弊社の売掛金が回収できずにいます。
そんな中、他社が債務者の債権の差押えに成功したと耳にしました。
弊社も、裁判を行い勝訴判決を得ていますが、他社の差押手続に参加し、回収を図ることはできないでしょうか。

 他債権者が債権の差押を行い、執行(回収手続)を行っている際に、競合債権者も回収を図ることが可能な場合があります。
 債権執行における競合債権者の規律について、この記事で説明をします。

 債権執行手続においては、民事執行法165条に規定があります(但し、下の「Step2」の5,6は同条項以外の規定です)。
 ①配当可能資格(「誰が」)、
 ②配当可能時期(「いつまで」)、
を満たせば、他債権者の配当手続に参加できることになります。

「誰が」(どのような資格の債権者が)参加できるか?

差押え、②仮差押え、③配当要求をした債権者が配当手続に参加できます。

STEP
1

いつまで差押手続に参加できるか?

  • 第三債務者が供託をした時まで(1項)
  • 取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時まで(2項)
  • 売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時まで(3項)
  • (動産引渡請求権の場合)執行官がその動産の引渡しを受けた時(4項)
  • 差押債権者の取立が完了時まで(明文規定なし解釈による)
  • 転付命令の効力が発生した時まで(民事執行法160条)
STEP
2

債権執行手続全体については、こちらの記事(↓)をご参考にしていただければと思います。

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強制執行(債権回収)の王道、その手続と概要をお伝えします
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第1 はじめに ~ 債権執行の競合について

 債権執行手続は、不動産執行のように登記簿で存在が明らかになっているものではなく、かつ、その手続も裁判所主導というよりもむしろ当事者(債権者)が主導していくイメージが強いと思います。
 具体的には、不動産執行であれば、配当期間を裁判所が定めますが、債権執行では裁判所が配当期間を定めるわけではありません。

 差押えをした債権者は、独占的に回収を図るためには、他債権者の参加を許さないよう迅速に回収を行う必要があります。

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不動産競売手続において、競合する債権者との規律は?
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 債権執行では、不動産と異なり、他債権者が差押えたかどうかが外形から明らかとなりません。
 そのため、配当要求を行うケースは多くなく、むしろ差押えを行ったら他債権者も同様に差押手続を行っていた、というような場合の方が多いとは思います。
 その意味では、債権者にとって、独占的に回収を図るべく、他債権者との規律について知識を得ておくことは極めて有用だといえます。

債権執行手続(差押)の全体像

債権執行の流れの全体像(🔗東京地裁民事執行センターHPより引用)

第2 誰が競合債権者たり得るか?(配当を受けるに必要な債権者の資格)

1 差押債権者

 差押えの競合が生じる典型的な場面です。

2 仮差押債権者

 不動産執行と同様に、仮差押債権者も配当手続に参加できます

 ただ、仮差押債権者はあくまでも「仮」差押ですので、財産をロックすることはできますが、回収まではできません。
 回収を図るには、本訴を提起し、差押えを行う必要があります。

【関連記事】 「債権の仮差押え」~債権回収へ預貯金・売掛金を狙う!
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債権の「仮」差押手続の流れとポイントを解説します。
https://ik-law.jp/blog/karisaiken/

3 配当要求をした債権者

 配当要求できる債権者については、民事執行法154条に規定されています。 
 仮差押債権者は、不動産執行の場合と異なり同条に規定されていませんが、民執165条にて配当を受けられる債権者に数えられているためです。

  • 執行力のある債務名義の正本を有する債権者
  • 文書により先取特権を有することを証明した債権者

 配当要求があった場合には、その旨を記載した文書が第三債務者に送達されます。
 また、配当要求を却下する裁判に対しては、配当要求をした債権者が執行抗告できます。

 債務名義を有する債権者にとって、自ら二重に差押えを行っても、先行する差押手続の中で配当要求を行っても、効果に違いはありません
 しかし、先行する差押手続が取下げられたり、取消されたりした場合には、二重に差押えしていければ影響を受けませんが、配当要求は当然失効することになりますので、自ら改めて差押えを申立てる必要があります

第3 いつまでに参加可能か?他債権者への遮断効はいつ生じるか?

