当事務所が対応にあたった実事例の一部をご紹介いたします。

事例を通じて、建物賃貸借の問題に対して、弁護士をどのように活用できるか、具体的なイメージをお持ちいただけましたら幸いです。

不動産の法律相談は、ぜひ
お気軽にご連絡ください

全国対応

Zoom、Teams、
Google Meet等にて

相談料

1時間
11,000

(税込)

詳細は🔗不動産トラブル特設ページをご覧ください。

事例 1

賃料不払い+明渡遅延で、テナントと連帯保証人に高額支払が命じられた事例

貸主側 定期建物賃貸借 賃料滞納 漏水紛争 全面勝訴

1. 事案の概要

定期借家契約において、テナントが「漏水事故は建物の問題であり、貸主が使用収益させる義務を果たしていない(だから払わない)」と主張し、賃料を複数月滞納。貸主が契約解除した後も、約2年半にわたり明渡しを拒否しました。

また、連帯保証人の一人は「保証から外れる合意があった」と主張し、支払いを拒絶しました。

2. 裁判所の判断

裁判所選任の専門家鑑定により、漏水原因は「テナント側が行った排水管工事の施工不備(接続方法の問題)」にあると認定されました。これにより、貸主の義務違反という前提が崩れ、賃料不払いは正当化できないとされました。

結論:全面勝訴
テナント会社および連帯保証人らに対し、
未払賃料等(数か月分)+ 明渡遅延損害金(賃料倍額相当 × 約2年半)
の支払が命じられました。
※本件では、契約上、明渡遅延時に賃料の倍額相当を損害金として支払う旨の条項があり、これが適用されました。
実務のポイント
  • 漏水などの設備紛争は水掛け論になりがちですが、必要に応じて「専門家鑑定」で原因を固めることが勝敗を分けます。
  • 「明渡遅延時の倍額損害金」条項は、滞納・居座り型の案件において、相手方に強力な経済的プレッシャーを与える有効な条項です。
  • 連帯保証人の離脱は、明確な書面がない限り容易には認められません。
事例 2

テナントの「錯誤無効(言いがかり)」を退け、未払賃料の支払を認めさせた事例

貸主・仲介側 店舗(転貸借) 居抜き物件 設備仕様トラブル 全面勝訴

1. 事案の概要

テナントが「重飲食として借りたのに、厨房が水を流して清掃できる仕様(ウェットキッチン)ではなかった。契約は錯誤で無効である」と主張し、保証金・礼金・賃料等の全額返還(賃料十数か月分相当)を求めて提訴してきた事案です。テナント側は仲介業者の説明義務違反も併せて主張しました。

これに対し貸主側は、以下の点を主張して全面的に争いました。

  • 本契約は「居抜き・現状有姿」であり、(残置)設備の不具合はテナント負担とする特約があること
  • 逆に、テナント側に未払賃料・共益費等(保証金控除後)の支払義務があること(反訴)

2. 裁判所の判断

裁判所は、テナントが「ウェットキッチンだと誤信していた」こと自体は認定しました。しかし、その前提(動機)が貸主側に明示・黙示に伝わっていたとはいえず、契約内容になっていないとして、錯誤無効を明確に否定しました。

また、居抜き物件で「現状有姿」「(残置設備等について)貸主(転貸人)は責任を負わない」旨の特約や引渡確認書面があったことを重視し、仲介業者の説明義務違反も認められないと判断しました。
なお、テナントの通知は「無効主張」ではなく「中途解約の申入れ」と評価され、解約予告期間満了までの賃料負担が認められました。

結論:ほぼ全面勝訴
テナント側の返還請求は全面的に棄却。
逆にテナントに対し、未払賃料等(保証金相殺後の残額)+ 遅延損害金 の支払が命じられました。
実務のポイント
  • 店舗の居抜き・転貸借では、「現状有姿」「残置設備は賃借人負担」「後から解除・賠償しない」等の契約設計が、紛争防御において決定的に重要です。
  • テナントの思い込みを防ぐため、募集資料や契約書で「仕様保証はしない/許認可は賃借人責任」を明確化しておくべきです。
  • 解約通知の文言次第で、「無効」か「解約」かの判断が分かれ、賃料支払い義務の期間(金額)が大きく変わります。
事例 3

