賃貸住宅管理業者にとって、クレーム対応は重要な業務の1つになっていることが多いと思います。
2019年に国土交通省が行ったアンケート調査において、賃貸住宅管理業者が実施する管理業務としては、「苦情対応」、「敷金精算・原状回復」、「契約更新」が多い(8~9割程度)との結果があります。
そして、受託管理している賃貸住宅で発生しているトラブルで対応が困難なものとして、「借主間・近隣住民との間の苦情対応」(52.3%)が最も多く挙げられており、クレーム対応が大きな業務課題になっている現状がうかがえます。
【参考】🔗「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査結果の公表」(国土交通省HP)
クレーム対応といえば、弁護士が強みを活かせる分野の1つです。
もっとも、クレーム対応を中心として、弁護士を絡めることにより効率的な業務遂行が可能になることは、あまり知られていように感じています(これは弁護士側の情報発信の不足だと考えています)。
この記事では、意外と知られていない弁護士の活用法を解説していきます。
【ぜひお読みいただきたい方】
- 弁護士とは、具体的にトラブルが発生した場合に相談するものと考えている
- クレーム対応で外注することは、恥ずかしいものだと思っている
- 苦情対応で苦労するのは、従業員の能力が足りないと考えている
- 顧問弁護士といえば、契約書のチェックをお願いするものと考えている
- 紛争予防に弁護士が役立つなど考えていない
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詳細は🔗顧問弁護士の推奨する活用法をご覧ください。
第1 不動産の賃貸住宅管理業と苦情(クレーム)対応
1 対応の基本的要領
クレームに限らず、あらゆる要望や苦情について、その要求内容や要求方法(態様)についての精査をしながら対応にあたっていることでしょう。
要求内容や要求態様を分析するにあたり基準となる考え方が、下の図です。
①要求内容に法的根拠があるのか、②要求内容が正当といえるか、③要求方法(態様)が正当といえるか、との視点を持つと分析しやすいです。
たとえば、賃借人が持ち込んだ造作であるにもかかわらず、壊れたから修理等を要求する場合には、法的根拠がないものといえます(①の要件を満たさない)。
また、「冷房が効かないから最新の機種に交換して欲しい。」などの要望は、修理や交換による対応を超えているもので、一般的には要求内容が不当といえます(②を不充足)。
同様に、電話口で暴言を吐く、何度も電話を繰り返す等が見受けられる場合は、要求方法(態様)が不当というべきです(③を不充足)。
2 過大な要求がある場合(騒音トラブルを例に)
賃貸住宅管理で最も多く、かつ、最も管理会社を悩ませるのが、騒音に関する苦情(トラブル)でしょう。
騒音被害を訴える方は、多くの人が気にならない程度の音であっても、気になって気になって仕方がないものであり、大きなストレスを抱え込むことになります。
騒音トラブルは、健康被害にもつながる大きな問題であり、時には殺人事件に発展する危険も孕んでいることから、特に慎重な対応が求められます。
もっとも、多くのケースは法律的には何も問題がなく(音量を測定しても基準値を超えない)、根本原因は騒音被害を訴える方の心因的要因に依っていることでしょう。
そのような場合には、「生活音に悩んでいる方がいますのでご配慮ください。」などと他の居住者へお願いすることはできます。
しかし、それ以上の対応については、法律上の根拠がなく、かつ、要求内容にも正当性がないといえます。
賃貸管理会社としては、
①騒音測定器を貸出す、又は行政等から借りるよう依頼する、
②共同住戸全体への掲示や告知の他に、生活音を出している世帯に、根気強くできる限り音を出さないよう依頼する、
③それでも改善しない場合には引越しを促す、
などの対応しかできないのが現状だと思います。
賃貸住宅管理業者として準備すべきこと
不動産トラブルは、法律判断が避けられません。
そのため、騒音についての法律知識を仕入れておかなくては、騒音被害を訴える方に対して説得力のある説明をすることはできません。
賃貸住宅管理業者にとって、正しい法律知識の習得は必要不可欠です。
