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貸しているビルの賃料の値上げをしたいと思っています。
どのように進めればよいでしょうか?
賃料の増額請求する場合の手続の流れや、どのような見通しを持つべきかを教えてください。 -
賃料の値上げを求めたい場合には、まずは賃借人に対して増額したい旨の通知を送ることから始まります。
これに賃借人が同意してくれれば、増額された賃料が新たな契約となります。
賃借人が増額に同意しない場合には、法的手続を執らざるを得ません。
賃料増額(減額)請求の場合は、訴えを起こす前に、調停という話し合いを行う必要があります。
これを調停前置主義といいます。つまり、全体の手続図として、3つのステップが用意されています。
- 任意に相手方と交渉する
- 調停を申立てる
- 裁判を起こす
【賃料増額のポイント】
適正な賃料額が争われる場合、賃貸人、賃借人の要望だけでなく、近隣の不動産業者の意見、賃料に関する統計、不動産鑑定士の意見などが考慮されます。特に不動産鑑定士の意見が最重要の証拠になります。
そのため、訴訟を含めて最後まで争うことを視野に入れる場合には、事前の鑑定の実施、もしくは裁判手続における鑑定の実施が必要不可欠になりますので、相応の費用負担があることを念頭に置かなくてはなりません。
(法的手続を想定しない場合には、鑑定を行わない方針もあり得ます。)より詳しく解説します。
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第1 賃料増額(減額)請求の流れ(全体像を知ろう)
1 はじめに(賃料増減額請求権の意義)
借地借家契約は、長期にわたって継続することも多く、経済事情や賃料相場等の変動によって、契約当初に設定された賃料が不相当になってしまう事態が起こり得ます。
そこで、賃料が不相当な水準のまま放置されるという不都合に対処するため、当事者の一方的意思表示により、従前の賃料を将来に向かって客観的に相当な金額に改定する権利(賃料増減額請求権)が認められています(借地借家法11条1項、32条1項)。
この賃料増減額請求権は、その意思表示が相手方に到達した時に効果が生じるとされます(これを「形成権」と呼びます)。
つまり、判決などで増額請求が認められた場合には、判決が確定した時からではなく、増額の意思表示が賃借人に到達した時から増額分を請求することができます。
さらに、賃料の増額請求が認められた場合には、過去の増額分の精算を行うだけでなく、未払いとなっている賃料部分については年利10%を付して請求がすることができます。
(地代等増減請求権)
🔗「借地借家法」(e-Gove法令検索)
第11条 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
(借賃増減請求権)
第32条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2 賃料増額(減額)が認められる要件とは?
上に引用しました借地借家法の条文から、①賃料が不相当となったこと、②賃料増減の意思表示をしたことが必要になります。
【ポイント】
条文に「不相当となったとき」と明記されているため、既存の賃料が客観的に低すぎるだけでは足りず、従来と比較して、事情の変化が生じ、その結果、既存賃料が客観的に低すぎるようになったことが必要とされます。
3 賃料の増額を求めていく流れ(手続の全体像)
増額(減額)通知書の発送
賃料の増額・減額を具体的にどの程度にするかは、当事者間の協議によって決めることができます。
そのため、まずは賃借人に対して、賃料の増額を行いたい旨を通知しましょう。
賃料の増減額請求においては、この「増額請求をした事実」も重要となります(裁判で判決となった場合に年10%の利息発生の基準になります)。
