労働者が業務または通勤によって負傷した場合には、労災保険から治療のために必要な補償を受けられます。

それが療養(補償)給付です。

この記事のポイントは、療養(補償)給付の内容と、いつまで請求できるかについて、詳しく説明しました。

この記事では、労災保険の療養(補償)給付について、その内容や請求できる期間などを詳しく説明します。

労働災害のご相談など、
お気軽にご連絡ください。

全国対応

Zoom、Teams、
Google Meet等にて

初回相談料

30
無料

詳細は🔗労災特設ページをクリックしてください。

第1 療養(補償)給付とは?

療養(補償)給付は、労働者が業務災害・通勤災害によってケガや病気になり、療養を必要とする場合に行われる給付です。

労災指定医療機関などで行われる治療が被災労働者に対して現物で支給され、ケガや病気が治癒するまで無料で療養を受けられます。

療養補償給付と療養給付の違い

  • 療養補償給付
    業務災害によるケガや病気などの治療のために行われる給付
  • 療養給付
    通勤災害によるケガや病気などの治療のために行われる給付

療養補償給付と療養給付は、いずれも給付される内容はほぼ同じですが、業務災害に対する給付については、使用者が負っている補償責任を担保するとの考え方から、「補償」という文字が入っています。

一方、通勤災害に対する給付は、使用者に補償責任はないため、「補償」という文字が入っていません。

【参考】🔗「療養(等)給付の請求手続」(厚労省)

【関連記事】あわせて読みたい

そもそも労災保険って何?

第2 給付内容

療養(補償)給付では、「療養の給付」と「療養の費用の支給」を受けられます。

給付の対象となる療養の範囲や期間はどちらも同じです。

療養(補償)給付は、療養の給付と療養の費用の支給の2種類があります。

1 療養の給付

療養の給付は、労災病院や労災保険指定医療機関・薬局など(以下、「労災指定医療機関」と呼びます)において、現物で支給される治療や薬剤です。

これらは無料で受給できます。

労災指定の病院などでは、窓口で会計費用の負担なく治療や薬の処方を受けられます。

2 療養の費用の支給

「療養の費用の支給」は、近くに労災指定医療機関がないなどの理由で、労災指定医療機関等以外の医療機関・薬局(以下、その他の医療機関)で療養を受けた場合に、その療養にかかった費用を支給する現金給付です。

この「療養の費用の支給」を利用した場合、被災労働者は治療費を一旦負担しなければなりませんが、請求書の申請によってかかった治療費が返還されます

どちらにせよ、被災労働者が治療費を負担することはありません。

労災指定病院でなくても、後から治療にかかって費用を支給されるので、実質的な経済負担なく治療を受けることが出来ます。

労災保険の手続が異なる違いですね。

これらの違いを表にまとめました。

療養(補償)給付療養の費用の支給
治療を受ける医療機関労災指定医療機関左記以外の医療機関
治療に要した
費用の負担
全て労災が賄われ、被災労働者の負担はない。一旦被災労働者が費用を立て替え、申請後に還付される。
メリット・
デメリット
経済的負担がなく、費用還付のための申請が不要。一時的に費用負担をしなければならない。
還付のための申請が面倒。

なお、療養(補償)給付は、治療費入院料移送費など通常療養のために必要なものが含まれ、傷病が治癒(後述)するまで行われます。

ただし、一般的に治療効果が認められていない特殊な治療や、民間療法などは支給されませんので注意が必要です。

第3 療養給付の支給期間と補償内容

1 療養(補償)給付の支給期間 ~ 治癒の診断まで

療養(補償)給付は、業務災害・通勤災害が発生した時から、主治医が「治癒」と診断するまでの間に受給できます。

この「治癒」とは、身体の諸器官・組織が健康時の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行ってもその医療効果が期待できなくなった状態をいいます。

症状固定ともいいます。

「治癒」と診断された後は、病院に通って治療を受けたとしても、労災が適用されません。

労災保険で使われる「治癒」の意味は、日常的に利用される意味と異なる点は、よく注意をしましょう。

治療による効果が期待できなくなった段階で、以降は障害(補償)給付の問題として、後遺障害等級認定に基づく補償を受けることになります。

2 療養費用の支給請求権の消滅時効

労災指定医療機関で受ける療養の給付は、現物給付で治療が行われるため、消滅時効の問題が起こることはありません。

一方、その他の医療機関で治療を受ける場合に利用する「療養の費用の支給」は、費用の支出が確定した日の翌日から2年が経過すると、時効により請求権が消滅します。

この場合、被災労働者が立て替えた治療費の還付を受けられなくなり、結果として自己負担となります。

3 療養(補償)給付により補償される費用の例

療養(補償)給付で受けられる治療の範囲は、業務災害・通勤災害によるケガや病気の治療だけでなく、処方される薬、リハビリテーション、通院に要した費用などです。

以下、補償される費用のうち、代表的なものを示します。

  • 治療費
  • 入院費
  • 手術費
  • 看護料
  • 治療用装具、器具購入費(ギプス、松葉杖、義眼など)
  • リハビリ費
  • 薬代
  • 通院費
  • 移送費 など

なお、通院費については、被災労働者の住居地または勤務地から、原則、片道2km以上の通院であって、次の1~3いずれかに該当する場合に支給対象となります。

  1. 被災労働者の住居地または勤務地と同一市町村内の適切な医療機関へ通院したとき
  2. 被災労働者の住居地または勤務地と同一市町村内に適切な医療機関がないため、被災労働者の住居地または勤務地と隣接する市町村内の適切な医療機関へ通院したとき(被災労働者の住居地または勤務地と同一市町村内に適切な医療機関があっても、被災労働者の住居地または勤務地と隣接する市町村内の適切な医療機関の方が通院しやすいとき等も含まれる)
  3. 被災労働者の住居地または勤務地と同一市町村内や被災労働者の住居地または勤務地と隣接する市町村内に適切な医療機関がないため、それらの市町村を越えて最寄りの適切な医療機関へ通院したとき

