賃料の基準は何を基準に判断されているか知りたがる人。

賃料の増額を求めたい、増額を求められた・・・賃貸借契約の要である賃料について、契約期間中であっても増額を求めたり、減額を求めたいことがあると思います。

これらの増額・減額を争った場合に、裁判所はどのような事情について、何を基準として判断しているのでしょうか。

この記事で分かること
1
直近合意時点が決着した後、裁判所が「賃料を変動させる事情」として具体的に何を見ているのか
2
賃貸人が増額を主張する際、何を根拠にすべきか 募集賃料・固定資産評価額・路線価・地価などの位置づけ
3
増額請求を受けた賃借人が、何を集めて反論すればよいのか
4
裁判所が賃料増減額請求をどのように判断するのか

建物賃料の増減額請求について、審理の全体構造と、その出発点となる直近合意時点については、以下の関連記事をご参照ください。

賃料増減額の審理構造は、いつの時点でその賃料が合意されたか、その上で直近合意時点からどれだけの事情変更があったか、です。

賃料増減額請求の審理は、おおまかにいえば「①いつの賃料合意を起点(直近合意時点)とするか」を確定し、「②その起点から賃料増減請求の時点までに、賃料を不相当にするだけの事情変更があったか」「③あるとして相当賃料はいくらか」という順序を視覚化した図。
賃料増減額の判断構造

賃料増減額請求の審理では、直近合意時点(①)について争いがなく決着している事案では、勝負は②・③に移ります。

弁護士 岩崎孝太郎

この記事では、直近合意時点が定まった後、裁判所は「賃料を変動させる事情」として具体的に何を見ているのかを解説します。

「賃貸人なら何を根拠に増額を主張すればよいのか」、「賃借人なら何を集めて反論すればよいのか」という実務の指針をお伝えします。

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第1 考え方の出発点 ⇒ 直近合意時点からの変化に注目している

賃料増減額を考える際の注意点として、現行賃料を新規賃料(市場相場)の水準まで単純に引き直すわけではないということです。

つまり、審理の中心になるのは、「直近合意の後に何が変わったか」だけです。

賃貸人からは、「相場に比べて安すぎる」という主張だけでは足りません。

合意時点ですでに存在し、当事者が織り込んでいた事情(昔からの安さ、契約の特殊性)は、それ自体としては増額の理由になりません。

具体的には、「相場と乖離している」との主張に対しては、「その乖離は直近合意時点から存在していた」、「当事者はそれを承知で合意した」などが有力な反論となり得ます。

この大前提が鮮明に表れたのが、次の裁判例です。

裁判例①

新宿の給油所における賃料の増額

東京地裁令和6年9月10日判決
事案の概要

賃貸人である不動産会社が、賃借人である石油元売会社に対し、新宿区のビルの一部にある給油所の賃料を、令和4年4月分から月額約188万円に増額することの確認を求めた事案です。

この物件は、もともと当事者が親子会社だった経緯から賃料が低く設定され、新規賃料の約47%という低水準で推移してきました。

直近合意時点は、前の紛争を経て調停が成立した令和2年4月1日です。当時の賃料は月額約149万円でした。

当事者の主張

賃貸人は、賃借人が相場よりはるかに安く借りている 「借り得状態」 を解消すべきであると主張し、新規賃料に近づける鑑定を提出しました。

これに対し、賃借人は、直近合意以降の経済事情の変動、例えば地価の下落傾向などに照らせば、増額すべき事情はないと争いました。

裁判所の判断

裁判所は、最高裁が示した考え方を引用し、借地借家法32条1項は、現行賃料を市場賃料に近づけるための制度ではないと明言しました。

そのうえで、本件の低廉な水準と新規賃料との乖離は、 直近合意の時点で当事者双方が認識したうえで合意していた ものだと判断しました。

そのため、その後に乖離の基礎となる事情が変化したのでない限り、契約自由・私的自治の原則が及び、原則として継続賃料の変動の対象にはならない、と判断しています。

この裁判例のポイント

この裁判例は、現行賃料が新規賃料と大きく乖離している場合であっても、その乖離を当事者が認識したうえで直近合意をしていた場合には、 単に「相場より安い」というだけでは大幅な増額は認められにくい ことを示しています。

