Question
旧法借地権(借地法)において、存続期間を定めなかった場合、建物が朽廃すると借地権は消滅すると聞きました。
この建物が「朽廃」するとは、どのような状態をいいますか?
【参考】
借地法(旧法)2条1項但書
「建物カ此ノ期間満了前朽廃シタルトキハ借地権ハ之ニ因りて消滅ス」
Answer
朽廃とは、経年劣化などの自然に生じた腐食損傷等により、建物としての利用に耐えず、建物としての社会経済上の効果効用を喪失した状態をいいます。
具体的には、建物構造各部の資材の腐朽或は、壁の剥離のみでなく、構造の要部に腐食損傷を生じた結果、建物を全体的に観察して構造上の意義を失った場合であり、建物保存のために為される通常の修繕によってはその存続が不可能といえる情況をいいます(最判昭31.5.21参照)。
ただし、火災や風水害や地震などによって一挙に建物としての効用を失った場合や、人為的に建物の効用を失った場合などは、「朽廃」に該当しません。
その上で、朽廃といえるかどうかの判断にあたっては、建物を全体的に観察し、特に柱、梁、桁、基礎土台等の構造部分に腐朽損傷があるかどうか等を中心に、建物保全のための通常の修繕によっては存続が不可能になっていないかどうかを検討して判断されます(東京地判平14.8.29)。
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1 裁判例の概観
⑴ 朽廃が認められた事例
建物 | 裁判所の評価 | 裁判所・日時 |
作業場兼資材置場用の建物 | 屋根の木端はすべて損耗して全面的に葺き替えねばならず、骨組みの丸太の損傷も激しく、いつ倒壊するか分からない危険な状態にある | 最判昭50.2.28 |
バラック建物 | 修理には新築に近い改造が必要で、柱等の建物の骨格部分もそのまま使用できない状態 | 東京地判昭52.8.29 |
無人建物 | 基礎等建物の構造部分にほぼ全面的な補修をする必要があり、新築同様の費用が必要となる状態 | 東京高判平5.8.23 |
築60年 雨漏り10年 居住不可の状態 | 物理上の使用不能のみならず、社会経済上の効用を喪失する程度に達する場合も含まれる | 東京地判平12.6.29 |
⑵ 朽廃が認められなかった事例
建物 | 裁判所の評価 | 裁判所・日時 |
傾斜している建物 | 土台・柱に適切な補修を施せば、倒壊の危険から免れることが可能。建物全体としては、なお相当期間その効用を果し得る状態にある | 最判昭43.12.20 |
傾いて老朽化が 進んだ建物 | 建物としての社会的経済的効用は保持されている | 東京地判昭49.5.30 |
築60年の建物 | 雨漏りが続き、屋根瓦に損傷等があるとしても、骨格部分の腐食、損傷はそれほど大きいものではない | 東京地判平26.12.12 |
築60年程度で傾斜がある建物 | 目視できる限りでは建物倒壊に至るような大きな損傷などは確認することができず、社会経済上の効用を喪失する程度に建物が損壊しているとは到底認められない | 東京地判令2.1.17 |
築60年程度で6年間使用されておらず、区から改善指導される建物 | 基礎・土台は著しく劣化・腐朽しているものの、一部露出したコンクリート壁に大きな劣化は認められない。 現状のままでは安全に使用することは困難だが、建物としての利用価値が皆無というにはやや困難 | 東京地判令2.1.31 |
裁判例において朽廃が認定されるためには、新築に近い大改造を要し、経済的に新築する方が有利であるような場合や、通常の補修では建物の効用を全うし得なくなるような場合が想定できます。
仮に、市場価値を失ったとしても、使用可能であれば朽廃にはなりません。
このように裁判例を見ても、朽廃が認められる場合は多くありません。
2 朽廃の規定に関する注意点
⑴ 借地権の存続期間を合意で定めた場合
朽廃による借地権消滅の制度は、当事者が借地権の期間を定めなかった場合に、建物の自然的寿命が尽きるまで土地を賃貸借するという、当事者の合理的意思に基づいています。
そのため、借地権の設定について期間の合意がある場合には、朽廃による借地権の規定は適用されず、約定期間満了前に建物が朽廃したとしても借地権は消滅しません。
朽廃によって借地権が消滅するのは、当事者が借地権の存続期間を定めなかった場合に限定されるのですね。
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借地権の存続期間とは?⑵ 朽廃すべかりし時期の終了
朽廃が近くなっていた場合に、通常の修理を越えた大規模修繕を行うことで、朽廃の時期は延びることになります。
借地人は、大規模修繕を行うことで、朽廃時期を遅らせることは可能でしょうか。
大修繕に地主の了承がある場合
当事者の合理的意思解釈として、賃貸借の期間は大修繕により延長された建物の耐用年数か、又は当初の存続期間の満了時まで延長されるものとなります。
大修繕に地主が了承しない場合
大修繕を行わなかった場合に到来するであろう朽廃の時期に、借地権は消滅するとされます。
判例において、修繕しなければ3年で朽廃の状態に達していたであろうアパートに対し、耐久年数を20年以上増加させる修繕が行われた事案において、「借地契約は修繕工事なければ朽廃すべかりし時期にはおそくとも終了した」(最判昭和42.9.21)と判示されています。
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