定期借地権は、普通借地権の法定更新の適用をなくし、一定の期間が経過すると必ず地主に土地が返ってくる制度です。
この記事では、定期借地権の中でも、もっとも汎用性の高い「一般定期借地権」について解説します。
定期借地権の概要や、他の事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権は、別記事にて解説します。
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第1 一般定期借地権の内容
一般定期借地権は、使用形態に定めはありませんので、マンション、戸建て、商業施設、オフィスビル、公共用施設など、幅広く活用されています。
次のような特徴があり、契約締結を必ず書面で行うことが必要となります(オンラインも可)。
- 期間が50年以上であること
- 契約期間満了による更新が認められないこと
- 建物の再築による期間の延長がないこと
- 借地人の建物買取請求権がないこと
そのため、一般定期借地権の成立には、50年以上の賃貸期間が定められている借地権で、上記の3つの特約が定められていることが必要です。
第22条
🔗「借地借家法」e-Gov法令
1 存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第一項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。
2 前項前段の特約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十八条第二項及び第三十九条第三項において同じ。)によってされたときは、その特約は、書面によってされたものとみなして、前項後段の規定を適用する。
それでは、一般定期借地権の要件や、実際の運用などを説明していきます。
第2 要件に関する諸問題
1 期間を50年以上とすること
たとえば、「2023年4月1日から2073年3月31日までの50年間」、「2023年4月1日から50年間」などのように、契約の始期と終期を定める必要があります。
ポイントは、50年未満の期間を定めるもの、単に「50年以上」とするものや、無期限や永久と定めるものは定期借地権としては無効となります。
なお、定期借地権が無効となった場合は、定期借地権だけを設定するという明確な合意があれば格別、そうでない場合には普通借地権として扱われることになると考えられます。
2 契約満了による契約の更新がないこと
定期借地権の特徴は、契約で定めた期間が満了すると、普通借地権と異なり、更新されることがありません。
ただ、契約期間満了前に借地人と地主の合意によって、期間を延長することは可能です。
たとえば、期間の満了直前に、30年間の延長(合計80年間)をするなどです。
再契約について
同様に定期借地権が終了した後、延長ではなく、地主と借地人が再度合意をして定期借地権を再設定することもできます。
再契約は、当初の定期借地権が終了する前に合意することもできます。
定期借地権を再契約する回数についても、制約はありません。
3 建物築造による期間の延長がないこと
借地借家法7条は、建物滅失後において、借地権設定者の同意を得て建物の再築をした場合、借地権の存続期間の延長を定めています。
一般定期借地権の場合、この規定の適用を特約により排除します。
建物の築造による存続期間の延長を認める特約がある場合には、一般定期借地権の本質に反するので、定期借地権の契約としては無効となり、普通借地権として扱われます。
第7条 借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失(借地権者又は転借地権者による取壊しを含む。以下同じ。)があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から二十年間存続する。ただし、残存期間がこれより長いとき、又は当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間による。
2 借地権者が借地権設定者に対し残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する旨を通知した場合において、借地権設定者がその通知を受けた後二月以内に異議を述べなかったときは、その建物を築造するにつき前項の借地権設定者の承諾があったものとみなす。ただし、契約の更新の後(同項の規定により借地権の存続期間が延長された場合にあっては、借地権の当初の存続期間が満了すべき日の後。次条及び第十八条において同じ。)に通知があった場合においては、この限りでない。
🔗「借地借家法」e-Gov法令
4 建物買取請求権がないこと
定期借地権では、契約期間の満了により借地人は建物を取壊し、更地にして返還することが原則です。
そして、原状回復をどの程度行うべきかについても、契約書に記載されることが多いです。
具体的には、建物の土台を取り除くことや、地下杭を埋める場合には「地表から〇mまでの地下杭を除去する」などが挙げられます。
建物を壊さず土地を返還する特約について
建物を残したまま、現状有姿にて返還する特約も有効です。
これは契約期間満了時に借地人が建物を買取るよう請求できる建物買取請求権とは別の性質をもつ特約になります。
