賃料の基準は何を基準に判断されているか知りたがっている人。

賃料の増額を求めたい、増額を求められた・・・賃貸借契約の要である賃料について、契約期間中であっても増額を求めたり、減額を求めたいことがあると思います。

これらの増額・減額を争った場合に、裁判所はどのような事情について、何を基準として判断しているのでしょうか。

この記事で分かること
1
直近合意時点が決着した後、裁判所が「賃料を変動させる事情」として具体的に何を見ているのか
2
賃貸人が増額を主張する際、何を根拠にすべきか 募集賃料・固定資産評価額・路線価・地価などの位置づけ
3
増額請求を受けた賃借人が、何を集めて反論すればよいのか
4
裁判所が賃料増減額請求をどのように判断するのか

建物賃料の増減額請求について、審理の全体構造と、その出発点となる直近合意時点については、以下の関連記事をご参照ください。

賃料増減額の審理構造は、いつの時点でその賃料が合意されたか、その上で直近合意時点からどれだけの事情変更があったか、です。

賃料増減額請求の審理は、おおまかにいえば「①いつの賃料合意を起点(直近合意時点)とするか」を確定し、「②その起点から賃料増減請求の時点までに、賃料を不相当にするだけの事情変更があったか」「③あるとして相当賃料はいくらか」という順序を視覚化した図。
賃料増減額の判断構造

賃料増減額請求の審理では、直近合意時点(①)について争いがなく決着している事案では、勝負は②・③に移ります。

弁護士 岩崎孝太郎

この記事では、直近合意時点が定まった後、裁判所は「賃料を変動させる事情」として具体的に何を見ているのかを解説します。

「賃貸人なら何を根拠に増額を主張すればよいのか」、「賃借人なら何を集めて反論すればよいのか」という実務の指針をお伝えします。

第1 考え方の出発点 ⇒ 直近合意時点からの変化に注目している

賃料増減額を考える際の注意点として、現行賃料を新規賃料(市場相場)の水準まで単純に引き直すわけではない、ということです。

つまり、審理の中心になるのは、「直近合意の後に何が変わったか」だけです。

賃貸人からは、「相場に比べて安すぎる」という主張だけでは足りません。

合意時点ですでに存在し、当事者が織り込んでいた事情(昔からの安さ、契約の特殊性)は、それ自体としては増額の理由になりません。

具体的には、「相場と乖離している」との主張に対しては、「その乖離は直近合意時点から存在していた」、「当事者はそれを承知で合意した」などが有力な反論となり得ます。

この大前提が鮮明に表れたのが、次の裁判例です。

裁判例①

新宿の給油所における賃料の増額

東京地裁令和6年9月10日判決(令和4年(ワ)第21704号)
事案の概要

賃貸人である不動産会社が、賃借人である石油元売会社に対し、新宿区のビルの一部にある給油所の賃料を、令和4年4月分から月額約188万円(消費税別)に増額することの確認を求めた事案です。

この物件は、もともと当初の賃貸人が賃借人の完全子会社であった経緯から賃料が低く設定されていました。賃貸人は、現在の賃料が新規賃料の約46.9%にとどまる「借り得状態」だと主張しています。もっとも、この親子会社関係は平成24年に解消されており、現在の賃貸人は、その後に信託受益権を購入して賃貸人たる地位を承継した第三者です。

直近合意時点は令和2年4月1日です。前の紛争を経て令和2年3月3日に調停が成立し、同年4月分から月額約149万円とすることが確認されたものです。

当事者の主張

賃貸人は、賃借人が相場よりはるかに安く借りている 「借り得状態」 を解消すべきであると主張し、新規賃料に近づける鑑定を提出しました。

これに対し、賃借人は、直近合意以降の経済事情の変動、例えば地価の下落傾向などに照らせば、増額すべき事情はないと争いました。

本件では裁判所鑑定は実施されず、賃貸人・賃借人双方が提出した私的鑑定のみが判断材料となっています。

裁判所の判断① 「借り得状態」の解消について

裁判所は、最高裁平成20年2月29日判決を引用し、賃料増減額請求の当否や相当賃料額は、直近合意賃料を基にして、その合意時から増減請求時までの経済事情の変動等を総合的に考慮して判断すべきであるとしたうえで、 借地借家法32条1項は、単に現行賃料を市場賃料に近づけるものではない と明言しました。

そのうえで、本件の低廉な水準と新規賃料との乖離は、 直近合意の時点で当事者双方が認識したうえで合意していた ものであり、その後に乖離の基礎となった事情に変化が生じたとは認められないから、契約自由・私的自治の原則が及び、基本的に継続賃料の変動の対象にはならないと判断しています。

賃貸人は「そもそも直近合意賃料が適正でなかった」とも主張しましたが、裁判所は、賃貸人が不動産投資の知見を有し、賃料が低廉であることも改定条項の存在も前提として受益権を取得した以上、 その後の増額交渉が容易でないことは当然に認識可能であった と指摘し、これを排斥しました。

さらに裁判所は、本件建物が給油所であることに触れ、給油所とオフィスの賃料水準は必ずしも同水準ではないとして、賃貸人が根拠とするオフィスビル基準の新規賃料との比較そのものにも疑問を示しています。

裁判所の判断② 相当賃料額の算定

裁判所は、賃貸人側鑑定のうち差額配分法・利回り法による試算は採用せず、スライド法による試算のみを基本的に相当と認めました。

もっとも、変動率の起点についても修正を加えています。直近合意賃料の適用開始日は令和2年4月1日ですが、同月は緊急事態宣言の発出により各指標が比較的大きく低下していたことから、 調停成立日である令和2年3月を起点として変動率を算定するのが相当 と判断し、自ら再計算して月額156万6000円を導きました。

そのうえで、この額と賃借人側鑑定の適正賃料額(150万3000円)を50%ずつ考慮して、相当賃料額を算定しています。

なお、賃借人側鑑定がスライド法の変動率にビルの公租公課納付額を用いた点について、賃貸人は「負担調整制度があり実際の地価とずれる」と批判しましたが、裁判所は、本件では公租公課の変動率(105.1%)が地価公示価格等(94.8〜100%)より高く、 これを採ることはむしろ賃借人にとって謙抑的である として、批判を退けました。