高額な賃料増額・更新料請求を排斥し、和解により解決した事例

賃借人(テナント)側 飲食店 賃料増額 更新料・償却 和解成立

1. 事案の概要

飲食店テナント(被告)に対し、貸主(原告)が以下の理由で、合計約1,500万円規模の請求を行ってきた事案です。

  • 「過去の通知で賃料は増額済みである(差額が未払)」
  • 「更新料や、中途解約に伴う償却料(6か月分)も不足している」

テナント側は、「過去の通知は増額決定ではない」「適正賃料はもっと低い」「コロナ禍による減額が認められるべき」等を主張し、徹底抗戦しました。

2. 裁判所の判断(和解への心証)

〖賃料増額について〗
過去の文書は「協議の申入れ」に過ぎず、確定的な増額通知ではないと判断。貸主の主張する不足賃料請求を排斥しました。
また、将来分の賃料(増額の可否・相当額)についても、鑑定結果を踏まえ、貸主の請求額よりも低い金額を相当としました。

〖更新料・償却料等について〗
自動更新条項に基づく更新料の発生や、償却料の支払義務(損害填補としての性格)は認められました。
しかし、これらを含めても、保証金(敷金)の範囲内で充当・消滅するとの整理がなされました。

結論:和解成立
貸主からの約1,500万円規模の請求は事実上放棄され(請求断念)、
残存保証金(数百万円)をテナントへ返還する内容で和解が成立しました。
※テナント側は早期解決のため、遅延損害金等の請求を放棄しました。
実務のポイント
  • 「賃料を上げる」と書かれた文書でも、書き方(協議の申入れ等)次第では法的効力を持ちません。文言設計が重要です。
  • 賃料増額裁判は、最終的に不動産鑑定で決着することが多く、争点は「増額の要否」よりも「適正な幅(相当額)」になります。
  • 償却料は、条項の構造次第で「対価」か「損害填補」かが分かれ、消費税の扱いや遅延損害金の起算点が変わるため、専門的な分析が必要です。
事例 4

ペット条項違反による原状回復費用の請求(調停成立)

賃貸人 一戸建て ペットトラブル 原状回復 調停成立

1. 事案の概要

「届出のある犬1頭のみ可」とされていた一戸建て住宅の賃貸借において、退去後に以下の被害が確認されました。

  • 大型犬による引っかき傷・汚れ
  • 畳・絨毯の著しい毛羽立ち
  • 壁材に染み付いた排泄跡と強い臭気

賃貸人が立て替えた原状回復費用(数百万円)について、元入居者(賃借人)への支払いを求めた事案です。

2. 裁判所の判断(調停での心証)

退去後の状況証拠から、届出のない複数の大型犬飼育があったと認定。これは「通常損耗を超える汚損」であり、原状回復費用は賃借人の負担であるとの心証が示されました。
また、所有者が当初提示した金額ではなく、実際に業者へ支払った金額(請求書・領収書ベース)についても「相当な額である」と評価されました。

ただし、遅延損害金については「年14.6%」の約定があることの立証が不十分として、民法所定の年3%に制限されるとの見解が示されました。

結論:調停成立
裁判所から「元本全額の支払義務がある」との心証が示されたことを受け、賃借人も支払義務を認めました。
最終的に、遅延損害金等をカットする条件で、原状回復費用(数百万円)の支払を合意する調停が成立しました。
実務のポイント
  • ペット可物件であっても、「種類・頭数の限定」「汚損破損は退去時負担」の特約があれば、退去後の損耗評価が一気に厳しくなります。
  • 退去時に一度精算していても、後に所有者から損害を指摘されれば追加請求が生じる可能性がある点に注意が必要です。
  • 高率の遅延損害金(14.6%など)を取れるかどうかは、契約書における約定の有無と立証にかかっています。

不動産の法律相談は、ぜひ
お気軽にご連絡ください

全国対応

Zoom、Teams、
Google Meet等にて

相談料

1時間
11,000

(税込)

詳細は🔗不動産トラブル特設ページをご覧ください。