強制執行において必須となる3点セットとして、

  • 債務名義
  • 執行文
  • 送達証明書

があります。

強制執行において、「執行文」とは債務名義を補完する役割があることをお伝えしました。

【関連記事】 「強制執行」~債務名義、執行文、送達証明書を準備し権利の実現へ
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強制執行の全体内容、手続について解説します!
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なんとなく、執行文が必要なイメージはお持ちいただいたと思いますが、ここではさらに深堀りをして、どうして執行文が必要となるのか、執行文にはどのような種類があるのか等をより詳しくお伝えできればと思います。

この執行文は、次の3種類があります。

債権者が証明すべき事実にかかっていたり、当事者が異なるような場合には特殊執行文(条件成就執行文・承継執行文)が必要になります。

それ以外の場合には単純執行文の付与を申請します。

執行文の種類内容
単純執行文債務名義に表示された給付請求権の内容をそのまま公証する執行文
条件成就執行文債務名義に表示された請求が債権者の証明すべき事実の到来にかかる場合に必要な執行文
承継執行文債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者にする場合に必要な執行文

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第1 どの執行文の付与を求めればよいか?

1 執行文とは

執行文とは、当該執行当事者間において債務名義の執行力の存在と範囲とを公証するため、執行文付与機関が債務名義の正本の末尾に付記した公証文言のことをいいます。

債務名義のどの部分に執行力が生じているのか、または債務名義に示された請求権の発生が一定の条件にかかっている場合にその条件が成就したのかについて、さらなる確認が必要となることがあります。

具体的に、どのような場合が想定されるのか、強制執行でイレギュラーな場面が発生した場合にどのように対応すればよいのでしょうか。

2 執行文の種類

執行文には、必要となる場面に応じて、単純執行文、条件成就執行文、承継執行文の3つがあります。

なお、民事執行法27条3項に債務者を特定しないで執行文の付与を可能とする、債務者不特定執行文もありますが、さらに細かい話ですので、ここでは割愛します。

執行文には、単純執行文、条件成就執行文、承継執行文があります。

⑴単純執行文

最も基本的な執行文です。条件成就執行文や承継執行文でなければ、単純執行文の付与となります。

「被告は、原告に対し、金100万円を支払え。」とある判決文が分かりやすいでしょう。

執行文といえば、基本的には単純執行文の付与を求めると理解して問題ありません。

⑵条件成就執行文

条件成就執行文というのは、請求が、債権者の証明すべき事実の到来に係っている場合で、債権者がその事実の到来を証明したときに付与される執行文をいいます。

例えば、懈怠約款の付された和解条項で解除の意思表示を行ったことが条件に入っている場合や、不確定期限や条件を定めた場合のその期限の到来・条件の成就などです。

【懈怠約款の付された和解条項の例】
「被告が2ヵ月分以上の賃料の支払いを怠ったときは、原告は催告を要することなく賃貸借契約を解除することができる。この場合、被告は原告に対して本件建物を明け渡す。」という和解条項における解除の意思表示については、原告が内容証明等で解除の意思表示を行った事実を立証します。


【不確定期限の例】
「被告の母が死亡したときは、6ヵ月以内に被告は原告に対して本件建物を明け渡す。」という和解条項に基づいて建物明渡しの強制執行をする場合には、被告の母が死亡した事実を、戸籍謄本等を添付して立証します。

⑶承継執行文

承継執行文というのは、債権が譲渡されたり、債権者あるいは債務者に相続が発生したりして、債権の承継者に対して又は債務の承継者について付与される執行文です。

当事者が、債権の譲渡や相続などによって変わっている場合に、変わった相手が強制執行手続の当事者となれるようにするために付与されます。

例えば、Aさんが裁判で勝訴判決を獲得した後で亡くなってしまった場合、Aさんの相続人は、また一から裁判手続を行うことなく、承継執行文を得て、債務者に対して強制執行を行うことができます。

  (承継を立証する資料)
相続の場合    →戸籍謄本
法人の合併の場合 →登記簿謄本
債権譲渡の場合  →契約書、譲渡通知書(内容証明郵便など)
代位弁済の場合  →代位弁済証書、振込控など

第27条
1 請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合においては、執行文は、債権者がその事実の到来したことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
2 債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文は、その者に対し、又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるとき、又は債権者がそのことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。

執行文の種類付与すべき場合付与の要件
単純執行文条件成就執行文や承継執行文を付与すべき場合以外のとき債務名義を執行できる状態であれば、追加して必要となる要件はない
条件成就執行文 (民執27条1項)請求者が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合債権者がその事実の到来したことを証する文書を提出したとき
承継執行文 (民執27条2項)当事者以外の者を債権者または債務者とする場合強制執行できることが裁判所書記官・公証人に明白であるとき、または債権者がそのことを証する文書を提出したとき

3 間違えやすいケース ~ 引換給付判決

「引換給付判決」とは、被告から同時履行の抗弁権や、留置権の主張が出された場合に、原告の請求権を認めるものの、同時に、被告に対して給付をするよう、原告に命じる判決のことを言います。

具体的には、不動産売買で土地を買ったにもかかわらず、売主(被告)が土地を引き渡してくれない場合に、「被告は原告に対し、金〇〇万円の支払いを受けるのと引換えに、原告に対し、本件土地を明け渡せ」などの判決をいいます。

それでは、この場合は、原告である買主は、条件成就執行文の付与が必要でしょうか?