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騒音クレーム対応の裁判例を概観3 初期対応で失敗した(会社に落ち度がある)場合
たとえば、エアコンなどの設備不良の連絡があったにもかかわらず、担当者の失念などにより対応が遅れてしまい、クレームに発展してしまったケースを想定します。
想定できるリスク(賃借人としての正当な要求)は、対応が遅れてしまったことに伴う賃料の減額請求や賃貸借契約の解約です。
管理業者の過失が原因であれば、賃料の減額分を管理業者が負担します。
しかし、賃借人から賃料の減額にとどまらず、慰謝料請求をされた場合、どのように対応すべきでしょうか。
また、賃借人が契約を解除した場合、賃貸人から空室期間の賃料を請求された場合、どのような検討をして、どのように対応すべきでしょうか。
いずれも具体的な事実関係によっても異なりますし、会社の顧客サービスとしてどこまでの対応を行うべきかは答えがありません。
ただ、ダメな対応法は、対応策を検討するにあたり明確な基準がなく、場当たり的な対応になってしまうことです。
これでは、声の大きい要求に譲歩していくことになりかねず、要求者も求めれば譲歩を得られやすいことを知ると、要求がエスカレートしてしまう危険があります。
「法律的にはどうなるか?」を知っておくと、明確な見通しをもって対応方針を検討できるようになりますね。
第2 顧問弁護士をどのように活用するか?
1 活用の具体例の紹介
不動産賃貸借の日々発生するトラブルに対して、法律判断は避けて通れません。
顧問弁護士の活用により、通常業務をより効率的に行うことができます。
活用の具体例を挙げますので、何となくでもイメージを持っていただけたらと思います。
日常相談での活用
まず、日常の業務において、判断に迷う事項が発生した場合には、専門家からの回答を得ることができます。
上階からの水漏れ被害がありました。
どのような損害を請求できるか教えてください。
管理規約違反として他の賃借人を追い出せと言われました。
管理規約違反行為に対して、どのようなことができますか?
害虫駆除をした費用をオーナーに請求したいとの要望がありました。
これはオーナーが負担すべきものでしょうか。
対応での活用
次に、賃借人の方から「直接弁護士から聞きたい。」と言われた場合に(特に初期対応で会社の落ち度がある場合には積極的に活用できます)、顧問弁護士に対応をお願いすることや、弁護士の紹介をすることができます。
上階からの水漏れ被害者の方から、加害者への請求にあたり弁護士の紹介を依頼されています。
弊社の顧問弁護士として紹介させてください。
弁護士からの見解をお伝えしたところ、直接話を聞きたいと言われています。
ご対応をお願いできますでしょうか。
2 なぜ顧問弁護士が良いのか?3つのメリット
上記のような活用例は、一例に過ぎません。
顧問弁護士には、大きく3つのメリットがあります。
①従業員への安心感
顧問弁護士のメリットとして、従業員の方からも直接質問ができることが挙げられます。
経験のある従業員の方からすると当たり前のことでも、未経験の方からすると不安を抱えてしまうものです。
顧問弁護士には、役員等だけでなく、従業員からも気楽に聞きやすくなりますので、日常業務遂行において安心感を与えるものとなります。
②経済的メリット
顧問契約を締結していない場合、些細な相談事やちょっと確認したい事項があったとしても、相談予約をして、相談料を支払う必要があります。
顧問契約を結んでおけば、細かい質問ならば数多く質問することができ、相談料を都度払いするよりも、簡易かつ経済的といえます。
③組織的対応が可能
自社だけでは対応に手を焼いてしまう場合や、初期対応に失敗してしまい対応がしづらい場合など、(内容によっては別途費用がかかりますが)弁護士案件にしたり、弁護士を帯同して対応にあたることで、組織的対応が可能となります。
事件ごとに弁護士に依頼している場合では、本格的なトラブルに発展しているものでないと、なかなか費用対効果も合わないことが多いと思います。
顧問契約を締結しておくことで、段階を下げて、日常業務の中にも組み込んで対応にあたることが可能となります。
【関連記事】あわせて読みたい
クレームに「組織的に対応する」とは?3 顧問弁護士を有効に活用するためのポイント
顧問弁護士を活用することは、オンライン法務部を持つことと同様の効果があります。
