不動産競売手続において、競合する債権者は、どのような資格が求められ、どのような手続で配当に参加できますか?

また、裁判所が示した配当表に異議がある場合、どのように争えば良いでしょうか?

配当手続に参加できる債権者は、民事執行法87条1項を中心に規定されています。
誰でも配当手続に参加できるわけではなく、担保権や債務名義、仮差押の有無等で参加できる債権者が限定されています。

また、配当表に異議がある場合には、配当異議の申出をし、1週間以内に配当異議の訴えを提起することで、訴訟手続で争うことができます。

なお、債権者が1人である場合や、債権者が複数でも各債権額を全部弁済できる場合は、配当ではなく、「交付」という別の手続になります。

適用要件作成される書類
交付①債権者が1人、②債権者が2人以上で売却代金で各債権者の債権・執行費用の全部を弁済できる場合交付計算書
配当債権者が2人以上で売却代金で各債権者の債権・執行費用の全部を弁済できない場合配当表

以下、詳しく解説していきますが、不動産強制競売の手続も解説していますので、この記事と合わせてご覧ください。

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不動産強制競売の全体像、手続の流れを説明します
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また、債権執行との違いも興味深いので、ご覧いただければと思います。

【関連記事】 債権執行で競合する債権者の優劣は?誰がいつまで配当に参加できるか?
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債権執行における競合債権者との優劣、その規律とは?
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第1 配当を受ける債権者とは

1 配当を受けられる競合債権者について

配当を受けることができる債権者は、民事執行法87条1項を中心に記載されています。

  • 配当要求の終期までに競売の申立てをした差押債権者(1号)
  • 配当要求の終期までに配当要求をした債権者(2号)
  • 差押えの登記前に登記された仮差押債権者(3号)
  • 差押えの登記前に登記がされた担保権者(4号)
  • 配当要求の終期までに債権の届出をした差押えの登記前に登記された仮登記担保権者(仮登記担保法17条1項・2項)
  • 配当要求の終期までに交付要求書を提出した租税債権者(2号類推)

いきなり条文を読むと面食らいますが、執行記録(申立書や登記簿など)から外見上明らかな債権者と、そうでない債権者で配当への参加方法が異なります。
その視点で整理すると、分かりやすいかと思います。

2 配当への参加方法

そして、参加方法として、執行裁判所が登記などの公になっている情報を基に、執行裁判所が認識でき得るかを基準に、①債権届出②配当要求の2通りがあります。

3 債権届出で足りる債権者

上記の内、租税債権者を除き、差押債権者(1号)、仮差押債権者(3号)、担保権者(4号)、仮登記担保権者(仮登記担保法17条1項・2項)は、執行事件記録によって執行裁判所に存在が明らかですので、配当要求の手続をすることなく配当手続に参加できます。

このため、「配当要求」ではなく、債権の届出の手続で足ります。

【参考】🔗債権届出(裁判所HP)

なお、届出をしなかったとしても失権しません(配当を受けられます)。

一方、届出をしたとしても、消滅時効の完成猶予事由には該当しませんので、他の時効完成猶予(更新)事由の手続を取らないといけません。

4 配当要求が必要な債権者

これに対し、執行裁判所にとって存在が明らかでない競合債権者については、配当要求という手続を行うことで、配当手続に参加できる建て付けになっています。

第2 配当要求できる債権者とは?

かつては債権者平等を貫き、債務名義を有しない一般債権者も債権の存在を立証して配当要求できました。

しかし、実際には虚偽の配当要求が多発するなど手続の遅れが発生したため、債務名義等による縛りを設けています。

配当要求できる債権者は民事執行法51条に規定されています。

配当要求債権者は、債務名義あるかないかで分かれ、債務名義ない債権者は、強制競売の開始決定の差押登記後に登記された仮差押債権者と先取特権債権者がいます。

1 債務名義を有する債権者

債務名義を有する債権者は、配当要求をすることで、不動産競売手続に参加できます。

2 債務名義を有しない債権者

債務名義を有しない債権者であっても、仮差押えを経由した配当要求を可能とし、一般先取特権については例外的に私文書による立証を認める扱いになっています。

マンションの滞納管理費などが先取特権の1つの例です。

債務名義ない債権者でも、急いで仮差押え手続を取ることで、配当要求することができますね。

3 配当要求の方法

配当要求は、債権の原因及び額を記載した書面を提出する方法で行います。

なお、債権届出と異なり、時効の完成猶予事由に該当します。

✍ 配当要求書の記載例 

🔗【申立債権者以外の債権者の方へ】(東京地裁HP)

