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売掛金の回収や、滞納されている料金の回収をしたいと思っていますが、弁護士に依頼すると費用がかかってしまいますので、できれば自社で対応できることはやりたいと思っています。
具体的にどのような方法で回収を目指すべきでしょうか。
また、どのようなことに注意すべきでしょうか。 -
Answer
弁護士は、法的手続を履践することに長けていますが、弁護士に依頼する前にできることは沢山あります。
債権回収のポイントは、冷静な頭と回収への情熱をもって、債務者に心理的プレッシャーをかけて支払いを迫ることです。
具体的には、
- 電話・メール・LINEなどで毎日請求をすること
- 夜討ち朝駆けも厭わず、債務者を訪問して回収を迫ること
- 書面でも請求をし続けること
はやりましょう!!
回収を目指す際に、必死だからこそ勢い余り感情的になっても、恐喝罪等に当たらないよう注意すべきです。
それでも回収が図れない場合には、法的手段の検討や弁護士への依頼を検討するべきです。
第1 債権回収の心構え
1 債権回収は、契約時から始まります
契約は口約束でも成立します。しかし、後でそんな約束をしていないと言われると、立証するのが大変です。
特に裁判所は、驚くほど書面を重視します。
約束は書面にしておく!!債権回収の第一歩は、事前の備えから始まります。
契約書を作成しなかったら、、、
契約書がなくても、注文書、請書、受領書等の書類はもちろん、念書、覚書、確認書などの書類も契約成立の証拠となることがあります。
メール・LINEのやり取りの履歴や、銀行通帳の入出金履歴も証拠になり得ます。
契約書がなくても、取引に関連する資料を集めてみましょう。
2 「無い者からは取れない」が債権回収の大原則
債務者が支払ってくれない場合には、最終的には裁判等の手続を利用し、強制執行をして債権の回収を図っていきます。
しかし、債務者に財産がなければ、強制執行をしたくてもできません。
裁判所からせっかく勝訴の判決文をもらったとしても、実際に回収できないままでは、判決文も単なる紙切れで終わってしまいます。
特に、何年もかかって、訴訟費用や弁護士費用を使って苦労して得た判決が、何の価値もない紙切れ状態になってしまい、さらには訴訟費用や弁護士費用もすべて負担するという状況になってしまうのです。
3 債務者の信用度は流動的
取引を開始した時には信用調査上、何も問題なかった相手方も、時の経過と共に現在までも問題ないかというと、必ずしもそうではありません。
特に相手について悪い噂を耳にした場合には、相手の資産状態の徹底した調査、信用調査が必要不可欠になります。
信用調査は、取引先の物的・人的な信用状態を把握します。
物的なものは、取引先の所有する不動産、事業規模、設備、営業状態、資金繰りなどで、人的なものは、経営者の資質・評判、経営能力、従業員の勤務状態などです。
調査方法は、民間の信用調査機関による調査、同業者や他の取引先を通じての調査、取引銀行を通じての調査、登記所などの調査などがあります。
信用調査機関からは、信用調書が報告されますが、これは外部からの聞き取り調査である点で絶対的なものではありません。これをどう活かすかが、債権回収を成功させるポイントになります。
4 回収作戦と綿密な実行プランを立てる
無い者からは取れない以上、債権回収の戦略は、債務者にどれだけの資産があるのか、まずは敵を知ることから始まります。
債務者から、「最近の不景気が厳しくて、無い袖は振れないんです。」と言われたとしても、その言葉を言葉通り受け止めてはいけません。債権者なのに、相手の土俵に乗る必要は全くありません。
不良債権になればなるほど、虚々実々の駆け引きを狡猾に乗り越えていく必要があります。
債務者の情報として、材料や商品、自動車、電話、事務用品など目に見えるものがあります。
しかし、これらは他に債権者がいれば、当然容易に目を付けることは可能です。
そのため、回収作戦と綿密な実行プランが必要になります。具体例を紹介します。
戦略1: 担保を設定する
店頭や倉庫にある商品や工場にある仕掛品などに対して、担保権を設定する方法があります。これらの品物を債権の代わりに持ち去れば、債務者が通常の営業を継続できなくなり、事業を停止してしまうかもしれません。
そうではなく、通常の営業を継続しながらも、流動する動産に対して担保を設定する方法があり、これを集合物譲渡担保(流動動産譲渡担保)といいます。
これはあくまでも一例ですが、他の債権者に先んじて手を打っておくことは、債務者に延滞等が発生した場合の備えとして大切なことです。
戦略2: 隠し財産を処分させない
支払いが怪しくなり始めると、債務者は隠し財産を守ろうとします。
債権者からの差し押さえを逃れるために、不動産を家族名義にしたり、会社資産が社長個人名義に変わっていることがあります。
わざと他人名義にしているのであれば、詐害行為取消権といって、債務者が債権者を害することを分かっていながら自身の財産を処分する行為を取り消す権利を行使します。
【裁判例】
(東京地方裁判所令和元年12月24日判決)
債務者(夫)が所有していた不動産を妻に贈与した事案で、債権者が詐害行為取消権を行使し、債務者(夫)から妻への贈与を取消す判決が出ています。
どんなに調査をしても、何も出てこないことはあります。
その時は「無い者からは取れない」との結論にならざるを得ませんが、将来の返済約束はしておきましょう。
第2 債権回収に向けた具体的な行動をとろう!!
