ぼったくりバー、ぼったくりキャバクラから不当に高額な料金を請求された場合、どのように対応すべきでしょうか。
法律的にも、支払わなければならないのでしょうか。

店舗において支払を行っていない場合

現場において、支払いを拒否することが最重要です。

ぼったくりバーやぼったくりキャバクラなどで不当な料金を請求された場合には、何よりも初動対応(現場での対応)が非常に重要です。

ぼったくり請求を行う店舗は、現場での料金回収に躍起になっています。

お客は、威圧、飲酒による酩酊、トラブルを避けたい気持ちなどから、現金やカードなどで支払いに応じてしまうことが多いです。

しかし、その後に返金やカード支払停止を求めても、被害の回復を図れずに終わることが実情として多いです。

具体的方法としては、警察に連絡をしましょう
警察に連絡を行うことで、まずは店舗側と客とを切り離してもらうことで冷静な対応が可能となります。

なお、警察が民事不介入等を言い訳にして不適切な対応を行う場合には、後述するように歌舞伎町における警視庁の対応を例に挙げ、適切な対応を求めてください
警視庁が積極的に介入したことで、歌舞伎町の極めて悪質なぼったくりは激減しました。

現場での支払いを拒否するためには、
①一緒に警察署に行く、
②連絡先情報を渡し、後で裁判で争うと言い現場を離れる、
③携帯電話のカメラを起動し、「触ったら刑事告訴する」(触るだけで「暴行罪」に該当します)と言ってお店を出る、
などの方法が考えられます。

ただ、相手も必死ですので、容易にいかないことも多いでしょう。
やむを得ず支払ってしまう場合でも、携帯電話で録音をし、不満があることを記録したり、支払い拒否を認めてもらえなかったことを証拠化できると良いです。

店舗において支払済の場合

支払うとしても、現金での交付は避け、クレジットカードを利用します。

まずは警察にぼったくり被害に遭ったことを大至急連絡します。
詐欺事案として、刑事告訴することが良いですが、警察が事実上受け付けてくれない可能性もあります。
その場合には、被害届や被害相談として、しっかりと警察に届け出た証拠を残しておくことが大切です。

🔗消費生活相談窓口への相談も有益です。

次に、店舗の情報を収集します。

店舗の住所の把握はもちろん、ホームページの有無や、さらには警察に行政文書開示請求を行い、風俗営業許可の申請内容(登録情報)を確認します。

また、カード決済を行った場合には、カード会社にも一刻も早い連絡をすべきです。
支払を一旦止めてもらい、クレジットカード加盟店についても情報の開示を請求します。
ぼったくり店舗が、どのような情報でカード会社と契約をしているかを知ることができます。

その上で、店舗の営業状況や被害額などから、回収を見込めるか(支払拒否が通るか)、どこまで争うべきか等を検討することになります。

特に金額が大きければ大きいほど、自分だけで判断せず、弁護士などの専門家に相談すべきです。

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第1 はじめに

 2014年頃から、歌舞伎町において違法客引きと、それに連携したぼったくり請求店(キャバクラ、性風俗店等)が横行し、数多くのメディアにも取り上げられました末尾注1

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 最近では、出会い系アプリを利用したぼったくり請求などの事案が報道され末尾注2、時代と共にその手口の特徴は変わっています。

 しかし、コロナウイルスが広まる緊急事態宣言下においても、ぼったくり被害が発生していることから、今後も同様の被害は発生するものと予想されます。

 キャバクラなどの社交飲食店では、契約書を取り交わさないことが多いため、料金等の紛争が生じた場合には、いかなる証拠に基づき、どのように認定するかという問題が生じます。

 果たして、ぼったくり店より不当に高額な請求をされた場合には、法律的に、支払わないといけないのでしょうか。

第2 裁判例の状況

①東京地方裁判所平成27年9月28日判決

事案の概要

キャバクラ店が、お客らに対して料金体系を事前に説明したにもかかわらず、お客らが支払いをしないとして、飲食代金の支払いを求めました。
(裁判では、2万6000円を受領済として、56万9728円が請求されています)。

キャバクラ店は、以下の料金体系を説明したと主張しました。
①セット料金

 4万円 =1万円×4人

②テーブルチャージ

 28万円 =7万円×4人

③テキーラ

 5万4000円 =3千円×18杯

④スパークリング日本酒

 2万円 =5千円×4人

⑤サービス料

 15万7600円 =(①から④合計)×40%
 (なお、サービス料の内訳は、ボーイチャージ料、ホステスチャージ料、ボトルチャージ料、リザベーションチャージ料が各10%)


⑥消費税

 4万4128円 =(①から⑤合計)×8%

⑦飲食代金合計額

 59万5728円(①から⑥の合計額)

【争点】

1 キャバクラ店従業員は、料金体系を説明したか?

