飲食店の立退きにおいて、「立地」は極めて重要な論点になります。
同じ飲食業でも、ターミナル駅の地下街にある蕎麦屋と、住宅街の商店街にある焼肉屋では、立地がもたらす利益の性質がまったく異なります。
今回は、飲食店の「立地特性」と「場所的利益」に焦点を当てます。

裁判例を分析すると、飲食店の立地は大きく3つの類型に分けることができます。
- 超一等地型:ターミナル駅直結・再開発エリアなど、代替が極めて困難な立地
- 繁華街型:オフィス街・歓楽街の背後地など、特定の顧客層に支えられた立地
- 地域密着型:住宅地域で、徒歩圏内の常連客に支えられた立地
それぞれの類型において、裁判所が「場所的利益」をどのように評価し、立退料にどう反映させたのかを、具体的な裁判例を通じて見ていきます。
【立退き全般の解説はこちらの記事をご参照ください】
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1 超一等地型:ターミナル駅直結の「奇跡的な立地」(東京地判令和4年3月4日)
| 裁判例サマリー:新宿駅地下の蕎麦店の立退き事例 | |
|---|---|
| 事案の概要 |
所在地・物件: 新宿駅地下の商業区画 店舗の業態: 蕎麦店 営業期間: 昭和41年から50年以上にわたり営業 立退き理由: 建物の老朽化・耐震性の問題、新宿駅周辺の再整備方針に基づく建替え計画 |
| 立退料の推移 |
被告店舗側の主張:借家権価格2億1,000万円、営業上の補償10億3,000万円、精神的補償100万円などを含め、合計12億4,100万円を下らないと主張 裁判所認定:2億9,650万円 |
| 立地の特徴 |
本件店舗は、巨大ターミナル駅である新宿駅と一体となった建物内にありました。 具体的には、丸ノ内線新宿駅構内のコンコースと一体となっている区画にあり、JR新宿駅西口や丸ノ内線新宿駅の各改札にも近接していました。 そのため、鉄道利用者、乗換客、買物客など、終日にわたる人通りを期待できる立地であり、被告店舗側は、この場所を「奇跡的な立地」と表現しました。 |
| 当事者の主張 |
賃貸人側の主張 賃貸人側は、建物が建築後50年以上を経過し、耐震性にも問題があることを指摘しました。東京都から耐震改修促進法に基づく耐震改修・建替え・除却の指導を受けており、耐震補強工事を行っても残存使用年数が限定的で、経済合理性が乏しいと主張しました。 また、新宿駅周辺の再整備方針に基づく公共性のある再開発計画の一環として、本件ビルの建替えが必要であると主張しました。 賃借人側の主張 これに対し、賃借人側は、本件店舗が売上上位に入る基幹店であり、蕎麦店という業態にとって本件立地は極めて重要であると反論しました。 蕎麦店は顧客単価が比較的低く、短時間で多数の来客を回転させる必要があります。そのため、食事時間帯だけでなく、終日にわたり通行人を取り込める場所であることが重要であり、本件店舗の立地はその条件を満たす代替困難な立地であると主張しました。 |
| 裁判所の評価 |
裁判所は、本件店舗について、巨大ターミナル駅である新宿駅と一体となった建物内に所在し、丸ノ内線新宿駅構内のコンコースと一体となっている区画にあることを重視しました。 さらに、JR新宿駅西口や丸ノ内線新宿駅の各改札に近接していることから、本件店舗には稀少性の高い立地条件があると評価しました。 また、鑑定でも、鉄道乗換通路に所在するため常時人通りが多く、食事時間帯に限らず、通行人が手軽に食事をすることができる蕎麦店の店舗として、場所的優位性を備えていると分析されています。 もっとも、裁判所は、代替店舗の確保が容易ではないことは認めつつも、代替性がまったくないとまでは判断しませんでした。そのため、賃借人側が主張した営業廃止を前提とする10億円超の補償は採用されませんでした。 |
| 立退料の内訳 |
裁判所が採用した鑑定では、立退料は次のように整理されました。
