp/hozen/

また、保全命令が発令されたとしても、債務者からの保全異議、もしくは保全取消が認められた場合には、保全抗告によって争うことができます。

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