弁護士に債権回収を依頼したら、具体的にはどのような方法で債権回収を行いますか?

Answer

一般的に、弁護士は次の流れで債権回収を目指します。

書面(内容証明等)による請求
請求根拠・金額の説明、支払方法、期限など、求める内容を明確にするため、また、弁護士が介入したことを伝えるため、最初は書面で請求することが一般的です。
債務者との交渉
債務者から反論があればその内容の検討を行い、根拠が弱いものであれば法律的な見地から支払う必要性を説明します。
単に支払方法の話(分割など)であれば、債権者の意向を確認しながら合意を目指します。
法的手続へ
弁護士が事件を受任するときは、裁判などの法的手続まで見据えて受任することがほとんどです。
債務者との交渉が決裂すれば、訴訟提起などの法的手続を執ります
後述しますが、債務者の資産状況などに問題がありそうな場合は、仮差押などの法的手続前の財産保全手段を検討します。

 債権回収のご相談を受けたとき、このフローを頭に描いて見通しを立てていきます。
このブログでは、書面(主には内容証明郵便を利用)や法的手続の手段の紹介を行っていきます。

債権回収までの流れ図

1 はじめに

 弁護士に依頼をした場合、弁護士はどのような債権回収の進め方をするのでしょうか。
 ここでは、債権回収の全体像と、一般的な進め方を説明します。

 また、弁護士に依頼するには金額が少なすぎると迷われるような場合であったり、小口債権が多いので自社でもある程度は対応できるようにしておきたいという要望がありました。
 このブログを読むことで、どの手段を選択するべきか、弁護士に依頼せずとも手続を進められるようなご案内ができればと思っています。

クレジットカード会社や消費者金融などが典型例ですが、自社で裁判手続を行って債権回収を図っている会社も多いですね。

特に簡易裁判所でお会いする方は、会社よりも、むしろ毎日裁判所に行ってますとおっしゃってましたね。

家賃の滞納とか利用料金の滞納とか、手続方法さえ分かってしまえば、自社でできるようにする体制構築の方が効率的かつ経済的といえそうですね。

2 債権回収の全体像(見取り図)

 債権回収には、虚々実々の駆け引きが必要であり、債務者に食らいつこうとする姿勢が大切であることを説明致しました。

取り立てる!売掛金・滞納料金回収へ!弁護士依頼前にすべきことは?
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 それでは、電話、メール、訪問等によるアプローチでも債権回収が図れなかった場合、弁護士はどのように債権回収を目指していくのか、その全体像をお伝えできればと思います。

 下の図が、弁護士が頭に描く見取り図です。具体的に見ていきましょう。

債権回収に至るまでの全体像(法的手続)

3 法的手続前の交渉(書面での請求から)

⑴ 書面での請求

 弁護士は、まず書面にて相手方に対して請求をします。

 もちろん電話やメールによる請求も行いますが、最初は書面による請求が優れていると思います。

 やはり弁護士を立てたこと、そして相手方に対して、「こちらは弁護士費用を負担してでも回収を目指しているよ。」という宣言になりますので、心理的圧迫という意味で一番強力だと思います。

 また、最初の接触でもありますので、請求金額や債権の内容について齟齬があるといけないので、こちらが請求している内容を、書面をもって共有化するという狙いもあります。

 一般に内容証明郵便で行うことが多いですが、その趣旨は郵便の中で内容証明郵便が一番本気度を伝えやすいからです

 これは、弁護士が内容証明郵便を送ったのに、それでも支払いがない場合には、法的手続に出ますよという予告機能でもあります。

⑵ 内容証明郵便の利用意義

 想像してみてください。

 請求書がハガキで届いたら、どう思いますか?
 茶封筒に入っている請求書を受け取って、迫力を感じますか?

 私見ですが、このような心理的圧迫という観点から、内容証明郵便の積極的な活用を推奨しています。
 これは裏返していえば、相手との関係をまだ継続していきたいような場合や、話し合いながらの債権回収(解決)を目指す、いわば軟着陸を目指すようなケースは、内容証明郵便の利用は避けるべきです。
 なお、法律的な意味では、消滅時効が近い場合以外には、内容証明郵便を利用することにほぼ意味がありません。

 消滅時効が近いときに請求を行うと、「催告」(民法150条1項)にあたりますので、催告から半年以内に訴訟提起をすれば消滅時効が完成しない効果、すなわち消滅時効を延期できる効果があります。
 そのため、裁判などで「催告」を行ったことを確実に立証するために、内容証明郵便の利用が必須といえます。

