「同じ飲食店なのに、立退料がホルモン店では4,000万円超、喫茶店では300万円台」──このような大きな差は、実際の裁判例でしばしば見られます。

飲食店の立退料は、業態によって大きく変動します。

とりわけ、ホルモン・焼肉・中華料理といった「重飲食」と、カフェ・喫茶・バーといった「軽飲食」とでは、立退料の水準に顕著な差が出ることがあります。

本記事では、重飲食・軽飲食それぞれ複数の裁判例を取り上げ、「設備投資額の違い」と「代替物件確保の難易度」という2つの視点から、立退料の算定実務を読み解きます。

区分 事案 立退料 ポイント
重飲食 ホルモン店(池袋) 4,383万円 工作物補償1,514万円・営業補償1,605万円と、移転補償・営業補償が大部分
重飲食 焼肉店(世田谷) 2,702万円 内装費用1,937万円、代替物件確保困難性を明示
重飲食 焼肉店(渋谷・家族経営) 900万円 代替物件困難性(煙・油・臭い)を明示、ただし小規模
軽飲食 パリ風カフェ(池袋) 1,090万円 借家権価格941万円、こだわり内装の再現費用は抑制的
軽飲食 喫茶店(葛飾・兼業) 300万円 代替物件容易、兼業あり
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第1 重飲食と軽飲食で立退料に差が出る2つの理由

重飲食と軽飲食で立退料の水準に差が出る背景には、大きく分けて2つの要因があります。

1 設備投資額の違い

重飲食(ホルモン・焼肉・中華等)と軽飲食(カフェ・喫茶・バー等)では、店舗運営に必要な設備に大きな違いがあります。

重飲食の典型例である焼肉店・ホルモン店では、油煙を大量に発生させるため、強力な排煙ダクト、業務用換気設備、各テーブルへの排煙装置、グリストラップ、業務用コンロや焼き場といった特殊設備が必須となります。
中華料理店でも、中華レンジのための強力なガス設備排気設備が必要です。

これらの設備は、いずれも高額な工事費を要し、新たな店舗で再構築するには、まとまった資金が必要です。

一方、軽飲食では、エスプレッソマシン、カウンター、テーブル・椅子といった比較的汎用性の高い設備が中心で、重飲食に比べて設備投資額が抑えられる傾向があります。

立退料の算定においては、「工作物補償」や「内装費用(移転先の内装工事費用)」といった項目で、こうした設備投資の差が反映されます。

重飲食では、この部分だけで数千万円に達することも珍しくありません。

2 代替物件確保の難易度

重飲食は、煙・匂い・油の発生により、周辺テナントや近隣住民への影響が大きく、貸主側が入居を嫌がる傾向があります。
その結果、重飲食が入居可能な物件は限られ、代替物件の確保に時間と労力を要します。


加えて、重飲食店は徒歩圏の常連客に支えられていることが多く、商圏を維持するためには、元の店舗と同じ駅・同じ商圏内で物件を探す必要があります。
条件を満たす物件が見つからない場合、営業継続自体が困難になります。

軽飲食は、煙や匂いの問題が小さく、オフィスビル・商業ビル・路面店を問わずほぼどこでも出店可能です。
居抜き・スケルトン問わず選択肢が広く、代替物件確保の困難性は相対的に低くなります。



立退料との関係では、この「代替物件確保の難易度」は、賃借人の「建物使用の必要性」の評価や、営業補償の期間の長短、借家権価格の水準などに反映されます。

第2 重飲食の裁判例

1 東京地判令和5年9月19日(炭火焼ホルモン店)

裁判例サマリー:炭火焼ホルモン店の立退き事例
事案の概要 所在地・物件: 池袋駅西口 商業地域 / 築約60年ビル1階
立退き理由: 賃貸人(原告)からの老朽化・耐震性不足を理由とする更新拒絶
立退料の推移 原告提示:当初 500万円 → 後に 1,619万円に増額
裁判所認定:4,383万円
立退料の内訳詳細 ① 狭義の借家権価格:980万円(差額賃料補償方式を重視)

② 損失等の補償:3,403万円
  • 移転補償:1,798万円
    • 工作物補償:1,514万円
    • 動産移転補償:11万円
    • 移転雑費:273万円
  • 営業補償:1,605万円
    • 収益減収:263万円 / 得意先喪失:737万円
    • 固定費経費:225万円 / 従業員休業:380万円
本判決の
最大のポイント
賃借人は至近にグループ店舗があり、都内12店舗を展開する事業者であったため、本件建物を使用する必要性は「極めて高いとまではいえない」と判断されました。

