借地権は、何十年にわたって継続する権利ですので、借地人も家族構成の変化など、売りたい場面も出てくるでしょう。
一方、地主としても誰か分からない人に借地権を譲渡されても困ってしまいます。
借地人と地主の話合いで解決できれば良いですが、そうでなければ、借地非訟制度を利用して借地権をめぐる問題は解決が図られます。
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借地非訟事件とは?手続の流れを解説今回のように、借地人が借地権を譲渡したいのに対し、借地権が第三者に譲渡されるならばと、優先的に地主が借地権を買取ることができる制度があります。
これは一般に借地人が借地権を第三者に譲渡しようとすることに対して、地主が「介入」するため、「介入権」と呼ばれます。
地主が完全な土地所有権を取得するチャンスでもありますので、積極的な活用を推奨しています。
より詳しく解説していきます。
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第1 介入権とは? ~ 地主の対抗手段
1 介入権の概要
借地権者から賃借権譲渡・転貸許可の申立てがあった場合、もしくは借地権を競公売で買受けた人から賃借権譲受許可の申立てがあった場合に、地主が自ら譲渡又は転貸を受けることができる制度があります。
これがいわゆる地主の「介入権」と呼ばれるもので、地主が賃借権の譲渡又は転貸を阻止するための対抗手段として設けられた制度です。
第19条(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
🔗e-Gov法令検索「借地借家法」
3項 第一項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。
2 介入権における申立内容について
借地人の申立てに対する対抗手段である性質のため、賃借権譲渡許可の申立てに対しては、地主は建物・賃借権の譲受けの申立てができます。
同様に、借地人が転貸許可の申立てであれば、地主も建物の譲受け・転借の申立てをすることができます。
なお、競公売に伴う賃借権譲受許可の申立てにおいては、譲渡許可のみとなり、転貸を求める場合はありません。
介入権が認められた場合の効果
建物・賃借権の譲受であれば、建物及び土地賃借権の売買契約が成立したのと同様の効果が生じます。
建物の譲受・転借であれば、建物の売買契約及び土地転貸借契約が成立したのと同様の効果が生じます。
3 介入権の意義
このような介入権が認められると、地主にとっては、土地所有権の完全性を回復するメリットがあります。
また、借地人にとっては、借地上の建物や借地権取得に投下した資本を回収できるメリットがあります。
このように、介入権とは、いわば地主と借地人の利益を調整する制度と言うことができます。
第2 介入権を申立てる
1 申立ての時期
介入権の申立ては、裁判所が定める期間内にしなければなりません。
ほとんどの場合、借地非訟の期日において、裁判官より口頭で告知されます。
東京地裁の場合、この期間は告知を受けた日から3週間程度としているのが一般的とのことです。
裁判所が定めた期間を過ぎてしまうと、介入権の申立ては不適法として却下されてしまいますので、期間には十分注意が必要です。
地主が介入権の申立てをしないことを明らかにした場合には、申立てをする期間を定める必要はなく、告知もされません。
【参考書式】🔗「第4 借地非訟事件」(大阪地裁HP)
2 介入権が認められる場合
介入権を申立てると、基本的に介入権は認められますので、あとは金額の問題(「相当の対価」の算定の争い)となることがほとんどです。
介入権の申立てを認容する裁判が確定した場合は、賃借権譲渡・転貸許可申立て、競公売に伴う賃借権譲受許可申立てに対する審理・裁判はその必要がなくなりますので、これらの申立ては失効します。
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借地権を売りたい場合~借地非訟の活用建物に抵当権等の担保権がついている場合
所有権の負担となる担保権等の抹消登記手続を行った上で、代金支払と建物引渡し、建物所有権移転登記手続を引換とする判決が出されることが多いです。
当事者が義務の履行を怠った場合
介入権の申立てを認容する裁判が出た後に、一方当事者がその義務を履行しない場合は、相手方は強制執行により義務の履行を求めることができます。
また、債務不履行を理由として、建物等の売買契約を解除することもできます。
3 介入権が棄却される場合(裁量的棄却)