裁判を見据える場合には、増額請求した事実を証拠として残すためにも、内容証明郵便の利用が推奨されます(裁判まで想定しない場合には、普通郵便やFaxでも問題ありません)。
調停の申し立て
当事者間において話し合いがまとまらない場合や、相手方(賃借人等)から増額を拒否された場合には、任意交渉は決裂といえます。
交渉が決裂した以上、増額を求める場合には法的手続へと移りますが、賃料増額(減額)請求についてはいきなり訴訟ではなく、調停を申し立てるように規定されています(調停前置主義:民事調停法24条の2)。
いきなり訴訟手続によって争うよりも、できるだけ当事者間により自主的に解決することが望ましいと思われる類型において、調停前置主義が採用されています。
調停前置主義の具体例には、離婚事件、離縁事件、婚姻無効事件などが挙げられます。
この例からも想像できるように、当事者間の関係が密接な類型について規定されています。
賃料の増額(減額)請求は、今後も長期的に続くであろう契約であることから、賃貸人と賃借人の継続的な関係性に配慮して調停前置主義が採用されています。
訴えの提起(裁判)
調停で話し合いがまとまらなかった場合には、裁判という強制力を伴った手続によって解決を図ります。
もっとも、賃貸借契約における適正な賃料額がいくらなのかは、裁判所も専門的な知見を有しているわけではありません。
適正な賃料額については、専門家である不動産鑑定士の不動産鑑定評価書が極めて重要な証拠となります。
【ポイント】
裁判では、賃貸借契約の内容や最終合意賃料が判明すれば、当事者の申請により、ほとんどの事件で賃料増減額請求の意思表示到達時点における適正継続賃料額について、鑑定(裁判所が主導する「公的鑑定」)が実施されます。
そして、この公的鑑定が出されれば、その鑑定評価額を基準にした和解が試みられます。
和解が成立しない場合には、判決が下されることになります。
第2 調停手続
1 調停委員会の構成
調停では、裁判官1名と調停員2名(多くは、不動産鑑定士と弁護士)の調停委員会が事件を担当します。
賃料増減額請求では、内容がどうしても専門的にならざるを得ませんので不動産鑑定士が調停員として対応し、専門的な知見による助言を得ながら、話合いを行うことができます。
2 管轄(どこの裁判所で調停を行うか?)
賃料増減額請求の調停では、目的物件の所在地を管轄する簡易裁判所(又は当事者が合意で定める目的物件の所在地を管轄する地方裁判所)に調停を申立てることが必要です。
一般の民事調停のように、相手方の住所地や本店所在地を管轄する裁判所に調停を申立てることができませんので、注意が必要です。
なお、訴訟は、このような土地管轄の制限はありません。
3 調停の流れ
調停では、調停委員が申立人・相手方から交互に話を聞きます。
調停は、話し合いによって合意形成を目指す手続ですので、双方の主張が大きく乖離している場合には、合意の成立が難しいことが多いです。
しかし、そうでない場合には、調停員による専門的見地からのあっせんもあり、裁判まで争う肉体的・精神的・経済的負担なども総合考慮し、合意に向けて歩み寄りがなされることも多くみられます。
調停期日の流れ
【ポイント】
専門家調停委員である不動産鑑定士が、簡易的な鑑定を行い意見を述べることがあります。
正式鑑定は費用がかかりますが、調停委員による簡易鑑定では当事者に追加費用がかからずに、簡易迅速に専門的な評価を得ることができます。
専門家の関与を得ながら話合いを行えることが、調停の最大のメリットです。
4 調停の終了
調停が成立すれば、調停調書は判決と同一の効力があります。
調停が不成立で終わった場合には、2週間以内に訴えを提起すれば、調停を申立てたときに訴訟提起があったものとみなされます。
このメリットとしては、調停で要した裁判費用をそのまま訴訟に流用できる点が挙げられます。
第3 賃料増額(減額)請求の裁判
1 請求のポイント
何を請求するか?
