不動産の強制執行(競売)手続は、どのような流れで進められますか?
債権者として、どの程度の費用や時間を想定すれば良いでしょうか?

 不動産の強制競売は、債務名義の取得により、いよいよ債権回収の最終段階に行われます。

債権回収の全体図の中で、最終の強制執行段階。
債権回収の全体像の中で最終ステージ、大詰めの強制執行になります。

 手続は、以下の流れで進んでいきます。
 なお、抵当権の担保不動産競売の場合には、優先弁済効の有無の違いはありますが、手続の流れ自体は強制競売と基本的に同じです。

強制競売の申立て
裁判所が申立書類をチェックし、要件を満たしていれば開始決定が発令されます。
開始決定の債務者への送達
送達に先立ち、対象物件には差押登記がなされます。
(a)現況調査報告書の作成
執行官が対象物件の現地調査を行い、現況調査報告書を作成します。
(b)評価書の作成
現況調査報告書を基に、評価人(不動産鑑定士)が価額の評価を行い、評価書を作成します。
(c)物件明細書の作成
評価書を基に、裁判所は売却基準価額を決定し、書記官が物件に関する法律関係の認識を示した物件明細書を作成します。
3点セット(a)~(c)が不動産競売物件情報サイト(🔗BIT)に公開
期間入札期間開札期日等が決定し、ホームページ不動産競売物件情報サイトに公開されます。
裁判所の売却許可決定
開札の結果、買受人(最高価買受申出人)が現れた場合、売却不許可事由がないかを確認した上で、裁判所は売却許可決定を発令し、買受人が確定します。
売却代金の納付
代金納付日に買受人が売却代金を納付することにより、所有権が移転し、所有権移転登記がされます。
裁判所が配当表を作成
配当等の期日が裁判所により指定され、配当表も作成されます。
配当(債権の満足)・終了
配当期日が開かれ、債権者への配当が行われます。

【費目】
 大きい費目では、予納金(80万円~200万円)、登録免許税(1,000分の4)があります。

 競売手続が順調に進めば、真っ先に配当を受ける費目になりますので、売却代金から充当されます。
 つまり、手続の終わりに返ってくるものを立替えているだけです。

 ただ、無剰余取消や買受人不存在などで取り消される場合など、申立債権者が費用だけ負担するリスクも想定しておきましょう。
 その場合は、使用されなかった残額が返金されますが、半分以下を想定して差支えありません(金額はケースにより異なります)。

【時間】
 上記の一連の手続(申立ててから配当完了まで)で、概ね半年から1年程度を要します。
 🔗令和2年度の司法統計を見ても、9割弱が1年以内に終了しています。

第1 はじめに

 不動産の強制競売は、住宅ローンが支払えずに銀行が競売を申立てるなど、担保権(抵当権)の実行としてのイメージの方が強いかもしれません。

 債権者、債務者、裁判所、入札者、買受人など、色々な立場の方々が絡み、それぞれの立場によって手続の見え方は異なると思いますが、ここでは債権者からの視点にスポットを当てて説明をします。

 下の図は、裁判所のホームページにある不動産競売手続の流れです。
 この記事と合わせてご参照いただけたらと思います。

不動産強制競売の流れ図

裁判所ホームページより引用

第2 申立てについて

強制執行における強制競売の位置づけ。

1 管轄

 不動産の所在地を管轄する裁判所に申立てます。

2 申立書類等について

 判決を取得した場合、3点セットの取得をします。

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申立てに必要な書類等について

慎重な手続だからこそ、申立てに多くの書類が必要なのですね。
覚えきれないので、毎回調べて丁寧に対応しないといけませんね。

請求金額をいくらにするか

 請求金額の満額で申立てることが多いと思います。
 これは、差押えが競合した場合に取り負けを防いだり、予想外に高値で落札された場合に取りはぐれを防ぐためです。

 ただ、債務名義の金額に比して剰余が見込まれる金額が少ない場合(抵当権者の存在等も考慮します)や、任意売却が視野に入っている場合などは、差押登記の登録免許税の節約の観点から、一部請求にするか検討することがあります本記事「第6」の「3」にて拡張可否について補足

 

不動産登記事項証明書(不動産登記簿謄本)

 ・発行後1か月以内が要件ですが、常に物権変動が行われるリスクを想定し、申立て直前の状態のものを提出するのが良いです。
 ・基本的には、土地・建物両方が必要になります。

公課証明書

 固定資産税額評価証明書と異なり、実際に賦課される税額までも記載されています。
 競売申立書の写しと委任状の写しを添付して都税事務所又は市町村役場に申請します。

【参考】🔗東京都主税局

仮差押の本執行移行

 仮差押の本執行移行を目的とした強制競売の場合は、その旨記載した上申書及び仮差押決定正本の写し(仮差押執行後に名義が移転している場合は写しでなく正本が必要)を提出します。

