裁判例を分析すると、裁判所は、建築基準法上の「大規模の修繕」に該当するかどうかといった物理的・法的な基準よりも、「建物の寿命(耐用年数)が伸長するか」、「正当事由に影響を及ぼすか」という全体考察(実質的な影響)を重視して判断していると結論付けることができます。
建築基準法などの物理的な内容は、重要な「判断要素」や「参考基準」ではありますが、それを絶対的な基本ラインとしているわけではありません。
この記事でより詳しく解説します。
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【増改築許可の申立:借地非訟】借地上建物の問題を弁護士が解説第1 対照的な裁判例の比較
1 物理的な構造変更があっても「改築」を否定したケース
建築基準法上の主要構造部(床や壁など)に物理的な変更を加えていても、建物の寿命が延びないと判断されれば「改築」は否定されています。
東京地裁令和4年2月15日判決
この事案では、ダムウェーター(昇降機)設置のための「床スラブの開口」や、サッシ設置のための「外壁の開口」が行われており、裁判所もこれらが「主要構造部分である床に変更を加える」、「主要構造部分である外壁に変更を加える」ものであると明確に認定しています。
しかし、裁判所は「本件建物の耐久性や存続期間に影響が生じたことを認めるに足りる証拠はなく」、「耐用年数を伸長し、賃貸人である原告に不利益を生じさせる工事であるとは考え難い」として、改築には当たらないと判断しました。
2 物理的な構造変更がなくても「改築」を肯定したケース
逆に、主要構造部(躯体)に一切手を入れていなかったり、建築基準法上の「大規模の修繕」に該当しなかったりしても、実質的に建物の価値や寿命が延びる場合は「改築」と認定されています。
東京地裁平成28年1月19日判決
裁判所は、「本件工事が大規模修繕ないし大規模な模様替えに当たるものと認めるに足る証拠はなく、建築基準法第6条1項違反を認めることはできない」と明確に判断しています。
つまり、建築基準法上の厳しい基準には該当しませんでした。
しかし、約5700万円をかけて老朽化した建物を全面的にリフォームする内容であったため、「建物の利用価値が相当程度向上する」、「解約申入れの正当事由に影響を及ぼす」という実質的な理由から、契約上の「改築又は増築」に当たると認定しました。
東京地裁平成24年1月13日判決
借地人側は「建物の骨組みである躯体部分には何ら手を加えるものではなかった」と主張し、建築士の報告書まで提出しました。
しかし裁判所は、築70〜80年が経過し老朽化した建物に470万円超をかけて居住可能な状態にする工事は、「残存耐用年数を相当程度伸長させるものであることは明らか」であるとして、躯体に手を入れていなくとも事前承諾を要する工事(改築等)に該当すると判断しました。
3 裁判所の判断を考察
上記の裁判例から裁判所の判断を分析すると、「実質的影響」を重視して判断していることがうかがえます。
裁判所が建築基準法などの基準よりも全体考察を重視する理由は、「増改築禁止特約」がそもそも何のために契約書に盛り込まれているのかという根本的な目的に立ち返って解釈しているためです。
裁判例においても、「増改築禁止特約は、建物の構造や現状等が借地法上の借地権の存続期間に影響し、解約申入れの正当事由の一資料になり得ることから、これらに影響を与えるような増改築を避ける趣旨で定められる」と明言されています 。
また、「建物の残存耐用年数の伸長の有無は、建物の所有を目的とする賃貸借契約において重要な利害を生じさせる」とも述べられています 。
裁判所の判断のまとめ
出発点
借地権の存続期間・正当事由に影響を及ぼすかどうかを重視しています。
物理的基準の扱い
建築基準法上の「大規模の修繕」に該当すれば、当然に寿命が延びると推認しやすいといえます。
しかし、それに該当しなくても、投資額や老朽化の回復度合いから見て寿命が延びるなら「改築」とします。
判定・結論
形式的な工事名や建築基準法上の分類ではなく、「Before/Afterで建物の寿命・経済的価値がどう変わったか」という経済的・実質的な全体考察によって決着をつけています。
第2 裁判例を概観する
1 「改築」の該当性が争われた裁判例
| 裁判所・判決日 | 工事内容と争点 | 裁判所の判断(該当性の理由) | 改築該当性 |
| 東京地裁 令和5年1月17日 | 外装塗装、エントランス位置変更、屋根材追加。 存続期間への影響が争点。 | 鉄筋コンクリート造の主要構造部を維持したままの仕上げ材追加であり、機能や美観の維持・保全の範囲であるため、耐用年数を伸長させない。 | × |
| 東京地裁 令和4年2月15日 | スケルトン工事、床スラブ開口、厨房かさ上げ等 。用途変更に伴う主要構造部への改変が争点。 | 床や外壁の一部に変更はあるが、建物の耐久性や存続期間に影響が生じたとは認められず、賃貸人に不利益を生じさせる工事とはいえない。 | × |
| 東京地裁 令和2年11月20日 | 浴室ユニットバス化、キッチン交換、内装刷新。 老朽化した建物の朽廃時期延長が争点。 | 構造耐力に関わる柱や壁に手を入れていない。 建物の一部取り壊しや建て直しには当たらず、耐用年数が大幅に延長された事実も認められない。 | × |
| 東京地裁 平成27年9月29日 | 屋根を瓦から鋼板に変更、外壁塗装、ベランダ改修。 | 屋根の葺き替えや塗装等は、直ちに「改築」とは認められない。 建物の維持管理のために必要な限度内の工事である。 | × |
| 東京地裁 平成28年3月18日 | 牛乳店→ラーメン店、ラーメン店→事務所への内装変更。 承諾を要する増改築該当性が争点 。 | 生コンを流し込む工程を含み、工事費が300万円を超える。 もはや単なる内装変更の域を止まらない増改築に該当する。 | 〇 |