【参考】🔗「通院費について」(厚生労働省鹿児島労働局)

第4 治癒した後に受けられる給付

被災労働者が治癒した後に受けられる給付には、次のようなものがあります。

1 障害(補償)給付

治癒(症状固定)と認められた場合、療養の給付は終了しますが、治癒したとしても、身体に疼痛や知覚障害、運動麻痺などの後遺症(後遺障害)が残った場合、障害等級に応じて障害(補償)給付を受けることができます。

給付の方法としては、年金給付と一時金給付の2通りがあり、障害の程度が重いとき(第1級~第7級)には年金が、障害の程度が軽いとき(第8級~第14級)には一時金が、それぞれ障害の程度に応じて支給されます。

2 再発した場合は

業務災害・通勤災害によるケガ・病気が治癒したと認められた後に、再び症状が出た場合は、次のいずれの要件を満たせば再発として認められ、再び療養(補償)給付を受けることができます。

  1. その症状の悪化が、当初の業務または通勤による傷病と相当因果関係があると認められること
  2. 症状固定の時の状態からみて、明らかに症状が悪化していること
  3. 療養を行えば、その症状の改善が期待できると医学的に認められること

3 アフターケア

アフターケアとは、労災保険の社会復帰促進等事業の一環として、被災労働者の労働能力の維持を図り、円滑な社会生活への復帰を援助する目的で実施されるものです。

具体的には、せき髄損傷頭頸部外傷症候群等慢性肝炎等の傷病に罹患した人に対して行われる診察、保健指導、保健のための薬剤の支給などです。

これらの疾病は、治癒(症状固定)後においても症状が変化したり、後遺障害に付随する疾病を発症させる恐れがあるため、病気の予防や健康維持を狙いとしてこのような処置が取られています。

アフターケアを受けるためには、被災労働者は必要な申請を行い、都道府県労働局長から「健康管理手帳」の交付を受けなければなりません。

その手帳を労災指定医療機関や、医療リハビリテーションセンター、総合せき損センターに提示することにより無料でケアを受けることができます。

【参考】🔗「アフターケア制度のご案内」(厚生労働省HP)

4 療養給付に関するQ&A

⑴ 転院の可否

すでに労災指定医療機関で療養の給付を受けている方が、帰郷などの理由で別の医療機関に転院することができます。

ただし、転院した先の医療機関でも療養(補償)給付を受け続けられるよう、必要な手続きをしなければなりません。
次のようなケースです。

労災指定医療機関から、別の労災指定医療機関に転院する場合

現在診察を受けている労災指定医療機関から、別の労災指定医療機関へ転院する場合、転院先の労災指定医療機関へ次のいずれかの書類を提出しなければなりません。

  • 療養補償給付たる療養届の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第6号:業務災害用)
  • 療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第16号の4:通勤災害用)
労災指定医療機関から、その他の医療機関へ転院する場合

現在診察を受けている労災指定医療機関から、その他の医療機関へ転院する場合、転院先の医療機関の窓口で労災の治療であることを伝えて、元々入院していたの労災指定医療機関から発行された紹介状を提出して治療を受けます。

前述のとおり、その他の医療機関で治療を受けた場合には、いったんは治療費を立て替えて支払う必要があります。立て替えて支払った治療費については、請求をすることによって還付を受けられます。

【参考】🔗「病院を変えたいのですが、どうしたらよいでしょうか。」(厚労省HP)

⑵ 整骨院、鍼灸の利用の可否

労災保険を使って接骨院を利用することもできます。

ただし、脱臼または骨折に対する施術については、応急手当の場合を除き、医師の同意が必要です。

施術を行った整骨院などが労災指定医療機関であれば、被災労働者は請求書を整骨院に提出するだけで良く、窓口での費用負担はありません。

鍼灸院でのはり・きゅうの施術については、医師が必要と認め診断書を交付したものについてのみ保険給付の対象になりますので注意してください。

⑶ 入院した場合のおむつ代や購入した下着類

入院した場合のおむつ代、病院から借りたパジャマ代は、原則として自己負担となり、労災保険が使えません。

ただし、被災労働者が緊急収容され、医療機関からおむつが支給されたり、パジャマが貸与された場合には、傷病の感染予防上の必要性から支給されることもあります。詳しくは入院している医療機関の担当窓口に尋ねると良いでしょう。

⑷ 入通院に付き添った人の費用

被災労働者が入院・通院をする際に、家族などが介助者として付き添ったケースでは、必要と認められる場合には、介助者の分の交通費も労災保険給付の対象となります。

第5 まとめ

弁護士 岩崎孝太郎

療養(補償)給付の具体的な内容について解説をしました。

療養(補償)給付は、業務災害・通勤災害に遭った労働者が、ケガや病気を治療するために受給でき、治療期間においても手厚いものと考えています。

労災保険の療養(補償)給付の手厚さは、労災保険の長所であり、たとえ会社が労災保険の利用に消極的だったとしても、労災保険を利用すべき理由の1つともいえます。

労働災害のご相談など、
お気軽にご連絡ください。

全国対応

Zoom、Teams、
Google Meet等にて

初回相談料

30
無料

詳細は🔗労災特設ページをクリックしてください。