被告店舗側の主張額である12億4,100万円とは大きな開きがありますが、裁判所は、立地の希少性や営業上の場所的利益を、借家権価格や営業補償の算定に反映させています。 |
| 本判決の 最大のポイント |
本判決の最大のポイントは、裁判所が、単に「新宿駅に近い」という一般的な立地評価にとどまらず、蕎麦店という業態と立地条件との結びつきを具体的に評価している点です。 蕎麦店は、顧客単価が比較的低く、短時間で多数の来客を回転させる業態です。そのため、昼食・夕食の時間帯だけでなく、乗換客や通行人を終日にわたって取り込める場所にあることが、営業上極めて重要になります。 この意味で、本件店舗は、ターミナル駅直結という場所的利益を強く有しており、その希少性が2億9,650万円という高額な立退料に結びついたといえます。 一方で、裁判所は、賃借人側が主張した12億円超の補償までは認めていません。したがって、本判決は、立地の希少性は立退料を大きく押し上げるものの、営業廃止を前提とする極端に高額な補償が当然に認められるわけではないことを示す裁判例でもあります。 |
2 超一等地型:チェーン店と立地の非代替性(東京地判平成30年円8月28日)
| 裁判例サマリー:東京駅八重洲の居酒屋チェーン店舗の立退き事例 | |
|---|---|
| 事案の概要 |
所在地・物件: 東京駅八重洲中央口付近(徒歩3〜4分)のビル地下1階 店舗の業態: 飲食店・居酒屋チェーン 営業期間: 約20年間にわたり営業 立退き理由: 建物の老朽化・耐震性の問題、隣地と一体となったホテル建築計画 |
| 立退料の推移 |
被告店舗側の主張:借家権価格1億6,900万円、通常損失補償額1億1,516万円の合計2億8,416万円を下らないと主張 裁判所認定:2億円 |
| 立地の特徴 |
本件店舗は、東京駅八重洲中央口の至近に所在する商業地域に位置していました。 東京駅から徒歩3分の歓楽街という特殊な営業環境にあり、重飲食・深夜営業が可能で、面積・看板設置・顧客導線などの好条件を備えていました。 また、周辺では大規模な市街地再開発事業が進行中であり、代替店舗の確保が構造的に困難な状況にありました。 |
| 当事者の主張 |
賃貸人(原告)側の主張 本件建物は築50年が経過し、鉄筋の錆・爆裂や外壁の剥落が発生するなど耐用年数を超えており、維持する経済的合理性に乏しいと主張しました。また、隣地と一体でホテルを建築する計画があり、被告は大企業で本件店舗の売上割合も全体から見ればごくわずか(0.08%)であるため、利用の必要性は低いと主張しました。 賃借人(被告)側の主張 賃貸人は前所有者が解約拒否された経緯を知りながら安価に取得しており、ホテルへの建替えも賃貸目的であると反論しました。また、本件店舗は同社の店舗の中でも有数の売上げ・利益を上げる「象徴的な店舗」であり、周辺の再開発の影響もあって移転先の選定は極めて困難であると主張しました。 |
| 裁判所の評価 |
裁判所は、賃借人が全国に2,167店舗を展開する大手チェーンであるにもかかわらず、近隣地域での同等の代替店舗の確保が困難であることを推察し、立地の非代替性を立退料の算定で考慮すべきと判断しました。 また、賃貸人が安価に建物を取得した経緯については、耐震強度不足等を認識しており購入価格に考慮済みであると指摘し、賃借人の経済的損失はできる限り補填されるべきであると評価しました。 |
| 立退料の内訳 |
鑑定結果をベースに、代替店舗の確保困難性を加算して次のように整理されました。
|
| 本判決の 最大のポイント |
本判決の最大のポイントは、大手チェーン店であっても、立地の非代替性は立退料に反映されることを示した点です。 「チェーン店だから移転は容易」という単純な議論ではなく、当該立地における代替店舗の供給状況を具体的に検討した上で、代替困難性を立退料に反映させるという手法は実務的にも参考になります。 また、賃貸人が立退き目的で建物を安価に取得した場合、裁判所が賃借人の補填をより手厚くする方向で考慮する可能性があることも、この事案の重要な教訓です。 |
