「支払督促」という制度があると聞きました。

具体的にはどのような制度でしょうか?
また、どのようなメリットがありますか?

Answer

 支払督促とは、裁判手続にあるような証拠調べを行うことも、法廷で裁判期日を開くこともなく、申立人が提出した申立書の郵送によって行われる手続です。

 つまり、申立書の郵送のみで、強制執行を可能にする手続きです。

そのため、

  1. 裁判所への出廷が不要で、申立書の作成・提出のみで済ますことができる簡便さがあり、
  2. 申立費用は、訴訟の半分経済的で、
  3. 裁判期日を開かないために、非常に迅速な手続です。

 実際にも、簡易裁判所における取扱件数は、全体の3割強と非常に多く利用されています。

 少額訴訟は、請求金額60万円という制限がありますが、支払督促には請求金額の制限がありません。

 また、出廷の必要もないので、弁護士に依頼する必要性も相対的に低いです。

 利用件数の多さは、このような事情が反映されているように思います。

令和元年司法統計

 ただし、申立書に記載された内容から判断して、書記官が一方的に支払督促を発するものとなりますので、債務者の手続保障を確保することが必要になります。
 そのため、申立人の請求に間違いがあったり、請求が事実無根という場合には、債務者は異議を申し立てて、一般の訴訟手続で反論等を行うことができます。

 債務者が異議を申し立てると、支払督促は一般の訴訟手続に移行します
 支払督促の手続を経た上で訴訟手続に回りますので、最初から訴訟提起をしている場合に比べて、かえって時間がかかる結果となってしまいます。

 このため、支払督促は、当事者間で債権の存在や内容について、争いがないケースに利用することが適しているといえます。

債権回収のご相談など、
お気軽にご連絡ください。

全国対応

Zoom、Teams、
Skype等にて

相談料

1時間
11,000

(税込)

弁護士費用の詳細は弁護士費用をご覧ください。

第1 支払督促の利用条件とは?

1 どんな請求に支払督促を利用できるか?

 支払督促の申し立てができる債権は、「金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求」権(民事訴訟法382条)と規定されています。

 「その他の代替物」とは、取引上、同種類・同品質・同数量・同容積の他の物で代えることができるものを言います。具体的には、お米、お酒、しょうゆなどです。

 ただ、支払督促で実際に利用されているものは、ほとんどが金銭債権ですので、お金の請求をする場合に利用できると覚えておけば全く問題ありません

 これを裏返して言えば、家を明け渡して欲しい、子どもに会わせてほしい、などの非金銭債権には利用ができません。

2 債務者に対して必ず送達されないと利用できない?!

 支払督促は、申立人(債権者)の提出する申立書に記載された内容のみによって、裁判所書記官が一方的に支払督促を発します。

 そのため、請求が事実に反していたり、理由がない場合には、債務者が異議を申し立て、通常の訴訟手続でその是非を判断してもらう必要があります。

 この特徴から、支払督促は債務者に送達されることが絶対に必要になります。債務者は、送られてきた支払督促を読んで異議申し立てをするかどうかを決めますので、この機会を絶対的に保障していることが、支払督促の肝になります。

 たとえば、債務者が外国旅行中などのように送達ができない場合には、支払督促の申し立てが利用できません。

POINT!!支払督促の2つの利用条件!!

  1. 金銭債権であること
  2. 債務者に送達されること

3 相手の住所が分からない場合は、訴訟を選択する

 訴訟の場合には、相手の住所が分からない場合には、裁判所の許可を得て訴状などの書類を裁判所の書記官が預かり、裁判所の掲示板にいつでも名宛人が来れば書類を交付する旨を掲示し、その後一定期間が経過したときに送達があったものとみなす制度(これを公示送達と呼びます)があります。

 しかし、支払督促では、債務者に異議を述べる機会を保障するため、この公示送達の制度を利用することができません。

支払督促には、債務者の送達が必要であり、公示送達が利用できない。
【民事裁判(訴訟)】の流れを弁護士が分かりやすく解説~「訴える」債権回収
thumbnail
民事裁判で「債務名義」獲得し、強制執行手続へ!!
https://ik-law.jp/blog/minjisaiban/

4 支払督促はすべて簡易裁判所に申し立てる

 一般の訴訟では、請求金額が140万円を超えると地方裁判所へ、140万円以下の請求は簡易裁判所に行います。

 しかし、支払督促では、すべて「債務者の住所地」を管轄する簡易裁判所に申し立てをすることになります。

 債務者が法人の場合や、手形・小切手の請求の場合だけ例外はありますが、債務者の住所地のみが支払督促を受け付けてくれる裁判所になる(これを「専属管轄」という言い方をします)ことは覚えておきましょう。

 債務者(相手方)が法人の場合には、支店や営業所所在地の簡易裁判所にも申し立てることができます。

 ただし、支払督促は、債務者から異議の申し出があると、通常の裁判へ移行します。

 そのため、持参債務(債務者が債権者のもとに持参して支払う債務)の場合や、交通事故などの不法行為の場合(不法行為は不法行為があった場所)に、通常の裁判で選べる管轄に訴訟提起できないデメリットが生じます。

 このような場合に、債務者の住所地以外の裁判所で手続を行いたい場合には、支払督促を利用せずに、訴訟をすることをお勧めします。

第2 支払督促の申立て、そのハードルは高くない?