しかし、炭火焼ホルモン店特有の排煙ダクトや換気設備など、重飲食特有の特殊設備を移転先で再構築するための「工作物補償(1,514万円)」が巨額になったことが、立退料が4,000万円を超える大きな要因となりました。
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2 東京地判令和6年7月30日(焼肉店)

裁判例サマリー:地域密着型の焼肉店の立退き事例
事案の概要 所在地・物件: 世田谷区の商店街 / 築70年以上の木造2階建ての2階部分
立退き理由: 賃貸人からの老朽化・耐震性不足を理由とする解約申入れ
特徴: 昭和53年から長年にわたり焼肉店を営業
立退料の推移 賃貸人提示:当初 800万円
裁判所認定:2,702万円
損失等(3,377.5万円)の
内訳詳細
裁判所は、以下の損失等(合計3,377.5万円)を算定した上で、建替えの必要性が高いことや、昭和53年から長期間にわたり経済的効用を享受してきた事情を考慮し、合計額の約8割にあたる「2,702万円」を最終的な立退料として認定しました。

  • 差額賃料(2年分): 1,224.6万円
  • 移転契約費用(2か月分): 154.4万円
  • 引越費用: 60.7万円
  • 移転先店舗の内装費用: 1,937.7万円
本判決の
最大のポイント
立地特性を踏まえた代替物件確保の困難性(場所的利益)について、裁判所が明確に事実認定している点です。

判決では「条件を満たすような代替物件を確保することが容易でないことは当裁判所に顕著な事実である」と述べられ、「同じ駅・同じ商圏・同じ規模」という現在の経営に不可欠な条件を満たす物件確保の難しさが、使用必要性を高く評価する強い根拠となりました。

また、損失合計額のうち、移転先店舗の内装費用(約1,937万円)が全体の約7割を占めています。排煙や厨房設備など、重飲食特有の巨額な設備投資の必要性がストレートに立退料を押し上げる要因となることがよく分かる事例です。
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3 東京地判平成29年5月11日(焼肉店|家族経営・小規模)

裁判例サマリー:小規模・家族経営の焼肉店の立退き事例
事案の概要 所在地・物件: 渋谷区 / 木造2階建ての1階店舗部分(約18㎡)
立退き理由: 賃貸人(共同相続人)からの建替えを理由とする解約申入れ
特徴: 昭和48年頃から家族経営の焼肉店を営む(当時の被告は80歳超)
立退料の推移 賃貸人提示:450万円
裁判所認定:900万円
損失等(約941.7万円)の
内訳詳細
裁判所は、以下の損失等(約941.7万円)を算定した上で、被告が40年以上の長期間にわたり経済的効用を享受してきた事情を考慮して一定の減額を行い、最終的に900万円が相当と認定しました。

  • 差額賃料(2年分): 240万円
  • 移転契約費用: 60万円
  • 引越費用: 30万円
  • 代替店舗の内外装費用: 600万円
  • 半月分の営業補償: 11.7万円
本判決の
最大のポイント
重飲食特有の代替物件確保の困難性について、裁判所が「煙、油や臭いが発生するとの理由で本件店舗の代替店舗の確保は容易でない」と明示的に認定し、使用必要性が高いと評価しました。

一方で、中規模・大規模な重飲食の事案と比較すると、店舗規模が約18㎡と小規模であったこと、家族経営であったこと等から、内外装費用は600万円にとどまり、立退料総額も900万円に収まっています。

「重飲食=代替物件確保困難」という立退料を押し上げる構造的要因は働きつつも、店舗規模や経営形態によって立退料(特に設備移転コスト)が大きく変動することを示す好例といえます。
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第3 軽飲食の裁判例

1 東京地判令和5年3月23日(パリ風喫茶店)

裁判例サマリー:パリ風カフェの立退き事例(軽飲食)
事案の概要 所在地・物件: 池袋駅南口徒歩圏 / 公園に面した築約50年のビル1・2階
立退き理由: 賃貸人(原告)からの老朽化・耐震性不足を理由とする解約申入れ
特徴: 平成10年頃から20年以上にわたり「パリの裏通りにあるカフェ」をコンセプトに営業
立退料の推移 賃借人(被告ら)主張:約9,766万円
裁判所認定(1階部分):1,090万円
※2階部分(850万円)を合わせると合計1,940万円
立退料(1階部分)の
内訳詳細
① 狭義の借家権価格:941万円
(控除方式4割、割合方式3割、差額賃料還元方式3割の比重で算定。長期営業と好立地が評価された)