【書式】マンション管理組合用(配当要求書・資格証明書)(PDFファイル)

【書式】仮差押債権者用(PDFファイル)

【書式】債務名義を有する債権者用(PDFファイル)

4 配当要求の終期について

配当要求の終期までに配当要求をしないと、配当を受け取ることができませんので注意します。

債務名義を有する債権者であっても、配当要求の終期までに二重差押えの申立てをするか、配当要求をしなければ、配当を受けることができなくなります。

配当要求の終期は、強制競売の開始決定後、裁判所書記官が物件明細書の作成までの手続に必要な期間を考慮して定め、これを公告します。

ただ、仮に配当要求に遅れたとしても、配当要求の終期から3ヵ月以内に売却許可決定がなされないときや、配当要求の終期から3ヵ月以内にされた売却許可決定が取り消されたり効力を失ったときは、さらに3ヵ月を経過した日に変更(事実上の延期)されますので、配当要求は行いましょう。

第3 配当手続をめぐる問題

1 配当期日の流れ

配当期日当日の手続の流れの概要は、次のように進められます。

  • 配当期日の開始宣言
  • 全債権者が出頭しているときは、配当協議の確認
  • 配当表案の提示
  • 審尋及び即時に取り調べることができる書証の取り調べ
  • 配当表の確定
  • 配当異議の申出
  • 配当期日の終了宣言
  • 配当金の交付手続

2 配当に異議がある場合

配当表に記載された債権額や配当額について不服のある債権者や債務者は、配当期日配当異議の申出ができます。

適法な配当異議の申出があると、配当期日から1週間、異議に係る部分について配当が留保されます。

そして、異議の申出後、1週間以内に配当異議の訴えを提起します
この訴えを提起しないと、配当異議は失効します。

ただ、債務名義を有する債権者に対して債務者が配当異議の申立てをした場合は、その実質は請求権の存否や内容についての争いに他ならないので、請求異議の訴えを提起します

異議申出人異議の相手方提出書面
債権者他の債権者配当期日から1週間以内に配当異議の訴えを提起したことの証明書
(法166条2項,90条1項)
債務者債務名義を有しない債権者 (抵当権者・先取特権者等)配当期日から1週間以内に配当異議の訴えを提起したことの証明書
(法166条2項,90条1項)
債務者債務名義(判決・和解調書等)を有する債権者配当期日から1週間以内に請求異議の訴え又は民事訴訟法117条1項の訴えを提起したことの証明書、及びその訴え提起に係る執行停止決定正本
(法166条2項,90条5項)
【参考】🔗配当異議の申出をする方法について(東京地裁HP)

配当に異議があるから、相手方は裁判所かと思ったら、他の債権者なのですね。

異議当事者間の相対的解決を図ることが制度趣旨なので、争いは当事者間において行われるものとし、同様にその効果も当事者間でのみ生じます。(後述する吸収説のことです。)

3 配当異議の訴えが認容される場合の効果について

配当異議の訴えが認められた場合には、当事者間でのみ変更がなされます。

具体的には、売却額が2400万円だとして、A、B、Cが各1000万円の債権を有しており、配当表に800万円と記載された事案を想定してみます。

債権者債権額配当表記載額
1000万円800万円
1000万円800万円
1000万円800万円

ここでAがBに対し、その債権は不存在(0円)として配当異議の訴えを起こし、その訴えが認められたとしたら、次の表のように修正されます。

債権者債権額配当表記載額
1000万円1600万円
B0円0円
1000万円800万円

このポイントは、Bの債権額が0円とした場合に、訴訟に参加していない他債権者であるCにも配当がされるのかどうかです。

Bの債権額が0円と決まったならば、それを前提としてAとCで按分するとすれば、それぞれ1200万円ずつになります(これを按分説と呼びます)。
しかし、この考え方は採用されていません

実務】においては、異議当事者間の相対的解決を図る制度の趣旨から、当初Bに配当されるはずであった800万円はそのまま原告であるAに加算する(但し、Aの債権額を超えて受領することはできません)という方法を取っています(これを吸収説と呼びます)。

4 (参考)配当異議の申出をせずに配当が実施された後に、自己の配当減少分について不当利得返還請求を行うことの可否について

判例は、債権者が担保権者かどうかによって、結論を分けています。

担保権を有しない一般債権者には、不当利得返還請求を否定しています(最判平成10年3月26日)。

これに対し、抵当権者の不当利得返還請求については、不当利得返還請求を肯定しました(最判平成3年3月22日)。

抵当権者は執行目的物の上に有する実体法上の優先弁済権を害されたことによる「損失」があるといえることが、結論を分けた理由になっています。

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