賃料増減額請求では、現在の市場賃料との乖離そのものよりも、 直近合意時点以降にどのような事情変更があったか が重要になります。

結論として、裁判所は、賃貸人が求めた新規賃料水準への引き直しは認めず、直近合意以降の経済情勢の変化を反映した範囲で、 月額約153万円への増額 を認めました。 増額率は約2.6%にとどまっています。

この裁判例では、あくまでも「その後に乖離の基礎となる事情が変化したのでない限り」という留保がついている点には注意をしてください。

基礎事情に変更があれば、大きな事情変更の要因になり得ます。

第2 裁判所が「変動の事情」として見るもの

裁判所や不動産鑑定士が、直近合意時点以降の「何の変化」を拾っているのかを、要素ごとに見ていきます。

1 公租公課(固定資産税・都市計画税)――重要だが「必須」ではない

借地借家法32条1項は、賃料増減の事由として「土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減」を挙げています。

固定資産税・都市計画税の負担の増減は、もっとも分かりやすい事情です。

ただし注意が必要なのは、重要な要素ではあるものの、公租公課の増減だけで決まるわけではありません。

裁判例②

台東区のマンション一室の裁判例

東京地裁令和6年10月28日判決
事案の概要

賃貸人である建設会社が、ビル6階の居室約69㎡を借りる賃借人個人に対し、賃料を月額13万円から月額15万円に増額することの確認等を求めた事案です。

直近合意時点は、平成25年の契約更新時です。このとき、室内の異音・振動を考慮して賃料を5000円減額し、月額13万円とする合意がされていました。

当事者の主張

賃貸人は、賃貸物件全般の賃料上昇、国内経済の上昇基調、近傍同種賃料との乖離、設備更新による居住性の向上などを増額理由に挙げました。

これに対し、賃借人は、固定資産税は増えていないこと、賃貸人の挙げる平均賃料は新築物件を含んでおり比較対象として不適切であること、建物には建築基準法違反である避難経路の不備などがあり安全性が低下していることなどを主張しました。

裁判所の判断

裁判所は、本件建物の固定資産税等は直近合意時点から むしろ漸減していた ことを認めました。

しかし、東京都区部の分譲マンションの平均賃料が平成25年比で約1.244倍、実質GDPが約1.047倍に上昇していることなどを理由に、賃料を不相当とする事情変更があったと判断しました。

賃借人が主張した建築基準法違反については、 直近合意時点から変わっておらず、賃借人が知らなかったにすぎない事情 は、原則として借地借家法32条1項の「その他経済事情の変動」には当たらず、増額を妨げる事情にはならないと判断しました。

もっとも、違法の可能性については、鑑定上の減価要因としては考慮されています。 また、賃貸人が給湯器やエアコン等を更新して居住性を維持したことは、増額を支える事情とされました。

この裁判例のポイント

この裁判例は、固定資産税等が増加していない場合でも、 周辺賃料の上昇や経済指標の変化 によって賃料増額が認められ得ることを示しています。

また、建物の安全性や違法性に関する事情であっても、それが直近合意時点から存在していた事情であり、その後に新たに発生した事情変更とはいえない場合には、賃料増額を当然に妨げるものではない、という判断枠組みが示されています。

結論として、裁判所は鑑定どおり、 月額15万1500円への増額 を認めました。

2 物価・サービス価格の指数 ~ 中核データ

よく使われるのは、消費者物価指数(CPI)企業向けサービス価格指数(CSPI、特に「不動産賃貸」、「店舗賃貸」、「倉庫賃貸」といった用途別の細分類)、国内企業物価指数GDP関連の指標です。