② 通常生じる損失の補償:147万円
  • 内部造作等の補償:41万円
    • ※1㎡あたり6万円を基礎とする鑑定人査定(償却2割を控除)
  • その他移転費用等:106万円
    • 仲介業者の報酬:32.2万円
    • 移転先選定調査費用:5万円
    • 引越費用その他移転関連雑費:68.8万円
本判決の
最大のポイント
カフェの人気の理由である「こだわりの内装」の再現費用について、裁判所が極めて抑制的な判断を下した点です。

被告らは内装費用として1,300万円超を求めましたが、裁判所は「従前の造作や家具等の評価額を大きく超えて、原告の負担により新品と入れ替えることを可能とするのはいささか公平に反する」として退け、造作補償はわずか41万円にとどまりました。

重飲食の排煙ダクト等とは異なり、軽飲食の「内装のこだわり」は主観的要素を含みやすく、新品同等で再現する費用が満額認められるわけではない(厳しく減価償却される)という現実を示しています。
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2 東京地判平成26年11月12日(喫茶店・兼業)

裁判例サマリー:兼業・小規模喫茶店の立退き事例(軽飲食)
事案の概要 所在地・物件: 葛飾区 / 鉄骨造2階建ての1階部分(約33㎡)
立退き理由: 賃貸人(原告)からの老朽化・耐震性不足を理由とする解約申入れ
特徴: 昭和63年から喫茶店を経営。被告はタクシー運転手との兼業。
立退料の推移 裁判所認定:300万円
立退料の
算定構造
裁判所は、借家権価格を基礎としつつ、被告の使用必要性や諸事情を総合的に勘案して、最終的な立退料を認定しました。

  • 基礎とされた借家権価格: 24万円
  • 最終的な認定額(諸事情勘案後): 300万円
本判決の
最大のポイント
本件は、立退料を低水準に抑える方向に働いた「2つの要素」が明確に示された典型例です。

① 軽飲食特有の代替物件確保の容易性
裁判所は「被告が現在とほぼ変わらない地域で喫茶店を経営できる物件は近隣に複数存在する」と明確に認定しました。煙や匂いを伴わず、オフィスビルや小規模な路面店等でも営業できる軽飲食の特徴が反映されています。

② 兼業による生計維持の必要性の低下
被告はタクシー運転手として年260万円前後の収入があり、喫茶店の所得(年58万~149万円程度)を上回っていました。つまり、本件店舗以外にも生計を維持できる収入源があり、営業継続の必要性が相対的に低いと評価されました。

これらの結果、「使用を必要とする事情はあるが、相当額の立退料(300万円)で償える」との判断に着地しています。
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第4 分析──重飲食・軽飲食の視点から立退料を読み解く

1 設備投資額が立退料にもたらすインパクト

重飲食の裁判例では、工作物補償・内装費用(移転先内装再構築費用)が立退料の大きな構成要素となっています。

事案 内装・工作物等の補償額 割合
ホルモン店事案 工作物補償 1,514万円 立退料全体の約35%
焼肉店(世田谷)事案 内装費用 1,937万円 立退料算定基礎の約57%
焼肉店(渋谷)事案 内外装費用 600万円 立退料算定基礎の約64%
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いずれも、排煙ダクト、強力換気設備、テーブルダクト、業務用コンロ等の重飲食特有の設備を、移転先で再構築する費用が多額に計上されています。

これに対し、軽飲食の裁判例では、内部造作等の補償は1㎡あたり6万円程度を基礎とする画一的な算定(パリ風カフェ事案では41万円)にとどまり、たとえ「こだわりの内装」を主張しても、新品と入れ替える費用が満額補償されるわけではありません。

重飲食では、客観的・物理的に必要な特殊設備の再構築費用が補償の中核にあるのに対し、軽飲食では主観的要素を含む「内装のこだわり」は補償額の抑制方向に働くという、実務的に重要な対比が見て取れます。