  → キャバクラ店は、お客らに料金説明をした録音データを提出。
    また、料金表が壁に掲示されていると主張。

2 女性用キャストのドリンク注文を了承したか?

   → キャバクラ店は、ボーイが注文を受け記載した伝票を証拠提出。

【裁判所の判断】

(争点1)料金説明について 
 録音データについては、今回の利用行為時の会話が含まれていると認めませんでした
 その理由として、録音データファイルの日時は、録音機器の日時をどのように設定するか次第で変えられ得ることを挙げています。
 仮に、今回の利用行為時の音声だとしても、その他の発言部分と音質が異なっていることを根拠に挙げ、録音マイクに向かって一方的に話しているだけのように聞こえ、大きな音量でBGMが流れていた本件店舗内において、顧客に聞こえるように説明したものとは認められないと判断しました。
 また、お店の壁に掲示された料金表についても、「本件利用行為後である平成27年5月中旬に撮影されたものとのことであるから」、「これと同内容のものが本件利用行為時に本件店舗内に掲示されていたとまでは認められない。」、「料金表は、当裁判所が取り調べた原本によれば1冊のメニュー表の末尾に綴じられた1枚紙であるとは認められるが」、「これと同内容の料金表が綴じられたメニュー表が本件利用行為時に被控訴人ら4名のテーブル上に置かれていたとまでは認められない。」とも述べました。


(争点2)女性キャストのドリンク注文了承について
伝票は、キャバクラ店の従業員が記入したものにすぎないとして、「了解したとまでは認められない。」と判断しました。


【結論】
①セット料金

 1万6000円 =4千円×4人
③テキーラ

 5万4000円 =3千円×18杯
⑥消費税

 5600円 =(①+③)×8%
⑦飲食代金合計

 7万5600円
飲食代金の支払義務を7万5600円と認定し、受領済2万6000円を控除した、4万9600円のみを認めました。

②東京地方裁判所平成28年1月12日判決

事案の概要

 愛媛から観光で東京を訪れた際、歌舞伎町の路上で飲食店を探していたところ、キャッチから「キャバクラお探しですか?うちだったら1人1時間4000円で行けますよ。」と話しかけられ、当初は断ったものの、強く勧められたために1時間程度遊びました。

 12人と人数は多かったものの、お店より178万8200円を請求されたために、支払いを拒否しました。

 そのため、お店が飲食代金の未払を理由として、訴えました。

 なお、裁判において、キャバクラ店は、キャッチを従業員として雇ったり、特別な契約を結んでお客の勧誘を行わせたりしていないと主張しています。
 また、飲食代金を支払わないこと(無銭飲食)を理由に、お店からお客を交番に同行しました。

【争点】

 お客は、キャバクラ店が算定する料金が分かったか。

  → キャバクラ店は、入口の壁面に料金表を掲示し、各テーブルの上に料金表を置いているから、お客らは料金表を見ているか、見る機会があったと主張。

【裁判所の判断】

 料金表が入口の壁面に掲示され、各テーブルに置かれていたことについての立証が何もないこと、これに対して表が入口の壁面に掲示され、各テーブルに置かれていたことについての立証が何もないこと、これに対してお客は料金表を見ておらず、店員からも料金体系についての説明を受けることがなかったとして、お客はお店の料金体系を知らずに飲食したと認定しました。

 その上で、キャバクラ店の料金体系を知り、高額な料金の支払(1人あたり14万円を超える支払)が必要になると分かっていれば、お客らは本件のキャバクラ店に行かなかったことが認められるとして、
キャバクラ店からの請求を棄却しました。(判決文は、「本件飲食店における飲食契約は、錯誤に基づくものとして、無効となる。」と述べています。)。

③東京地方裁判所平成27年12月11日判決

事案の概要

キャッチから1時間4000円との説明を受け、2人で歌舞伎町のキャバクラに入店し、1時間から数時間にわたり飲食したところ、以下の料金を請求された。

(キャバクラ店の請求内容)
①セット料金
 2万円 =1万円×2人

②テーブルチャージ
 14万円 =7万円×2人

③女性ドリンク
 9000円

④サービス料
 約7万8400円 =①から③の合計額に以下のチャージを全て掛ける。
(内訳:ボーイチャージ×110%、ホステスチャージ×110%、ボトルチャージ×110%、リザベーションチャージ×110%)