結論

裁判所は、賃貸人が求めた新規賃料水準への引き直しは認めず、直近合意以降の経済情勢の変化を反映した範囲で、 月額153万5000円(消費税別)への増額 を認めました。増額率は約2.6%です。

注目されるのは、裁判所が「差は2.6%にとどまるが、契約上の賃料見直し期間とされた2年が経過していることも踏まえると賃料は不相当となった」と述べている点です。 増額幅が数%程度であっても「不相当」性は肯定され得る ことが示されています。

他方、月額188万5000円を求めた請求は大部分が棄却され、訴訟費用も10分の9を賃貸人が負担しています。

この裁判例のポイント

この裁判例は、現行賃料が新規賃料と大きく乖離している場合であっても、その乖離を当事者が認識したうえで直近合意をしていた場合には、 単に「相場より安い」というだけでは大幅な増額は認められにくい ことを示しています。

賃料増減額請求では、現在の市場賃料との乖離そのものよりも、 直近合意時点以降にどのような事情変更があったか が重要になります。

収益物件を取得する場合には、特に注意が必要です。 賃料が低廉であることを知ったうえで物件を購入した投資家は、その安さ自体を増額の理由にはできない というのが、本判決の実務上の含意です。

なお、本件には「2年経過毎に賃借人の営業料を勘案して賃料を改定する」旨の条項があり、実際に営業料は下落していましたが、裁判所はこれを理由に判断を変えていません。賃料改定条項があっても、借地借家法32条による判断がそれに拘束されるわけではないことも示されています。

この裁判例では、あくまでも「その後に乖離の基礎となる事情が変化したのでない限り」という留保がついている点には注意をしてください。

基礎事情に変更があれば、大きな事情変更の要因になり得ます。

第2 裁判所が「変動の事情」として見るもの

裁判所や不動産鑑定士が、直近合意時点以降の「何の変化」を拾っているのかを、要素ごとに見ていきます。

1 公租公課(固定資産税・都市計画税)――重要だが「必須」ではない

借地借家法32条1項は、賃料増減の事由として「土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減」を挙げています。

固定資産税・都市計画税の負担の増減は、もっとも分かりやすい事情です。

ただし注意が必要なのは、重要な要素ではあるものの、公租公課の増減だけで決まるわけではありません。

裁判例②

台東区のマンション一室の裁判例

東京地裁令和6年10月28日判決(令和5年(ワ)第20416号)
事案の概要

賃貸人である建設会社が、ビル6階の居室約69㎡を借りる賃借人個人に対し、賃料の増額確認等を求めた事案です。

賃貸人は、令和5年6月14日、同年7月1日以降の賃料を月額13万円から月額15万円に増額する旨を通知し、その後の訴訟では、私的鑑定の結果と同額である月額15万1500円の確認と、借地借家法32条2項に基づく差額および年1割の利息の支払を求めました。

直近合意時点は、平成25年の契約更新時です。このとき、室内の異音・振動を考慮して賃料を5000円減額し、月額13万円とする合意がされていました。

当事者の主張

賃貸人は、賃貸物件全般の賃料上昇、国内経済の上昇基調、近傍同種賃料との乖離、設備更新による居住性の向上などを増額理由に挙げました。

これに対し、賃借人は、固定資産税は増えていないこと、賃貸人の挙げる平均賃料は新築物件を含んでおり比較対象として不適切であること、建物には用途変更や増築の建築確認を経ていないことによる建築基準法違反(避難経路の不備、容積率超過など)があり安全性が低下していること、さらに賃料算定の前提となる床面積は契約書記載の63.20㎡であるべきことなどを主張しました。

裁判所の判断① 鑑定の合理性

裁判所は、本件建物の固定資産税等は直近合意時点から むしろ漸減していた ことを認めました。

そのうえで、鑑定がスライド法で用いた変動率(1.124)について、別途認定した東京都区部の分譲マンション平均賃料の上昇(平成25年比で約1.244倍)や実質GDPの上昇(約1.047倍)と大幅な乖離がなく、検討の対象とした指標にも多角性が認められるとして、 鑑定の合理性を肯定 しました。

本件で裁判所は、自ら相当賃料額を算出したのではなく、鑑定が直近合意時点から増額請求時までの経済事情の変動と近傍同種賃料の状況を適正に考慮しているかを検証する形で結論に至っています。

裁判所の判断② 建築基準法違反の主張について

裁判所は、賃料増減額請求の制度が事情変更による不公平の是正を趣旨とし、一方当事者の意思表示に特別の拘束力を認めるものであることから、 直近合意時から変更がなく、当事者が知らなかったにすぎない事情 は、特段の事情がない限り、借地借家法32条1項の「その他の経済事情の変動」には当たらず、増額を妨げる事情にもならないと判断しました。

そして本件では、賃借人が賃借にあたり災害発生時の安全性や容積率等の規制に具体的な関心を有していたことはうかがわれないとして、 「特段の事情」を否定 しています。裏を返せば、契約時にそうした点に関心を示していた事情があれば、結論が変わる余地があるということです。

なお裁判所は、法令違反の存否そのものは 「その存否を判断するまでもなく」 増額請求の当否を左右しないとしており、違法建築であると認定したわけではありません。

もっとも、違法の可能性は鑑定上の減価要因としては考慮されています。具体的には、差額配分法の比準賃料の査定にあたり、不特定多数が出入りする事務所ビル内にあること、旧耐震基準の建物であること、法令違反の可能性があることを踏まえて 5%の減価 が施され、加えて建付減価に取壊費用相当分が織り込まれました。

裁判所の判断③ その他の主張について

賃借人の「経年劣化」の主張については、居住性に影響を及ぼす設備が増額請求の直前に更新されていることから、 増額請求の妨げとなるような経年劣化は認められない とされました。設備更新は、増額を積極的に基礎づけるというより、賃借人の減価主張を封じる事情として働いています。