2 代替物件確保の難易度が立退料にもたらすインパクト

重飲食2件の裁判例では、いずれも裁判所が代替物件確保の困難性を明示しています。

事案 代替物件確保の困難性に関する判示
焼肉店(世田谷)事案 条件を満たすような代替物件を確保することが容易でないことは当裁判所に顕著な事実
焼肉店(渋谷)事案 煙、油や臭いが発生するとの理由で本件店舗の代替店舗の確保は容易でない
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これらの認定は、賃借人の「建物使用の必要性」を高める方向に働き、立退料を押し上げます。

他方、軽飲食の喫茶店(葛飾)事案では、「喫茶店を経営できる物件は近隣に複数存在する」と認定され、代替物件の容易性が、立退料を抑制する方向に働きました。

軽飲食(パリ風カフェ)事案でも、「都心のターミナル駅付近にあり、喫茶店を営業することのできる同等の物件を探索して移転することができないものとはいえない」と認定され、やはり代替物件の確保が困難とまでは認められていません。

このように、代替物件確保の難易度は、重飲食・軽飲食で裁判所の認定が明確に分かれるのが一般的な傾向です。

3 業態だけで決まらない──規模・営業年数・兼業の影響

もっとも、「重飲食だから高額」「軽飲食だから低額」と単純に割り切れるわけではありません。
上記裁判例からは、以下のような修正要因が読み取れます。

  • 規模の影響 同じ焼肉店でも、池袋のチェーン店規模(世田谷事案で約83㎡)と小規模家族経営(渋谷事案で約18㎡)では、内装費用・営業補償額が大きく異なり、立退料も2,702万円と900万円で3倍の開きがあります。
  • 長期営業による場所的利益 重飲食・軽飲食のいずれでも、長期営業は立退料の増額要因となります。ただし、パリ風カフェ事案のように20年営業・好立地であっても、借家権価格(941万円)の範囲内で評価されるのが一般的です。
  • 兼業の有無 喫茶店(葛飾)事案のように、賃借人が他に収入源を持つ場合、建物使用の必要性が相対的に低く評価され、立退料は抑えられる方向に働きます。
  • 長期間低廉な賃料で使用してきた事情 焼肉店(世田谷)事案や焼肉店(渋谷)事案のように、長期間にわたって低廉な賃料で経済的効用を享受してきた場合、立退料算定基礎から一定の減額がなされる傾向があります。

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第5 よくあるご質問

飲食店の立退料の相場はいくらですか?

業態・規模・立地によって大きく異なります。本記事で取り上げた裁判例では、重飲食(焼肉店・ホルモン店等)で900万円〜4,383万円、軽飲食(喫茶店・カフェ等)で300万円〜1,940万円という結果が出ています。「飲食店だからこの金額」という単純な相場はなく、業態・設備投資額・代替物件確保の難易度・営業年数・店舗規模・兼業の有無といった個別事情が複合的に影響します。

重飲食と軽飲食で立退料はなぜ差が出るのですか?

主に2つの理由があります。①設備投資額の差:焼肉店・ホルモン店等の重飲食では、排煙ダクト・強力換気設備・グリストラップ等の特殊設備が必要で、移転先での再構築費用が高額になります。裁判例では内装・工作物補償だけで600万円〜1,937万円に達したケースがあります。②代替物件確保の難易度の差:重飲食は煙・匂い・油の問題から入居を断られるケースが多く、適切な代替物件の確保が困難です。裁判所もこの困難性を明示的に認定しており、賃借人の使用必要性を高める方向に働きます。

立退料の算定には何が含まれますか?

立退料は、大きく①借家権価格(賃借人が有する借家権の財産的価値)と②損失等の補償(移転に伴う実費・営業損失)の2つから構成されます。②の内訳としては、工作物補償(現在の設備の損失)、移転先内装費用、動産移転費用、差額賃料(現在より高い賃料になる場合の補填)、営業補償(移転中の収益減・得意先喪失等)、従業員休業補償などが含まれます。重飲食では②の工作物・内装費用が特に高額になる傾向があります。

焼肉店・ホルモン店など重飲食店の立退料が高くなる理由は何ですか?