⑤消費税(8%)
 約1万9600円

⑥飲食代金合計額
 26万7000円

客らは、3万円を支払ったが、それ以上の支払いを拒否したため、キャバクラ店が残額23万7000円の支払いを求めた事案。

【争点】

 キャバクラ店が定める料金設定は、暴利行為として公序良俗に反し、無効となるか。

  → テーブルチャージの7万円だけでなく、ボトルチャージ、リザベーションチャージ等の各名目で1割ずつ掛け算し続ける算定は、適法とお店は主張。

 【裁判所の判断】

 キャバクラ店が請求する「23万7000円という飲食代金は、この種の社交飲食店における2名の数時間分の飲食代金として一般的な料金水準を大幅に上回るものと認められ、本件飲食店で来店客との間で、料金をめぐるトラブルが続発していたことは、これを裏付けるものである。」
 被告(お客ら)が「このような高額な料金水準を想定して本件契約を締結したものではなく、かえって、客引きによる1人4000円という虚偽の説明を受けて低料金であることを念頭において本件契約を締結したことは・・・明らかであるが、原告(キャバクラ店)の従業員は、来店客との間で、同種の誤解に基づく料金トラブルが多発しているにもかかわらず、被告(お客ら)に誤解がないか確認することはもちろん、本件飲食店の料金体系を一方的に口にするだけで、被告(お客ら)の注意を引こうとすることもないまま、本件契約に基づく酒類等の提供を開始していることからすれば、原告(キャバクラ店)の従業員は、高額な料金請求を通じて利益を得るため、被告(お客ら)の誤解をあえて解かずに応対したことが推認される。」
 「本件契約に基づく飲食代金が一般的な料金水準を大幅に上回る水準であるというにとどまらず、本件契約が被告(お客ら)の料金水準に関する誤解の下で成立しており、原告(キャバクラ店)の従業員が被告(お客ら)の誤解を殊更に放置していたことに加え、原告(キャバクラ店)の請求額が妥当性を伴うものであることをうかがわせる事情が見当たらず、かえって、ボトルチャージ料やリザベーション料等といった根拠の不明確な加算が行われていることを総合考慮すれば、本件契約は、原告(キャバクラ店)の暴利行為によるものとして公序良俗に反するといわざるを得ない。したがって、本件契約が暴利行為として公序良俗に反し無効である。」

●裁判所の基本的な姿勢

 この3つの裁判例のように、裁判所は、ぼったくりを行うお店に対して極めて厳しい姿勢です。

 そのため、ぼったくり被害に遭ったとしても、法律的に救済の道は残っています

 ただ、これらはいずれもお店から請求を受けているケースです
 お客がお金を払ったとして返還を求める場合は、仮に裁判で勝ったとしても、実際にお金を取り戻せるかは、また別に考えないといけない問題です。

 そのため、現場において、お金を支払わない対応が、最重要となります。

第3 警察への対応「民事不介入とは言わせない!!」

1 警察に行った証拠を残す

 ぼったくりは、明確な犯罪行為ですので、刑事告訴すべきです。

 しかし、始めから騙そうとする意図がお店にあったのか、立証のハードルが高く、警察も消極的になりがちです。

 そこで、被害届相談受理という形であっても、警察に行った証拠として残りますので、必ず警察に行った証拠を残しておくようにしましょう。

2 警察に、お店との間に入ってもらう

 2014年頃に歌舞伎町で横行したぼったくりは、お客が交番に駆け込んでも、警察が民事不介入を理由として、何ら救済に入らなかったことが原因でした末尾注3

 しかし、警視庁は被害の多さを考慮し、ぼったくりと疑われる事案の場合には、店舗従業員とお客を切り離したうえで、新宿署に同行して事情聴取する方針に切り替えました

 この結果、歌舞伎町において、ぼったくり被害は減少しました(決して平和になったという趣旨ではありません)。

 なお、このような警視庁の対応について、①店側は飲食客との料金トラブルに警察官が違法に介入し、料金回収の機会が失われたなどとして、東京都(警視庁)に料金相当額の支払、②弁護士の原告(店舗側の弁護士)が、他店の従業員の依頼を受け、料金トラブルへの対応に抗議したところ、交番の取調室に監禁されたなどとして東京都に慰謝料の支払を求める国家賠償訴訟が提起されました。

 しかし、東京地方裁判所平成29年6月13日判決において、警察官のとった対応に国家賠償法上の違法性はないと明確に判断をしています。

 

 この事実から明白なように、ぼったくりが合理的に疑われる事案において、警察の、民事不介入を理由として介入できないとする態度は、誤りです。

 そのため、警察にお店の従業員との間に入ってもらうことで、現場において料金を支払わないという対応がしやすくなります。
 飲食代金が正しいと思う場合は、お店が後で裁判を起こせば良いのです。