室内の異音・振動については、直近合意時点に存在し、かつ賃料の合意において考慮済みの事情であるとして、増額の妨げにならないとされました。

また、賃借人が「米ドル換算での国内総生産は減少している」と主張した点について、裁判所は 他国通貨を基準とした評価は国内の経済情勢の変動と必ずしも連動しない として、32条1項の「その他の経済事情の変動」として適切でないと判断しています。

結論

裁判所は鑑定どおり、 月額15万1500円への増額 を認め、請求は全部認容されました。

あわせて、借地借家法32条2項に基づき、令和5年7月分から口頭弁論終結時までの差額31万4617円と、各月の差額に対する年1割の利息の支払も命じられています。

この裁判例のポイント

この裁判例は、固定資産税等が増加していない場合でも、 周辺賃料の上昇や経済指標の変化 によって賃料増額が認められ得ることを示しています。

また、建物の安全性や違法性に関する事情であっても、それが直近合意時点から存在していた事情であり、その後に新たに発生した事情変更とはいえない場合には、賃料増額を当然に妨げるものではない、という判断枠組みが示されています。もっとも、それは賃料の額の算定においておよそ考慮されないという意味ではなく、鑑定上は数%程度の減価として反映されています。

加えて、増額請求を受けた賃借人にとっては、 争って認められなかった場合、確定後に不足額へ年1割の利息が付く という本件の帰結も重要です。争うかどうかは、この負担も踏まえて判断する必要があります。

2 物価・サービス価格の指数 ~ 中核データ

よく使われるのは、消費者物価指数(CPI)、企業向けサービス価格指数(CSPI、特に「不動産賃貸」、「店舗賃貸」、「倉庫賃貸」といった用途別の細分類)、国内企業物価指数、GDP関連の指標です。

賃料そのものの動きを示す指数(CSPIの用途別細分類)は、説得力をもって扱われやすい傾向があります。

これに対し、「自社の業績」のような個別事情は、原則としてこの枠組みに持ち込めません。

裁判例③

加須市の倉庫の賃料増額請求

東京地裁令和6年2月20日判決(令和4年(ワ)第6349号)
事案の概要

賃貸人である不動産会社が、倉庫として土地建物を借りる賃借人(運送業の持株会社)に対し、賃料を月額390万円(消費税別)から月額約469万円(消費税別)に増額することの確認等を求めた事案です。

直近合意時点は平成21年3月1日であり、賃貸人は、契約から十数年が経過する中で、近傍の賃料相場が大きく上昇したにもかかわらず、賃料が据え置かれてきたと主張しました。なお、現在の賃貸人は平成31年に本件物件を購入して賃貸人たる地位を承継した会社です。

調停が不成立に終わった後に提訴され、訴訟では、賃貸人・賃借人双方の私的鑑定に加えて、裁判所が選任した中立の鑑定人による鑑定が実施されています。

裁判所の判断

裁判所は、直近合意時点から増額請求時までの間に、消費者物価指数(CPI)が3.4%、企業向けサービス価格指数(CSPI)の「不動産賃貸・倉庫賃貸」が9.1%、市街地価格指数(埼玉県・工業地)が11.9%、基準地価格が14.2%上昇していたことなどを重視しました。

その結果、 賃料増額事由が存在する と判断しています。

特に注目されるのは、 倉庫賃貸に関するCSPIが、一般物価指数(CPI)より大きく上昇していた点 です。裁判所は一般的な物価だけではなく、 当該用途に対応した賃料関連指数も重視していることがうかがえます。

鑑定結果と結論

裁判所は、中立の鑑定人による鑑定を採用し、 3つの鑑定手法を組み合わせて算定された 月額399万円(消費税別) を相当賃料と認定しました。従前賃料390万円(消費税別)からの増額率は約2.3%にとどまります。

これにより、税込では月額438万9000円となり、月額約469万円を求めた増額請求は一部認容にとどまりました。訴訟費用も10分の9を賃貸人が負担しています。あわせて、借地借家法32条2項に基づき、差額128万7000円と年1割の利息の支払が命じられました。

この鑑定では、建物に存在した雨漏り、トイレの不具合、水道水の白濁、天井板の剥がれといった問題も検討され、 早急に修繕が必要な箇所が長く放置され、賃貸人による管理の状態は劣る と評価されました。これは比準賃料の減価要因として反映されただけでなく、 差額配分法における賃貸人への配分率が、通常の2分の1ではなく40%に引き下げられる 形でも反映されています。

鑑定への反論とその限界

賃貸人は、裁判所鑑定に対し、比較事例の規模が小さすぎること、建物品等の補正と格差修正で二重に減価していること、20%の減価率やスライド法の20%補正に根拠がないこと、配分率40%が不合理であることなど、多岐にわたる批判を行いました。

しかし裁判所は、二重減価の主張について、建物品等の補正は「不具合のない状態を前提とした事例との品等差」、格差修正は「現に存在する雨漏り等の個別要因による減価」であって 性質の異なるものだ と整理し、これを排斥しました。

その他の批判についても、 賃料の査定には多くの裁量的な要素が働くことは避けられず、裁判所が選任した中立の鑑定人が採用した数値等は、明らかに裁量の範囲を逸脱するものでない限り尊重すべき であるとして、いずれも採用されませんでした。

また、賃貸人が「雨漏りは修繕済みで、その後は発生していない」と反論した点についても、裁判所は、 鑑定はあくまで価格時点(増額請求時)の状態を評価するものであるから、その後の事情は鑑定の合理性を左右しない として排斥しています。基準時のルールは、賃借人だけでなく賃貸人にも同じように働くことが分かります。

この裁判例のポイント

この裁判例は、賃料増減額請求において、 一般的な物価指数だけでなく、対象用途に対応した賃料指数(CSPI)や地価指数が重視される ことを示しています。

また、裁判所鑑定では市場動向だけでなく、 建物の管理状態や修繕の必要性といった個別事情も減価要因として評価される 点が重要です。本件では、それが減価にとどまらず配分率にまで影響しており、管理不全は賃借人にとって有力な反論材料になり得ます。