主な理由は2つです。第一に、移転先での設備再構築コストが高いことです。排煙ダクト・テーブルダクト・業務用換気設備・グリストラップなど、重飲食特有の設備は高額な工事が必要で、裁判例では工作物補償・内装費用だけで600万円〜1,937万円が認定されています。第二に、代替物件の確保が困難なことです。煙・匂い・油の問題からビルオーナーや周辺テナントが入居を嫌がるケースが多く、同商圏内で条件を満たす物件を見つけることが難しいため、裁判所も賃借人の使用必要性を高く評価します。

カフェや喫茶店(軽飲食)の立退料が低くなりやすい理由は何ですか?

理由は主に2点あります。①代替物件の確保が比較的容易であること:煙・匂い・油の問題がないため、オフィスビル・商業ビル・路面店など幅広い物件で営業可能です。裁判例でも「近隣に営業できる物件が複数存在する」と認定されたケースがあります。②設備投資の再構築コストが低いこと:エスプレッソマシンやカウンターなど比較的汎用性の高い設備が中心で、内装費用も「こだわりの内装」を主張しても新品同等での再現費用が満額認められるわけではなく、減価償却を考慮した金額に抑えられる傾向があります。

長年営業している飲食店は立退料が高くなりますか?

長期営業は、立退料の増額要因になり得ます。理由は、①長年の常連客や地域コミュニティとのつながり(場所的利益)が認められやすいこと、②借家権価格の評価において長期営業・安定収益が考慮されることがあるためです。ただし、長年にわたって低廉な賃料で経済的効用を享受してきた事情は、逆に立退料算定額からの減額要素になることもあります(裁判例では算定基礎額の約2割が減額されたケースも)。長期営業の事実をプラスに最大化するためには、適切な主張立証が重要です。

飲食店に立退きを求めたいのですが、立退料をできるだけ抑えるために重要なことは何ですか?

立退料を適切な水準に抑えるために、賃貸人側が意識すべきポイントは主に4点あります。

①正当事由を早期に固める 老朽化・耐震性不足を理由とする場合、耐震診断報告書・建物調査報告書など客観的な証拠を事前に整えておくことが重要です。正当事由が強固であるほど、交渉での立場が有利になります。

②賃借人の業態・設備状況を事前に把握する 本記事の裁判例が示すとおり、重飲食店への立退き交渉では、移転先での設備再構築費用(工作物補償・内装費用)が立退料を大きく押し上げます。交渉前に、賃借人がどのような設備を設置しているかを確認し、補償額の試算を行っておくことが欠かせません。

③早期交渉・早期解決を目指す 交渉が長期化するほど、営業補償(移転中の収益減・得意先喪失等)や差額賃料の期間が長くなり、立退料の総額が膨らむリスクがあります。裁判になると賃貸人側の提示額が数倍に跳ね上がるケースも多く、交渉段階での早期合意が賃貸人にとって有利に働くことが少なくありません。

④最初の提示額を根拠なく低く設定しない あまりにも低い金額を提示すると、賃借人側の不信感を招いて交渉が決裂し、訴訟に発展するリスクが高まります。不動産鑑定士による査定を踏まえた合理的な金額を提示することが、結果的に早期解決・コスト抑制につながります。

立退料の水準は、賃借人の業態・規模・個別事情によって大きく変動します。交渉を始める前に弁護士・不動産鑑定士に相談し、適正な立退料の見通しを立てたうえで戦略的に臨むことが、賃貸人側にとっても不可欠です。

弁護士に立退き交渉を依頼するメリットは何ですか?

主なメリットは3点あります。①適正な立退料の確保:裁判例の相場・算定方法を踏まえ、賃貸人側の提示額が不当に低い場合に根拠を持って交渉できます。②交渉力の確保:弁護士が代理人となることで、賃貸人側の無理な期限設定や圧力を法的に遮断できます。③最悪のリスク回避:正当事由の有無・立退料の水準を見誤ると、低額で応じてしまったり、逆に交渉が長引いて営業継続が困難になるリスクがあります。特に重飲食店のケースでは、立退料が数千万円規模になることもあり、弁護士費用を大幅に上回る経済的メリットが生まれる可能性があります。

第6 立退き・明渡しの問題は専門家(弁護士)へご相談ください

1 飲食店の立退きの裁判例を分析する視点

弁護士 岩崎孝太郎

重飲食と軽飲食の立退料算定の差異は、①重飲食が必要とする排煙・換気・調理設備の高額な設備投資、②重飲食特有の煙・匂い・油による代替物件確保の困難性、という2つの業態上の特性にあります。

