民事保全手続があると聞きました。

民事保全とは、どのような手続でしょうか?
どのような場合に活用することができますか?注意すべきことはありますか?

「民事保全」とは、判決が得られるまでの時間の経過によって権利の実現が不能または困難になる危険から権利者を保護するために、裁判所が暫定的な措置を講じる制度です。

そして、求める権利の内容に応じて、①仮差押、②係争物に関する仮処分、③仮の地位を定める仮処分の3つの類型があります。

民事保全手続は、①仮差押と、仮処分に分かれ、仮処分は②係争物に関する仮処分と③仮の地位を定める仮処分に大きく分類できます。

「お金を支払え!」などの金銭債権の強制執行を保全するのが①仮差押です。
仮差押により、仮差押対象財産の処分を制限します。

次に、物に対する給付請求権の強制執行を保全するのが、②係争物に関する仮処分です。
具体的には、家賃滞納者に対して建物の明渡しを求めたり、購入した家屋の引渡しを求めるケースに使います。

3つ目、争いがある権利関係について債権者に生じる著しい損害又は急迫の危険を避けるためになされる暫定的な処分が、③仮の地位を定める仮処分です。

仮の地位を定める仮処分は、非常にバリエーションが豊富で、様々な類型で活用が検討できます。

具体的な例をいくつか挙げると、従業員の解雇を争う、取締役の解任を争う、インターネットのホームページへの掲載中止を求める、建築差止めを求める、私道の妨害物を除去して欲しい、違法な街宣活動を止めて欲しい、等々があります。

どんなに証拠が揃っていても、どんなに相手に資産がありそうでも、裁判をやっている間に債務者が財産を散逸したり隠されたり、または裁判の結果を待っていたのでは「時すでに遅し」という場合もあります

そんな時に利用するのが、「民事保全」という手続きです。

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第1 民事保全手続はどんな時に使えるか?どんな内容があるのか?

任意交渉を重ねても、一向に支払意思を見せない場合には、次なるステップに進む必要があります。

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いざ裁判を起こしたとしても、敗訴を予想した債務者が、強制執行を免れようとして財産を処分したり隠したりするかもしれません。
また、家屋の明渡しを受ける債務者が、別人にその家屋を別人に渡してしまうかもしれません。

そのような事態を未然に防ごうと企図された手続です。

全体の中の位置付けは、訴訟に打って出る前に、確実に権利保全をしておきたい、そんな意図で使われるのが典型的です。
(もちろん、訴訟をやっている最中に民事保全手続を申し立てることもできます。)

債権回収は、任意交渉を行った後、民事保全手続、裁判(訴訟)、強制執行という流れで進められます。

 
具体的な中身を見ていきましょう。

1 民事保全を使うべき時とは?

仮差押

貸主

お金を貸したけど、返済してくれない。裁判をやろうと思うけれども、時間がかかってしまうし、それまでに銀行からお金を引き出されるか心配です。

係争物に関する仮処分

賃貸人

アパート経営をしていますが、家賃の滞納が続く賃借人がいるので、明け渡しを求めたいと思っています。けれども、賃借人以外の者が頻繁に出入りもしており、強制執行の妨害をされるのではないかと心配です。

仮の地位を定める仮処分

会社員

私は、〇×会社に勤めていましたが、突然解雇を言われてしまいました。不当だと思うので争っていきたいのですが、裁判には1年も2年もかかると言われてしまい、それまでの生活費を賄う手段が欲しいです。

このように、民事保全手続を利用する時は、大きく3類型に分かれています。
それぞれどのような内容があり、どのような特色があるかを見ていきたいと思います。

金銭債権は仮差押を、非金銭債権は仮処分と、区別ができる。

2 仮差押について

仮差押」とは、金銭債権の強制執行を保全するためになされるものを言い、これが発令されると対象財産の処分を制限することになります。

仮差押命令は、「強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるとき」に発することができます。

仮差押がなされると、債権者は回収まではできませんが、たとえば債務者は預金口座から差押さえられた金額を引き出すことができなくなります(なお、債務者は、差押えられた金額以外は、従前通り自由に口座の利用ができます)。