POINT

  • 消滅時効が近いか?
  • 今後の相手との関係性を考慮する必要があるか?
内容証明郵便のを使うべきかどうかの判断図

⑶ 内容証明郵便の効果

 内容証明郵便を利用することには、次の4つの効果があります。

  1. 証拠機能 ~ 公的機関が文書の内容を保証してくれます。
  2. 確定日付 ~ 債権譲渡など確定日付の必要なもので必須です
  3. 保  管 ~ 5年間は郵便局が保管してくれます
  4. 訴訟予告 ~ 次に法的手段でくるという予告になります

⑷ 内容証明郵便の費用

 内容証明郵便の費用の詳細については、🔗日本郵政のHPに詳しく説明があります。

  内容証明料金が1枚につき  440円(1枚増える毎に260円)
  書留料金          435円
  郵便料金           84円
  配達証明          320円

 大雑把な感じでは、配達証明までつけて1000円超、数ページでも2000円弱という費用感です。

  

⑸ 内容証明郵便の書き方

 内容証明郵便を送付する際には、書式が決まっていますので、気を付けましょう。

 特に1行あたりの字数制限と、1枚あたりの行数制限が所定の範囲内にないと、発送することができません。

Wordで改行すると、親切に句読点を文末に追加してくれますが、それがために字数超過しないように気を付けましょう。

ページ数を挿入すると、ページ番号も行数にカウントされるので注意しましょう。
内容証明では、ページ番号は使わない方が無難ですね。

☞ 電子内容証明郵便

 内容証明は、紙だけでなく、🔗電子内容証明というサービスもありますので、こちらも便利です。

 迫力という点では、印鑑を押した書面に比べると劣りますが、郵便局に行かずに自宅から24時間発送できる(早ければ発送当日に届きます)、20字×26行といった文字数の制限がないなど、補って余りあるだけのメリットがありますね。

⑹ 内容証明郵便の雛形例

 内容証明郵便には、請求内容を端的に記載すれば良く、文章表現に決まりなどはありません

次の項目について記載があれば、後は自由に記載して良いです。一番短くすれば、「〇〇日までに、〇〇の料金〇〇円を〇〇の口座に支払え」のような記載になるでしょう。

 ✔ 請求の根拠(債権の特定~いつ契約・どんな内容)
 ✔ いつが支払期限なのか?
 ✔ いくらを請求しているか?
 ✔ 支払方法(入金依頼口座の記載)

 参考例として雛形を添付します。

⑺ 任意交渉のまとめ

 書面での請求を行い、電話や訪問等を併用して債権回収ができたならば、一件落着です。

任意交渉で話がまとまらなかったり、債務者が支払えない等、回収が図れない場合には、法的手続に移ります。

4 法的手続の手段 ~ 何を選択すべきか?

 それでは、先ほどの図の中で、支払わない場合の次の矢印の段階に移ります。
法的手続といっても、いくつかの手段があることが分かります。

 法的手続には、どのようなものがあり、どの選択をするのが最善と考えられるのかを説明していきます。

相手が支払わない場合の法的手続の手段図

「訴えてやる」のフレーズから裁判しか知りませんでしたが、法的手段にも色々とあるのですね。

訴訟は、時間もお金もかかってしまうので、基本的には最後の手段という位置づけですね。

そうですね。相手が債権の存在や金額を認めていなければ、裁判やむなしですが、認めている場合には、何が良いのでしょうか?

大きく、①調停などの話し合いの解決、②相手が争わない場合の解決、③訴訟(裁判)と3つに分けられます。

債権回収においてどの法的手段が良いかの検討図

⑴ 民事調停・ADR ~ 話し合いの手続の場

 相手が債権の存在を認めているけれども、①分割払の希望があったり、②揉め事にはしたくないけど、いざという時にためにいつでも強制執行できる状態にしておきたい場合などに利用されるのが、調停です。

 調停は、裁判所という手続を利用しますが、裁判所が間に入ってくれる「話し合いの場」とイメージを持っていただければと思います。
 あくまでも話し合いですので、相手方と主張が食い違うような争点がある場合に、裁判所が積極的にどちらの主張が法律的に正しそうか等の判断を示すことはありません。

 そして、話し合いを求めるものですので、相手が調停を欠席しても特に不利益が生じることもありません
 調停のこのような性質から、相手との話し合いで軟着陸を目指すような場合に適している解決策です。

 逆に、相手と主張が食い違う争点があるにもかかわらず調停を利用すると、話が前進せずに、かえって時間と労力だけを使い、最初から裁判を起こしていれば良かったという事態になりかねません。

 ただ、争点はあるけれども、こちらも譲歩はする代わりに、どこかで妥協点を見出したいというような場合には、訴訟よりも調停の方が適している場合があります。

 そのため、基本的には、相手主張とに争点があるかどうかで、どちらの選択肢を取るべきかが決まっていきますが、どこか着地点を見出そうとする限りにおいて、調停は非常に柔軟な解決を可能としてくれますので、非常に優位な制度といえます。
 なお、調停で双方が合意できた調停調書には、判決と同じく強制執行を可能とする効力がありますので、その意味でも利便性が高い手続といえます。