| 東京地裁 平成28年1月19日 | 内部スケルトン化、給排水・電気・ガス設備の全面更新。 耐用年数延長の有無が争点。 | 約5700万円を投じた全面リフォームであり、建物の利用価値が相当程度向上する。 これは借地契約の解約申入れにおける「正当事由」に影響を及ぼす規模である。 | 〇 |
| 東京地裁 平成28年4月28日 | 屋根・外壁を剥がしての耐震ボード補強工事 。 賃貸人の承諾を要する「大修繕」か否かが争点。 | 外壁・屋根を張り直す大掛かりなもので、建築基準法上の「大規模の修繕」に該当する。 築50年超の建物の耐用年数が伸長されることが推認される。 ⇒建基法上の大規模修繕に該当することを一因として、耐用年数の伸長を認定しました。 | 〇 |
| 東京地裁 平成24年1月13日 | 天井・壁・床の張り替え、窓枠のアルミサッシ化。 老朽建物の耐用年数伸長が争点。 | 建築後70〜80年経過し、現状のままでは居住不能なほど老朽化した建物に対し、470万円超をかけて居住可能にすることは、残存耐用年数を相当程度伸長させる。 | 〇 |
※改築該当性が「〇」であっても、借地契約の解除が認められるとは限りません。
2 増改築と該当性と契約解除の問題
なお、「改築に該当する=即・契約解除」となるわけではありません。
賃貸借契約のような、当事者の信頼関係がベースにある継続的な契約では、「ルール違反があっても、それだけで関係を終わらせるのは行き過ぎ」という考え方が法律にあるからです。
これを「信頼関係破壊の法理」と呼びます。
そのため、増改築の特約に違反があったとしても、契約の解除まで認められるかは別判断となることに注意が必要です。
第3 借地権の法律トラブルを弁護士に相談する
1 増改築の争いは弁護士に相談する

借地上の増改築トラブルは、「建物の寿命が延びるか」といった実質的な判断が絡むため、専門知識がない状態での解決は困難です。
「この工事は許可が必要?」「無断で工事された場合はどうすればいい?」などのお悩みは、一人で抱え込まず弁護士にお任せください。
地主様・借地人様それぞれの立場に合わせて、法的な視点から適正な解決へ導きます。
2 当事務所の弁護士費用
交渉・訴訟の費用(目安)
| 経済的利益 | 着手金 | 報酬金 |
|---|---|---|
| 300万円 以下 | 最低33万円 | 17.6% |
| 300万円超 ~ 3000万円 以下 |
5.5% + 9.9万円 (最低33万円) |
11% + 19.8万円 |
| 3000万円超 ~ 3億円 以下 | 3.3% + 75.9万円 | 6.6% + 151.8万円 |
| 3億円 超 | 2.2% + 405.9万円 | 4.4% + 811.8万円 |
※報酬金の最低額は 11万円(税込)となります。
※総額の下限は、交渉44万円~、法的手続66万円~、となります。
借地非訟事件
| 立場・内容 | 着手金(税込) | 報酬金(税込) |
|---|---|---|
|
賃貸人 (地主側) |
44万円 | 承諾料の 11% |
|
賃貸人 (介入権行使する) |
44万円 | 借地権価格の 5.5% |
|
賃借人 (借地人側) |
44万円 | 借地権価格の 5.5% |
|
賃借人 (介入権行使される) |
44万円 | 介入権価格の 11% |
※但し、報酬金は最低 44万円(税込)からとなります。
地代の増減額請求
| 手続 | 着手金(税込) | 報酬金(税込) |
|---|---|---|
| 交渉・調停 | 33万円 ~ | 経済的利益の 11% |
| 訴訟 | 44万円 ~ | 経済的利益の 11% |
※但し、報酬金の最低額は 22万円(税込)となります。
420万円 × 11% = 46万2,000円(税込)
土地明渡し
※経済的利益(固定資産税評価額の2分の1等)を基準とします。
| 手続 | 着手金(税込) | 報酬金(税込) |
|---|---|---|
| 交渉 |
8.8% (最低33万円) |
17.6% |
| 調停・訴訟 |
8.8% (最低44万円) |
17.6% |
※但し、報酬金の最低額は 55万円(税込)となります。
3 ご不安な方へ|よくいただくご質問
-
まだ大きなトラブルになっていません。「ちょっと怖い・おかしい」程度の不安や違和感でも相談してよいですか?
-
もちろんです。
不動産トラブルは、初期対応が非常に重要です。
契約内容の確認や、相手方への最初の通知(内容証明郵便など)を法的に正しく行うことで、被害の拡大を防ぎ、有利に交渉を進められる可能性が高まります。
「不安」・「違和感」の段階でご相談いただくのがベストタイミングです。
-
相談料はいくらかかりますか?
-
初回相談料として、1時間以内:1万1,000円を頂いております。
以降、30分以内の延長ごとに5,500円を頂いております。
-
弁護士費用規定を見ても、よく分かりません。
-
ご安心ください。
ご相談の際に、事案の内容をうかがった上で、着手金や報酬金について明確なお見積もりをご提示します。
ご納得いただいてから契約となりますので、予測不能な費用が出る心配はありません。
-
相談方法を教えてください。
-
以下のいずれかの方法でご相談を承っております。
- オンライン相談(Google Meetなどを利用します)
- ご来所による対面相談
※正確な状況をお伺いするため、恐れ入りますが、お電話やメールのみでのご相談は承っておりません。
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オンライン相談が可能とのことですが、遠方(地方)からの相談も対応していますか?
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はい、もちろんです。
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相談の際、どのような資料を準備すればよいですか?
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