借地人と譲受予定者との間に、親族、会社とその主要な構成員などの特殊で緊密な関係がある場合には、介入権の申立てが裁量的に棄却される場合が多いです。
親族や会社構成員などの場合には、借地権が無断で譲渡されても、地主に対する背信的行為とは認められず、契約解除が認められないことも多くあります。
もっとも、借地人が紛争予防のために慎重を期して賃借権譲渡許可の申立てをしたために、地主の介入権行使の申立てが認容され、借地人が目的を達成できなくなるというアンバランスが生じてしまいます。
無断譲渡を強行しても譲渡ができるケースがあります。
その場合に、法律で用意されている賃借権譲渡許可の申立手続を採ったら、地主に借地権を買取られてしまったとなると、借地非訟という制度が本末転倒になってしまいますね。
そのため、賃借権の譲渡が、契約解除の原因になり得ないような場合には、介入権の申立てが裁量的に棄却され得ることを念頭に置く必要があります。
【裁量的棄却がなされた事例】
- 事実上の養子に対する遺贈のケース(東京高決S55.2.13)
- 建物が他人に渡ることを阻止するために父親所有の建物が子が競落したケース(東京地決H11.7.9)
- 借地権者が自己の事業の後継者に土地賃借権を含む全財産を包括遺贈したケース(東京地決H13.10.24)
- 借地権者(法人)の代表者と譲受予定者が実の父娘の関係にあるケース(大阪地決H22.5.10)
- 遺産である建物および土地賃借権を共同相続人の共有とし、換価のために競売に付す旨の遺産分割調停が成立した後、共同相続人の1人が建物を競落したケース(東京高決H23.6.6)
- 借地上の建物の申立人の持分を他の共有者に譲渡することを内容とする共有物分割がされたケース(東京地決H23.11.25)
裁量的棄却に注意すべきケース
上記のほかにも、以下のようなケースでは裁量的棄却がなされる可能性に注意する必要があります。
- 借地上に所有する2棟の建物を一括して第三者に譲渡しようとする賃借権譲渡許可の申立てに対して、そのうちの1棟の建物とその敷地のみに限定して介入権の申立てをする場合(東京高決S55.2.13)
⇒ 第三者が購入を拒否する可能性や、敷地の分割による借地権価格の下落リスクがある - 地主が相当対価を支払うことができない恐れがある場合(東京高決H26.5.29)
⇒ 介入権を優先しつつ、支払えない場合には第三者へ譲渡との決定がされた。 - 所有者の異なる2つの土地の上に1つの建物が建っている場合(またがり建物)(最決H19.12.4)
⇒ 借地上の建物以外の部分について裁判所に権限がない。
第3 「相当の対価」の算定
1 基本的な考え
介入権の申立てを認容する場合には、「相当の対価」を定めてこれを命じることができます。
「相当の対価」とは、借地権価額と建物価額相当額の合計額から、借地権者が第三者に譲渡する場合に借地権設定者が受領する譲渡承諾料相当額(一般的には借地権価額の10%程度)を差引いた額となります。
2 建物・土地賃借権の価格算定(参考程度)
建物及び土地賃借権(借地権)の価格は、国土交通省の定める「不動産鑑定評価基準」(🔗「不動産鑑定評価基準等」国土交通省HP)を基にして、市場価値を表示する適正なものとなります。
借地非訟手続では、鑑定委員会が鑑定を行いますが、この委員会で算定された価格が最終的な結論に直結するものとなります。
建物の価格
原価法により、価格時点における対象建物の再調達原価を求め、この再調達原価について原価修正を行って求められる積算価格によって算定される事例が多いようです。
借地権価格
比準価格によって得られた更地価格に、借地権の取引事例や相続税路線価等における借地権割合を考慮して決定された対象借地権の借地権割合を乗じて算定されることが多いようです。
第4 介入権の申立てに強い弁護士と当事務所の弁護士費用
1 借地権に強い法律事務所として
借地権は、一度設定すると長期にわたる権利となりますので、地主が利用できる見込みを立てることは非常に困難と言えます。
その意味で、介入権を行使できる場面は、完全な所有権を取戻せる絶好の機会といえ、千載一遇のチャンスです。
借地権を取得する予定がない場合には、譲渡承諾料を取得し、借地人が変わることによるリスクをしっかりを補償してもらうことが必要です。
当事務所は、不動産トラブルの専門的知見と経験をもって、地主・借地人の双方が円滑に不動産を活用できるよう尽力致します。
2 当事務所の弁護士費用
借地権について、当事務所では以下の費用を頂戴しております。
3 お問い合わせフォームへ
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