第4 関連する裁判や情報等

1 ぼったくりバーでの代金についてカード会社の請求を棄却した裁判例(東京地方裁判所平成27年8月10日判決)

 いわゆるぼったくりバーで朝方帰る際、会計と言われてカードを渡したが、カウンターで100万円を提示されたので、サインをしないでカードを回収し、その後話し合いで5万円を支払って帰ったが、後にカード会社から78万円を請求されました。

 

 判決は、クレジットカード契約における、盗難、詐取、横領の場合で、警察への届け出ある場合には、クレジットカード利用者(消費者・お客)の損害をカード会社が負担するとの規定を根拠として、カード利用者(消費者・お客)への支払を否定しました。

 

 本件においては、被害者は、多額の請求を認識した時点ですぐに消費生活センターに相談し、カード会社への届け出と警察への届け出の試み(相談)をしていた事実も、本件での消費者にとって有利な判断に傾く理由となっているようです(詳細は、本件裁判を担当した🔗横塚弁護士の判例紹介をご参照ください)。

 

2 お客が無銭飲食で逮捕・起訴された件について無罪判決言い渡されたケース

 東京都葛飾区のガールズバーで、料金約8万円を支払えなかった客が詐欺罪で起訴されたケースがありました。

 しかし、2021年11月29日東京地方裁判所で無罪判決が出ています末尾注4

 裁判所は、法の番人として、正義を貫いてくれます。

 なお、繁華街におけるお店の労働トラブルも、裁判所は正義を貫きます。

繁華街における労働トラブル ~ そのお店の対応は適法ですか?
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夜のお店の常識は、世間では非常識?
https://ik-law.jp/blog/nightlabor/

3 警視庁の「盛り場トピックス(最近の盛り場の被害事例)」について

 警視庁も、歓楽街・繁華街で多い被害事例を広報しています。

2020年9月最終更新のものでは、

  • 出会い系サイトで誘いぼったくり
  • 「AV女優と遊べます」と客引き
  • 泥酔客のカードで架空決済
  • 違法客引き等出没エリア

について記述があり、どのような被害報告が多くなされているか参考になります。

リンク:警視庁「盛り場トピックス(最近の盛り場の被害事例)」

https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/anzen/sakaribasogo/sakaribatopics.html

 

首都東京法律事務所
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(注)弁護士への相談は有料となります。【相談料】1時間:1万1000円 ご了承ください。
https://ik-law.jp/?page_id=45

(注1)

約10分間滞在した男性客3人に計約21万円を請求。3人が拒否すると、午後11時55分ごろから16日午前6時半ごろまでの間、「払わないとどこまでも追いかけるぞ」などと威圧した。

2014年12月4日産経ニュース

繁華街の飲食店で昔からあるトラブルといえば、高額な料金を不当に請求する「ぼったくり」だ。このぼったくりにマッチングアプリを悪用した新たな手口の被害が相次いでいる。ぼったくり店の女性従業員が無関係の一般女性を装いマッチングアプリで出会った男性を言葉巧みに店に誘導。請求額を10万円以下に抑えた「プチぼったくり」で通報されにくくするなど摘発逃れも巧妙化している。警視庁は同様の店が都内に20店ほどあるとみて警戒を強めている。

2022年1月9日産経ニュース

(注3)

警察に駆け込めば何とかなると思いがちだが、ぼったくり店は警察を全く怖がっていない。なぜなら警察は「民事不介入」の原則があり、料金をめぐる揉め事には手が出せないのだ。実際、交番に行っても「よく話し合ってください」と言われるだけで何も事態は変わらない。歌舞伎町の交番前は週末の深夜ともなると、何組もの被害客とぼったくり店員が揉めている「行列のできる交番」状態になっている。

 前述の被害男性は警察官にすがるも何の解決にもならず、朝7時まで6時間近く店員たちによって拘束された。根負けした男性は連れと折半でカード支払いすることになった。

2015年5月7日デイリーニュース

(注4)

判決などによると、男性は昨年6月、都内のガールズバーで飲食し高額の代金を支払わずにいると、店長に交番に連れていかれ、その日のうちに逮捕された。
判決は、店の料金形態や伝票の記載内容、証人出廷に消極的だった従業員の証言などを検討し、男性が実際に飲食をしたり接客を受けたりしたのは「約2時間45分」と指摘。これに4時間分の延長料金や3時間半分の女性スタッフ指名料が上乗せされ、伝票には「客観的事実に反して虚偽がある」と判断した。

そのうえで、被告がクレジットカードなど様々な支払い方法を試したり、知人に料金の立て替えを打診したりしたことなどから、料金を踏み倒すという「故意が認められない」との結論を導いた。

2021年12月1日朝日新聞デジタル 新屋絵理記者の記事より