「家賃を上げたい」、「いや、下げてほしい」・・・多くのお悩みをうかがいます。

賃料増減額請求の法的な仕組みは、実はとてもシンプルです。

問われるのは、たった一つのことです。
「最後に賃料を合意した時点から、どれほどの事情変更があったか」
この一点だけです。どれだけ複雑に見える紛争も、突き詰めればこの問いに戻ってきます。
この記事では、賃料増減額請求の法的な仕組みと実務上のポイントを、弁護士がわかりやすく解説します
第1 賃料増減額請求の全体像
1 賃料増減額請求の建付け
賃料の増減額請求(「上げたい」、「下げたい」)は、自由な意思で合意された賃料が、時の経過とともに不相当となった場合に認められるものです。
この請求の根底にあるのは、事情変更の法理という考え方です。
賃貸借は長期にわたる継続的な契約ですから、契約当初の前提が大きく変わってしまった場合には、当事者間の公平を保つために賃料の変更を認めようとするわけです。
ここで重要なのは、この法理のもとでは、「現在の賃料がいつ合意されたものか」 を起点として考えるという点です。
賃料は契約後に改定されることもありますから、今の賃料について最後に合意がなされた時点を特定したうえで、その時点からどれほどの事情変更があったのかを問う、という構造になっています。
この「最後に合意がなされた時点」のことを、「直近合意時点」と呼びます。

賃料増減額請求の審理構造は、実はとてもシンプルです。
「直近合意時点から現在にかけて、事情変更があったか。そしてその変化は、現在の賃料を不相当と評価できるほどのものか」——–この一点に尽きます。
複雑に見える紛争も、突き詰めればこの問いに立ち返ることになります。
当事者間で合意した家賃は本来尊重されるべきですが、長期間の契約の中で前提事情が大きく変わり、元の家賃のままでは不公平になる場合に、家賃の見直しを認める法律上のルールです。
賃料の増減額が認められるためには、以下の流れに沿って「事情の変化によって賃料が不相当になったか」が審査されます。
2 直近合意時点とは
賃料増減額請求権が発生しているかは、あくまで「直近合意時点」以降に「事情変更」があるか否かによって判断されます。
すなわち、当事者間で一旦賃料額について合意した場合には、以後、それ以前に生じていた賃料改定を基礎づける事情は主張することができなくなります。
実際の交渉では、「直近合意時点」をどこと見るかを巡り、争いになる場合が多々あります。
3 賃料増減額請求の手続きフローの全体図
賃料の増減額をめぐる交渉・手続きは、一般に次の3段階で進みます。
まずは当事者間での話し合いを試み、折り合いがつかなければ裁判所での調停へ、それでも解決しなければ訴訟(裁判)という流れです。
どの段階においても、「直近合意時点からの事情変更」という軸は変わりません。
段階が上がるほど、その主張を裏付ける客観的な資料の重要性が増していきます。

最終的には、訴訟によって解決が図られますが、訴訟では裁判所が選任する不動産鑑定士の「公的鑑定」が、非常に重要な役割を果たします。
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賃料増額(減額)請求の手続の流れとポイントを弁護士が解説4 どのような資料を準備すると良いか?
借地借家法32条の要件に対応できるよう、少なくとも以下の4点(+α)は早めに整理しておくことをおすすめします。
交渉から訴訟まで一貫して、「相場が上がったはずだ」といった根拠のない主張は通用しません。法32条の要件に対応するよう、最低限以下の4点を整理しておくことが重要です。
-
✔
契約の沿革
(直近合意時点を特定する契約書・覚書・過去の合意書など) -
✔
申入れの記録
(差額や始期の証拠となる内容証明郵便や到達記録など) -
✔
公的指標の資料
(固定資産税の課税明細、公示地価、消費者物価指数など) -
✔
近傍同種の比較表
(用途・築年等が近い近隣物件との賃料比較表。5件程度)
専門家(不動産鑑定士など)による私的鑑定や簡易意見書を追加すると主張の重みが一段上がります。費用対効果を見ながら追加するのがおすすめです。
第2 どのような場合に賃料増減額請求が認められるか?(より詳しい理論的解説)
1 借地借家法32条1項の条文構造
借地借家法32条1項は、建物の賃貸借契約の一方当事者が相手方当事者への一方的な意思表示により、従前取り決めた賃料額の増減を請求できる権利を定めています。
どのようなときに家賃の増減を請求できる?
以下のいずれかにより、現在の家賃が「不相当」になったとき
- ① 土地や建物に対する租税等の負担が増減した
- ② 土地や建物の価格が上下するなど、経済事情が変動した
- ③ 近隣の同種の建物の家賃と比べて差が大きくなった
【例外】 「一定期間は増額しない」という特約がある場合は、その特約に従います。(※減額しない特約は借主に不利なため無効です)
借地借家法32条1項
🔗「借地借家法」(e-Gov法令検索)
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