「民事調停」5つのメリットを活用しよう!生誕100周年の制度とは?
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 同様な制度として、弁護士会などの民間が主催するADR(裁判外紛争解決手続)等があります。

 弁護士会では、専門的知見を有するあっせん委員が手続に関与してくれる点で、メリットが大きいようです。

【参考:🔗東京弁護士会紛争解決センター

⑵ 訴え提起前の和解 ~ 相手との話し合いの決着がついている場合に適している解決法

 予め裁判外で話し合いがついているような場合に、その和解内容に判決と同じ効力を持たせるのが、訴え提起前の和解という方法です。

 本来は、裁判所の仲裁により訴訟防止のためのものでした。

 しかし、実際の利用のされ方は、両当事者で和解している内容を裁判所の関与の下に「和解調書」として効力を持たせる使われ方をしています。

 手続としては、紛争当事者の一方が、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に和解の申し立てを行います。裁判所は和解の勧告をし、成立した和解の内容を「和解調書」として作成します。

 相手が支払をしない場合には、この和解調書に基づいて強制執行をすることが可能となります

 訴え提起前の和解は、収入印紙代2000円で済み、金銭の支払いだけでなく、建物の明け渡しなどの非金銭債権にも利用できる使い勝手の良さがあります。

⑶ 支払督促 ~ 相手が債務を認めている場合に迅速に解決

 支払督促は、法的手続の中で最も迅速に債務名義(強制執行を可能にする証明書)を取得できる手続になります。具体的な期間は、支払督促の申立てをしてから強制執行まで、早ければ1カ月半くらいで終わります。

 しかも、書面を郵送するだけで良く、裁判所に出廷する必要もありませんので、非常に簡便な手続で、費用も訴訟(正式裁判)の半分で済みます。

 ただ、デメリットは、債務者が異議を申し立てた場合は、通常の訴訟に自動的に移行します

 そのため、債務者が、債権の存在・金額を争っていないケースであれば良いのですが、そうでない場合には、初めから訴訟提起する場合に比べて無駄な時間を費やしてしまいますので、支払督促は選択肢にはなりにくいと言えます。

【支払督促という武器】3つのメリットとは?すぐに使えて債権回収で大活躍
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⑷ 少額訴訟 ~ 相手と争いがない60万円以下の請求に適している解決策

 少額訴訟手続とは、請求金額が60万円以下の場合にのみ利用できる、簡易裁判所における特別の訴訟手続をいいます。

 少額訴訟は、1回しか裁判期日が開かれず、即日に判決が言い渡されます

 ただ、少額訴訟も、1回だけの期日で即日判決ができますが、債務者が裁判所に対して通常の訴訟手続で審理するように裁判所に求めることができます

 そのため、少額訴訟も、支払督促と同様に迅速さがある一方で、争いがある事件については、かえって迂遠な手続となってしまいますので、利用できる場面は限定されていると理解した方が良いでしょう。

⑸ 訴訟提起(いわゆる裁判) ~ 争いがある場合の最後の手段

 一般に、「裁判」という場合にイメージするのが、この「訴訟」だと思います。

 債権の存在や金額について争いがあり、話し合いもできなければ、最後は訴訟しかありません。

 

 原告が訴状を裁判所に提出し、被告が送られてきた訴状に対して答弁書を提出します。

 原告が答弁書に対して反論する準備書面を提出し、被告が再反論として準備書面を提出します。

 この準備書面を何度か繰り返し、さらには当事者の尋問などの手続を経て「判決」という、良くも悪くも1つの争いに終局的な解決を迎えることができます。

裁判所HPより

⑹ 仮差押 ~ 債務者の財産をロックする(回収可能性からの検討)

 債権回収の法的手続を考える際には、裁判を行うことで本当に回収できるか?
 訴訟を提起することの費用対効果を考えることも必要になります。

 具体的には、債務者に資産はありそうで回収可能性を見込めれば、費用対効果を考えます。
 そして、執行費用を勘案しても法的手続を執るべき!となったら、最後に回収にあたっての予算と債務者の財産隠し・散逸リスクとの相談で、債務者の財産を確実に回収できる状態にしておくか、すなわち、仮差押を訴訟に先立って行うかも検討します。

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債権の仮差押手続の活用法について説明します。
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⑺ 法的手続のまとめ 

 任意交渉により解決(回収)ができない場合には、法的手続に移りますが、そのケースに応じた一番適切な手段を選択できればと思います

 相手と争いがあったとしても、最終的には裁判(訴訟)により、1つの区切りをつけることができます。

 ただ、、、勝訴したにもかかわらず相手が支払わない場合には、今度は強制執行手続に移りますので、ここで終わることができません。

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 債権回収の道は、まだまだ続いてしまいます。