Question
不動産を相続により兄弟で共有しています。
しかし、管理の煩わしさや、今後も住む予定もありませんので、手放したいと考えています。
他の共有者(兄弟)と、どのような方法で共有関係を解消できますか?
他の共有者(兄弟)が反対しても、共有物分割請求訴訟によって解消できると聞きましたが、どのような制度ですか?
Answer
ご自身の共有持分権を喪失するだけであれば、持分を第三者へ売却したり、放棄する方法があります。
しかし、これらは経済的に合理性の乏しい選択肢といえます。
そのため、他の共有者間との間で持分を売買する(賠償分割)、物理的に不動産を分割する(現物分割)、共有者全員で不動産を売却する(換価分割)を中心に共有関係解消を進めるべきです。
まずは他共有者の方に、共有関係解消について、上記の3つの方法を念頭にどのような意向を持っているか話し合うのが良いでしょう。
それぞれの意向が異なり、うまく話し合いが進まない場合には、共有物分割請求訴訟を提起することで強制的に共有関係を解消することもできます。
共有物分割請求訴訟においても、賠償分割、現物分割、換価分割の方法によって解決が図られます。
どの分割方法を採用するかは裁判所の裁量によりますが、賠償分割 → 現物分割 → 換価分割 の順に検討されます。
以下、より詳しく説明します。
不動産トラブルの相談など、
お気軽にご連絡ください。
全国対応
Zoom、Teams、
Google Meet等にて
相談料
1時間
11,000円
(税込)
詳細は🔗不動産トラブル特設ページをご覧ください。
第1 不動産の共有を解消する流れ
1 まずは話し合いによる解決
不動産の共有を解消する方法としては、大きく3つの方法があります。
- 賠償分割
他の共有者に持分を譲渡(売却)することや、自身が他の共有者の持分を買う方法 - 現物分割
不動産を共有者それぞれに分割する方法 - 換価分割
共有者全員で不動産を売却する方法
これらの方法を執るためには、不動産の価格や分割方法について合意することが必要となりますので、他の共有者とよく話し合うことが大切です。
他の方法として、自身の共有持分を放棄することや、他の第三者に譲渡(売却)することもできます。
持分の放棄や譲渡は、他の共有者の了承なく、勝手に進めることができますが、お勧めできる方法ではありません。
放棄は、自身の持分に経済的利益が反映されません。
第三者への持分の売却も、共有不動産の一部分だけを購入するのは、転売等を目的とする不動産業者に限られ、安く買い叩かれてしまうからです。
- ①話し合いによる共有状態の解消
- 持分の売買(賠償分割)、現物分割、不動産全体での売却(換価分割)が現実的な解決手段になります。
まずは話し合いによる解決を目指します。
- ②共有物分割請求訴訟へ
- 話し合いによる合意ができない場合には、裁判所に共有物分割請求の訴えを起こします。
強制的な共有の解消を目指します。
2 強制的な解決 ~ 共有物分割請求訴訟へ
共有者間に協議が整わないとき(協議不調)、または協議をすることができないとき(協議不能)は、裁判所に共有物の分割を請求することができます(民法258条1項)。
このように、共有物分割請求訴訟の要件としても事前協議を想定していますので、裁判手続を利用する前に共有者間で話し合いを行うことは必須といえます。
協議不調、又は協議不能が共有物分割請求の訴えの要件になっていることから、話し合いを行おうとせずに、いきなり裁判を起こすことはできません。
第2 共有物分割請求訴訟
1 共有物分割請求の訴えを提起する
どこの裁判所に訴訟提起するか?(管轄)
対象となる不動産所在地、もしくは被告となる他共有者の住所を管轄する地方裁判所に起こします。
誰を相手に訴えるか?(相手の選択)
原告となる共有者以外の全員を被告として訴えを提起する必要があります。