3 超一等地型:唯一の店舗が立地に依存する(東京地判令和2年1月16日)
| 裁判例サマリー:表参道のタイ料理店の立退き事例 | |
|---|---|
| 事案の概要 |
所在地・物件: 表参道(明治神宮前駅から約140m、キャットストリート近く)のビル2階 店舗の業態: 飲食店・タイ料理店 営業期間: 18年間にわたり営業 立退き理由: 建物の老朽化・耐震性の問題(倒壊・崩壊の危険性)に基づく建替え |
| 立退料の推移 |
賃貸人(原告)側の提示:当初約990万円、最終的に上限1,700万円程度と主張 賃借人(被告)側の主張:立退料をいくら積んでも明渡しは認められないと強硬に主張(仮に試算する場合は高額な補償を要求) 裁判所認定:3,000万円 |
| 立地の特徴 |
本件店舗は、明治神宮前駅、JR原宿駅、表参道駅のいずれからもアクセスが良く、明治通り・表参道・キャットストリートの近くに位置していました。 賃借人の法人はこの1店舗のみを経営しており、本件店舗の売上げが唯一の収入源でした。 また、口コミサイトで高評価を得ており、原宿エリアのタイ料理店として上位にランク付けされるなど、立地と結びついた強い顧客基盤を有していました。 |
| 当事者の主張 |
賃貸人(原告)側の主張 本件建物(昭和47年築)は耐震診断の結果、倒壊の危険性が高く、耐震補強を行っても10年程度しかもたないため建替えが必要であると主張。また、タイ料理店の運営は代替物件でも容易であるとしました。 賃借人(被告)側の主張 耐震性の問題は賃貸人側の違法増築や補修怠慢が原因であるため、建替えを理由とする更新拒絶は許されないと反論。また、本件店舗が唯一の収入源であり、移転すれば口コミやランキングがリセットされ、新規顧客の獲得手段が損なわれると主張しました。 |
| 裁判所の評価 |
裁判所は、飲食店の経営における立地の重要性を鑑み、賃借人が本件貸室を使用する必要性は「相当高い」と評価しました。一方で、代替店舗の確保は「困難であるとしても不可能とまではいえない」と判断しました。 建物の耐震性については、賃借人側の主張(違法増築等)を考慮しても、客観的な耐震診断結果(Is値不足)から危険性は否定できないとして、建替えの必要性を認めました。 |
| 立退料の内訳 |
本件では、立地への依存度が高いことから、「得意先喪失補償」が立退料の大きなウエイトを占めました。
※口コミ評価については、同一店名で続ける限り移転しても直ちに消滅しないと判断されました。また、借家権価格の別途加算は認められませんでした。 |
| 本判決の 最大のポイント |
本判決の最大のポイントは、1店舗のみを経営する個人事業に近い法人にとって、立地がいかに死活的に重要かが金額にしっかり反映された点です。 一方で、賃借人が「立退料をいくら積んでも認められない」と強硬に反対していても、建物の安全性(耐震性不足)という客観的な問題がある場合には、相当額の立退料の提供により正当事由が認められ得ることを示す実務上重要な裁判例でもあります。 |
4 繁華街型:「背後地」の顧客基盤が生む場所的利益(東京地判令和4年10月28日)
| 裁判例サマリー:新橋の居酒屋の立退き事例 | |
|---|---|
| 事案の概要 |
所在地・物件: JR新橋駅から西方約230mのビル1階 店舗の業態: 飲食店・居酒屋 営業期間: 昭和48年頃から半世紀近くにわたり営業 立退き理由: 建物の老朽化(不同沈下・耐震性等の問題、違法増築)に基づく建替え |
| 立退料の推移 |
賃貸人(原告)側の提示:当初5,500万円(転売前提)を提示 賃借人(被告)側の主張:標準原価率からの売上逆算や10年分の得意先損失などを主張 裁判所認定:3,058万円 |
| 立地の特徴 |
本件店舗は、飲食店・娯楽施設を中心とした繁華な商業地域に所在していました。 本件で特徴的なのは、背後地に霞が関(官庁街)や西新橋・虎ノ門(オフィス街)があり、そこからの安定した顧客流入に支えられている点です。 すなわち、単に駅に近いというだけでなく、背後に控えるオフィス街・官庁街からの顧客基盤によって「場所的利益」がもたらされていました。 |