条文は「借賃」とありますが、「賃料(家賃)」と同義です。
2 「土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減」とは
敷地や建物にかかる公租公課のほか、減価償却費や修繕維持費、損害保険料などが該当します。
公租公課とは、固定資産税や都市計画税をいいますが、敷地が借地の場合は地代(借地料)がこれに当たります。
3 「土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下」とは
土地や建物価格が変動すれば、土地や建物の価格の変動は当然に賃料に影響しますので、土地や建物価格も考慮要素となります。
4 「その他の経済事情の変動」とは
土地や建物価格の変動以外の経済的な状況の変動をいい、具体的には物価指数や国民所得、通貨供給量、賃金指数などの指標などが挙げられます。
たとえば、昨今のインフレや物価上昇なども該当します。
5 「近傍同種の建物の借賃に比較」
近隣周辺の類似の賃貸事例を適切に把握できれば、従前合意した現在の賃料が不相当になっているかどうかを判断するのに有効です。
実務上よく用いられる差額配分法という鑑定手法では、「現在の継続賃料」と「新規成約賃料」の差額の2分の1を増減額の基準とする考え方が採られることが多く、交渉や訴訟の見通しを立てるうえで有益な指標になります。
6 「不相当となったとき」
家賃の相場は世の中の状況によって常に変動するため、相場と少しズレた程度では、家賃の変更(値上げ・値下げ)は原則として認められません。
変更が認められるのは、「今の家賃のままでは、貸す側と借りる側のどちらかにとって不公平になってしまう」ほど、相場との間に大きな開きが生じた場合です。
具体的な開きの目安をあえて挙げるならば、以下の数字が参考とされています。
ただし、これらはあくまで目安にすぎません。
実際の裁判では、これほどの開きがなくても個別の事情によって家賃の変更が認められるケースもあるため、ひとつの参考としてお考えください。
第3 まとめ
賃料増減額請求は、感情的な対立になりやすい問題ですが、その法的構造は驚くほどシンプルです。
「直近合意時点」から現在までに、どれだけの「事情変更」があったか。
租税負担の増減、経済事情の変動、近傍相場との乖離。
原則としていきなり訴訟はできず、まずは「調停」での話し合いが必要(調停前置主義)。
契約の沿革、公的指標、近隣比較表など、客観的なエビデンスが成否を分ける。
「相場が変わったから」という主観的な理由だけでは、法的な請求を認めてもらうのは困難です。
まずは現在の賃料がいつ、どのような経緯で決まったのかを整理することから始めましょう。
第4 よくあるご質問
-
賃料増減額請求は、いつでも・何度でもできますか?
-
請求自体はいつでも行うことができ、回数に制限はありません。
ただし、一度賃料を改定した後は、その改定後の賃料が新たな「直近合意時点」の賃料となります。
そのため、再度の請求を検討する際は、その改定時点から新たな事情変更があるかどうかを改めて検討する必要があります。
「前回の請求から間もない」という事情は、事情変更の程度を評価するうえで不利に働くこともあります。
-
「直近合意時点」はどのように特定すればよいですか?
-
基本的には、賃料について合意した内容が書面(契約書・覚書・合意書など)で残っている場合は、その締結日が直近合意時点となります。
問題は、口頭での交渉経緯が残っていたり、過去の賃料改定の書面が見当たらなかったりするケースです。
この場合、メールや手紙のやり取り、振込明細の推移なども手がかりになります。
争いになりやすい論点なので、過去の書類は早めに整理しておくことをおすすめします。
-
調停を経ずに、いきなり訴訟を起こすことはできますか?
-
賃料増減額請求に関する訴訟は、民事調停法上、調停前置主義の対象とされています(民事調停法24条の2)。
そのため、原則として先に調停を申し立てる必要があります。
もしいきなり訴訟を提起した場合、裁判所の職権で事件が調停に付される(調停に回される)のが一般的です。
-
賃料増減額請求をした後も、従来の賃料を払い続けなければなりませんか?
-
はい、請求をしただけでは賃料が自動的に変わるわけではありません。
増額請求を受けた借主は、相当と認める額を支払い続けることができ、減額請求をした借主は同様に相当と認める額を支払えば足ります。
ただし、最終的に裁判で確定した賃料額と実際の支払額に差額が生じた場合は、年1割の利息(増額の場合)または年1割の利息付きで返還(減額の場合)する仕組みになっています。
賃料の過不足精算が後から発生することを念頭に置いておきましょう。
-
弁護士に依頼するタイミングはいつがよいですか?
-
できれば、相手方への申入れ前のご相談をおすすめします。
直近合意時点の特定・事情変更の程度の評価・客観資料の収集 ⇒ これらは最初の段階で方針を定めておかないと、後になって軌道修正が難しくなることがあります。
また、最初の申入れの仕方(内容証明郵便の書き方など)が、後の調停・訴訟での主張に影響することもあります。
「まだ交渉中だから」と後回しにせず、見通しを早めに持つという意味でも、初期段階での相談が解決を早める近道です。
第5 賃料増減額のトラブルを弁護士に相談する
1 不動産トラブルの専門家