賃料そのものの動きを示す指数(CSPIの用途別細分類)は、説得力をもって扱われやすい傾向があります。

これに対し、「自社の業績」のような個別事情は、原則としてこの枠組みに持ち込めません。

裁判例③

加須市の倉庫の賃料増額請求

東京地裁令和6年2月20日判決
事案の概要

賃貸人である不動産会社が、倉庫として土地建物を借りる賃借人(運送業の持株会社)に対し、賃料を月額390万円から増額することの確認等を求めた事案です。

直近合意時点は平成21年3月1日であり、賃貸人は、契約から十数年が経過する中で、近傍の賃料相場が大きく上昇したにもかかわらず、賃料が据え置かれてきたと主張しました。

裁判所の判断

裁判所は、直近合意時点から増額請求時までの間に、消費者物価指数(CPI)が3.4%、企業向けサービス価格指数(CSPI)の「不動産賃貸・倉庫賃貸」が9.1%、市街地価格指数(埼玉県・工業地)が11.9%、基準地価格が14.2%上昇していたことなどを重視しました。

その結果、 賃料増額事由が存在する と判断しています。

特に注目されるのは、 倉庫賃貸に関するCSPIが、一般物価指数(CPI)より大きく上昇していた点 です。裁判所は一般的な物価だけではなく、 当該用途に対応した賃料関連指数も重視していることがうかがえます。

鑑定結果と結論

裁判所は、中立の鑑定人による鑑定を採用し、 3つの鑑定手法を組み合わせて算定された 月額399万円(消費税別) を相当賃料と認定しました。

これにより、税込では月額438万9000円となり、増額請求は一部認容されています。

また、この鑑定では、建物に存在した雨漏り、トイレの不具合、水道水の白濁といった問題についても検討されており、管理状態の不良や要修繕箇所が減価要因として反映されました。

この裁判例のポイント

この裁判例は、賃料増減額請求において、 一般的な物価指数だけでなく、対象用途に対応した賃料指数(CSPI)や地価指数が重視される ことを示しています。

また、裁判所鑑定では市場動向だけでなく、 建物の管理状態や修繕の必要性といった個別事情も減価要因として評価される 点が重要です。

賃貸人にとっては賃料関連指数や地価資料の準備が重要であり、賃借人にとっては建物の不具合や管理状況を具体的に立証することが、鑑定結果に影響を与える可能性があります。

裁判例④

大田区の大型店舗(スーパー)事件

東京地裁令和7年3月12日判決
事案の概要

賃貸人である建物所有会社が、スーパーマーケットを展開するグループの持株会社(賃借人)に対し、店舗建物の賃料増額の確認等を求めた事案です。

本件では、平成10年の契約開始以降、賃借人の営業不振などを理由として、5回にわたり賃料減額が行われていました。

直近合意時点である平成30年8月1日時点の賃料は月額約1956万円でしたが、その後、賃貸人は、賃借人の業績改善や土地評価額の上昇を理由として増額を求めました。

当事者の主張

賃借人は増額を争うとともに、適正賃料はむしろ現在より低いと主張しました。

特に、 自店舗の売上高の推移やショッピングセンターの坪効率 をスライド法の変動率に反映すべきであること、鑑定で用いられた取引事例が古いこと、駐車場部分の評価が過大であることなど、多方面から裁判所鑑定の妥当性を争いました。

裁判所の判断

裁判所は、店舗の売上高について、 経営努力や営業戦略に大きく左右される個別性の強い数値 であると指摘しました。

そのため、客観的な経済事情の変化を反映するスライド法において、店舗売上そのものを反映させなかったとしても、合理性を欠くものではないと判断しています。

また、賃借人による取引事例の選定や駐車場評価等に関する細かな批判についても、鑑定人による評価や手法選択は 不動産鑑定士の専門的裁量の範囲内 であるとして、基本的に採用しませんでした。