| 当事者の主張 |
賃貸人(原告)側の主張 建物(築58年)に目視で判別可能な不同沈下や違法増築などの問題があり、建替えが必要であると主張。また、賃借人の生活の本拠は別にあるため、立退きの影響は小さいとしました。 賃借人(被告)側の主張 RC造の建物としていまだ堅牢であり、不同沈下も過去の地下水くみ上げによるもので現在は安定していると反論。また、半世紀にわたる長年の営業で得た「稀少な客層」に支えられており、立退きは死活問題であると主張しました。 |
| 裁判所の評価 |
裁判所は、背後地の官公庁街やオフィス街からの常連客の存在を認め、同地で営業を継続する利点を認定しました。 一方で、本件貸室でなければ営業が困難なほどの「代替性の乏しい特殊な居酒屋」とまでは認めず、居酒屋という業態自体の移転可能性を認めました。 また、賃借人が主張した「標準原価率からの売上逆算」や「得意先損失10年分」といった独自の算定手法については退けています。 |
| 立退料の内訳 |
賃貸人からの当初の提示額(5,500万円)は建物の高額転売を前提としていたため、立退料の算定基準とはされませんでした。鑑定結果をベースとし、以下の事情が考慮されました。
※賃貸人が隣接地と併合して建替えることで建物の容積率が増加する利益の一部を、借家人にも配分すべきと判断された点が特徴的です。 |
| 本判決の 最大のポイント |
本判決の最大のポイントは、繁華街にある飲食店の場所的利益を評価する際、単に「駅からの距離」や「人通りの多さ」だけでなく、どのような顧客層が、どこから来ているのかという「背後地」の分析が重要であることを示した点です。 また、当初の立退料提示額(5,500万円)と最終認定額(3,058万円)の差は、当事者間の交渉状況(転売目的での高額提示など)と、裁判所の客観的な算定との間にギャップが生じ得ることを示しています。 |
5 地域密着型:住宅地の「徒歩圏常連客」の場所的利益(東京地判令和6年7月30日)
| 裁判例サマリー:世田谷区の焼肉店の立退き事例 | |
|---|---|
| 事案の概要 |
所在地・物件: 世田谷区の商店街の一角にある木造建物2階 店舗の業態: 飲食店・焼肉店 営業期間: 昭和53年から40年以上にわたり家族経営 立退き理由: 建物の老朽化・倒壊の危険性(耐震性不足)に基づく建替え |
| 立退料の推移 |
賃貸人(原告)側の提示:予備的に800万円(損害の4割)を提示 賃借人(被告)側の主張:約4,989万円(差額賃料や内装費、借家権価格など)を主張 裁判所認定:2,702万円 |
| 立地の特徴 |
本件店舗は、超一等地や繁華街の事案とは対照的な住宅地域の地域密着型飲食店です。 最寄り駅から徒歩約6分で駐車場はなく、飲酒する客も多いことから、顧客の大半は店舗から徒歩圏内に居住する住民でした。 つまり、「この地域の住民が徒歩で来てくれる」という、非常に限定された商圏に支えられていました。 |
| 当事者の主張 |
賃貸人(原告)側の主張 本件建物は築67年以上が経過し、耐震診断の評点が0.12と倒壊の危険性が極めて高いと主張。また、商店街の一角にあり地震時の危険性も高いため、建替えが急務であるとしました。立退料については賃借人に生じ得る損害の「4割」が相当であると主張しました。 賃借人(被告)側の主張 独自の耐震診断結果を基に倒壊しないと反論。また、約44年間にわたり家族経営で営んでおり、退去すれば唯一の収入源を失うと強調しました。利用駅や商圏を異にする物件への移転は現在の顧客喪失を意味するため、高額な立退料(約4,989万円)が必要であると主張しました。 |
| 裁判所の評価 |
裁判所は、本件店舗が駐車場を持たず徒歩圏内の顧客が大半を占めている点に注目し、「最寄り駅の南側に所在する建物で同程度の広さの店舗」でなければ集客・収益に影響が出ると判断しました。 つまり、駅前大型店のような広域集客力を持たない地域密着型飲食店においては、「商圏の狭さ」がかえって場所的利益の根拠になると認定しました。 |