もっとも、業態だけで立退料が決まるわけではなく、店舗規模、営業年数、立地、兼業の有無、賃料水準といった個別事情も大きく影響します。
実際の交渉・訴訟では、業態の特性を踏まえつつ、これらの個別事情を立退料の算定にどう反映させるかが勝敗を分けます。

飲食店の立退きをめぐる交渉や裁判では、賃借人にだけでなく、賃貸人も、早期に弁護士・不動産鑑定士のサポートを受け、自店の業態特性と個別事情を適切に主張立証することが、適正な立退料を確保するうえで不可欠です。

弁護士 岩﨑孝太郎
この記事の著者
東京法務局 筆界調査委員

岩﨑 孝太郎 文の風東京法律事務所 弁護士・東京弁護士会所属

本記事は、文の風東京法律事務所の弁護士・岩﨑孝太郎が執筆しています。 2009年に弁護士登録後、不動産問題、借地借家、建物明渡し・立退き、賃料増減額請求などの分野に取り組み、 裁判例と実務の双方を踏まえた情報発信を行っています。

  • 東京弁護士会所属
  • 不動産・借地借家トラブル対応
  • 建物明渡し・立退料の実務解説
  • 中小企業法務・顧問契約にも対応

2 当事務所の弁護士費用

初回法律相談料
60分 1万1,000円(税込)

建物明渡(家賃滞納以外の理由による立退請求~用法違反など)

手続 着手金(税込) 報酬金(税込)
交渉 33万円 賃料の 5ヵ月分
調停 55万円
訴訟 77万円

※但し、報酬金の最低額は 55万円(税込)となります。

建物明渡(家賃滞納)

建物種別 着手金(税込) 報酬金(税込)
居住用建物 27.5万円 27.5万円
非居住用建物 38.5万円 38.5万円
【オプション】
  • 未払賃料を回収した場合: 回収額の 16.5%
  • 占有移転禁止仮処分: 22万円

※非居住建物とは、店舗・オフィス等を指します。

土地明渡し

※経済的利益(固定資産税評価額の2分の1等)を基準とします。

手続 着手金(税込) 報酬金(税込)
交渉 8.8%
(最低33万円)
17.6%
調停・訴訟 8.8%
(最低44万円)
17.6%

※但し、報酬金の最低額は 55万円(税込)となります。

立退料の請求(賃借人側):賃貸借契約の継続主張等も含む

手続 着手金(税込) 報酬金(税込)
交渉 22万円
立退料の獲得
・300万円以下: 55万円
・300万円超: 11% + 22万円
契約継続(住み続ける)
賃料の 1ヵ月分
調停 33万円
立退料の獲得
・300万円以下: 55万円
・300万円超: 11% + 22万円
契約継続(住み続ける)
賃料の 2ヵ月分
訴訟 44万円
立退料の獲得
・300万円以下: 55万円
・300万円超: 11% + 22万円
契約継続(住み続ける)
賃料の 3ヵ月分

※(着手金)交渉から調停、調停から訴訟などに移行する場合は、 差額のみとなります。

※(報酬金)賃貸借契約継続の場合、報酬金は最低 55万円(税込)からとなります。

交渉・訴訟の費用(目安)

経済的利益 着手金 報酬金
300万円 以下 最低33万円 17.6%
300万円超 ~ 3000万円 以下 5.5% + 9.9万円
(最低33万円)
11% + 19.8万円
3000万円超 ~ 3億円 以下 3.3% + 75.9万円 6.6% + 151.8万円
3億円 超 2.2% + 405.9万円 4.4% + 811.8万円

※報酬金の最低額は 11万円(税込)となります。
※総額の下限は、交渉44万円~法的手続66万円~、となります。

3 ご不安な方へ|よくいただくご質問

まだ大きなトラブルになっていません。「ちょっと怖い・おかしい」程度の不安や違和感でも相談してよいですか?

もちろんです。
不動産トラブルは、初期対応が非常に重要です。
契約内容の確認や、相手方への最初の通知(内容証明郵便など)を法的に正しく行うことで、被害の拡大を防ぎ、有利に交渉を進められる可能性が高まります。
「不安」・「違和感」の段階でご相談いただくのがベストタイミングです。

相談料はいくらかかりますか?