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3 費用面

 予納金

 申立てにあたり、債権者において先に準備しなくてはならない費用の大きいものが、予納金です。

 以下が、納める予納金の一覧ですが、最低80万円以上を先に準備する必要があります。
 この予納金は、現況調査の執行官費用や評価をする不動産鑑定士の費用などに使われます

 申立て後、裁判所より保管金提出書が送付されますので、それに基づいて納めます。
(なお、配当において執行費用の「共益費用」として、優先的に弁済されます。本記事「第6」の「2」の表を参照。)

請求債権額申立て時に納める予納金の額
請求債権額が2000万円未満80万円
請求債権額が2000万円以上5000万円未満100万円
請求債権額が5000万円以上1億円未満150万円
請求債権額が1億円以上200万円
予納金一覧(東京地方裁判所HP)

申立手数料

 請求債権1個につき、4,000円が必要です。

郵便切手等

 ・94円分の切手(重量に応じた郵便切手が必要)
 ・債権者宛の住所等が記載された切手付封筒1枚

登録免許税

 納付額は、確定請求債権額の1000分の4です(0.4%)。
 国庫金納付書で納めますが、3万円以下なら収入印紙でも可能です。

第3 開始決定から期間入札まで

1 開始決定について

 競売を申立て、予納金等を納付してから2週間~1か月程度で開始決定が発令され、裁判所書記官の嘱託による嘱託登記がなされた後、債務者に開始決定書が送達されます。

 開始決定が手元に届いたら、差押登記がされているかを確認します。
 この差押の効力発生時期は、競売開始決定が債務者に送達された時又は差押えの登記がされた時のいずれか早い時に生じるとされます。
 実務上は登記を先に行いますので、差押えの登記の時に効力が生じることになります。

 債務者への開始決定の送達は、必要不可欠の手続になります。

強制執行では、債務者が所在不明で送達ができないことが起こりやすいです。
その場合は、債務者の所在調査が必要になり、送達のための手続(再送達上申、付郵便送達等)をとる必要がありますね。

送達に関する上申書書式(裁判所HPより)
🔗【書式】就業場所に対する上申書(PDF)
🔗【書式】書留郵便に付する送達の上申書・報告書(PDF)
~債務者が受領しない場合に、送達すべき書類を債務者の住所地に郵便で発送し、受領しなくても送達済と扱う方法。
🔗【書式】公示送達申立書・調査書(個人用・法人用)(PDF)
~債務者が所在不明で送達場所も不明のときに行われ、債務者が出頭すればいつでも送達すべき書類を交付する旨を、裁判所の掲示板に掲示することによって行われる方法。

2 開始決定後の裁判所が行うこと

 開始決定が発令されると、裁判所は現況調査命令、評価命令、売却基準価額の決定等の諸々の手続を進めます。

 競売申立債権者から見ると、無剰余の通知や配当要求の通知が届いたりしますが、期間入札の通知が来るまで、特に要求される手続はなく、基本的には手続の進捗を見守ることになります。

3点セット(現況調査報告書・評価書・物件明細書)を確認する

 開始決定後、数か月経過すると現況調査報告書、評価書が裁判所に提出されます。
 東京地裁の場合は、現況調査報告書が発令から7週間以内、評価書が9週間以内に提出されます。

 特に債権者に対して進捗の報告はありませんので、債権者の方で裁判所に確認をします。

 提出された後に順次閲覧・謄写もできます。特に問題なければ、3点セットが揃ったら不動産競売物件情報サイト(🔗BIT)で閲覧やプリントアウトができますので、その時に確認しましょう。

個人情報が黒塗りにされる以外、ホームページで確認ができます。
これは債権者でなくとも、公にされていますので、誰でも見られる状態になっています。
実際にホームページから3点セットをダウンロードしてみると、具体的なイメージを掴めますね。

3点セットの特に見るべきポイント

  • 不動産の評価額
    想定以上に低い場合には、評価書の内容を精査し、減価要因(事実誤認、鑑定手法、不法占拠者の存在等)を確認します。
    内容によっては、執行異議の申立てを行います。
  • 買受人が負担することとなる権利
    想定外の内容が記載されていないかを確認します。万が一、不法占拠者や反社会的勢力など執行妨害がある場合には、売却のための保全処分の申立てを行います。

第4 期間入札から配当期日まで

1 期間入札について

 3点セットが出揃い、売却実施命令が発令されると、期間入札の公告がされ、申立債権者には「期間入札の通知」が届きます。

 

2 開札について

 開札期日に、落札者(最高価額買受申出人)の有無と落札額のチェックを行います。

 落札の有無と落札額は、開札期日当日に不動産競売物件情報サイト(🔗BIT)の「売却結果」で確認できます。
 なお、落札者の氏名・名称まで知りたい場合には、記録の閲覧・謄写が必要です。