賃料増減額請求では、スタンダードなものは、「原告の被告に対する別紙物件目録の土地/建物の賃料は、令和〇年〇月〇日以降、〇〇円であることを確認する。」という賃料の確認を求める訴えです。
さらに、賃貸人であれば、強制執行ができるように確認だけでなく給付の訴え(「〇〇円を支払え」という内容。)を追加することがあります。
具体的には、「被告は、原告に対し、〇円及び内金〇円に対して令和〇年〇月〇日以降、内金〇円に対しては令和〇年〇月〇日以降、各支払済みまで年1割の割合による金員を支払え」を追加します。
賃料増減請求の対象となる期間の終わりは、訴え提起段階では特定できず、口頭弁論終結時として特定されます。
そのため、給付請求を追加する場合には、終結時までの賃料差額を請求するために請求の趣旨の変更(拡張)申立てを行う必要があります。
訴額の算定について
実務上、賃料増減額請求の訴額(裁判所に訴えを求める金額)は、訴え提起までの期間に、平均審理期間を12ヵ月と考慮して算定します。
具体的には、差額✖(過去分の月数+12ヵ月)として算定されるのが一般的です。
2 審理のポイント
「直近合意時点」はいつか?の争い
賃料増減額請求権は、「直近合意時点」からの事情変更により賃料が不相当になっていることが必要です。
「直近合意時点」とは、単に契約が更新されているだけでは足りず、あくまで経済事情の変動等を踏まえて当事者間で賃料額に関する具体的かつ実質的な協議がなされていることが必要とされます。
そのため、賃料額について実質的な協議が行われたか否かが争われることも多く、過去の当事者間のやり取りが証拠として重要になってきます。
裁判所による鑑定(公的鑑定)の実施
賃貸借契約の内容や最終合意賃料が判明し、訴訟の経過として和解等がなかなか整わない場合には、当事者の申請に基づいて裁判所は、鑑定(公的鑑定)を実施します。
鑑定対象となる賃料は、賃料増減額請求の意思表示到達時点における適正継続賃料額となります。
過去の裁判例においても、一方当事者が行った鑑定(私的鑑定)だけで決着がつくことはほぼなく、公的鑑定が実施されるのが通例といって差支えません。
そしてこの公的鑑定の結果を基に最終的な和解協議も、判決も行われています。
第4 賃料増額(減額)の請求をされた当事者の対応
1 改定されるまでは従前通り
冒頭で、賃料増減額請求は、その意思表示が相手に到達した時から効果が発生しますと説明しました。
しかし、これまで説明しましたように、決着までには任意交渉だけでなく、調停や裁判もあり、賃料増減額の意思表示から解決までにはタイムラグが生じます。
そうすると、請求を受けた当事者はどのように対応すれば良いのでしょうか?
これに対する答えですが、基本的には、従前と変える必要はありません。
借地借家法の条文には、「裁判が確定するまは、相当の賃料を支払うことをもって足りる。」(同法11条2項、32条2項)と規定され、従前の賃料は基本的に「相当の賃料」といえます。
増額請求を受けた賃借人であれば、これまで通りの賃料を支払います。
減額請求を受けた賃貸人であれば、これまで通りの賃料を請求します。
賃料額が、固定資産税を下回っているような特殊な場合でない限り、これまで通りの賃料を支払うことで債務不履行などの責任が発生することはありません。
その代わり、裁判が確定した場合(増減額が認められた場合)には、差額分に年利10%の利息を付して清算する必要があります。
これまで通りの賃料を支払い続けることで問題なしとする代わりに、最終的に差額分に年利10%を付けることで、全体のバランスを取っています。
年利10%は、あくまでも裁判で判決まで進んだ場合のもので、交渉や調停、裁判和解などで解決が図られる場合には、請求しないまま終わることが多いです。
(地代等増減請求権)
第11条
2 地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3 地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。(借賃増減請求権)
🔗「借地借家法」(e-Gove法令検索)
第32条
2 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3 建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
2 貸主が増額請求をした場合
増額請求をしても、解決されるまではこれまで通りの賃料しか受け取れません。
そのため、増額した賃料が支払われなかったとしても、それを賃料の一部未払いとして扱うことはできず、債務不履行等を主張することはできません。
従前の賃料は、増額を求めている賃料の「一部」として受領していることを明確にしておけば、賃料増額請求において不利に扱われることはありません。
「とりあえずもらっておくが、金額は満足していない。」という姿勢は、増額を求める態度と矛盾するものではありません。
3 借主が減額請求をした場合
減額請求をした場合であっても、これまで通りの賃料を支払い続ける必要があります。
そのため、減額請求に絶対の自信があったとしても、一方的に減額した賃料しか支払わない場合には、賃料の一部不支払いとなってしまい、貸主から賃貸借契約の債務不履行解除をされてしまう可能性があります。
増額した金額でない限り、貸主が賃料の受領拒否をする場合もあるかもしれません。
その場合には、これまで通りの賃料を銀行口座に入金したり、法務局に供託するなどの対策をしましょう。
第5 鍵を握る「不動産鑑定」とは?