1 手続全体の流れ

 支払督促は下図の流れで進んでいきます。

実際の手続の流れとして、債権者は、

  1. 支払督促の申立てを行い、2週間以内に異議がなければ、
  2. 仮執行宣言の申立てを行います。

⇒ つまり、2回の書面提出(申立て手続)が必要になりますが、それで完了です

裁判所ホームページより

2 支払督促を「2回」申し立てる意義とは?

 法律的な効力で申立てを見てみます。

 1回目の支払督促の申立てでは、裁判所が「支払督促」を発付しても、法律上は具体的な効力がありません。
 しかし、異議が出ずに2週間を経過して、仮執行宣言の申立てを行うと、裁判所は「仮執行宣言付支払督促」を債務者(相手方)に発付します。

 この仮執行宣言付支払督促は、あくまでも「仮」で暫定的なものですが、この支払督促に基づいて強制執行ができます

 そして、この仮執行宣言付支払督促に対して、2週間の間に異議が出ないと、確定判決と同一の効力、すなわち暫定的ではない確定した効力を有するものとなります。

3 申し立てにあたり必要な書類チェックリスト

・支払督促申立書
・当事者目録
・請求の趣旨及び原因
・申立人の氏名、住所地を記載して切手を貼った返信用の封筒
・相手の氏名と住所を書いて切手を貼った封筒
・申立人の名前と宛先を記載したハガキ(債務者の人数分が必要です)
・法人の場合、3か月以内に所得した資格証明書
・マンション管理組合が当事者の場合、管理組合の規約と議事録の写し
・弁護士や司法書士に依頼する場合、委任状

参照:🔗【詳細】支払督促申立てに必要な提出書類等(東京簡易裁判所)

※契約書など、支払督促では証拠を添付する必要はありません

4 オンラインの活用

 支払督促は、オンラインでも申立てが可能とし、非常に利用しやすい仕組みを裁判所が用意しています。

 申し立てができる類型が限られていたり(貸金、立替金、求償金、売買代金、リース料など)、電子認証が必要などのルールがありますが、何度も利用を予定している場合には、ぜひとも利用した方が効率が上がると思います。

【参考:🔗督促手続オンラインシステム

第3 いざ、申し立てよう

1 裁判所のホームページ等から必要な書類を確認する

 裁判所のホームページには、必要な書類など、一覧にして分かりやすく記載しています。

 🔗支払督促ホームページ(東京簡易裁判所)

 申立書などを、WordファイルやExcelファイルで欲しい方には、🔗山口簡易裁判所オリジナルページが非常に詳しく載っていますので、こちらも積極的に参照してください。

分からないことは、遠慮なく裁判所に問い合わせることが大切ですね!!

2 支払督促申立書一式(①支払督促申立書、②当事者目録、③請求の趣旨及び原因)

 申立書については、裁判所がサンプルを用意していますので、記載例を参考に手書きをしていくことで全く問題ありません。

 各地域の裁判所のホームページに書式が複数載っていますので、使いやすいものを利用することで問題ありません。

【書 式】⇒ 🔗こちらへ 

【記載例】⇒ 🔗こちらへ 

記載例に「ステープラーで留め」って、一体何のことかと思いましたが、ホッチキスで留めと同義ですね。

 請求の原因は、請求の趣旨として書いた金額を、どのような原因に基づいて請求するかを書きます。

 具体的に、分かりやすく書けば問題ありません。

 時系列で箇条書きでも良いでしょう。

迷ったら裁判所に聞く・裁判所に提出しちゃう・弁護士会の法律相談で聞いてみるなど、1人で考え込まないで、とにかく動いてみることが大切だと思います。

困ったら、民事訴訟法271条に簡易裁判所の訴えは「口頭ですることができる」とありますので、口頭で申し立てれば良いでしょうか。

裁判所書記官の面前で陳述をすれば良いという規定ですが、実際にこの条文が使われたことを見たことがありませんね。

やっぱり、書面が明確で確実ですからね。

3 収入印紙を正本に貼る

 支払督促の申し立てに必要な収入印紙は、訴訟の場合の半額です。

収入印紙を正本に貼り付けて提出します。

 🔗手数料額早見表

収入印紙手数料(支払督促)

