弁護士 岩崎孝太郎

借地契約更新後の建物再築許可申立事件(借地非訟)について解説します。

借地借家法では、借地契約更新後に建物が滅失した場合に、地主の許可なく借地人が借地契約の残存期間を超過する建物を築造したときは、地主は土地賃貸借の解約申入れをすることができます。

もっとも、地主の承諾ない限り再築ができないとすると、借地人には酷となる事態も想定されますので、裁判所に再築について代諾許可を与えて、当事者の利害調整を図ることができるようにされています。

この制度が、借地借家法により新しくできた借地契約更新後の建物再築許可申立事件です。

借地借家法が適用対象となる借地権(平成4年8月1日以降に設定)で、かつ、契約更新後を対象としますので、実務上の活用はこれからとなる制度です。

(借地契約の更新後の建物の滅失による解約等)
第8条
1 契約の更新の後に建物の滅失があった場合においては、借地権者は、地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。
2 前項に規定する場合において、借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者は、地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。
3 前二項の場合においては、借地権は、地上権の放棄若しくは消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れがあった日から三月を経過することによって消滅する

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第1 借地契約更新後の建物再築許可申立事件の存在意義

1 借地借家法の建物滅失に対する規定

借地借家法は、建物が滅失した場合の取扱いについて、最初の契約期間における建物の滅失と、更新した後の契約期間中の滅失とでは、異なる規定をしています。

最初の契約期間中における建物滅失

当初の契約期間中は、土地の安定的利用関係を図るものとして、最初の設定期間中に借地関係を消滅させるのは妥当ではないから、借地権は期間満了まで存続し、期間満了時に正当事由の有無により借地権の存続の可否が判断されます。

この場合、残存期間を超えて存続する建物の再築について地主の承諾があるときは、地主の承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から借地権は少なくとも20年間存続することが原則とされました(借地借家法7条1項)。

借地人が再築の通知を地主にしてから2ヵ月以内に地主が異議を述べなかったときも、地主が再築を承諾したものとみされます(同法7条2項)。

契約更新後の建物滅失

これに対して、借地契約更新後の建物滅失の場合には、建物所有による土地の利用関係に必要な安定性が一応保護された後であることから、残存期間を超えて存続する建物の再築には地主の承諾を要することが原則とされています。

借地人が地主の承諾を受けずに建物を再築した場合には、地主に借地権の解約権を認めています(同法8条1項、2項)。

もっとも、いかなる場合にも地主の承諾がないとすると再築ができないとすると、借地人にとっては不都合極まりません。

そこで、地主と借地人の利害を調整し、柔軟な解決を図る方策として、地主の承諾に代わる許可の制度が設計されました。

借地契約更新後の建物再築許可申立事件の創設へ

この制度は、平成4年8月1日の借地借家法施行(それまでの借地権には「借地法」が適用されていました)の後に設定された借地権についてのみ適用されます(借地借家法附則11)。

そのため、平成4年以降に設定された借地権が更新された後の話となりますので、この申立てがされるのは早くても令和4年8月1日以降となります。

これからどのような運用がなされていくのか、楽しみな制度といえます。

2 旧法(借地法)での規定との違い

旧法(借地法)では、建物を再築することは禁止されておらず、地主が異議を述べれば存続期間は延長されず、期間満了時における正当事由があるかどうかで判断されます。

もっとも、このような制度設計では、借地人は更新拒絶がされるリスクがある中で建物の再築をしなければならず、一方の地主にとっても、建物買取請求権により不要な建物を高額で買い取らなければならないリスクを引受けることになってしまいます。

そのため、借地人と地主の利害調整のタイミングとして、建物の存在しない時点が借地権存続の可否を判断するのに最も適していると考えられ、更新後の建物滅失の場合には、滅失の時点で借地権存続の可否が判断されることになりました。

正当事由による判断では、借地契約更新時の判断となってしまいました。
そのため、建物が滅失した場合には、再築前に借地権存続の判断をできるようにした制度といえます。
借地借家法にて当事者に負担が少ない時期で判断できるよう制度改正されました

3 要件(借地契約更新後の建物再築許可申立)

借地契約更新後の建物再築許可申立ての要件として、次のものを満たす必要があります。

  • 正当な当事者が存在すること
  • 借地借家法施行後に借地権が設定されたこと
  • 申立てが建物の築造前であること
  • 借地契約更新後に借地権者が建物を新たに築造する場合であること
  • 築造する建物が借地契約の残存期間を超えて存在し得るものであること
  • 地主が「賃貸借の解約の申入れをすることができない」旨を定めていないこと
  • 再築についての地主の承諾がないこと
  • 再築についてやむを得ない事情があること
  • 建物の状況、建物の滅失があった場合には滅失に至った事情、借地に関する従前の経過、地主及び借地人が土地の使用を必要とする事情その他一切の事情を考慮して、建物再築許可の裁判をすることが相当であること