賃料相場の変動は経営や生活に直結する死活問題ですが、「相手方との関係悪化」や「手続きの複雑さ」を懸念して、二の足を踏んでしまう方も少なくありません。
しかし、賃料改定の効力は原則として「増減額の請求をした時点」から発生します。
悩んでいる間にも、本来得られるはずだった差額を失い続けている可能性があります。
賃料改定を成功させる鍵は、主観的な主張ではなく、法的な「正しい手順」と「客観的な資料」を揃えることにあります。
当事務所では、法的な見通しの提供はもちろん、不動産鑑定士とも連携し、戦略的なサポートを行っております
「そもそも今回のケースで請求が通るのか?」という初期的な診断から承っておりますので、手遅れになる前に、まずは一度お気軽にご相談ください。
2 当事務所の弁護士費用
賃料・地代の増減額交渉
| 手続 | 着手金(税込) | 報酬金(税込) |
|---|---|---|
| 交渉・調停 | 33万円 ~ | 経済的利益の 11% |
| 訴訟 | 44万円 ~ | 経済的利益の 11% |
※但し、報酬金の最低額は 22万円(税込)となります。
420万円 × 11% = 46万2,000円(税込)
交渉・訴訟の費用(目安)
| 経済的利益 | 着手金 | 報酬金 |
|---|---|---|
| 300万円 以下 | 最低33万円 | 17.6% |
| 300万円超 ~ 3000万円 以下 |
5.5% + 9.9万円 (最低33万円) |
11% + 19.8万円 |
| 3000万円超 ~ 3億円 以下 | 3.3% + 75.9万円 | 6.6% + 151.8万円 |
| 3億円 超 | 2.2% + 405.9万円 | 4.4% + 811.8万円 |
※報酬金の最低額は 11万円(税込)となります。
※総額の下限は、交渉44万円~、法的手続66万円~、となります。
3 ご不安な方へ|よくいただくご質問
-
まだ大きなトラブルになっていません。「ちょっと怖い・おかしい」程度の不安や違和感でも相談してよいですか?
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もちろんです。
不動産トラブルは、初期対応が非常に重要です。
契約内容の確認や、相手方への最初の通知(内容証明郵便など)を法的に正しく行うことで、被害の拡大を防ぎ、有利に交渉を進められる可能性が高まります。
「不安」・「違和感」の段階でご相談いただくのがベストタイミングです。
-
相談料はいくらかかりますか?
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初回相談料として、1時間以内:1万1,000円を頂いております。
以降、30分以内の延長ごとに5,500円を頂いております。
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弁護士費用規定を見ても、よく分かりません。
-
ご安心ください。
ご相談の際に、事案の内容をうかがった上で、着手金や報酬金について明確なお見積もりをご提示します。
ご納得いただいてから契約となりますので、予測不能な費用が出る心配はありません。
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相談方法を教えてください。
-
以下のいずれかの方法でご相談を承っております。
- オンライン相談(Google Meetなどを利用します)
- ご来所による対面相談
※正確な状況をお伺いするため、恐れ入りますが、お電話やメールのみでのご相談は承っておりません。
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オンライン相談が可能とのことですが、遠方(地方)からの相談も対応していますか?
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当事務所はGoogleMeetなどのオンラインツールを最大限活用し、全国の不動産売買トラブルに対応しております。これまでにも、北は札幌市から、南は那覇市や宮古島市まで、遠方のお客様からのご相談・ご依頼実績がございます。
お住まいの地域にかかわらず、専門家による法務サポートを提供いたしますので、どうぞ安心してご相談ください。
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相手(売主・買主・不動産会社)と直接話したくありません。弁護士に全て任せられますか?
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はい、お任せください。
弁護士がご依頼者様の代理人となると、相手方との交渉窓口はすべて弁護士になります(受任通知を送付します)。
相手方からの連絡にストレスを感じることなく、法的な手続きを進めることができます。
-
相談の際、どのような資料を準備すればよいですか?
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必須ではありませんが、以下の資料をお持ちいただくと相談がスムーズです。
- 契約書(売買・賃貸借)
- 重要事項説明書
- 物件の図面、パンフレット
- トラブルの内容がわかるもの(写真、メール、相手方からの通知書など)
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弁護士紹介
- 1981年生まれ
- 1997年文京区立第十中学校卒業
- 2000年私立巣鴨高校卒業
- 2006年東京大学教育学部卒業
- 2008年東京都立大学法科大学院卒業
- 2009年弁護士登録
- 2024年文の風東京法律事務所を開設
- 1985年生まれ
- 2004年神奈川県立横浜翠嵐高校卒業
- 2009年一橋大学法学部卒業
- 2011年東京都立法科大学院卒業
- 2012年弁護士登録
- 2024年文の風東京法律事務所を開設
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