さらに本件で注目されるのは、賃借人の私的鑑定について、裁判所が 「特段の不合理な点は見当たらず、裁判所の鑑定が実施されていなければ十分に採用の余地のあるもの」 と述べながら、裁判所鑑定が実施済みである以上は採用しないとした点です。

裁判所鑑定が入る前の段階で、前提となる事実や資料をどれだけ整えられるかが勝負どころであることを、端的に物語る判示といえます。

裁判例④

大田区の大型店舗(スーパー)事件

東京地裁令和7年3月12日判決(令和4年(ワ)第21548号)
事案の概要

賃貸人である建物所有会社が、スーパーマーケット等をチェーン展開するグループの持株会社(賃借人)に対し、店舗建物の賃料増額の確認等を求めた事案です。

本件では、平成10年の契約開始以降、賃借人の営業不振や赤字経営などを理由として、5回にわたり合意により賃料が減額されてきました。当初月額約2404万円であった賃料は、直近合意時点である平成30年8月1日には月額約1956万円(消費税別)まで下がっていました。

賃貸人は、賃借人の業績が改善していることや土地評価額の上昇を理由として、令和3年11月分以降の賃料を月額2772万円に増額する旨を通知しました。調停が不成立に終わった後、訴訟では、裁判所鑑定と同額の月額2150万円(消費税別)の確認と、差額分および借地借家法32条2項所定の年1割の利息の支払を求めています。

当事者の主張

賃借人は増額を争うとともに、適正賃料はむしろ現行賃料より低いと主張しました。

特に、 自店舗の売上高の推移やショッピングセンターの坪効率 をスライド法の変動率に反映すべきであること、鑑定で用いられた取引事例が古いこと、駐車場部分の評価が過大であることなど、多方面から裁判所鑑定の妥当性を争いました。

さらに、裁判所鑑定が差額配分法による試算賃料のみを採用し、利回り法・スライド法による試算賃料を用いなかった点についても、直近合意時点より前の減額の経緯を過度に考慮したものであるとして争っています。

裁判所の判断① 店舗の売上高について

裁判所は、本件では賃借人の減額要請に応じる形で5回の賃料減額が行われてきた経緯があることから、 従前の賃料合意には、すでに店舗売上の推移が一定程度反映されている と指摘しました。

加えて、賃借人側の鑑定が用いた売上高のデータは賃借人が開示した内部資料であって客観的正確性が担保されたものか不明であること、店舗の売上高は経営努力等の影響を受ける個別性の強い数値であることも挙げています。

そのうえで、直近合意時点と価格時点との間の客観的な経済情勢の変化を反映させる手法であるスライド法において、店舗売上そのものを反映させなかったとしても、その試算が合理性・信頼性を欠くことにはならないと判断しました。

また、賃借人が採用すべきと主張した「ショッピングセンター坪効率」の指数についても、データ提供元が定める「ショッピングセンター」の定義(キーテナントを除くテナントが10店舗以上あること等)を本件店舗が満たしていないことを理由に、これを考慮しなかったことは不合理でないとしています。

裁判所の判断② 鑑定の細部への批判について

賃借人による取引事例の選定、公示地価の標準化補正、地域格差修正、駐車場部分の評価等に関する批判については、 いずれも不動産鑑定士の専門的知見に基づく合理的な判断の範囲内 であるとして、採用されませんでした。

たとえば駐車場部分について、賃借人は「4階と屋上は閉鎖されており駐車場ニーズは減少している」「同一エリアの月極駐車場の相場より高額だ」と主張しましたが、裁判所は、商業施設の駐車場は来店客の利便性のために店舗と一体的に利用されるもので、賃料収入を目的とする月極駐車場とは性格が異なること、閉鎖部分も直ちに使用可能な状態にあることを理由に、鑑定の判断に裁量の逸脱はないとしています。

裁判所の判断③ 鑑定の手法選択・ウエイト配分について

他方で、裁判所は、裁判所鑑定の手法選択そのものには修正を加えました。

裁判所鑑定は、「本件の争いの本質は、直近合意時点からの3年間の事情変更ではなく、平成10年から平成30年までの5回の減額により現行賃料が不相当となったか否かにある」として、差額配分法のみが本件に適した手法であるとし、利回り法・スライド法による試算賃料を参考にとどめて鑑定評価額(月額2150万円)を決定していました。

これに対し裁判所は、直近合意時点に争いのない本件において、 直近合意時点よりも前の過去の減額の相当性を殊更に考慮するのは妥当とはいえない と述べました。

そのうえで、賃料変更合意の経緯を踏まえて差額配分法を重視すること自体は不合理ではないとしつつ、利回り法とスライド法による試算賃料も 一定の規範性は有するのであるから、全く考慮しないのは妥当ではない と判断しています。

結論

裁判所は、裁判所鑑定の各試算賃料を前提としつつ、そのウエイト配分を自ら 差額配分法60%・利回り法20%・スライド法20% に修正して加重平均し、月額実質賃料を2094万円と算定しました。

ここから敷金の運用益(月額18万4860円)を控除して、 月額2075万5000円(消費税別) を相当賃料として認定しています。

その結果、月額2150万円の確認を求めた賃料増額請求は一部認容にとどまりました。あわせて、令和3年11月分から令和6年11月分までの37か月分の差額として、借地借家法32条2項に基づき、4839万1649円および年1割の割合による利息の支払が命じられています。

この裁判例のポイント

この裁判例は、 賃借人の売上高や業績といった個別事情は、スライド法の変動率には反映されにくい ことを示しています。もっとも、その理由は「無関係だから」ではなく、従前の賃料合意にすでに織り込まれているから二重に持ち込まない、という点にあります。

裁判所が重視するのは、地価や物価、賃料指数などの客観的な経済事情の変化です。なお、統計指標を持ち出す場合には、その指標の定義に対象物件が当てはまるかまで問われる点にも注意が必要です。