結論

裁判所は、裁判所鑑定において各手法を総合的に考慮した結果を採用し、 月額約2075万円 を相当賃料として認定しました。

その結果、賃料増額請求は一部認容されています。

この裁判例のポイント

この裁判例は、 賃借人の売上高や業績といった個別事情は、賃料増減額請求では重視されにくい ことを明確に示しています。

裁判所が重視するのは、地価や物価、賃料指数などの 客観的な経済事情の変化であり、個別企業の経営成績そのものではありません。

また、裁判所鑑定に対する反論についても、単なる評価の違いや手法への不満では足りず、明確な誤りが認められない限り、鑑定士の専門的裁量は尊重される傾向が強いことが分かります。

賃料増減額事件では、鑑定結果が出た後に細部を争うよりも、鑑定の前提となる事実や資料をどのように整えるかが重要であることを示す裁判例といえます。

3 地価関連指標 ~ 地価そのものと「固定資産評価額」は別物

土地の価格動向も主要な指標となり、公示地価・基準地価格(地価調査)相続税路線価市街地価格指数などがあります。

ただし、固定資産税評価額が上がったことが、そのまま地価上昇=増額の根拠にできるとは限りません。

固定資産税には3年に一度の評価替えや負担調整制度があり、現実の地価とずれた動きをすることがあるためです。

前掲の給油所事件(裁判例①)では、賃貸人側がビル敷地の固定資産評価額が約25%上昇したことを主張の根拠にしました。
しかし裁判所は、その時期にちょうど3年に一度の評価替えがあったこと、同時期の近隣の公示地価・地価調査価格・路線価がいずれもマイナス2.5〜3.0%程度だったことなどを指摘し、固定資産評価額の上昇は当該時期の土地価格の変動を正しく反映したものとはいえないと述べました。

4 近傍同種・新規(募集)賃料 ~ 「同種かどうか」が最大の争点

近傍同種の建物の賃料相場との関係は、重要な指標になります。

しかし決定的に重要なのは、「本当に同種・同条件の物件か」という点です。

賃貸人は、用途・構造・築年数・最寄り駅からの距離・規模・契約条件(敷金・共益費・更新料)が本当に近い物件を選ぶ必要があります。

裁判例⑤

千代田区のスポーツスクール用建物の賃料増額

東京地裁令和5年7月24日判決
事案の概要

賃貸人である不動産会社が、スポーツスクールを運営する賃借人に対し、建物賃料を月額約157万円から約185万円へ増額することの確認等を求めた事案です。

直近合意時点は平成27年8月31日であり、 その後の地価や公租公課の上昇などを理由として、賃貸人が賃料増額を請求しました。

当事者の主張

賃貸人は、増額の根拠として、固定資産税評価額の上昇(約3.6億円→約4.5億円)、相続税路線価の上昇(1㎡あたり130万円→163万円)、公租公課の増加、そして近傍同種の実質賃料単価との乖離を挙げました。

具体的には、近傍同種物件の平均実質賃料単価が1㎡あたり5820円であるのに対し、本件は4565円であり、不相当に低いと主張しました。

これに対し賃借人は、賃貸人が比較対象としている物件は一般的なオフィスビルであり、本件建物は中二階付きのメゾネットタイプで天井が高く、オフィス利用に適さない特殊な建物であることから、「同種物件」とはいえないと反論しました。

また、賃貸人による管理が不十分であり、台風時の浸水や地震後のエレベーター停止に十分対応しなかったこと、さらに多額の内装工事費を賃借人が負担していることなども主張しました。

裁判所の判断

裁判所は、直近合意以降、土地建物価格や公租公課が上昇していること、さらに麹町・番町エリアの小型ビルの募集賃料が上昇していることなどから、 賃料増額を基礎付ける事情変更が存在すると判断しました。

そのうえで、中立の鑑定人による鑑定を採用し、複数の手法を総合した結果として、月額約170万円を相当賃料と認定しています。

賃借人が指摘した建物管理上の問題については、一定程度認められるものの、一時的な問題にとどまるとして、鑑定で反映された観察減価10%を超える追加減価までは認めませんでした。

また、賃借人が負担した内装工事費については、スポーツスクール事業を開始するための通常のテナント負担工事であるとして、原則として賃料減額の理由にはならないと判断しました。