| 立退料の内訳 |
賃借人の損失(差額賃料約1,225万円、移転費用約154万円、引越費用約61万円、内装費用約1,938万円)の合計約3,378万円を算出した上で、建物の倒壊危険性が高いこと等を考慮し、以下のように認定されました。
※賃借人が主張した「借家権価格(営業権補償)1,550万円」の別途加算は認められませんでした。 |
| 本判決の 最大のポイント |
本判決の最大のポイントは、住宅地域の地域密着型飲食店における「場所的利益」が、商圏の限定性(徒歩圏内の常連客)それ自体に由来することを示した点です。 代替物件の要件として「極めて近いエリア」でなければならないと認定されたことは、住宅街の店舗立退きを考える上で非常に参考になります。 また、倒壊の危険性が極めて高い物件であっても、賃貸人が主張したような大幅な減額(損失の4割のみ補償)は採用されず、結果的に賃借人の損失の約8割が手厚く補償されたことも重要な実務的教訓です。 |
6 駅前小規模店:立地の優位性と個人事情の交錯(東京地判平成29年12月25日)
| 裁判例サマリー:神泉駅前の小規模居酒屋の立退き事例 | |
|---|---|
| 事案の概要 |
所在地・物件: 京王井の頭線・神泉駅から道路を挟んだ斜め向かいの木造建物1階(約19㎡) 店舗の業態: 飲食店・小規模居酒屋 営業期間: 昭和58年から約35年間、1人で営業 立退き理由: 建物の老朽化(旧耐震基準・既存不適格)、隣地と一体となった新築ビル建築計画 |
| 立退料の推移 |
賃貸人(原告)側の提示:移転補償額として498万8,000円を提示 賃借人(被告)側の主張:移転は不可能であり、廃業を前提とする休業補償額を主張 裁判所認定:601万7,000円 |
| 立地の特徴 |
本件店舗は商業地域にあり、神泉駅の斜め向かいという優れた立地条件を備えていました。 しかし、店舗面積は約19㎡と極めて小規模であり、年間売上は約364万円、所得は年間約13万円にとどまるなど、事業規模としては非常に小さなものでした。 駅前という立地の優位性と、経営者の年齢(69歳)や持病(肺気腫)といった個人的事情が複雑に絡み合った事案です。 |
| 当事者の主張 |
賃貸人(原告)側の主張 築約50年で大規模地震時の倒壊危険があり、隣地と合わせた新築ビル計画が具体的に進行中(他室は退去済)と主張。また、代替物件は多数存在し、現状は一部常連客の持ち込み飲食の場にすぎず賃借人の使用の必要性は低いと主張しました。 賃借人(被告)側の主張 東日本大震災でも「コップ1つ落下しなかった」と建物の堅牢性を主張。約35年間この店舗の収益のみで生計を維持しており、高齢・病気のため代替店舗での営業は不可能であると反論。退去すれば顧客や人のつながりを全て失う(入院時に客が店を守った経緯等)と切実な必要性を訴えました。 |
| 裁判所の評価 |
裁判所は、賃貸人側の建替えの必要性を認めつつも、賃借人が長期間にわたり低額な賃料を前提に生活設計を立ててきたこと、年齢等を考慮すれば近隣同規模店舗への移転は困難であることを認定しました。 また、賃貸人側の都合による立退きであり、賃借人には本件店舗の営業を継続する期待があるとして、これを法的に保護すべきと判断しました。 |
| 立退料の内訳 |
鑑定結果に基づき、賃借人の営業継続の期待などを考慮して、移転補償額ではなくより高額な「借家権価格」がそのまま採用されました。
|
| 本判決の 最大のポイント |
本判決のポイントは、立地の優位性が必ずしも高額な立退料に直結するわけではないことを示した点です。駅前という好立地であっても、店舗規模が極小で営業所得も低かったため、絶対額としては約600万円にとどまりました。 しかし同時に、小規模であっても長年培われた「場所と人のつながり」は法的に保護される利益であることも示しています。35年間の営業実績と常連客との強い関係性が評価され、賃貸人主張の移転補償額ではなく、より高い借家権価格での算定が採用されました。 |