つまり、日常業務での活用を通して、従業員が法的問題に詳しくなっていき、従業員の成長を担わせることができる点も大きなメリットです。
その意味で、いかに日常業務に顧問弁護士を組み込むかが、活用のポイントといえます。
第3 顧問弁護士の選び方と当事務所の紹介
1 顧問弁護士の選び方
顧問弁護士を選ぶにあたっては、専門的な知見や経験があることを前提に、信頼関係がないと継続するものではありませんので、最終的には弁護士の人柄で選ぶのが良いと思います。
当事務所も豊富な知見と経験を有していると自負していますので、お気軽にお問い合わせください。
不動産業を営んでいると、弁護士との付き合いは必然的に発生すると思いますが、比べて分かるものがあると思います。
2 当事務所の顧問契約プランと費用【全国対応】
当事務所は、「スタンダード」プランと「プレミア」プランの2種類を用意して、顧問サービスを提供しています。
オンラインで多くの業務が提供可能であることから、日本全国に対応しています。
(契約締結いただいた際には、直接ご挨拶にうかがいます。)
第4 クレーム対応特別プラン(顧問契約)
1 当事務所の考え
不当なクレーム、悪質なクレーマーから会社を守るためには、会社が一丸となり毅然とした対応を行う体制構築が必要不可欠です。
そのためには、継続的な支援が必要不可欠なものと考えており、顧問契約の締結をお願いしています。
【クレーム対応基本プランの提供サービス】
クレーム対応案件における弁護士の活用法は、対応が困難、もしくは判断に迷う事例について、随時ご相談を行います。
そして、定期的に検討会を行い、対応の是非と同種事例への対応策を打合せします。
その上で、これまでに発生した事例に対する検証を行い、それを基にした対応マニュアルを整備します。
法的手続を除いて代理人としての窓口対応業務までも含めていますので、弁護士費用を予算化できますし、コスパ良く外注できる存在としてご活用いただけます。
1~2年の継続により、クレーム対応業務を内製化していき、通常の顧問契約にダウンサイジングしていくことも可能です。
【関連記事】あわせて読みたい
売上を上げるツールとしての顧問弁護士活用法!2 弁護士費用と提供サービスプラン
クレーム対応:基本プラン(6ヵ月~)
クレーム対応:代行特化プラン
弁護士への委任を個々の案件ごとではなく、予算を設定して毎月定額化させたい場合に、特化プランを準備しています。
目安として毎月3件程度を上限に想定していますが、個別相談いたします。
民事全般:基本プラン
上記は、クレーム対応用の特別プランですが、事件対応の一般的なプランもご利用いただけます。
この場合、毎月5万円~の月額顧問料(6ヵ月~)に、以下の事件対応費用(着手金+報酬金)となります。
ご相談予約フォーム
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お問い合わせ
ご相談については、予約制となっております。
来所相談だけでなく、Zoom相談も対応しておりますので、全国対応しております。
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相談時に必要なもの
事前に以下のものをご準備いただくと、ご相談がスムーズに進みます。
- 相談内容の要点をまとめていたメモ
- ご相談に関する資料や書類
ご相談(初回相談料:1時間あたり1万1,000円)
法律上の問題点や採り得る手段などを専門家の見地よりお伝えします。
問題解決の見通し、今後の方針、解決までにかかる時間、弁護士費用等をご説明いたします。
※ご相談でお悩みが解決した場合は、ここで終了となります。
ご依頼
当事務所にご依頼いただく場合には、委任契約の内容をご確認いただき、委任契約書にご署名・ご捺印をいただきます。
問題解決へ
事件解決に向けて、必要な手続(和解交渉、調停、裁判)を進めていきます。
示談、調停、和解、判決などにより事件が解決に至れば終了となります。
終了
委任契約書の内容にしたがって、弁護士費用をお支払いいただきます。
お預かりした資料等はお返しいたします。
クレーム・カスハラ対応には、会社のトップが不当クレームに対して毅然と対応する姿勢を明確にする必要があります。
大きなストレスやうっぷんが溜まっている社会であっても、会社を悪質クレーマーから守る戦いを、専門家としてサポートします。