1 全体像

 前述しましたように、他債権者が参加できなくなる基準時(これを「遮断効」と呼びます)は、民執法165条に規定されています。

(配当等を受けるべき債権者の範囲)
第165条 配当等を受けるべき債権者は、次に掲げる時までに差押え、仮差押えの執行又は配当要求をした債権者とする。
 一 第三債務者が第百五十六条第一項又は第二項の規定による供託をした時
 二 取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時
 三 売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時
 四 動産引渡請求権の差押えの場合にあつては、執行官がその動産の引渡しを受けた時

🔗e-gov法令検索

2 第三債務者が供託をした時まで(1項)

 第三債務者は、差押えに係る金銭債権の全額を供託することができます(権利供託)。
 また、差押えが複数あったり、配当要求が届いた場合で、「差押債権金額 > 被差押債権金額」(差押債権額が上回ったとき、つまり「差押えの競合」)となった場合には、供託しなければなりません(義務供託)。

 この供託をした時点で、他債権者に対する遮断効が生じます
 裏返しでいえば、権利供託の場合、差押債権者にとっては早く対応をしてくれれば、独占することができます。

3 取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時まで(2項)

 取立訴訟を提起するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 差押命令が発令されていること、
  • 第三債務者(被告)に差押命令が送達されていること、
  • 債務者に差押命令が送達されていること、
  • 債務者への送達から1週間(給与等は4週間)が経過したこと

差押債権者にとって、手間ですが、第三債務者が素直に取立てに応じてくれない場合には、取立訴訟を提起すると独占できるメリットがありますね。

4 売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時まで(3項)

 売却命令とは、取立てに代えて、執行裁判所の定める方法によりその債権の売却を執行官に命ずる命令をいいます。
 取立てができない債権、又は取立てが困難な債権でも適切な価額で換価ができるように、取立て以外の換価方法の1つとして定められています。

 この売却命令の申立てを行った場合、執行官が売得金の交付を受けた時が遮断効が生じる時とされています。

5 (動産引渡請求権の場合)執行官がその動産の引渡しを受けた時(4項)

 債務者が所有しているけれど、第三者が所持している動産に対して強制執行をする場合に、債務者が第三者に対して有する動産の引渡請求権を差押えます。
 執行官が動産を受領した後、適宜の方法(動産売却の方法や譲渡命令、売却命令等)により換価して満足を受けます。

 この場合、執行官が動産の引渡しを受けた時に、独占できることになります。

6 差押債権者の取立が完了時まで (明文規定なし解釈による)

 差押債権者は、債務者に差押命令が送達された日から1週間が経過したとき(給与等を差押えた場合は、4週間)は、被差押債権を自ら取り立てることができます
 第三債務者より弁済を受ければ、解釈上当然に独占できると考えられています。

 なお、被差押債権に複数の差押えがなされても、被差押債権で差押債権の全部を弁済できる場合には第三債務者は供託を行う必要がなく、各差押債権者は取立てにより回収を図ることができます

7 転付命令の効力が発生した時まで(民事執行法160条)

 転付命令が効力を生じた場合には、被差押債権が存在するときは、差押債権者の債権と執行費用は、転付命令が第三債務者に送達された時点で券面額で弁済されたものとみなされます
 「券面額」とは、第三債務者からの支払いがあるかないかの実態にかかわらず、存在する第三債務者に対する債権額(被差押債権額)のことをいいます。

 転付命令は、第三債務者から回収できないリスクを負いますが、差押債権者は独占できるメリットがあります。

第4 終わりに

 債権執行手続は、不動産執行と似ている点(配当手続など)と、異なる点(配当を裁判所が主導しない)があります。

 異なる点では、不動産執行のように手続が裁判所主導で自動的に進んでいくものではない分、迅速な回収がより重要になります。
 この記事で、少しでも債権執行手続で競合する他債権者とのあり方をイメージしていただけましたら幸いです。

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