また、裁判所鑑定への反論の「効きどころ」がよく分かる事案でもあります。取引事例の選定や個別の補正値といった 細部への批判はほとんど通らない 一方で、どの手法をどの重みで採用するかという 鑑定の枠組みに関わる部分については、裁判所が自ら修正を加える ことがあります。実際、本件では鑑定額2150万円が2075万5000円へと引き下げられました。

さらに、賃貸人が請求した2150万円のうち認められたのは約6割にとどまり、訴訟費用も10分の2を賃貸人が負担しています。裁判所鑑定と同額を請求しても、そのまま認められるとは限らない点は、増額を検討する際に踏まえておくべきです。

3 地価関連指標 ~ 地価そのものと「固定資産評価額」は別物

土地の価格動向も主要な指標となり、公示地価・基準地価格(地価調査)・相続税路線価・市街地価格指数などがあります。

ただし、固定資産税評価額が上がったことが、そのまま地価上昇=増額の根拠にできるとは限りません。

固定資産税には3年に一度の評価替えや負担調整制度があり、現実の地価とずれた動きをすることがあるためです。

前掲の給油所事件(裁判例①)では、賃借人側の鑑定がスライド法の変動率にビルの公租公課納付額を用いたのに対し、賃貸人側が「負担調整制度により現実の土地価格とは異なる変動率が示される」と批判し、その根拠として、ビル敷地の固定資産評価額が約25%上昇しているのに税額は変動していないことを挙げました。

しかし裁判所は、その時期にちょうど3年に一度の評価替えがあったこと、同時期の近隣の公示地価・地価調査価格・路線価がいずれもマイナス2.5〜3.0%程度だったことを指摘し、むしろ固定資産評価額の上昇のほうが土地価格の変動を正しく反映していないと述べています。

評価額の上昇を増額根拠とする場合、公示地価等と突き合わせられて否定されるおそれがあることに注意が必要です。

4 近傍同種・新規(募集)賃料 ~ 「同種かどうか」が最大の争点

近傍同種の建物の賃料相場との関係は、重要な指標になります。

しかし決定的に重要なのは、「本当に同種・同条件の物件か」という点です。

賃貸人は、用途・構造・築年数・最寄り駅からの距離・規模・契約条件(敷金・共益費・更新料)が本当に近い物件を選ぶ必要があります。

裁判例⑤

千代田区のスポーツスクール用建物の賃料増額

東京地裁令和5年7月24日判決(令和4年(ワ)第4037号ほか)
事案の概要

賃貸人である不動産会社が、スポーツスクールを運営する賃借人に対し、建物賃料を月額157万5000円(消費税別)から月額約185万9000円(消費税別)へ増額することの確認等を求めた事案です。

直近合意時点は平成27年8月31日であり、その後の地価や公租公課の上昇などを理由として、令和3年8月に賃貸人が賃料増額を請求しました。調停が不成立に終わった後、訴訟に移行しています。

当事者の主張

賃貸人は、増額の根拠として、固定資産税評価額の上昇(約3.6億円→約4.5億円)、相続税路線価の上昇(1㎡あたり130万円→163万円)、公租公課の増加、そして近傍同種の実質賃料単価との乖離を挙げました。

具体的には、近傍同種物件の平均実質賃料単価が1㎡あたり5820円であるのに対し、本件は4565円であり、不相当に低いと主張しました。

これに対し賃借人は、賃貸人が比較対象としている物件は一般的なオフィスビルであり、本件建物は中二階付きのメゾネットタイプで天井が高く、オフィス利用に適さない特殊な建物であることから、「同種物件」とはいえないと反論しました。

また、賃貸人による管理が不十分であり、台風時の浸水や地震後のエレベーター停止に十分対応しなかったこと、さらに多額の内装工事費を賃借人が負担していることなども主張しました。

裁判所の判断① 事情変更の有無

裁判所は、最高裁平成20年2月29日判決を引用して判断枠組みを示したうえで、直近合意以降、土地建物価格や公租公課が上昇していること、さらに麹町・番町エリアの小型ビルの募集賃料が上昇していることなどから、 賃料増額を基礎付ける事情変更が存在する と判断しました。

そのうえで、裁判所が選任した鑑定人による鑑定を採用しています。この鑑定は、差額配分法(178万2000円)を0.5、利回り法(191万5000円)を0.1、スライド法(179万5000円)を0.4のウエイトで加重平均するものでした。

注目されるのは、当事者双方が提出した私的鑑定について、裁判所が 「中立性に疑問を差し挟む余地のあるもの」 として、いずれも採用しなかった点です。

裁判所の判断② 双方からの鑑定批判

本件では、鑑定が用いた 10%の観察減価を、賃貸人と賃借人が逆方向から攻撃 しています。

賃貸人は「築年数の経過は耐用年数に基づく減価で評価済みであり二重減価だ、賃借人側の鑑定でさえ5%だ」として過大だと主張しました。これに対し裁判所は、10%の観察減価はデザインや意匠、設備、水漏れ(跡)といった劣化を考慮したもので、耐用年数減価と重複するものではないとして排斥しています。

他方、賃借人は管理のずさんさを理由に、さらなる減価をすべきだと主張しました。裁判所は、証拠上そうした問題点があったことはうかがわれるとしつつ、 基本的には一時的な問題であって営業への支障が常時存在し続けていたわけではない として、10%を超える追加の観察減価までは認めませんでした。

同じ数値が双方から逆向きに争われ、いずれも通らなかったという結果は、裁判所鑑定の判断がいかに尊重されるかを端的に示しています。

裁判所の判断③ 内装工事費の扱い

賃借人が負担した内装工事費(螺旋階段の設置、水回りの交換など)については、 スポーツスクールという賃借人の望む事業を開始するための通常のテナント負担工事 であるとして、賃料の減額査定の理由にはならないと判断されました。