有償譲渡、無償譲渡のいずれもありますが、定期借地権契約設定の際に借地人が地主に預入れた保証金(敷金)の全額、又は半額とするなど、土地の返還に際して条件を決めておくことが大切です。
なお、分かりづらい点ですが、厳密には、建物買取請求権を残す定期借地権も認められてはいます。
もっとも、建物買取請求権を排除することが登記実務の申請要件になっていますので、シンプルに建物買取請求権を排除する特約を定めたうえで、建物譲渡の合意をしておく方法がよいでしょう。
5 書面で契約書が作成されていること
公正証書によって作成する必要はありませんが、書面によって作成されることが必要です(口頭だけでは不可)。
借地借家法の改正(2022年5月施行)により、オンラインによる締結も可能となりました。
ただ、実務上は公正証書によって作成されることが多いです。
これは、定期借地権の設定契約書の原本は、公証人役場で半永久的に保管されるため、借地権設定契約の証拠確保の観点から行われています。
電磁的記録(オンライン)による一般定期借地権の締結について
🔗「借地借家法等の改正の概要」(法務省HP)
第3 実務上の運用
定期借地権の締結に際して、一時金が受領されることがあります。
一時金には、保証金と権利金(前払地代、定期借地権設定の対価)による形が主に利用されています。
1 保証金について
一般に「保証金」として定期借地権設定の際に授受される場合、土地を返還した際に無利息で返還される預り金をいいます。
保証金は、更地価格の2~3割程度で設定されることが多いようです。
保証金は、借地人の地代の支払いや定期借地権終了後の借地人の建物取壊し費用を担保するものとして活用されています。
借地人は、50年以上先に保証金の返還を受けますので、保証金の返還を受ける担保として、土地に保証金返還請求権を被保全債権とする抵当権を設定することが多いです。
保証金の問題
定期借地権付き建物を借地人が第三者に譲渡しようとする場合、保証金は所有権に伴って当然に移行するものではありません。
第三者となる新たな建物所有者(購入者)は、保証金を差入れる必要があります。
これが定期借地権付き建物の流通を阻害する要因にもなっているとの指摘があります。
2 権利金について
権利金は、契約締結に際して授受されるもので、契約が終了したとしても、原則として地主が借地人に対して返還する必要がありません。
権利金には、定期借地権を設定する対価として、又は地代の一部を前払いする趣旨があるといわれます。
権利金の問題
権利金の問題は、中途解約の場合に発生します。
たとえば、前払い地代として一括で受領をしていた場合に中途で定期借地権が終了した場合には、残存期間に相当する金員は返還しなければならないと考えられています。
特に、契約終了の原因が借地人の債務不履行にあったとしても、残存期間に対応する地代相当分は、不当利得として返還が必要です。
この不都合を回避するために、権利金の授受を定期借地権の「設定の対価」であるとして、「期間の満了前に終了しても返還を要しない」と特約で明言することが想定できますが、あまりに当事者の衡平を害する場合には、返還の是非が問題になり得ます。
3 地代の支払方法(賃料の定め方)
地代の支払いについては、月払い方式や一括前払い方式などが活用されています。
定期借地権において賃料の増減額請求権(借地借家法11条)は、特約によっても排除することができません。
そこで、両当事者にとって地代の増減等を分かりやすいものとするべく、純賃料方式が多く活用されています。
つまり、地代などのうち地主が自ら取得する部分と公租公課などの経費に充てる部分とを分けて、地主が自らの手取りの部分については消費者物価指数等に合わせて増減させ、公租公課部分については公租公課の増減に応じて増減させる方法です。
第4 一般定期借地権の活用(特約や普通借地権からの活用)
1 特約による活用
ディベロッパーが、ある程度まとまった区域に数十戸の定期借地権付き住宅を分譲するような場合に、建物について構造や材質、色合い、又は共用部分の使用法などについて特約を定めておき、借地人を拘束させることがあります。
所有権物件においては、いわば建築協定(住民による紳士協定)として締結されることがあるものです。
ただ、建築協定では法的拘束力はないので、各住民への拘束力は弱いものになってしまいます。
これに対し、借地権物件では、特約(契約内容)として法的拘束力を持たせることができますので、コンセプトをもった街づくりをディベロッパーが積極的に行い、住民に共有させることができます。
価値観を共有できる居住空間作りに、一般定期借地権が活用されている事例です。
2 普通借地権からの活用
普通借地権が設定されている場合であっても、普通借地権の契約を終了させて、新たに定期借地権を設定することも当事者の合意によって行うことができるとされています。
ただ、定期借地権は普通借地権に比べて、借地人にとって不利な契約といえますので、契約の切換えにあたっては、①相応の合理的理由があり、②当事者間が真に合意されたといえることが必要です。
過去の裁判例(東京地判平29年12月12日)では、「従前から借地関係が存在している当事者間においては、相応の合理的理由があり、その中で、当事者間で真に合意されたといえる場合でなければ、別途契約を締結し直すことにより定期借地権に切り替える旨の合意が有効とはならない」と判示しています。
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