つまり、共有者全員を関与させて解決を図ることが必要になります(特に覚える必要はありませんが、これを「固有必要的共同訴訟」と呼びます)。
裁判に要する費用(印紙代・郵券)
裁判を起こす際に必要な主な費用として、収入印紙代と郵券(郵便切手代)があります。
印紙代は、土地と建物によって異なる算定方法をします。
まず、固定資産評価証明書を取り寄せ、自身の持分価格を算定します。
そして、土地の場合は持分価格の6分の1が、建物の場合は持分価格の3分の1が訴額となります。
訴額を「手数料早見表」に従って算定します。
- 土地の訴額 = 固定資産税評価額 ✕ 持分割合 ✕(6分の1)
- 建物の訴額 = 固定資産税評価額 ✕ 持分割合 ✕(3分の1)
(参考)🔗「手数料額早見表」(裁判所HP)
郵券は、各裁判所によっても異なり、当事者の数が増えると若干増額します。
東京地裁の場合、原告・被告が各1人の場合、6,000円です(参考:🔗「郵便切手の予納額」裁判所HP)。
解決までの見通し(期間等)
個別事件の争点により解決までにかかる期間は大きく異なります。
大きな争点のない事件では、半年から1年が解決の目安期間といえます。
共有物分割請求訴訟の特徴
希望する分割方法や金額になるかの問題はありますが、ほとんどのケースにおいて請求棄却で終わることがありません。
次に述べるように、何らかの分割方法により共有が解消されます。
例外として分割が認められないケースは、分割禁止の合意をしている場合や、分割を求めることが権利濫用に該当する場合です。
また、理屈面の話になりますが、裁判所の下す結論が、当事者の申立てに拘束されないという特徴があります(「形式的形成訴訟」といいます)。
そのため、具体的な分割方法を指定することなく、単に共有物分割を求める旨を申立てれば足りるとされています。
また、控訴審においても、不利益変更禁止の適用がありません。
2 裁判所における分割の方法とは?
共有物分割請求訴訟においては、前述しましたように、次の3つの方法による解決が検討されます。
賠償分割(代償分割・価格賠償)
共有者の1人が、他の共有者に賠償金(代償金)を支払って全部を単独所有にする方法です。
(代償分割や価格賠償などともいいますが、本記事では「賠償分割」と表記します)。
賠償分割は、以下の要件を満たす場合に選択できます。
- 共有物を特定の者に取得させるのが相当であること、
- 共有物の価格が適正に評価されていること、
- 共有物を取得する者に支払能力があること、
- 一部の共有者に共有物の持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないこと。
現物分割
共有不動産を共有持分割合に応じて物理的に分ける方法をいいます。
現物分割は、以下の要件を満たす場合に選択できます。
- 物理的に複数に分けることが可能であること、
- 物理的な分割によって価格を著しく減少させないこと。
建物については、物理的に現物分割をすることができない場合がほとんどだと思います。
土地については、広さ、形、高低の状況、接道、建築法規などによって制約を受けます。
建物を建てるための広さが確保できないように細分化されてしまったり、道路に接しなくなったりするときには、著しい価格減少が生じるものとされます。
なお、現物分割に伴って価格減少が生じることは多く発生してしまうものでもあり、10%程度の価格低下では、減少が著しいものとはいえないとした裁判例があります(東京地判平9.1.30)。
換価分割(競売分割)
共有不動産を第三者に売却し、売却代金を共有持分割合に応じて共有者で分ける方法をいいます。
方法として、共有者による任意売却と裁判所による形式的競売があります。
一般的には、任意売却の方が高く売れることが多いため、任意売却の方が多く活用されています。
3 裁判所による分割類型の選択基準は?