もっとも、賃貸人から現状引渡しであった1階を通常のスケルトン状態にするために賃借人が負担した工事費(38万円)については、賃貸人がその費用負担を免れていること、賃借人は退去時にスケルトン状態で明け渡す義務を負うことから、実質的に賃貸人の経済的利益になるものとして、想定賃貸期間20年で除した月額1万9000円が賃料から控除されています。

結論

裁判所は、裁判所鑑定を採用し、月額170万3000円(消費税別)を相当賃料と認定しました。従前賃料157万5000円からの増額率は約8.1%です。

月額約185万9000円を求めた増額請求は一部認容にとどまり、訴訟費用も5分の2を賃貸人が負担しています。

この裁判例のポイント

この裁判例は、 路線価・固定資産税評価額・近傍賃料 が、実際に賃貸人側から増額根拠として主張された典型例です。

もっとも、裁判所はそれらの数値をそのまま採用したわけではなく、最終的には裁判所鑑定を通じて総合評価しています。

また、近傍賃料を用いる場合には、 本当に「同種」の物件といえるのか が重要な争点となることも示しています。

さらに、建物管理の不備や内装工事費などの個別事情についても、一定の考慮はされるものの、直ちに大幅な減価要因となるわけではありません。工事費については、 自社の事業のために行った工事か、賃貸人の利益になる工事か という区別が判断を分けています。

賃料増減額事件では、路線価や固定資産税評価額だけで結論が決まるのではなく、それらを含む多くの事情を裁判所鑑定がどのように評価するかが重要であることを示す裁判例といえます。

5 建物固有の事情(老朽化・要修繕・管理不全)――賃借人の最大の武器

「物件そのものの状態」は、賃借人にとって最も有効な反論材料になり得ます。

具体的には、建物の老朽化・要修繕箇所・管理状況の不良は、鑑定上、賃料を引き下げる方向に働きます。

ただし、増額(減額)請求された時点より後に生じた不具合は反映されません(鑑定は請求時点の状態を評価するため)。

また、直近合意時点から変わっていない事情・賃借人が承知していた事情は効きにくいです。

逆に賃貸人は、設備更新・修繕の記録を増額請求の時点までに揃えておくことが、減価主張への有力な反論になります。

裁判例における現れ方

前掲の加須市の倉庫事件(裁判例③)では、裁判所鑑定が、トイレの改修・水道水の白濁・雨漏り・天井板の剥がれなど早急に修繕が必要な箇所が長く放置され、賃貸人による管理状態が劣るとして、減価を施し、配分も賃貸人に不利に調整しました。

ただし、鑑定後に給水ポンプが故障したという主張については、増額請求時点より後の事象であるとして考慮の外に置かれています。

前掲のスポーツスクール事件(裁判例⑤)では、賃借人の指摘した管理の問題点(浸水・エレベーター停止への未対応など)は一定程度認められましたが、一時的な問題にとどまるとして、鑑定の観察減価を超える追加の減額までは認められませんでした。

第3 各当事者(賃貸人・賃借人)は何を準備すべきか?

1 賃貸人の準備指針 ~ 「何を根拠に増額を主張するか」

増額を求める賃貸人が集めるべき材料です。

  • 直近合意時点以降の地価動向
    公示地価・基準地価格・地価調査・市街地価格指数の推移。
    固定資産評価額や路線価のみならず、市場価格に近い指標で裏づけましょう。
  • 賃料系・物価系の客観的指数
    企業向けサービス価格指数の用途別細分類(不動産賃貸・店舗賃貸・倉庫賃貸など)、消費者物価指数、国内企業物価指数、GDP関連。
    賃料に直結する指数ほど説得力が増します。
  • 同種・同条件の近傍賃料
    用途・築年・規模・条件をそろえた成約・募集事例。
    違う用途の相場を並べないようにします。
  • 公租公課の推移
    固定資産税・都市計画税の負担増があれば加えます(ただし、これがなくても他の事情で増額はあり得る)。
  • 物件価値を維持・向上させた事実
    設備更新・修繕・リノベーションを行った事実があれば主張します。
    減価主張への防御にもなります。

2 賃借人の反論指針 ~ 「何を集めて過大請求を防ぐか」

増額請求を受けた賃借人が、「これは仕方ない」と判断する材料と、「過大だ」と反論する材料となります。

  • 乖離・安さは直近合意時点からあったものか
    合意時点で当事者が承知していた乖離は、変動の対象外です。
    「相場より安い」という主張を崩せる可能性があります。
  • 建物の状態(直近合意時点)
    老朽化・要修繕箇所・管理不全の証拠があれば準備します。
    賃料を抑える方向に働きます。ただし増額請求された時点より後の不具合は効きません。
  • 比較事例の非同種性
    賃貸人の挙げる近傍賃料が、用途・築年・条件の違う物件かどうか。
  • 指数の取捨選択への反論
    客観的指数の選び方・読み方の不当性を指摘します(但し、自社の業績悪化などの個別事情は評価されにくいです)。
  • 公租公課の不増加・地価の下落
    固定資産評価額の上昇は評価替えや負担調整制度による見かけのものではないか。
    実際の公示地価・路線価は下落していないか。

3 裁判所鑑定への反論には「限界」がある

賃料の査定には、多くの裁量的な要素が関係してきます。

そのため裁判所は、取引事例の選び方や各種の補正(修正)について、「不動産鑑定士の専門的な知見に委ねるべきであり、明らかな間違いがない限りはその判断を尊重する」という姿勢を一貫してとっています。

つまり、賃料の増減額をめぐる裁判では、提出された公的鑑定を後からひっくり返すことは、極めて困難です。

勝負の分かれ目は、裁判所の鑑定が行われる前に「どのような前提事実や資料を、裁判所と鑑定人に漏れなく届けられるか」にかかっています。

第4 よくいただくご質問

今の賃料が相場よりかなり安いのですが、相場水準まで増額できますか?

相場より安いという理由だけでは、増額できません。
もっとも、直近合意以降の事情変更が認められれば、相場との乖離も踏まえた増額が認められることがあります。
借地借家法32条1項は、単に現行賃料を市場賃料(新規賃料)の水準へ引き直す制度ではありません。
裁判所が見るのは直近合意以降の事情変更であり、物価水準等に完全に連動した賃料変化ではないからです。

固定資産税が上がっていなくても、賃料の増額は認められますか?