 

4 資格証明書

 申立人、相手方に法人がある場合は、3ヶ月以内に取得した法人登記簿(資格証明書)が必要です。

 社名変更がある場合など、履歴事項全部証明書や閉鎖事項証明書の提出が必要になる場合がありますが、基本的には現在事項証明書で足ります。

 法務局で取得します。オンラインでも取得できます(🔗登記ねっと)。

5 証拠の添付はなくてOKです

 支払督促の申立てにあたっては、契約書や、相手とのやり取りのメールなどの証拠があるケースが多いと思いますが、それらの証拠については全く提出しなくて良いです

 証拠は提出しないで申立てと理解しておきましょう。

6 仮執行宣言の申立て ~ 相手(債務者)が2週間以内に異議を申立ててこなかった場合

 支払督促の申し立てを行って、債務者から異議が出たら、通常の訴訟に移行してしまいますので、支払督促の手続は終了となります。

 これに対して、債務者(相手方)から異議が出なかった場合には、2回目の申立て、すなわち仮執行宣言の申立てです。

POINT!!

債務者が異議を申立てなかったら、「すぐに!!」仮執行宣言の申立てを行います。

 

 先ほどの全体図にある、2回目の申立てに移ったわけですね。

支払督促の全体像

【必要な書類一式】
・支払督促申立書
・当事者目録
・請求の趣旨及び原因
・ハガキ(申立人の住所、氏名を記載)
・切手
・請書

参照:🔗仮執行宣言申立時に必要な書類等(山口簡易裁判所)

 支払督促が出されたのに、この仮執行宣言の申立てをしないで30日が経過してしまうと、裁判所から発せられた支払督促の効力はなくなってしまいます

 債権者としては、この1回目の支払督促の申立ての他に、この仮執行宣言の申立てをすれば、支払督促手続でやるべきことは終わりました!!

7 仮執行宣言付支払督促後も債務者が支払わない時は?

 送達証明申請を、支払督促を受けた簡易裁判所に行い、強制執行をしましょう

 債務者の財産が分からない場合には、財産開示の申立ても行いましょう。

 あなたの債権の存在、内容について、裁判で勝訴したのと同じ効果の「債務名義」というお墨付きを得ましたので、強制執行を駆使し、回収をします。

【関連記事】 「強制執行」~債務名義、執行文、送達証明書を準備し権利の実現へ
thumbnail
権利実現の最終局面、強制執行を行う!!
https://ik-law.jp/blog/kyoseishikko/

第4 債務者(相手方)の視点から見る支払督促とは?

1 支払督促の申立て(1回目)に対して、「督促異議の申立て」を行う

 債務者(相手方)の異議にフォーカスして全体像を見ていきます。

 債務者は、1回目に支払督促の申立書面を受領し、2回目に仮執行宣言の申立てを受領しますので、それぞれ受領から2週間以内に合計2回の異議の機会があります。

支払督促における異議の機会。
債務者にとって2回のチャンスがある流れ図。

 支払督促の申立て(1回目)に対して、相手方(債務者)が異議の申立てをすると、支払督促は直ちに失効します。

 手続は、通常の裁判手続に移行しますので、申立人(債権者)は通常訴訟と支払督促の収入印紙の差額を追納します。

 債務者とすれば、通常裁判を担当する裁判所から期日「呼出状」が送られてきますので、それを待てば良いだけです。

 債務者は、強制執行を受ける心配はありません。

 なお、異議の申立てに、理由は不要です

2 2回目の異議の場合は?~1回目の異議と何が違うのか?

 2回目となる仮執行宣言の申立てに対して、相手方(債務者)が異議を申立てると、支払督促は、同様に通常の裁判手続に移行します。

 ただ、2回目の仮執行宣言の申立てに対する異議は、1回目の異議と異なり、申立人(債権者)が強制執行をできる状態にあります。

 そのため、強制執行を止めるには、異議の申立てだけでは足りず、「強制執行停止の申立て」をする必要があります。

3 架空請求業者が支払督促を悪用しているケースに、どう対応するか?

 架空業者からの通知だと思い、無視してしまったというケースがあります。

 裁判所からの通知だと気が付き次第、一刻も早く異議を申立てましょう!!

 【仮に支払督促が確定してしまったら】
 「請求異議の訴え」(民事執行法第35条第1項)を提起するとともに、強制執行停止の申立てをして、不当請求であることを争っていきましょう!!

【参考:督促手続・少額訴訟手続を悪用した架空請求にご注意ください(法務省ホームページ)

債権回収のご相談など、
お気軽にご連絡ください。

全国対応

Zoom、Teams、
Skype等にて

相談料

1時間
11,000

(税込)

弁護士費用の詳細は弁護士費用をご覧ください。