第2 まとめ ~ 立地類型ごとに異なる「場所的利益」の評価構造
| 類型 | 裁判例 | 立退料 | 場所的利益の核心 | 争いの構図 |
|---|---|---|---|---|
| 超一等地 | 蕎麦屋(新宿駅地下) | 2億9,650万円 | 業態特性×ターミナル駅直結の希少性 | 被告は12.4億円を主張→約3億円で決着 |
| 超一等地 | チェーン店居酒屋(東京駅八重洲) | 2億円 | チェーン店でも認められる代替困難性 | 立退き目的の取得が賃借人に有利に作用 |
| 超一等地 | タイ料理(表参道) | 3,000万円 | 唯一の店舗の立地依存性と口コミ評価 | 被告は「いくら積んでも認められない」と主張 |
| 繁華街 | 小規模居酒屋(新橋) | 3,058万円 | 背後地(官庁街・オフィス街)の顧客基盤 | 当初提示5,500万円が裁判で3,058万円に |
| 地域密着 | 家族経営焼肉店(世田谷) | 2,702万円 | 徒歩圏内の住民という限定的な商圏 | 原告は4割減額を主張→約8割が認容 |
| 駅前小規模 | 1人経営居酒屋(神泉駅前) | 601万7,000円 | 場所と人のつながり(関係性の非代替性) | 被告は廃業前提の補償を主張 |
6つの裁判例を横断的に見ると、「場所的利益」は一枚岩ではなく、立地の類型によって利益の「質」が異なることが分かります。
超一等地型では、「この場所でなければ実現できないビジネスモデル」が場所的利益の核心です。
蕎麦屋(新宿駅地下)の事案で裁判所が認定した「そば飲食店の店舗としての場所的優位性」はその典型であり、業態と立地の不可分性が高い立退料に結びつきます。
繁華街型では、「どこから顧客が来ているか」という背後地の分析がなされました。
新橋の居酒屋の事案では、霞が関の官庁街や西新橋のオフィス街からの顧客流入が、半世紀にわたる営業を支えていました。
地域密着型では、「商圏の狭さ」がかえって場所的利益の根拠になるという逆説的な構造が見られます。
世田谷の焼肉店の事案では、「徒歩圏内に居住する者」という限定的な商圏が、移転先の条件を極めて厳しく絞り込む根拠となりました。
また、今回各事案の当事者の主張を見ることで、立退きをめぐる争いの実態も浮かび上がってきます。
賃借人側は、代替店舗の不存在や営業への壊滅的影響を主張して立退き自体を拒否する(あるいは極めて高額な立退料を要求する)のに対し、賃貸人側は、チェーン店であること・小規模であること・代替物件があることなどを理由に使用の必要性を低く見せようとします。
裁判所は、こうした双方の主張を吟味した上で、立地がその業態にもたらす具体的な利益を丁寧に認定し、立退料に反映させていることが分かります。
飲食店の立退きにおいて「立地」を論じる際には、単に「駅から何分か」「坪単価がいくらか」という数値だけでなく、その立地がその業態にとってなぜ重要なのか、顧客はどこからどのように来ているのかという質的な分析が不可欠です。
これらの裁判例は、そのことを明確に示しています。
第3 立退き・明渡しのご相談は文の風東京法律事務所へ
1 立退き・明渡し問題と弁護士の連携

今回ご紹介した6つの裁判例に共通しているのは、「立地」という言葉の奥にあるその場所でしか成り立たない商売の歴史を、裁判所が丁寧に読み解いているという点です。
立退きの交渉や訴訟においては、感情や主張の強さではなく、裁判所が何をどのように評価するかという視点が不可欠です。
賃借人の方であれば、「この場所が自分の商売にとってなぜ必要なのか」を法的に構成すること。賃貸人の方であれば、「正当事由と立退料の水準をどう設計するか」を早い段階で見通しておくこと。
いずれも、弁護士との早期の連携が結果を大きく左右します。
立退きに関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