また、不動産に仮差押が入ると、登記簿に仮差押登記がなされ、いつ債権者に競売にかけられるか分からない物件になりますので、基本的に買い手がつかなくなります

債務者が仮差押登記の入った不動産を売りたい場合には、仮差押解放金を供託し、仮差押登記を外す必要があります。
債権者としても、金銭回収をできればよいので、この仮差押解放金が担保になりますので、不利益はありません。

貸主

仮差押が奏功すれば、回収できない不安が減るので、安心して訴訟に集中できますね!

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3 係争物に関する仮処分について

物に関する給付請求権の強制執行を保全するためになされるのが係争物に関する仮処分です。

対象財産の現状を一定の範囲で維持し、将来の強制執行を保全します。

仮差押と同様に、「その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるとき」に発することができます。

典型例は、建物明渡しに利用されます。

占有者をコロコロ変えて執行妨害を繰り返したり、強制執行が危ないと思った債務者の不動産転売を防ぐために利用されます。

係争物に関する仮処分は、①占有移転禁止の仮処分②処分禁止の仮処分があります。

①占有移転の仮処分

典型例が、建物明渡請求です。
賃貸人が賃借人に家賃滞納等で明渡しを求めても立ち退かない場合、賃貸借契約の解除に基づく建物明渡請求の訴えを起こします。

問題は、この裁判の間に、賃借人が第三者に建物の使用を譲っていると、この賃借人に対する判決では建物退去の明渡をすることができなくなってしまいます

確かに、裁判が終わった後(「事実審の口頭弁論終結時」といいます)に建物を占有している場合には、問題なく強制執行できます。
しかし、その基準時より前に占有者が変わった場合には、理屈的には賃貸人はこの新たに占有を始めた人に対して、また裁判を起こさないといけません
さらに、この第三者は、また別の人に占有を移してしまうかもしれません。

そこで、占有移転禁止の仮処分を利用し、賃借人(債務者)の占有を排除して執行官が保管し、占有移転が禁止されていることと執行官が保管していることを公示することによって執行します。

多くの場合、賃借人の引き続いた利用は許可されますが、第三者に占有を移転したとしても、賃借人に対する判決をもって、第三者などに対しても強制執行を行うことが可能になります。

 

不良賃借人

占有者を変えて、少しでも長く居座ろうと思っていたのに。。。

賃貸人

占有移転禁止の仮処分を行うことで、賃借人に執行妨害をされる恐れがなくなり、安心して裁判を起こすことができます。

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②処分禁止の仮処分

処分禁止の仮処分の例は、「この家屋(土地)の名義を変えてはならない(売ってはならない)!!」という命令になります。
不動産についての処分禁止仮処分は、処分禁止の登記をする方法により行います

処分禁止の登記がされていれば、建物を譲渡することができなくなりますので、建物収去土地明渡請求(建物を壊して土地を明渡せ!)において、第三者に名義を変えるなどの執行妨害ができなくなります。

また、土地を購入したのに売主が名義をなかなか変えてくれない場合に、売主に対して他の第三者への売却を禁止させるものとなります。

処分禁止の仮処分のイメージ図。
「処分禁止の仮処分」建物収去土地明渡請求の準備として
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4 仮の地位を定める仮処分について

仮の地位を定める仮処分命令は、「争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる」とされ、仮差押、係争物に関する仮処分と異なり、認められる要件が一気に厳しくなっています

また、その類型も非常に様々なものがあり、数が多いです。
具体的なイメージを持っていただくため、いくつか列挙してみます(これが全てではありません)。

  • 不動産明渡しの断行の仮処分、自動車引渡しの断行の仮処分
  • 金員仮払いの仮処分
  • 立入禁止、建築工事禁止、営業禁止、面談強要禁止、街宣活動禁止
  • 占有使用妨害禁止、建築妨害禁止、営業妨害禁止
  • 競売手続停止、抵当権実行禁止等の仮処分
  • 出版又は放送の差止を求める仮処分
  • インターネット上の書込みの削除や発信者情報の保存を求める仮処分
  • 地位保全の仮処分、継続的供給契約に関する仮処分
  • 従業員としての地位保全、賃金仮払いの仮処分
  • 株主の議決権行使差止の仮処分、取締役の職務執行停止・代行者選任の仮処分
  • 特許権に基づく製造、販売等禁止の仮処分、著作権に基づく複製禁止の仮処分