1 支払う気を起こさせるよう上手に圧力をかける
債務者に支払う気持ちを起こさせるための方法は、心理的に圧力をかけることです。
心理的な圧力には、単に請求して心理的苦痛を与えたり、道徳心に訴えることや、利益誘導を行って支払いを促すなど、様々な方法を駆使することが必要です。
2 電話作戦
メールやLINEでの請求より、債務者にとってプレッシャーになり、かつ債権者にとって簡便な方法は、電話での督促です。
電話1本で債務を支払ってくれるなら、こんなブログを読んでないよと思われる方もいるでしょう。
しかし、使い方次第で効果を上げることもあります。
とにかく毎日電話をかけましょう。
債務者本人(会社なら責任者)がいなければ、上司でも部下でも、取次の女性でも、必ず用件を詳しく言って、とにかく困っている支払いをして欲しい、明日また〇時頃必ず電話をするからと予告し、またその時間に電話をします。
電話作戦を実行するには、とにかく毎日電話をすること、債権者も気合を入れて頑張らないと効果を上げません。
3 訪問をする
債務者のところへ出向いて請求をします。
ただ、事前の約束通り面談をしてくれる相手ならば良いですが、支払が滞る債務者の場合は、連絡の返信や面談すらも難しくなる場合も多いです。特に、電話も出ない、面談もできない相手には、夜討ち朝駆けも行います。
債権回収のために債務者の自宅や会社に行くことは、権利行使の正当な範囲内ですので問題ありません。
そして、債務者をつかまえたら、いつ払ってもらえるのか、いくらかでも払ってくれと連呼するだけでなく、何らかの約束を取り付けましょう。
拒否されれば、取引先などの情報(売掛金を債権譲渡してもらうことや今後の差押の可能性を考えて情報を取得することがとても重要です)を聴きだすようにしましょう。
支払延期を求めてきたら、力関係で優位に立てるチャンス
作戦: これまでの債権をより強い力をもって債権に変更しましょう!
契約書がなければ、この機会に新しく書面を作成します。
「合意書」、「支払約束書」、「誓約書」など簡単なもので構いません。
相手が書面で債務を認めている確たる証拠を作成する機会です。
また、法律の建前からすると、会社の取引行為について、社長個人に法律上の返済義務は発生しません。
社長であっても、会社と個人は法律的に別主体と理解されています。
そのため、会社だけでなく、社長個人の財産にも法律上請求ができるように、社長の個人保証をこの絶好の機会にもらいましょう。
【訪問時の留意点】
☞ 恐喝にならないよう注意する
圧力の掛け方次第では、恐喝罪や脅迫罪と指摘される可能性があります。
また相手の進路を塞ぐのは許容されますが、相手を捕まえるなどは暴行罪や強要罪等と指摘される恐れがあります。
「告訴する!」は法律上認められた正当な権利の行使ですので、この言葉そのものが恐喝・脅迫に当たることはありません。
☞ 相手の敷地内では細心の注意を!
相手の敷地内から出ていけと言われて退去しなければ、不退去罪に該当する恐れがあります。
4 書面(郵便)による請求
電話や訪問に併行して、書面でも請求を行います。
現状についての回答欄を設けて返信を求めるのも1つのやり方です。
書面で行うことの最大のメリットは、電話や訪問に比べて、交渉過程が可視化できることです。
これだけ請求をしているのに支払いをしてもらえない、書面の返答がもらえない等、第三者に対して説明しやすい証拠を作っていくことになります。
特に、契約書を作成していないような場合には、このような書面で回答を得られると、債務の「承認」として、回答書面が新たな「証拠」になること、そして債務の承認として時効もその承認の時より新たに始まることになります。
債権の回収にあたっては、できる手段を行使して、あらゆる督促を行うことが大切です。
5 訴訟などの法的手段の活用
債権回収の最後の手段は、法的手続きになります。
訴訟となれば、時間もお金もかかりますが、相手の財産に対して合法的・強制的に回収することを可能にするのが法的手続です。
法的手続を利用する場合には、弁護士に依頼することが多いとは思いますが、自社でできることもあります。
別記事で自社でもできる法的手続(弁護士に依頼したら、弁護士は何をやってくれるのか?)について解説していきますので、ぜひご覧ください。
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