もっとも、退去時にスケルトン状態へ戻すために賃借人が負担した工事費については、実質的に賃貸人の利益となるものであるとして、賃料評価上考慮されています。

結論

裁判所は、裁判所鑑定を採用し、月額170万3000円を相当賃料と認定しました。

その結果、賃料増額請求は一部認容されています。

この裁判例のポイント

この裁判例は、 路線価・固定資産税評価額・近傍賃料 が、実際に賃貸人側から増額根拠として主張された典型例です。

もっとも、裁判所はそれらの数値をそのまま採用したわけではなく、最終的には裁判所鑑定を通じて総合評価しています。

また、近傍賃料を用いる場合には、 本当に「同種」の物件といえるのか が重要な争点となることも示しています。

さらに、建物管理の不備や内装工事費などの個別事情についても、一定の考慮はされるものの、直ちに大幅な減価要因となるわけではありません。

賃料増減額事件では、路線価や固定資産税評価額だけで結論が決まるのではなく、それらを含む多くの事情を裁判所鑑定がどのように評価するかが重要であることを示す裁判例といえます。

5 建物固有の事情(老朽化・要修繕・管理不全)――賃借人の最大の武器

「物件そのものの状態」は、賃借人にとって最も有効な反論材料になり得ます。

具体的には、建物の老朽化要修繕箇所管理状況の不良は、鑑定上、賃料を引き下げる方向に働きます。

ただし、増額(減額)請求された時点より後に生じた不具合は反映されません(鑑定は請求時点の状態を評価するため)。

また、直近合意時点から変わっていない事情・賃借人が承知していた事情は効きにくいです。

逆に賃貸人は、設備更新・修繕の記録を増額請求の時点までに揃えておくことが、減価主張への有力な反論になります。

裁判例における現れ方

前掲の加須市の倉庫事件(裁判例③)では、裁判所鑑定が、トイレの改修・水道水の白濁・雨漏り・天井板の剥がれなど早急に修繕が必要な箇所が長く放置され、賃貸人による管理状態が劣るとして、減価を施し、配分も賃貸人に不利に調整しました。

ただし、鑑定後に給水ポンプが故障したという主張については、増額請求時点より後の事象であるとして考慮の外に置かれています。

前掲のスポーツスクール事件(裁判例⑤)では、賃借人の指摘した管理の問題点(浸水・エレベーター停止への未対応など)は一定程度認められましたが、一時的な問題にとどまるとして、鑑定の観察減価を超える追加の減額までは認められませんでした。

第3 各当事者(賃貸人・賃借人)は何を準備すべきか?

1 賃貸人の準備指針 ~ 「何を根拠に増額を主張するか」

増額を求める賃貸人が集めるべき材料です。

  • 直近合意時点以降の地価動向
    公示地価・基準地価格・地価調査・市街地価格指数の推移。
    固定資産評価額や路線価のみならず、市場価格に近い指標で裏づけましょう。
  • 賃料系・物価系の客観的指数
    企業向けサービス価格指数の用途別細分類(不動産賃貸・店舗賃貸・倉庫賃貸など)、消費者物価指数、国内企業物価指数、GDP関連。
    賃料に直結する指数ほど説得力が増します。
  • 同種・同条件の近傍賃料
    用途・築年・規模・条件をそろえた成約・募集事例。
    違う用途の相場を並べないようにします。
  • 公租公課の推移
    固定資産税・都市計画税の負担増があれば加えます(ただし、これがなくても他の事情で増額はあり得る)。
  • 物件価値を維持・向上させた事実
    設備更新・修繕・リノベーションを行った事実があれば主張します。
    減価主張への防御にもなります。