2 当事務所の弁護士費用
| 手続 | 着手金(税込) | 報酬金(税込) |
|---|---|---|
| 交渉 | 33万円 | 賃料の 5ヵ月分 |
| 調停 | 55万円 | |
| 訴訟 | 77万円 |
※但し、報酬金の最低額は 55万円(税込)となります。
| 建物種別 | 着手金(税込) | 報酬金(税込) |
|---|---|---|
| 居住用建物 | 27.5万円 | 27.5万円 |
| 非居住用建物 | 38.5万円 | 38.5万円 |
- 未払賃料を回収した場合: 回収額の 16.5%
- 占有移転禁止仮処分: 22万円
※非居住建物とは、店舗・オフィス等を指します。
※経済的利益(固定資産税評価額の2分の1等)を基準とします。
| 手続 | 着手金(税込) | 報酬金(税込) |
|---|---|---|
| 交渉 |
8.8% (最低33万円) |
17.6% |
| 調停・訴訟 |
8.8% (最低44万円) |
17.6% |
※但し、報酬金の最低額は 55万円(税込)となります。
| 手続 | 着手金(税込) | 報酬金(税込) |
|---|---|---|
| 交渉 | 22万円 |
【立退料の獲得】 ・300万円以下: 55万円 ・300万円超: 11% + 22万円 【契約継続(住み続ける)】 賃料の 1ヵ月分 |
| 調停 | 33万円 |
【立退料の獲得】 ・300万円以下: 55万円 ・300万円超: 11% + 22万円 【契約継続(住み続ける)】 賃料の 2ヵ月分 |
| 訴訟 | 44万円 |
【立退料の獲得】 ・300万円以下: 55万円 ・300万円超: 11% + 22万円 【契約継続(住み続ける)】 賃料の 3ヵ月分 |
※(着手金)交渉から調停、調停から訴訟などに移行する場合は、差額のみとなります。
※(報酬金)賃貸借契約継続の場合、報酬金は最低55万円(税込)からとなります。
| 経済的利益 | 着手金 | 報酬金 |
|---|---|---|
| 300万円以下 | 最低33万円 | 17.6% |
| 300万円超~3000万円以下 |
5.5%+9.9万円 (最低33万円) |
11%+19.8万円 |
| 3000万円超~3億円以下 | 3.3%+75.9万円 | 6.6%+151.8万円 |
| 3億円超 | 2.2%+405.9万円 | 4.4%+811.8万円 |
※報酬金の最低額は11万円(税込)となります。
※総額の下限は、交渉44万円~、法的手続66万円~となります。
3 ご不安な方へ|よくいただくご質問
-
まだ大きなトラブルになっていません。「ちょっと怖い・おかしい」程度の不安や違和感でも相談してよいですか?
-
もちろんです。
不動産トラブルは、初期対応が非常に重要です。
契約内容の確認や、相手方への最初の通知(内容証明郵便など)を法的に正しく行うことで、被害の拡大を防ぎ、有利に交渉を進められる可能性が高まります。
「不安」・「違和感」の段階でご相談いただくのがベストタイミングです。
-
相談料はいくらかかりますか?
-
初回相談料として、1時間以内:1万6,500円を頂いております。
以降、30分以内の延長ごとに8,250円を頂いております。
-
弁護士費用規定を見ても、よく分かりません。
-
ご安心ください。
ご相談の際に、事案の内容をうかがった上で、着手金や報酬金について明確なお見積もりをご提示します。
ご納得いただいてから契約となりますので、予測不能な費用が出る心配はありません。
-
相談方法を教えてください。
-
以下のいずれかの方法でご相談を承っております。
- オンライン相談(Google Meetなどを利用します)
- ご来所による対面相談
※正確な状況をお伺いするため、恐れ入りますが、お電話やメールのみでのご相談は承っておりません。
-
オンライン相談が可能とのことですが、遠方(地方)からの相談も対応していますか?