3 落札後の進行

 開札期日の約1週間後に売却決定期日が開かれ、売却不許可事由がなければ、売却許可決定が発令され、正式に買受人が決まります。

 買受人は、書記官が定めた代金納付日までに残代金を全額支払います。
 代金納付日までに残代金を支払わないと、買受申出の保証金が没収され、配当に回されます。

 次順位買受申出人がいる場合は、裁判所はその者に対し売却の許可・不許可を判断し、存在しない場合には再度売却手続を実施します。

 残代金が納付されると、その時に買受人に所有権が移転し、書記官は所有権移転登記と売却により消滅する権利の抹消登記を嘱託します。

4 落札者がいない場合の進行

特別売却の実施

 入札がなく落札者がいなかった場合、開札期日の翌日から、一定の期間を定めて特別売却が実施されます。
 この特別売却とは、買受可能価額以上の金額で、先着順で買受人を決定する方法をいいます

 特別売却をしても買受人が現れなかった場合は、再度売却基準価額を決定し、期間入札、特別売却をします。

3振アウト

 買受人が再び現れなかった場合は、同様の手続を行いますが、3回目でも落札者が出なかった場合は、手続は停止され、申立債権者が3ヵ月以内に買受けの申出をしようとする者が存在することを理由に売却実施の申し出をしないと、強制競売事件は取り消されます。

第5 配当手続について

1 弁済金交付と配当

 代金納付がなされると、配当手続に移ります。

弁済金交付

 売却代金により債権全額の支払いができる場合には、弁済金交付手続が行われます(債権者が単独か複数かでの違いはありません)。

配当

 債権者が複数で配当原資によって全額の支払いができない場合は、配当表が作成されます。

 代金納付から1か月以内の日に配当期日が定められ、申立債権者には呼出状計算書が送られます。
 計算書は、提出期限が1週間以内になりますので、配当日の債権額を記載して提出します。

 

  • 手続費用
    申立手数料、登録免許税、現況調査手数料、不動産評価料等
  • 非共益費用
    各書類提出費用、地代代払い許可に基づき支払った地代、売却のための保全処分に要した費用等

 執行費用の内、手続費用は裁判所が職権で認定をします

 これに対して、非共益費用については計算書に計上しないと配当を受けられませんので、忘れずに記載しましょう。

2 配当について

配当見込額・配当表原案の確認

 東京地裁においては、配当見込額照会のファックスをすると、配当原案が作成されると裁判所より連絡があります。

 配当見込額が分かったら、売却代金額から予想される配当見込額と照合し、大きな齟齬がある場合には、配当異議の申出や配当異議の訴えを検討します。

配当期日

 配当見込額に問題なければ、特に期日に出頭する必要もありません

 債権者としては、配当金等支払請求書を提出すれば、指定した口座に振り込まれます。
 配当期日に出頭しないと、配当表写しを交付してもらえないので、配当表等の写しの郵送請求をします。

【参考】🔗配当見込額FAX照会,配当金等支払請求書の郵便提出及び配当表等写しの請求について(裁判所HP)

配当の終了(口座への入金)をもって、一連の強制競売手続が終了となります。

第6 関連・補足事項等について

1 競合する債権者の存在・配当等について

 不動産の競売手続においても、競合する債権者がいることは多いでしょう。

 いかなる債権者が、どのような手続で配当手続に参加できるかについては、下のリンクにある記事で解説致しました。

【関連記事】不動産競売の「配当」手続~競合する債権者、誰が参加できるか?
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競合する債権者の配当手続への参加、異議がある場合の対応を説明します。
https://ik-law.jp/blog/haito1/

2 配当の順番について

 配当は、すべての債権者が平等に分配されるわけではなく、下の表の順位に従って行われます。

順位債権等の種類
手続費用(執行費用の内、共益費用)
目的不動産の第三取得者が支出した必要費・有益費の償還請求権
登記された不動産保存及び不動産工事の先取特権の被担保債権
公租公課に優先する抵当権、不動産質権、一般の先取特権及び担保仮登記の被担保債権
公租公課
公租公課に劣後する抵当権、不動産質権、一般の先取特権及び担保仮登記の被担保債権
未登記の一般先取特権
一般債権

 登録免許税節約のため、請求を一部に限定する場合があります(前述の「第2」の「2」)。
 ただ、見込みと異なり、想定より高額での売却が予想される場合などに、この請求金額をかくちょうできるかが問題になります。

 判例は、原則として請求債権の拡張はできないとし、例外的に明白な誤記、計算違いがある場合には是正することが許されるだけとしています。

 この判例の理解として、例外事由に該当するケースは極めて稀と受け止め、基本的に拡張はできないと理解して差支えません。

 そのため、債権者としては、①二重開始決定を得るために配当要求の終期までに二重差押えの申立てをするか、②配当要求をする必要があります。