この引換給付判決の場合、先に売買代金を支払う必要はありません。
あくまでも引渡しを受けるときに代金を支払う必要があるだけです。

それにも関わらず、条件成就執行文が必要とされてしまうと、事実上、先に代金の支払いを強制され、万が一にも引き渡されるか分からない状態が生じてしまい、公平性が保たれなくなってしまいます。

そのため、この場合には、単純執行文の付与で強制執行に着手可能としました

その一方で、売買代金の支払については、執行手続開始の際に、執行官に対し、買主として売買代金の支払済の事実(供託など)や支払準備を通知したことを通知した(履行の提供)事実を必要とし、公平性の確保を図ろうとしています。

4 間違えやすいケース2 ~ 懈怠約款における解除について

懈怠約款が付された和解条項でも、「当然解除」か「無催告解除特約」かによっても、変わります。

単純執行文で足りる場合(当然解除条項)

「被告が2ヵ月分以上の賃料の支払いを怠ったときは、当然に賃貸借契約は解除され、被告は原告に対して本件建物を明け渡す。」

条件成就執行文が必要な場合(無催告解除)

「被告が2ヵ月分以上の賃料の支払いを怠ったときは、原告は催告を要することなく賃貸借契約を解除することができる。この場合、被告は原告に対して本件建物を明け渡す。」

当然解除条項では、賃料2ヵ月分の未払いがあれば当然に契約は解除され、原告は本件建物について明け渡し請求ができることになります。

これに対して、無催告解除特約では、賃料2ヵ月分の未払いがあったとしても、原告が契約を解除するか否かの判断をすることが可能となっており、いわば契約はペンディングの状態として、解除され得る状態ながら存続していることになります。

そのため、当然解除条項では「単純執行文」の付与で足ります。

これに対し、無催告解除特約では、建物の明け渡しを求める場合には、原告が賃貸借契約について解除の意思表示をした事実を立証する必要がありますので、「条件成就執行文」が必要となります。

5 執行文の付与を受けられなかった場合

債権者が、たとえば証拠資料の紛失等によって、条件が成就した事実や承継した事実を立証することができず、執行文の付与を受けられなかった場合には、①執行文付与等に関する異議の申立て(民執法32条)、②執行文付与の訴え(民執法33条)により、付与を求めていきます。

執行文付与の訴えは、条件成就等の確認を行うことを目的としますので、債務名義上の請求権の存否について判断されるわけではありません

執行文を求める手段は、執行文付与等に関する異議の申立てと執行文付与の訴えがあります。

第2 執行文の付与に対して争う手段について

それでは、債権者が執行文の付与を求めた行為に対し、債務者に不服がある場合にはどのような手段で対応すれば良いのでしょうか。

1 執行文付与等に関する異議の申立て

執行文の種類を問わずに認められ(単純執行文、条件成就執行文、承継執行文のいずれに対しても申立てが可能)、かつ、執行文が付された場合と付与が拒絶された場合の両方に利用できます。

債務名義の要件を形式的・手続的に充足するに至らず、適式な成立を欠くときは、執行文付与に関する異議事由となります。

2 執行文付与に対する異議の訴え

条件成就執行文や承継執行文が付与された場合において、債務者の側で条件が成就していないことや、自分が義務の承継人ではないことを主張して、執行を止めるための訴えです。

前項の執行文付与等に関する異議の申立てを行って、かつ、執行文付与に対する異議の訴えの両方を行うことができます。

執行文の付与に対して争う手段(異議の申立て、異議の訴え)の全体図。
 単純執行文条件成就執行文承継執行文
執行文付与等に関する異議の申立て (民執32条)
執行文付与に対する異議の訴え (民執34条)×

3 請求異議の訴え

強制執行手続の前提となっている債務名義に係る請求権の存在又は内容について異議がある場合には、その債務名義による強制執行の不許を求めることができます。

これを、請求異議の訴えといいます。

4 それぞれの関係性等

異議の申立てや執行文付与に対する異議の訴えと、請求異議の訴えは、債務名義に係る請求権の内容を争うかどうかで明確に区別されます。

条件成就執行文や承継執行文が付与された場合において、債務名義に記載された請求権の存在は前提として、その条件成就や承継の有無等を争うのが、異議の申立てや執行文付与に対する異議の訴えです。

これに対し、請求権そのものの存在又は内容について、たとえば、弁済したからその債権は消滅している、などの主張は、執行文の付与自体に関するものではありません。

そもそもの債務名義に係る請求権の存在(又は内容)についての問題となりますので、請求異議の訴えを起こす必要があります

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