2 賃借人の反論指針 ~ 「何を集めて過大請求を防ぐか」

増額請求を受けた賃借人が、「これは仕方ない」と判断する材料と、「過大だ」と反論する材料となります。

  • 乖離・安さは直近合意時点からあったものか
    合意時点で当事者が承知していた乖離は、変動の対象外です。
    「相場より安い」という主張を崩せる可能性があります。
  • 建物の状態(直近合意時点)
    老朽化・要修繕箇所・管理不全の証拠があれば準備します。
    賃料を抑える方向に働きます。ただし増額請求された時点より後の不具合は効きません。
  • 比較事例の非同種性
    賃貸人の挙げる近傍賃料が、用途・築年・条件の違う物件かどうか。
  • 指数の取捨選択への反論
    客観的指数の選び方・読み方の不当性を指摘します(但し、自社の業績悪化などの個別事情は評価されにくいです)。
  • 公租公課の不増加・地価の下落
    固定資産評価額の上昇は評価替えや負担調整制度による見かけのものではないか。
    実際の公示地価・路線価は下落していないか。

3 裁判所鑑定への反論には「限界」がある

賃料の査定には、多くの裁量的な要素が関係してきます。

そのため裁判所は、取引事例の選び方や各種の補正(修正)について、「不動産鑑定士の専門的な知見に委ねるべきであり、明らかな間違いがない限りはその判断を尊重する」という姿勢を一貫してとっています。

つまり、賃料の増減額をめぐる裁判では、提出された公的鑑定を後からひっくり返すことは、極めて困難です。

勝負の分かれ目は、裁判所の鑑定が行われる前に「どのような前提事実や資料を、裁判所と鑑定人に漏れなく届けられるか」にかかっています。

第4 よくいただくご質問

今の賃料が相場よりかなり安いのですが、相場水準まで増額できますか?

相場より安いという理由だけでは、増額できません。
もっとも、直近合意以降の事情変更が認められれば、相場との乖離も踏まえた増額が認められることがあります。
借地借家法32条1項は、単に現行賃料を市場賃料(新規賃料)の水準へ引き直す制度ではありません。
裁判所が見るのは直近合意以降の事情変更であり、物価水準等に完全に連動した賃料変化ではないからです。

固定資産税が上がっていなくても、賃料の増額は認められますか?

認められる場合があります。
公租公課は重要な事情ですが、それだけで決まるわけではありません。
固定資産税が減っていても、周辺賃料の上昇や経済指標の変動を理由に増額が認められた裁判例があります。

固定資産税評価額や路線価が上がっていれば、それだけで増額の根拠になりますか?

そのまま根拠にできるとは限りません。
固定資産税評価額は3年に一度の評価替えや負担調整制度があり、市場価格そのものを示すものでなく、実際の地価とずれることがあるためです。
公示地価・基準地価格など、市場価格に近い指標で裏づけることが重要です。

(賃借人)自社の売上や業績の悪化を理由に、賃料の減額を求められますか?

原則として持ち込みにくいです。
裁判所が見るのは地価・物価・賃料指数などの客観的な経済事情の変化であり、個別企業の業績そのものではありません。

建物が古く不具合もあります。据え置きや減額の理由になりますか?

建物の老朽化・要修繕・管理不全は、賃借人にとって有効な反論材料になり得ます。
ただし、請求時点より後に生じた不具合は反映されず、直近合意時点から変わっていない事情は、原則として事情変更には当たりません。
なお、もっとも、鑑定評価の個別修正要因として考慮されることがあります。

増額(または減額)を主張するために、まず何を準備すればよいですか?

賃貸人側は、地価動向・賃料/物価指数(特にCSPIの用途別細分類)・同種の近傍賃料・公租公課の推移・修繕記録などです。
賃借人側は、安さが直近合意時点からあったのか・建物の状態・同種の近傍資料などを検討します。

裁判所の鑑定結果が出たら、もう結論は覆せないのでしょうか?