-
はい、もちろんです。
当事務所はGoogleMeetなどのオンラインツールを最大限活用し、全国の不動産売買トラブルに対応しております。これまでにも、北は札幌市から、南は那覇市や宮古島市まで、遠方のお客様からのご相談・ご依頼実績がございます。
お住まいの地域にかかわらず、専門家による法務サポートを提供いたしますので、どうぞ安心してご相談ください。
-
相手(売主・買主・不動産会社)と直接話したくありません。弁護士に全て任せられますか?
-
はい、お任せください。
弁護士がご依頼者様の代理人となると、相手方との交渉窓口はすべて弁護士になります(受任通知を送付します)。
相手方からの連絡にストレスを感じることなく、法的な手続きを進めることができます。
-
相談の際、どのような資料を準備すればよいですか?
-
必須ではありませんが、以下の資料をお持ちいただくと相談がスムーズです。
- 契約書(売買・賃貸借)
- 重要事項説明書
- 物件の図面、パンフレット
- トラブルの内容がわかるもの(写真、メール、相手方からの通知書など)
- 経緯をまとめたメモ(時系列で何があったか)
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不動産業を営んでいます。 不動産実務に詳しい顧問弁護士を探しています。
どのようなサービス(プラン)がありますか? -
当事務所は、不動産業者様向けの顧問サービスに特に力を入れております。
日々の契約書チェックやクレームの初期対応など、貴社のリスク管理を法務面からサポートします。顧問サービスは、以下のメニューをご用意しております。
プランに関するご相談やお見積もりは無料ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。(より詳しく⇒)🔗「顧問サービス紹介ページ」
おすすめスタンダード相談や書面作成を
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不動産の明渡し・立退きをめぐるトラブルの解決には、一般的な不動産問題とは異なる専門的なノウハウが不可欠です。
当事務所は不動産トラブルに注力しており、終わりの見えない対立に法的な見地から終止符を打ちます。
あなたの正当な権利を、私たちがしっかりと守り抜きます。
弁護士紹介
- 1981年生まれ
- 1997年文京区立第十中学校卒業
- 2000年私立巣鴨高校卒業
- 2006年東京大学教育学部卒業
- 2008年東京都立大学法科大学院卒業
- 2009年弁護士登録
- 2024年文の風東京法律事務所を開設
- 1985年生まれ
- 2004年神奈川県立横浜翠嵐高校卒業
- 2009年一橋大学法学部卒業
- 2011年東京都立法科大学院卒業
- 2012年弁護士登録
- 2024年文の風東京法律事務所を開設
アクセス
| 所在地 |
〒112-0004 東京都文京区後楽2-3-11 ニューグローリビル3階 |
|---|---|
| アクセス | 各線「飯田橋駅」東口・C1出口より徒歩約5分 |
| お問い合わせ |
TEL:03-3524-7281 受付時間:平日 9:00~18:00 |
お問い合わせ
ご相談については、予約制となっております。
来所相談だけでなく、Zoom・Google Meetによるオンライン相談も対応しておりますので、全国対応しております。
お問い合わせフォームまたはお電話にてご連絡ください。
相談時に必要なもの
事前に以下のものをご準備いただくと、ご相談がスムーズに進みます。
- 相談内容の要点をまとめていたメモ
- ご相談に関する資料や書類
ご相談
法律上の問題点や採り得る手段などを専門家の見地よりお伝えします。
問題解決の見通し、今後の方針、解決までにかかる時間、弁護士費用等をご説明いたします。
※ご相談でお悩みが解決した場合は、ここで終了となります。
ご依頼
当事務所にご依頼いただく場合には、委任契約の内容をご確認いただき、委任契約書にご署名・ご捺印をいただきます。
問題解決へ
事件解決に向けて、必要な手続(和解交渉、調停、裁判)を進めていきます。
示談、調停、和解、判決などにより事件が解決に至れば終了となります。
終了
委任契約書の内容にしたがって、弁護士費用をお支払いいただきます。
お預かりした資料等はお返しいたします。