よく教科書などにも取り上げられるのが、従業員が会社に対し、従業員であることの地位保全及び賃金仮払いの仮処分を求めるものです。

解雇が無効であれば、従業員は現在の会社の従業員としての地位を有することになります。
そして、訴訟中の生活困窮が「争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険」の要件に該当します(ただ、従業員の地位保全と賃金仮払仮処分が認められるハードルは非常に高く、あまり活用されていない点にはご留意ください)。

会社員

明日からどうやって生きていこうかと絶望していましたが、目先の生活費は確保できました!
会社と解雇の有効性を争っていきます。

裁判で解雇が有効となり従業員が敗訴したら?

裁判で解雇が有効となった場合の処理について、争いがあるところではありますが、最判昭和63年3月15日(民集第42巻3号170頁)の多数意見によれば、従業員が受領した賃金相当額の返還を命じることがあり、その場合にはこれを返還しなければならないことになります(なお、当然ながら、仮処分決定により職場復帰している場合には返還する必要はありません。問題は職場復帰せずに給与を受領していた場合です)。

悪質クレーマー対応では、仮の地位を定める仮処分はよく使われています!

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「満足的仮処分」とは?

上の列挙した一覧にある中で、特に断行の仮処分が典型的です。

たとえば不動産に対して明渡断行の仮処分がされて、占有者が建物から退去して所有者に占有が戻ったとします。
すると、暫定的といいながら、本来裁判をやって実現すべき状態が仮処分段階で実現しています。

このような仮処分を満足的仮処分と呼ばれています。

この特徴があることからも、仮の地位を定める仮処分は、特に他よりも要件が厳しく、(密行性の要請がないこともあり)双方審尋が必要的になっているなどの差異が認められます。

明渡断行の仮処分とは(建物明渡し、建物収去土地明渡し)
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5 民事保全手続のイメージを持つ!

以上の類型をまとめると、下の図のようになります。

民事保全手続は、仮差押(不動産、動産、債権)と仮処分(係争物に関する仮処分としての占有移転禁止の仮処分、処分禁止の仮処分と、仮の地位を定める仮処分)がある。


 

債権者が何らかの対抗手段を取らなければ、せっかく裁判で勝ったとしても、執行逃れを許してしまいます。

債権者の権利を保護するため、裁判が終わるまでの間、債務者の財産隠しを防ぐ措置を講じることが必要になります。それが民事保全です。

そのため、民事保全によって実現された状態は、一時的なもので、仮定的暫定的なものです。

この状態を確定的なものへと実現していくために、裁判を起こし勝訴判決を獲得していかなくてはなりません。
民事保全に続いて起こす裁判のことを「本案」といい、ここでも使っていきますので、ぜひ用語として覚えてください。

 強制執行を見据えながら、訴訟提起に移っていきます。

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第2 民事保全手続の特徴

民事保全の特徴として、①迅速性(緊急性)、②密行性、③暫定性(仮定性)、④付随性が挙げられます。

1 迅速性(緊急性)

まず、民事保全手続は、債務者に強制執行を免脱する機会を与えないために保全命令の発令やその執行が迅速に行われる必要があります。

この要請を踏まえ、民事保全手続は、口頭弁論を必要としない、証拠は疎明で足りる、保全執行期間は命令送達後2週間に限られる、執行文の付与が不要保全命令送達前でも執行できる、などが規定されています。

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2 密行性

次に、民事保全手続は相手方に知られると無意味になってしまう可能性がありますので、秘密裏に進めなくてはなりません。
事件記録の閲覧制限や保全の執行を相手方に送達される前でもできることが、この表れといえます。

なお、仮の地位を定める仮処分では、双方審尋期日が設けられていますので、この密行性は採用されていません。

3 暫定性(仮定性)

前述したように、本案訴訟による確定までという暫定的な性格があります。

4 付随性

最後に、付随性が挙げられます。
民事保全手続はあくまでも本案による最終解決を予定したものです。

そのため、債権者が本案を提起しない場合や、本案訴訟において債権者敗訴の判決が言い渡された場合には、債務者は保全命令の取消しを求めることができます。

5 民事保全の特徴をうまく使おう!