明らかな誤りがない限り、裁判所は鑑定を尊重する傾向があります。
そのため、勝負どころは、鑑定前に前提事実と資料をどれだけ漏れなく届けられるかにあると言っても過言ではありません。

第5 賃料の増額・減額の問題を専門家(弁護士)に相談する

1 まとめ

直近合意時点が決着した後、裁判所が賃料を動かす事情として実際に見ているのは、整理すると次のとおりです。

  • 起点は「直近合意賃料」 賃料増減額請求では、新規賃料へ単純に引き直すのではなく、 直近合意時点からどのような事情変更があったか を見ることになります。
    見るべき中心は「合意後の変化」です。
  • 重視される客観資料 判断を動かす事情としては、地価動向(公示地価・基準地・市街地価格指数)、 賃料・物価の各種指数、特にCSPIの用途別細分類、公租公課、真に同種といえる近傍賃料、 そして建物固有の状態、すなわち老朽化・修繕・管理状況などが重要になります。
  • 賃貸人側・賃借人側の実務上の勝負どころ 賃貸人側は、市場に近い客観指標を積み上げることが重要です。 他方、賃借人側は、価格時点における建物状態や、 賃貸人が示す比較事例が本当に同種といえるのかという 比較事例の非同種性 を丁寧に検討することが有効です。
  • 個別事情は通りにくい 自社の業績などの個別事情は、客観的経済情勢を見る賃料増減額の枠組みでは、 そのままでは通りにくい傾向があります。大型店舗事件からも、 賃料増減額の判断では、当事者固有の事情よりも、 客観的な経済事情・不動産市場の変化 が重視されることが分かります。
  • 裁判所鑑定への向き合い方 最終的な結論を支えるのは、中立的な裁判所鑑定であることが多く、 鑑定結果の細部を後から攻撃することには限界があります。 そのため、実務上は、鑑定に入る前の段階で、 前提事実と提出資料をどれだけ整えられるか が勝負どころになります。

賃料増減額請求は、「現在の相場はいくらか」を争う裁判ではありません。

直近合意時点から何が変わったのか」を、客観的資料と不動産鑑定によって立証する裁判です。

この視点を理解して資料を準備することが、賃貸人・賃借人のいずれにとっても最も重要です。

2 当事務所の弁護士費用

初回法律相談料
60分 1万6,500円(税込)
賃料・地代の増減額交渉

【算定基準】 経済的利益 = 増減額分の7年分の額

手続 着手金(税込) 報酬金(税込)
交渉・調停 33万円 ~ 経済的利益の 11%
訴訟 44万円 ~ 経済的利益の 11%
※表は左右にスクロールして確認できます

※但し、報酬金の最低額は 22万円(税込)となります。

【例】賃料増額請求で「5万円」の増額が認められた場合
着手金:33万円(税込)
報酬金(経済的利益からの算定):
5万円 × 12ヵ月 × 7年 = 420万円(経済的利益)
420万円 × 11% = 46万2,000円(税込)
交渉・訴訟の費用(目安)
経済的利益 着手金 報酬金
300万円以下 最低33万円 17.6%
300万円超~3000万円以下 5.5%+9.9万円
(最低33万円)
11%+19.8万円
3000万円超~3億円以下 3.3%+75.9万円 6.6%+151.8万円
3億円超 2.2%+405.9万円 4.4%+811.8万円
※表は左右にスクロールして確認できます

※報酬金の最低額は11万円(税込)となります。
※総額の下限は、交渉44万円~法的手続66万円~となります。

3 ご不安な方へ|よくいただくご質問

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相談料はいくらかかりますか?

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相手方からの連絡にストレスを感じることなく、法的な手続きを進めることができます。

相談の際、どのような資料を準備すればよいですか?

必須ではありませんが、以下の資料をお持ちいただくと相談がスムーズです。

  • 契約書(売買・賃貸借)
  • 重要事項説明書
  • 物件の図面、パンフレット
  • トラブルの内容がわかるもの(写真、メール、相手方からの通知書など)
  • 経緯をまとめたメモ(時系列で何があったか)

不動産業を営んでいます。 不動産実務に詳しい顧問弁護士を探しています。
どのようなサービス(プラン)がありますか?