1 賃料増額請求における「鑑定」とは?
「賃料」には、新規賃料と継続賃料がある
同じ「賃料」という言葉でも、新規賃料と継続賃料とでは異なる評価を受けます。
まずは、この2つの概念があることを押さえておきましょう。
新規賃料とは、新しく賃貸借契約を締結するときの賃料額をいいます。
新規賃料は、市場の中での競争関係における賃料相場があるため、高い賃料額が算定されやすいといえます。
これに対して、継続賃料とは、現在契約関係が継続している当事者間における適正な賃料額をいいます。
そのため、継続賃料は、現行賃料を基準としながら、その合意をした時点からどのような経済事情の変化があったのか等を考慮しながら判断されます。
賃料の増減額請求を行うにあたっては、この「継続賃料」の鑑定になります。
そのため、新規賃料と継続賃料を区別して考える視点が大切です。
不動産鑑定評価基準
適正な継続賃料を算定するにあたり、不動産鑑定士は、国土交通省が定める不動産鑑定評価基準に沿って行います。
【不動産鑑定評価基準のポイントは2つです】
- 鑑定手法として、差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法を用いて、これらを関連付けて算定されること。
- 直近合意時点からの客観的経済的事情変更に加え、賃貸借契約締結・賃料改定の経緯や契約内容などの事情も総合的に考慮して算定されること。
不動産の賃料を求める鑑定評価の手法は、・・・、継続賃料にあっては差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法等がある。
継続賃料の鑑定評価額は、現行賃料を前提として、契約当事者間で現行賃料を合意しそれを適用した時点(以下「直近合意時点」という。)以降において、公租公課、土地及び建物価格、近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等における賃料又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃料の変動等のほか、賃貸借等の契約の経緯、賃料改定の経緯及び契約内容を総合的に勘案し、契約当事者間の公平に留意の上決定するものである。
🔗「不動産鑑定評価基準」(国土交通省)
2 公的鑑定(裁判所鑑定)が重視される理由とは?
賃料の評価を検討する「鑑定」についても、種類があります。
各当事者が独自に不動産鑑定士に依頼をして裁判で証拠提出するものを私的鑑定(当事者鑑定)と呼びます。
これに対して、裁判所が選任した鑑定士によるものを公的鑑定(裁判所鑑定)と呼びます。
そして、裁判となり判決が下される場合には、ほぼ必ず公的鑑定(裁判所鑑定)が実施され、これが非常に重要視されます。
裁判所は、公的鑑定の結果に特に不合理な点がなく、他の証拠との整合性にも問題がなければ、公的鑑定を採用して(私的鑑定があってもそれを排斥します)、「相当賃料額」を認定することが多いです。
私的鑑定(当事者鑑定)が異なる取扱いを受ける理由とは?
同じ専門家である不動産鑑定士の鑑定にもかかわらず、私的鑑定よりも公的鑑定が重視される理由としては、一般に3つの理由が挙げられます。
- 裁判所が選任した鑑定人は、中立公正な立場で鑑定を行うこと
- 公的鑑定は裁判の終盤に実施されることが多く、双方の主張や資料が出た後での鑑定となることから、双方の事情を十分に洞察して鑑定を行うことができること
- 私的鑑定は、一方当事者からの依頼により鑑定を行うため、基礎資料の採用や価値判断の中に依頼者への偏りがみられること
このような裁判所の判断傾向から、公的鑑定(裁判所鑑定)が非常に重要な鍵を握っているといえます。
不動産鑑定士の、第三者的立場ゆえに重要視されます。
そのため、裁判所から選任されている鑑定士に私的鑑定をお願いしても、公的鑑定と同じ証拠価値を持たせられるわけではありません。
3 私的鑑定を行う意味はあるか?