認められる場合があります。
公租公課は重要な事情ですが、それだけで決まるわけではありません。
固定資産税が減っていても、周辺賃料の上昇や経済指標の変動を理由に増額が認められた裁判例があります。

固定資産税評価額や路線価が上がっていれば、それだけで増額の根拠になりますか?

そのまま根拠にできるとは限りません。
固定資産税評価額は3年に一度の評価替えや負担調整制度があり、市場価格そのものを示すものでなく、実際の地価とずれることがあるためです。
公示地価・基準地価格など、市場価格に近い指標で裏づけることが重要です。

(賃借人)自社の売上や業績の悪化を理由に、賃料の減額を求められますか?

原則として持ち込みにくいです。
裁判所が見るのは地価・物価・賃料指数などの客観的な経済事情の変化であり、個別企業の業績そのものではありません。

建物が古く不具合もあります。据え置きや減額の理由になりますか?

建物の老朽化・要修繕・管理不全は、賃借人にとって有効な反論材料になり得ます。
ただし、請求時点より後に生じた不具合は反映されず、直近合意時点から変わっていない事情は、原則として事情変更には当たりません。
なお、もっとも、鑑定評価の個別修正要因として考慮されることがあります。

増額(または減額)を主張するために、まず何を準備すればよいですか?

賃貸人側は、地価動向・賃料/物価指数(特にCSPIの用途別細分類)・同種の近傍賃料・公租公課の推移・修繕記録などです。
賃借人側は、安さが直近合意時点からあったのか・建物の状態・同種の近傍資料などを検討します。

裁判所の鑑定結果が出たら、もう結論は覆せないのでしょうか?

明らかな誤りがない限り、裁判所は鑑定を尊重する傾向があります。
そのため、勝負どころは、鑑定前に前提事実と資料をどれだけ漏れなく届けられるかにあると言っても過言ではありません。

第5 賃料の増額・減額の問題を専門家(弁護士)に相談する

1 まとめ

直近合意時点が決着した後、裁判所が賃料を動かす事情として実際に見ているのは、整理すると次のとおりです。

  • 起点は「直近合意賃料」 賃料増減額請求では、新規賃料へ単純に引き直すのではなく、 直近合意時点からどのような事情変更があったか を見ることになります。
    見るべき中心は「合意後の変化」です。
  • 重視される客観資料 判断を動かす事情としては、地価動向(公示地価・基準地・市街地価格指数)、 賃料・物価の各種指数、特にCSPIの用途別細分類、公租公課、真に同種といえる近傍賃料、 そして建物固有の状態、すなわち老朽化・修繕・管理状況などが重要になります。
  • 賃貸人側・賃借人側の実務上の勝負どころ 賃貸人側は、市場に近い客観指標を積み上げることが重要です。 他方、賃借人側は、価格時点における建物状態や、 賃貸人が示す比較事例が本当に同種といえるのかという 比較事例の非同種性 を丁寧に検討することが有効です。
  • 個別事情は通りにくい 自社の業績などの個別事情は、客観的経済情勢を見る賃料増減額の枠組みでは、 そのままでは通りにくい傾向があります。大型店舗事件からも、 賃料増減額の判断では、当事者固有の事情よりも、 客観的な経済事情・不動産市場の変化 が重視されることが分かります。
  • 裁判所鑑定への向き合い方 最終的な結論を支えるのは、中立的な裁判所鑑定であることが多く、 鑑定結果の細部を後から攻撃することには限界があります。 そのため、実務上は、鑑定に入る前の段階で、 前提事実と提出資料をどれだけ整えられるか が勝負どころになります。

賃料増減額請求は、「現在の相場はいくらか」を争う裁判ではありません。

「直近合意時点から何が変わったのか」を、客観的資料と不動産鑑定によって立証する裁判です。

この視点を理解して資料を準備することが、賃貸人・賃借人のいずれにとっても最も重要です。

2 当事務所の弁護士費用

初回法律相談料
60分 2万2,000円(税込)
賃料増減額請求
手続 着手金(税込) 報酬金(税込)
交渉・調停 33万円~ 経済的利益の11%+22万円
訴訟 44万円~ 経済的利益の11%+22万円

※経済的利益は、原則として認められた月額増減額×12か月×7年として算定します。

※報酬金の最低額は33万円(税込)とします。

債権回収の着手金

当事務所では、顧問契約をご利用いただく事業者様と、 債権回収を個別にご依頼いただく場合とで、着手金を分けて設定しています。 任意交渉・第一審訴訟については、下記金額を最低着手金とし、 請求額が500万円を超える場合には、請求額に応じた加算があります。

RETAINER CLIENT

顧問契約あり

顧問契約をご利用いただく事業者様向けの料金です。

任意交渉 最低着手金 220,000円
第一審訴訟 最低着手金 440,000円
任意交渉から訴訟へ移行 追加220,000円~
仮差押え 220,000円~
強制執行 220,000円~
SPOT REQUEST

顧問契約なし

債権回収を個別案件としてご依頼いただく場合の料金です。

任意交渉 最低着手金 440,000円
第一審訴訟 最低着手金 660,000円
任意交渉から訴訟へ移行 追加220,000円~
仮差押え 220,000円~
強制執行 220,000円~

※「顧問契約あり」の料金は、既に当事務所と顧問契約を締結している事業者様のほか、 債権回収のご依頼と同時に顧問契約を開始する事業者様にも適用します。

請求額が500万円を超える場合

任意交渉・第一審訴訟の着手金は、上記金額を最低額とします。 請求額が500万円を超える場合には、500万円を超える部分について、 以下の割合を最低着手金に加算します。

顧問契約あり
500万円を超える部分 × 4.4%
顧問契約なし
500万円を超える部分 × 5.5%

※任意交渉から訴訟へ移行する場合、500万円を超える部分に対する上記加算を 重ねて計上するものではありません。 訴訟移行時には、上表記載の追加着手金を頂戴します。