当事務所は、不動産業者様向けの顧問サービスに特に力を入れております
日々の契約書チェックやクレームの初期対応など、貴社のリスク管理を法務面からサポートします。

顧問サービスは、以下のメニューをご用意しております。
プランに関するご相談やお見積もりは無料ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

(より詳しく⇒)🔗「顧問サービス紹介ページ」

アドバンス
大部の書面なども
見てもらいたい
11 万円(税込)/ 月
  • 社員数の目安 制限なし
  • 月対応時間 5時間
  • 月相談件数 月5案件
  • 契約書チェック
  • 書面作成
  • 内容証明郵便 月1通無料
    弁護士名あり
  • 出張相談
  • 弁護士費用割引 20% OFF
プレミアム
自社に法務部が欲しい
手厚いサポート
22 万円(税込)/ 月
  • 社員数の目安 制限なし
  • 月対応時間 12時間
  • 月相談件数 月12案件
  • 契約書チェック
  • 書面作成
  • 内容証明郵便 月3通無料
    弁護士名あり
  • 出張・直接交渉
  • 弁護士費用割引 30% OFF
セカンドオピニオン
顧問弁護士以外に気軽に相談したい方へ
3.3万円 (税込)/ 月
社員目安:10名まで 月1時間 / 月1案件 契約書チェック:○

4 お気軽にご相談ください【お問い合わせフォーム】

法律相談は「来所」または「オンライン」で承ります(電話・メールでの法律相談は行っておりません)。 顧問契約等のサービスに関するお問い合わせは、来所・オンライン・電話・メールのいずれの方法でも承ります。

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賃料をめぐるトラブルの解決には、一般的な不動産問題とは異なる専門的なノウハウが不可欠です。

当事務所は不動産トラブルに注力しており、終わりの見えない対立に法的な見地から終止符を打ちます。

あなたの正当な権利を、私たちがしっかりと守り抜きます。

弁護士紹介

弁護士 岩﨑孝太郎
弁護士
岩﨑 孝太郎
  • 1981年生まれ
  • 1997年文京区立第十中学校卒業
  • 2000年私立巣鴨高校卒業
  • 2006年東京大学教育学部卒業
  • 2008年東京都立大学法科大学院卒業
  • 2009年弁護士登録
  • 2024年文の風東京法律事務所を開設
弁護士 小川弘義
弁護士
小川 弘義
  • 1985年生まれ
  • 2004年神奈川県立横浜翠嵐高校卒業
  • 2009年一橋大学法学部卒業
  • 2011年東京都立法科大学院卒業
  • 2012年弁護士登録
  • 2024年文の風東京法律事務所を開設

アクセス

文の風東京法律事務所
所在地 〒112-0004
東京都文京区後楽2-3-11 ニューグローリビル3階
アクセス 各線「飯田橋駅」東口・C1出口より徒歩約5分
お問い合わせ TEL:03-3524-7281
受付時間:平日 9:00~18:00

お問い合わせ

ご相談については、予約制となっております。
来所相談だけでなく、Zoom・Google Meetによるオンライン相談も対応しておりますので、全国対応しております。

お問い合わせフォームまたはお電話にてご連絡ください。

STEP
1

相談時に必要なもの

事前に以下のものをご準備いただくと、ご相談がスムーズに進みます。

  • 相談内容の要点をまとめていたメモ
  • ご相談に関する資料や書類
STEP
2

ご相談

法律上の問題点や採り得る手段などを専門家の見地よりお伝えします。

問題解決の見通し、今後の方針、解決までにかかる時間、弁護士費用等をご説明いたします。

※ご相談でお悩みが解決した場合は、ここで終了となります。

STEP
3

ご依頼

当事務所にご依頼いただく場合には、委任契約の内容をご確認いただき、委任契約書にご署名・ご捺印をいただきます。

STEP
4

問題解決へ

事件解決に向けて、必要な手続(和解交渉、調停、裁判)を進めていきます。

示談、調停、和解、判決などにより事件が解決に至れば終了となります。

STEP
5

終了

委任契約書の内容にしたがって、弁護士費用をお支払いいただきます。
お預かりした資料等はお返しいたします。

STEP
6

不動産トラブルの法律相談は
弁護士にご相談ください

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