このように民事保全手続には、裁判とは異なった特徴があり、いわば独特の手続によって運営されています。
保全手続を決めることができれば、安心して本案を追行することができます。

以下では、具体的にどのように保全手続を進めていくのかを見ていきましょう。

第3 申立てと審理について

保全手続は、申立書を提出、裁判所の審理、担保決定・納付、保全命令の発令という流れで進みます。

1 申立てと裁判所の審理

民事保全の発令が認められるためには、①被保全権利と②保全の必要性が認められることが必要です。
そして、「保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、疎明しなければならない。」(民事保全法13条2項)とされています。

①被保全権利

債務者に対して請求する権利のことをいいます。
たとえば、金銭債権であれば、貸金や売掛金など、請求する権利のことをいいます。

②保全の必要性

  • 仮差押
    「強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるとき」
  • 係争物に関する仮処分
    「その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれ」
  • 仮の地位を定める仮処分
    「争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするとき」
仮差押の審理は、①被保全権利の存在、②保全の必要性を疎明することが必要になります。

 

「疎明」と「証明」

「疎明」とは、証明に比し、確信の程度には至らず、一応確からしいとの推測を得た状態をいいます(優越的蓋然性)。

「証明」が裁判官が事実の存否について十分な確信を得た状態が必要とされますので、疎明では高度の蓋然性のあるものまでは必要とされていません。

2 担保

保全命令の発令にあたり、債権者に担保を立てさせることが原則となっています。

これは、違法な保全命令の発令によって債務者に損害が発生した場合に、債務者が債権者に対し損害賠償請求をする場合を考慮して、損害賠償請求の担保とする趣旨から必要になっています。
また、担保によって、濫用的な申立てを防ぐ意味合いもあります。

担保金は、保全命令の種類と態様、被保全権利の内容と価格、保全の対象物の種類と価格、債務者の職業・財産・信用状態、その他債務者の被るべき苦痛の程度、申立ての理由の疎明の程度を考慮して、決定されます。

ただ、裁判所の内部において一定の基準はあり、原則としてその基準によって運用・決定されています。

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第4 申立てにあたっての留意事項

1 管轄

保全命令の管轄裁判所は、①本案の管轄裁判所と、②仮に差押えるべき物もしくは係争物の所在地を管轄する裁判所になります。

たとえば、債権を仮差押する場合には、債務者が有する債権を支払う人(これを「第三債務者」と呼びます)の所在地になります。

債務者が東京の会社で、大阪にある銀行口座を仮差押しようとする場合には、東京地裁と大阪地裁と両方に管轄が生じます。

2 申立書に記載する内容等

 申立書には、以下の内容を記入します。

  • 標題   
  • 当事者の表示
  • 請求債権の表示又は仮処分により保全すべき権利の表示
  • 申立ての趣旨
  • 申立ての理由  ⇒ 被保全権利と保全の必要性
  • 疎明方法の表示
  • 添付書類の表示
  • 年月日の表示
  • 裁判所(管轄裁判所)の表示

債権者が申立書において、「被保全権利と保全の必要性」を具体的に記載し、証拠との対応関係を明らかにすることで、裁判所が迅速に紛争の要点を把握できることになります。

申立書の具体的な内容については、裁判所のホームページに書式一覧がありますので、こちらを活用します!