初回相談料として、1時間以内:1万1,000円を頂いております。
以降、30分以内の延長ごとに5,500円を頂いております。

弁護士費用規定を見ても、よく分かりません。

ご安心ください。
ご相談の際に、事案の内容をうかがった上で、着手金や報酬金について明確なお見積もりをご提示します。
ご納得いただいてから契約となりますので、予測不能な費用が出る心配はありません。

相談方法を教えてください。

以下のいずれかの方法でご相談を承っております。

  • オンライン相談(Google Meetなどを利用します)
  • ご来所による対面相談

※正確な状況をお伺いするため、恐れ入りますが、お電話やメールのみでのご相談は承っておりません。

オンライン相談が可能とのことですが、遠方(地方)からの相談も対応していますか?

はい、もちろんです。
当事務所はGoogleMeetなどのオンラインツールを最大限活用し、全国の不動産売買トラブルに対応しております。

これまでにも、北は札幌市から、南は那覇市や宮古島市まで、遠方のお客様からのご相談・ご依頼実績がございます。
お住まいの地域にかかわらず、専門家による法務サポートを提供いたしますので、どうぞ安心してご相談ください。

相手(売主・買主・不動産会社)と直接話したくありません。弁護士に全て任せられますか?

はい、お任せください。
弁護士がご依頼者様の代理人となると、相手方との交渉窓口はすべて弁護士になります(受任通知を送付します)。
相手方からの連絡にストレスを感じることなく、法的な手続きを進めることができます。

相談の際、どのような資料を準備すればよいですか?

必須ではありませんが、以下の資料をお持ちいただくと相談がスムーズです。

  • 契約書(売買・賃貸借)
  • 重要事項説明書
  • 物件の図面、パンフレット
  • トラブルの内容がわかるもの(写真、メール、相手方からの通知書など)
  • 経緯をまとめたメモ(時系列で何があったか)

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どのようなサービス(プラン)がありますか?

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    不動産の明渡し・立退きをめぐるトラブルの解決には、一般的な不動産問題とは異なる専門的なノウハウが不可欠です。

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    あなたの正当な権利を、私たちがしっかりと守り抜きます。

    弁護士紹介

    弁護士 岩﨑孝太郎
    弁護士
    岩﨑 孝太郎
    • 1981年生まれ
    • 1997年文京区立第十中学校卒業
    • 2000年私立巣鴨高校卒業
    • 2006年東京大学教育学部卒業
    • 2008年東京都立大学法科大学院卒業
    • 2009年弁護士登録
    • 2024年文の風東京法律事務所を開設
    弁護士 小川弘義
    弁護士
    小川 弘義
    • 1985年生まれ
    • 2004年神奈川県立横浜翠嵐高校卒業
    • 2009年一橋大学法学部卒業
    • 2011年東京都立法科大学院卒業
    • 2012年弁護士登録
    • 2024年文の風東京法律事務所を開設

    アクセス

    文の風東京法律事務所
    所在地
    〒112-0004
    東京都文京区後楽2-3-11 ニューグローリビル3階
    アクセス
    各線「飯田橋駅」東口・C1出口より徒歩約5分
    お問い合わせ
    TEL:03-3524-7281
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    ご相談については、予約制となっております。
    来所相談だけでなく、Zoom・Google Meetによるオンライン相談も対応しておりますので、全国対応しております。

    お問い合わせフォームまたはお電話にてご連絡ください。

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    相談時に必要なもの

    事前に以下のものをご準備いただくと、ご相談がスムーズに進みます。

    • 相談内容の要点をまとめていたメモ
    • ご相談に関する資料や書類
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    2

    ご相談(初回相談料:1時間あたり1万1,000円)

    法律上の問題点や採り得る手段などを専門家の見地よりお伝えします。

    問題解決の見通し、今後の方針、解決までにかかる時間、弁護士費用等をご説明いたします。

    ※ご相談でお悩みが解決した場合は、ここで終了となります。

    STEP
    3

    ご依頼

    当事務所にご依頼いただく場合には、委任契約の内容をご確認いただき、委任契約書にご署名・ご捺印をいただきます。

    STEP
    4

    問題解決へ

    事件解決に向けて、必要な手続(和解交渉、調停、裁判)を進めていきます。

    示談、調停、和解、判決などにより事件が解決に至れば終了となります。

    STEP
    5

    終了

    委任契約書の内容にしたがって、弁護士費用をお支払いいただきます。
    お預かりした資料等はお返しいたします。

    STEP
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    全国対応(オンライン相談可) 相談料:1時間 11,000円(税込)
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