着手金の計算例
例1 請求額1,000万円を任意交渉で請求する場合
顧問契約あり
220,000円 +(1,000万円-500万円)× 4.4%
着手金 440,000円(税込)
顧問契約なし
440,000円 +(1,000万円-500万円)× 5.5%
着手金 715,000円(税込)
例2 請求額2,000万円について第一審訴訟を提起する場合
顧問契約あり
440,000円 +(2,000万円-500万円)× 4.4%
着手金 1,100,000円(税込)
顧問契約なし
660,000円 +(2,000万円-500万円)× 5.5%
着手金 1,485,000円(税込)

※上記金額はいずれも税込です。 事案の内容、相手方の数、争点の複雑さその他の事情により、 着手金を増額する場合があります。 その場合には、ご依頼前に具体的な費用をご説明します。

成功報酬

成功報酬は、請求額や判決で認められた金額ではなく、 実際に相手方から回収できた金額を基準として算定します。 回収額が高額になるほど、適用される料率が段階的に低くなる料金体系としています。

SUCCESS FEE
実際の回収額に応じて成功報酬を算定します

成功報酬は、顧問契約の有無にかかわらず共通です。 一部のみ回収できた場合には、その実回収額のみを基準として算定します。

実際の回収額 成功報酬(税込)
300万円以下 回収額の17.6%
300万円超~3,000万円以下 回収額の11%+198,000円
3,000万円超~3億円以下 回収額の6.6%+1,518,000円
3億円超 回収額の4.4%+8,118,000円
成功報酬の計算例
1,000万円を回収できた場合
1,000万円 × 11% + 198,000円
1,298,000円(税込)
2,000万円を回収できた場合
2,000万円 × 11% + 198,000円
2,398,000円(税込)
回収できなかった場合
実際の回収額が0円の場合、成功報酬は発生しません。 一部のみ回収できた場合には、実際に回収した金額を基準として成功報酬を算定します。

※上記成功報酬は、金銭の回収を前提とした料金です。 和解その他の方法により金銭の回収以外の経済的利益を得た場合には、 その内容を踏まえて報酬額を協議させていただく場合があります。

3 ご不安な方へ|よくいただくご質問

まだ大きなトラブルになっていません。「ちょっと怖い・おかしい」程度の不安や違和感でも相談してよいですか?

もちろんです。
不動産トラブルは、初期対応が非常に重要です。
契約内容の確認や、相手方への最初の通知(内容証明郵便など)を法的に正しく行うことで、被害の拡大を防ぎ、有利に交渉を進められる可能性が高まります。
「不安」・「違和感」の段階でご相談いただくのがベストタイミングです。

相談料はいくらかかりますか?

初回相談料として、1時間以内:2万2,000円を頂いております。
以降、30分以内の延長ごとに1万1,000円を頂いております。

弁護士費用規定を見ても、よく分かりません。

ご安心ください。
ご相談の際に、事案の内容をうかがった上で、着手金や報酬金について明確なお見積もりをご提示します。
ご納得いただいてから契約となりますので、予測不能な費用が出る心配はありません。

相談方法を教えてください。

以下のいずれかの方法でご相談を承っております。

  • オンライン相談(Google Meetなどを利用します)
  • ご来所による対面相談

※正確な状況をお伺いするため、恐れ入りますが、お電話やメールのみでのご相談は承っておりません。

オンライン相談が可能とのことですが、遠方(地方)からの相談も対応していますか?

はい、もちろんです。
当事務所はGoogleMeetなどのオンラインツールを最大限活用し、全国の不動産売買トラブルに対応しております。

これまでにも、北は札幌市から、南は那覇市や宮古島市まで、遠方のお客様からのご相談・ご依頼実績がございます。
お住まいの地域にかかわらず、専門家による法務サポートを提供いたしますので、どうぞ安心してご相談ください。

相手(売主・買主・不動産会社)と直接話したくありません。弁護士に全て任せられますか?

はい、お任せください。
弁護士がご依頼者様の代理人となると、相手方との交渉窓口はすべて弁護士になります(受任通知を送付します)。
相手方からの連絡にストレスを感じることなく、法的な手続きを進めることができます。

相談の際、どのような資料を準備すればよいですか?

必須ではありませんが、以下の資料をお持ちいただくと相談がスムーズです。

  • 契約書(売買・賃貸借)
  • 重要事項説明書
  • 物件の図面、パンフレット
  • トラブルの内容がわかるもの(写真、メール、相手方からの通知書など)
  • 経緯をまとめたメモ(時系列で何があったか)

不動産業を営んでいます。 不動産実務に詳しい顧問弁護士を探しています。
どのようなサービス(プラン)がありますか?

当事務所は、不動産業者様向けの顧問サービスに特に力を入れております。
日々の契約書チェックやクレームの初期対応など、貴社のリスク管理を法務面からサポートします。

顧問サービスは、以下のメニューをご用意しております。
プランに関するご相談やお見積もりは無料ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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※債権回収その他、分野ごとに顧問先向け料金を定めている事件については、 各分野の料金表を適用します。

4 お気軽にご相談ください【お問い合わせフォーム】

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弁護士紹介

弁護士 岩﨑孝太郎
弁護士
岩﨑 孝太郎
  • 1981年生まれ
  • 1997年文京区立第十中学校卒業
  • 2000年私立巣鴨高校卒業
  • 2006年東京大学教育学部卒業
  • 2008年東京都立大学法科大学院卒業
  • 2009年弁護士登録
  • 2024年文の風東京法律事務所を開設
弁護士 小川弘義
弁護士
小川 弘義
  • 1985年生まれ
  • 2004年神奈川県立横浜翠嵐高校卒業
  • 2009年一橋大学法学部卒業
  • 2011年東京都立法科大学院卒業
  • 2012年弁護士登録
  • 2024年文の風東京法律事務所を開設

アクセス

文の風東京法律事務所
所在地 〒112-0004
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