🔗「保全事件の申立て」東京地裁HP

3 添付書類

当事者に法人がいる場合

・当事者に法人がいれば、登記事項証明書が必要になります。
  → 第三債務者についても登記事項証明書が必要です。

(注意)
東京地裁の場合、債権者と第三債務者は代表者事項証明書で足りますが、債務者は会社の規模等が保全の必要性判断にも影響しますので、現在登記事項証明書が必要になります。

(不動産が目的物の場合)
 ・登記事項証明書
 ・固定資産評価証明書

→ 固定資産評価証明がない場合には、鑑定書、住宅ローンの金額、土地の公示価格、近隣土地の取引価格等を証する書類、工事請負契約書等、集められる代替資料を検討します。

4 申立手数料と予納郵便切手

申立手数料

申立手数料は、一律2,000円です。
基本的に当事者が増える毎に、2,000円ずつ増えていきます。

郵券

裁判所のホームページを参照して準備します。
下図は東京地方裁判所のページですが、郵券は下図で準備すれば全国に対応できます。

🔗裁判所ホームページ

5 目的物の特定

保全手続において苦労することの一つが、目的物の特定です。

仮差押においては、目的物が動産を除いて特定することが必要で、特に債権の場合に特定が難しい場合があります。
第三債務者にとって目的物の債権の識別を容易にできる程度の特定が必要で、さらには複数の債権がある場合には順序を付けることも必要です。

仮処分の場合も、執行が不能とならないよう特定することが求められ、図面を用いた特定が必要になることもあります。

特に、日照権等に基づく建物の一部の建築等禁止仮処分などは、建物の範囲等の特定は、基点や距離、方位を入れた正確な図面を用いなければ執行不能となることがありますので、注意が必要です。

6 審理の手続

仮差押・係争物に関する仮処分

密行性の要請から、基本的に書面のみ、もしくは債権者面接によって審理が行われます。
疎明方法として、原本の準備を忘れないようにします。

仮の地位を定める仮処分

密行性が要請される度合いが少なく、かつ、債務者に重大な影響を与えることが多いため、債務者が立ち会うことのできる審尋の期日にて審理が行われます

7 担保

担保額の算定の基礎となるものは、原則として目的物価格を基準にします。
決定が出てから、1週間以内に振込等、対応が必要なことが一般的です。

8 却下されてしまったら、、、

却下決定に不服がある場合、債権者は告知を受けた日から2週間以内に即時抗告をすることができます。

この却下決定に対して、さらに争う手段はありません。
三審制が保障されていないことも、民事保全が迅速性を訴求している手続の特徴といえます。

9 (参考)保全命令発令を争う債務者の手段

保全命令が発令された場合の債務者の争う手段については、次の記事をご参照ください。

【参考】 仮差押・仮処分(保全命令)に不服を申立てる(争う債務者の視点から)
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 保全命令(仮差押・仮処分)に債務者が対抗する手段とは?
https://ik-law.jp/hozenfufuku/

第5 仮差押の限界

保全命令が発令され、債務者からの不服申立てでも覆らなければ、後はいよいよ訴訟を提起して最終決着を目指します。

ただ、債務者が債務超過により法的手続(破産、特別清算、民事再生、会社更生)に入ると、仮差押は失効します。

債権回収を目指しつつも、債務者が手続に入ってしまうと失効してしまう点で、仮差押の制度的な限界と感じています。

第6 民事保全を利用する際の留意点

差押が空振りになってしまっても、担保は基本的に本案が終わるまで返ってきません。

たとえば、銀行に預金債権の仮差押を申し立てたけど、債務者名義の口座がない・残高がない場合や、動産仮差押で執行官が現場に赴いたけれども何も差押えられなかった場合などが挙げられます。

また、保全命令を発令してもらいながら、本案で敗訴してしまうと、保全命令によって債務者が被った損害について賠償するリスクが生じます。

債権者としては、事実関係と証拠を吟味したうえで、本案での勝訴の可能性と、差押える対象財産と保全の必要性(一般的に不動産は債務者に与える影響が少ない一方、動産などは与える影響が大きいとされます)を慎重に検討して申立てる必要があります。

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「債権回収」記事の一覧(目次)と、当事務所の弁護士費用
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