それでは、裁判で決着される場合には、ほぼ必ず公的鑑定(裁判所鑑定)が実施され、かつ公的鑑定が重要視されるならば、私的鑑定を行う意義はあるのでしょうか。
鑑定費用を自己負担してまで、私的鑑定を行う意義はないのでは?
確かに、賃料差額が小さいケースでは、私的鑑定を積極的に活用する必要はないものと考えます。
ただ、私的鑑定には以下のようなメリットがありますので、賃料差額が大きいケースでは、積極的に考えて良いでしょう。
- 交渉の強い武器になること
⇒ 裁判に至る前に鑑定書があると、一番強い証拠を所持する点で有利に進める事ができます。
また、調停のように公的鑑定が実施されない段階では、同様に有利に進めることができます。 - 公的鑑定にも事実上の影響を及ぼすことができること
⇒ 説得力のある私的鑑定は、公的鑑定に事実上の影響を与えますので、公的鑑定においても実質的に優位な戦いをすることが可能になります。 - 公的鑑定に専門的見地から反論できる武器になること
⇒ 公的鑑定が重視されるとはいえ、裁判所による調整がなされることも少なくありません。その際に当方の主張を補強してくれるのは、何より専門家たる鑑定士の意見であり、私的鑑定があるからこそ専門的見地からの反論が可能となる面があります。
4 鑑定費用の相場
不動産鑑定士に賃料鑑定を依頼すると、いくらくらいかかるのでしょうか。
もちろん物件次第で全く金額も変わってきます。
住居と、大型複合施設を同一にすることはできません。
極めてざっくりとした相場観では、安い事案では30万円程度から、高い事案で150万円程度ではないかと感じています。
(ただ、毎回個別に確認するのが、結局はベストです。)
公的鑑定(裁判所鑑定)の費用は誰が負担するか?
公的鑑定は、公的鑑定を望む方(一般には原告)が裁判所に申出をし、申出をした側が鑑定費用を予納します。
この鑑定費用は「訴訟費用」として、最終的には判決で原告被告双方に割り振られます。
しかし、この訴訟費用については任意での支払いがなされるとは限らず、かつ、強制執行するには「訴訟費用額確定処分の申立て」の手続が別途に必要となります。
そのため、この煩雑さゆえに訴訟費用の回収まで行おうとする当事者は多くなく、現実には公的鑑定の申出をした側が全額負担をする結果になっていることも多くあります。
5 (応用)不動産鑑定士の鑑定結果が、そのまま裁判結果とならない理由は?
不動産鑑定士は、国交省の定める基準に従い、適正継続賃料額を決定します。
ただし、裁判所において公的鑑定が重視されてはいるものの、そのまま採用されることは必ずしも多くありません。
これは、借地借家法に賃料増減額請求が「不相当」となった場合に行使できるものと規定されていることに由来します。
あくまでも裁判所で判断されるのは、「相当」賃料です。
そのため、相当賃料と適正賃料は同義と言い得るものの、裁判所は適正賃料を考慮しながら、さらに賃貸借契約の個別具体的な事情を考慮して、当事者の衡平を図る見地から具体的な賃料額を定めるべきと考えられています。
客観的経済事情の評価は不動産鑑定士の判断を尊重しつつ、当事者の個別事情などの評価は、不動産鑑定士によって考慮の有無や程度も変わり得るため、当事者の衡平を図る見地から、最終的には裁判所が積極的に判断をしている、と整理できますね。
第6 弁護士の活用意義と費用
1 弁護士を活用するメリット
相手との交渉を一任できることはもちろん、
法律的な見地から現在の家賃の不当性を主張します。
さらに、鑑定書の妥当性(不当性)を「不動産✕法律」の専門家として吟味し、優位な解決が得られるよう最善の戦いができます。
賃貸人側であれば、退去を睨んだ戦術的な使い方も検討できます。
ご相談だけでも、お問い合わせください。
2 当事務所の弁護士費用
当事務所では、「経済的利益」(=増減額分の7年分の額)に11%を乗じて算定します。
任意交渉、法的手続と同一費用です。
(算定例)
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・着手金 33万円
・報酬金 46万2,000円(5万円×12ヵ月×7年×0.11)
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