以下では、形式的要件(①~⑦)と実質的要件(⑧、⑨)に分けて解説します。

(借地契約の更新後の建物の再築の許可)
第18条 
1 契約の更新の後において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造することにつきやむを得ない事情があるにもかかわらず、借地権設定者がその建物の築造を承諾しないときは、借地権設定者が地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができない旨を定めた場合を除き、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、延長すべき借地権の期間として第7条第1項の規定による期間と異なる期間を定め、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。
2 裁判所は、前項の裁判をするには、建物の状況、建物の滅失があった場合には滅失に至った事情、借地に関する従前の経過、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。)が土地の使用を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。
3 前条第5項及び第6項の規定は、第1項の裁判をする場合に準用する。

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第2 形式的要件

1 当事者

借地人が申立人となり、地主が相手方となります。

土地(底地)を複数人で所有している場合や、複数人で土地を借りている(借地権が準共有)場合には、原則として、借地人全員が申立人となり、地主全員を相手方とする必要があります。

2 借地権の存在

契約更新後の借地権が対象となりますので、更新を想定していない一般定期借地権、事業用定期借地権、一時使用目的の借地権は、対象になりません。

また、借地権の存在について争いがある場合で、裁判がすでに係属しているときは、裁判所は手続を中止することができます。

3 申立てが築造前であること

借地人が地主の承諾を得ることなく建物を築造した場合には、地主は解約権を行使して借地権を消滅させることができる(借地借家法8条2項)こととの関係で創設された制度のため、建物再築許可の申立ては、建物の築造前に限られます。

また、「築造したとき」(8条2項)との文言から、解約権は建物が完成したときに発生するものと考えられますので、再築工事に着手した後でも、建物が完成する前であれば、申立ては適法といえます。

4 借地契約更新後の建物再築

借地契約の更新の方法については、法的更新(借地借家法5条)だけでなく、合意更新も含まれます。

5 残存期間を超えて存続すべき建物の築造

「残存期間を超えて存続すべき建物」とは、再築予定建物の耐用年数が、借地権の残存期間よりも長期であることをいいます。

耐用年数の判断は、物理的耐用年数(建物の使用資材等が腐朽、損傷して建物が倒壊し、又は重大な損傷が生じる状態)、社会的・経済的耐用年数(社会的・経済的に見て建物としての効用が失われるに至った状態)を含めて、残存期間を超えることが明白といえればよいとされます。

この要件の判断にあたっては、最終判断権者は裁判所ですが、実際には建築士や不動産鑑定士等の専門家意見が非常に重視されます。

新たに築造する場合

申立てる際に、まだ建物が滅失せず存在している場合でも、契約が更新後であれば建物再築許可の申立てをすることができます。

また、単なる増築ではなく、建物自体を建替える場合をいいますので、既存の建物と同一性が保持される程度の増改築は含まれません。

再築に至らない増改築をする場合は、借地契約の更新の前後を問わず、増改築許可の申立てをすることになります。

6 地主が解約申入れすることができない旨の定めの不存在

地主が解約申入れができない旨の特約がある場合には、地主は消滅請求をすることができないため、申立てを認める実益がありません。

この場合は、申立ては却下されます。

7 地主の承諾の不存在

建物の再築について、地主の承諾があれば、借地人には申立てをする実益がありませんので、申立ては却下されます。

ただ、地主の承諾は、禁止行為を例外的に解除する意思表示として明確な程度のものが必要で、その立証責任は借地人にあります。

8 他の申立てとの関係

借地条件変更申立てとの関係

たとえば、居住用に限るとの借地条件がある場合に、事業用として建物を活用したい場合に、建物再築許可の申立てと共に借地条件変更の申立てが必要でしょうか。

この点については、借地条件の変更と再築許可申立ては、要件・効果を異にするものといえますので、一方が他方を包摂する関係になく、両方の申立てが必要と考えられています。

増改築許可申立てとの関係

再築の承諾があれば当該建物の築造について増改築の面における承諾もあると考えられますので、再築に該当するような建替えの場合には、増改築許可の申立ては不要とされています。

