ゴルフクラブの会員を退会したけれど、「預託金は10年以上も先の期間に返還すると言われた。」などのご相談がよくあります。

あまりに先の期日を言われてしまうと、本当に返ってくるのか疑問を持つのも当然です。

結論は、退会あるいは預託金の返還を申し出てから5年で消滅時効にかかります。

この記事では、預託金の返還を求めるにあたり、消滅時効の問題について解説します。

退会または預託金の返還を求めてから5年で消滅時効となります。
預託金返還請求の消滅時効

1 消滅時効の考え方

1 消滅時効の期間

債権の消滅時効は、権利を行使できることを知った時から5年(民法166条1項1号)、債権者の認識に関わらず権利を行使することができる時から10年(同条同項2号)で完成し、時効によって債権は消滅します。

そして、預託金返還請求は、ゴルフ会員を退会、あるいは預託金の返還を申し出て初めて消滅時効が進行すると考えられています(東高判平3年2月13日、東地判平3年11月27日)。

そのため、(退会した会員は権利行使できることを知っているでしょうから)退会、あるいは預託金の返還を申し出たときから、5年で消滅時効が期間が経過するといえます。

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消滅時効に注意~時効の更新・猶予とは

2 消滅時効を止める(完成猶予・更新)

ゴルフ会員権の預託金返還の場面では、債務者の承認と訴訟提起を利用します。

債務者の承認

債務者が、債務を承認すると、承認した時点時効が更新されます

つまり、債務者が預託金の返還債務があることを認めた時点から、再び5年間の消滅時効が1から始まることとなります。

債権者としては、定期的に承認行為を求めることで、消滅時効の完成を防ぐことができます。

具体的には、返還を約束する書面を債権者に送付したり、1円であっても預託金を支払う行為が、債務の承認行為といえます。

訴訟(裁判)提起

裁判を起こすと、消滅時効の進行がいったんストップします(時効の完成猶予)。

そして、裁判所の判決が出ると、時効期間が更新されて、10年間は消滅時効にかからなくなります。

2 具体的な対応法

1 退会申請・預託金返還請求が未了の場合

預託金は、会員資格の退会に伴って発生する権利です。

退会申請等が未了でしたら、返還を求められない一方、消滅時効も進みません。

2 退会申請後、返還待ちの場合

退会申請を行っている場合には、消滅時効は進行しています。

ゴルフ場から、何十年後の期日にて返還するとの回答がある場合には、書面」で回答をもらうようにします。

口頭でも債務承認にあたりますが、仮にゴルフクラブが態度を変えて消滅時効を主張した場合には、債務承認を立証できる証拠がなく、預託金が消失してしまうリスクがあります。

たとえ、返還を曖昧なままにして、すでに10年以上経過したときであっても、債務承認の書面を受領すれば、その時から消滅時効は再スタートとなります。

消滅時効の完成が近い場合には、裁判にすることも検討します。

そうでない場合には、定期的に債務承認の書面を受領しておくと良いでしょう。

3 (参考)年会費の未払いの消滅時効

債権の消滅時効は5年です。

これは、会員権の年会費に未払いがあったとしても、支払期より5年以上経過している会費については消滅時効を援用することで、消失させることができます。

3 預託金返還請求は得意な弁護士に依頼する

預託金について、「返せる見込みがない。」、「返還待ちの人が数十人といるので、順番になる(数十年はかかりそう)。」などと言われた場合には、弁護士への依頼を検討しても良いでしょう。

ゴルフ場が民事再生等の法的手続を踏まない限り、回収不能で終わるケースはほぼないといえます。

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