裁判所は、まず賠償分割(代償分割)を希望する共有者が存在する場合には、優先的に賠償分割を検討し、要件を満たしているかを判断します。
その次に、現物分割ができるか要件を満たすかの判断をします。
なお、民法の条文上は、現物分割と賠償分割のいずれか可能な方を優先的に選択するとして、両者の検討順位に優劣をつけていません。
ただ、実務上の運用として、賠償分割を希望する共有者がいる場合には、現物分割より優先的に検討されています。
そして、賠償分割も現物分割も選択できない場合には、換価分割を選択します。
民法 第258条
🔗民法(e-Gov法令検索)
第2項
裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
一 共有物の現物を分割する方法
二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
第3項
前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
第3 共有物分割請求訴訟に関連する問題
1 賠償分割で住宅ローン(担保権)が付されている場合
一般的に、住宅ローンが残っている場合には、不動産の時価からローン残額を控除して代償金を算定します。
確かに、債務負担の状況や債務者の無資力のリスクの程度を考慮して、ローン残額を考慮しない判断がなされることもあり得ます。
この場合は、賠償分割を選択できないと判断されることが多いでしょう。
オーバーローンの場合
ローン残額が不動産の時価を上回っている場合には、理屈からすると不動産に価値がないとして、代償金が発生しないということになりそうです。
しかし、一切の支払いなしに単独所有にすることは妥当でないと考えられ、一定程度の代償金が検討されます。
過去の裁判例(東地判平18.6.15)では、潜在的利益を総合的に考慮して、単独所有を希望する被告が主張する「100万円を超えることはない」と判断したものがあります。
2 相手方より権利濫用を主張される場合
共有物の分割請求も、無制限に自由に認められるわけではありません。
著しく不当な権利行使とみられる場合には、分割請求が認められないことがあります。
権利濫用にあたるかどうかは、分割することの不合理性、請求者の加害目的や意思によって判断されます。
具体的には、建物への居住の経緯・現状、現在の使用者の意思、退去を強制される状況、請求者側の必要性、離婚の際の財産分与等、諸般の事情が考慮されます。
具体例を挙げると、夫婦間で離婚の協議中に、離婚の協議を有利に進めるために配偶者の生活拠点を失わせるような共有物の分割を請求することが、権利濫用として否定されます。
第4 弁護士に共有物分割訴訟を依頼するメリットや当事務所の費用
1 弁護士に依頼するメリット
共有不動産は、トラブルの種になりがちです。
ご自分で抱え込んで悩むのは、時間を浪費し、ストレスを溜め込みます。
豊富な知識と経験を有する専門家にご相談ください。
弁護士に依頼するメリットは、まず他共有者との連絡・交渉の一切について、弁護士を窓口にできることが挙げられます。
弁護士にご相談いただく際には、すでに円満な関係が崩れていることも多く、当事者だけでは感情的な対立が生じがちで、冷静な話し合いが行いにくい点があります。
また、弁護士は法律の専門家ですので、共有関係を解消にするにあたり、適切な選択肢の提示と見通しを持つことができます。
そして、共有物分割請求訴訟は、裁判手続のためにハードルが高いですが、弁護士に依頼することで最善の方法で活用することが可能となります。
弁護士に依頼するメリットは、対外的なやり取り(交渉事)を弁護士を窓口に一任することで、精神的・物理的なストレスから解放されるだけでなく、法律的に適正な解決を図ることが可能になることです。
共有物分割請求は、話合いで解決できなければ裁判手続が必要となりますので、専門家を交え、煩わしい事から解放された明日に向けて、共に解決を図りましょう。
当事務所は、オンラインを活用し、日本全国に対応しています。
2 当事務所の弁護士費用
当事務所の共有物分割請求の費用は、下図の通りです(請求する側、請求される側の双方同一費用です)。
【例】
2人で3,000万円の不動産で争いがある場合(自身の共有持分は1,500万円の経済的利益)。
(着手金)33万円(税込)
(報酬金)1,500万円 × 7.7% = 115万5,000円(税込)
お問い合わせフォーム
私たちは、常に最善のリーガルサービスを提供できるように、日々研鑽を積んでいます。
そして、依頼者と「共に戦う」集団であることを志向しています。
お問い合わせ
ご相談については、予約制となっております。
来所相談だけでなく、Zoom・Google Meetによるオンライン相談も対応しておりますので、全国対応しております。
お問い合わせフォームまたはお電話にてご連絡ください。
相談時に必要なもの
事前に以下のものをご準備いただくと、ご相談がスムーズに進みます。
- 相談内容の要点をまとめていたメモ
- ご相談に関する資料や書類
ご相談(初回相談料:1時間あたり1万1,000円)
法律上の問題点や採り得る手段などを専門家の見地よりお伝えします。
問題解決の見通し、今後の方針、解決までにかかる時間、弁護士費用等をご説明いたします。
※ご相談でお悩みが解決した場合は、ここで終了となります。
ご依頼
当事務所にご依頼いただく場合には、委任契約の内容をご確認いただき、委任契約書にご署名・ご捺印をいただきます。
問題解決へ
事件解決に向けて、必要な手続(和解交渉、調停、裁判)を進めていきます。
示談、調停、和解、判決などにより事件が解決に至れば終了となります。
終了
委任契約書の内容にしたがって、弁護士費用をお支払いいただきます。
お預かりした資料等はお返しいたします。
不動産トラブルの相談など、
お気軽にご連絡ください。
全国対応
Zoom、Teams、
Google Meet等にて
相談料
1時間
11,000円
(税込)
詳細は🔗不動産トラブル特設ページをご覧ください。