第3 実質的要件

(借地契約の更新後の建物の再築の許可)
第18条 
1 契約の更新の後において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造することにつきやむを得ない事情があるにもかかわらず、借地権設定者がその建物の築造を承諾しないときは、借地権設定者が地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができない旨を定めた場合を除き、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、延長すべき借地権の期間として第7条第1項の規定による期間と異なる期間を定め、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。
2 裁判所は、前項の裁判をするには、建物の状況、建物の滅失があった場合には滅失に至った事情借地に関する従前の経過、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。)が土地の使用を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。

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1 やむを得ない事情

「やむを得ない事情」とは、借地人が再築をせざるを得ない事情が、地主の再築の承諾をしない事情を超える場合をいいます。

やむを得ない事情について、借地人が再築せざるを得ない事情と、地主の再築を承諾しない事情の利益対立を踏まえて判断されます。
やむを得ない事情の対立内容

これは、地主に対して借地期間の存続期間の延長という不利益を課したとしても、なお借地人に対して再築を許すことが社会通念上相当であるかどうかという観点から判断されます。

法律の基本的なスタンス

借地契約が更新された後は、すでに建物所有による土地の利用関係に必要な安定性が一応は保護された(借地人が数十年にわたり利用できた)と考え、建物滅失による再築について、借地人に「やむを得ない事情」を要求した趣旨にかんがみれば、再築が許可されるのはどちらかといえば例外的な事情と考えられています。

これは借地契約の更新後は、借地権の安定よりも地主の利益を重視しようとする法律の基本姿勢であるといえます。

もちろん、「やむを得ない事情」を厳格に考えると、裁判所の関与による建物の再築を容認している規定の存在意義を没却しますので、上記のように双方の利益対立を踏まえて判断されることになります。

2 再築の相当性

建物の状況

建物賃貸借契約の更新拒絶(借地借家法28条)の正当事由の判断要素の「建物の利用状況」、「建物の現況」と同様に理解されています。

具体的には、建物の利用状況(現実に使用しているか、自身が居住しているか、賃貸に出しているか等)、建物の現況(種類、構造、規模、用途、老朽化、残存耐用年数等)が考慮要素になります。

建物の滅失に至った事情

建物が滅失した場合にのみ問題となる要素です。

火災、地震等の自然的な原因、朽廃、(人為的)取壊しなどがありますが、借地人の責めに帰すべきでない事情であれば、やむを得ない事情は肯定する方向に働きます。

借地に関する従前の経過

土地賃貸借契約の更新拒絶(借地借家法6条)の正当事由の判断要素と同様に考えられています。

具体的には、契約締結の経緯契約の内容権利金更新料等の支払の有無・程度賃料の額及び支払状況、借地人の契約違反の有無、内容等が挙げられます。

土地の使用を必要とする事情

土地賃貸借契約の更新拒絶(借地借家法6条)の正当事由の判断要素と同様に考えられています。

具体的には、借地人が借地上の建物で生活や営業を営んでいる一方で、地主が具体的に土地を利用する計画がなければ、やむを得ない事情は肯定される方向で判断されます。

また、土地利用の計画があったとしても、両者の必要性を比較したとき、借地人の必要性がはるかに大きい場合も同様に考えられます。

その他一切の事情

その他一切の事情とは、土地・建物の客観的状況当事者の主観的事情借地又は建物需給の過不足、地価の高低等の社会・経済情勢の動向等が挙げられます。

第4 付随処分

1 借地期間の延長

建物再築を許可する場合には、裁判所は、付随処分として借地契約の存続期間を延長することが必要とされています。

延長する期間は、原則として20年となりますが、異なる期間を定めることも可能と考えられています。

具体的には、10年から30年の間で定められることになるでしょうが、建物の耐用年数や前述の一切の事情などが考慮されて決定されます。

2 財産上の給付

借地契約更新後の建物再築が許可される場合、地主の不利益としては、建物の耐用年数が伸びることによって借地権消滅の期待が薄れること、建物買取価格が増大することにより経済的負担が増えること、買取資金を調達できずに更新拒絶が事実上困難となる場合があること、付随処分により期間の延長がなされることが挙げられます。

これに対して、借地人の利益は、建物の効用増大、居住の快適性の向上が挙げられます。

これらを考慮した上で具体的な給付額が算定されますが、算定基準はこれからの事例の集積を待つことになります。

3 その他借地条件の変更

増改築許可申立事件でも考慮されているように、賃料(地代)の改定がなされることが想定されます。

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交渉などの費用(目安)

弁護士費用の図。
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借地非訟事件の弁護士費用

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