Question
顧客本人ではなく、代理人からクレームを受けることがあります。
代理人に対して、本人と同様に対応を行ってもよいのでしょうか?
Answer
原則として、クレームを言う本人を相手にするべきですが、第三者を代理人として選定してきた場合には、確認手続をとった上で、特に疑わしい事情がない限りは、代理人と交渉をするべきでしょう。
代理人を相手にして交渉を行う場合には、
- クレームを述べる本人が代理人に委任する意思を持っていること
- 代理人として名乗る者の本人確認(なりすましの防止)
の2点を確認するようにします。
もっとも、会社の業種やサービス内容によっては、代理人による交渉を行うことがふさわしくない場合もあります。
たとえば、センシティブ情報を取り扱う医療機関や介護施設、金融商品を取り扱う銀行や保険会社、金額の大きい取引を行う不動産業者などが挙げられます。
法律上、代理人の取扱いをどのように行うのかについて、明確に規定されているわけではありませんので、代理人としていかなる者を認めるのかは、事前に定めておきましょう。
具体的には、本人の配偶者や三親等内の親族など本人と一定の関係がある者に限って代理人と認めるのか、それともこのような限定をすることなく本人からの委任があれば代理人として認めるのか等です。
本人ではなく、代理人がクレームを言ってくる場合は、通常よりも慎重な対応が求められます。
本人にとっても代理人を介入させることは手間となりますが、その手間を考慮してもクレームを言いたい場合といえますので、対応に苦慮することが多いといえます。
本人が遠方に居住したり、転勤した場合や、平日は仕事で忙しく対応ができないなどの合理的な理由があれば良いですが、明確な理由説明もない場合には、何らかの見返りを求めている可能性もあります。
さらに注意したいのが、本人と代理人の関係が、家族(親族)などではなく、友人や知り合い、さらにはよく分からない団体を名乗る場合です。
わざわざ他人のクレームに口出しをする理由を見出し難く、金銭要求を狙っている恐れがあり、より一層慎重に対応する必要があります。
より詳しい説明をしていきます。
第1 はじめに ~ クレーム対応全般について
クレーム対応について、対応の基本的要領や、様々な状況・場面における対応要領を執筆していますので、本記事と共にご参照ください。
応対するのが本人であろうと、代理人であろうと、そのクレームが正当なクレームといえるか、それとも不当なクレームに該当し拒否すべきかの基本的対応は、他のクレーム対応全般と何ら変わりません。
✍ (参考)クレームに対する基本的な考え方を解説しています
第2 代理人を相手にしたクレーム対応要領
1 必ず確認すべき2点
代理人を相手に交渉を進めるにあたっては、本人が交渉を代理人に委任する意思を持っていることと、代理人を名乗る者が本当に委任した代理人その人であること(なりすましの防止)の、2点を確認することは必要不可欠です。
なお、弁護士でない者が、報酬を得る目的で他人の事件の代理などの法律事務を行うことは、弁護士法72条で禁止されていますが、「報酬を得る目的」がなければ禁止されていません。
会社にとって、代理人に報酬を得る目的があるのかを確認するのは、事実上不可能です。
そのため、会社としては上記2点の確認をした上で、とりあえずは代理人として認める対応をせざるを得ないでしょう。
2 ①委任意思の確認
代理人を名乗る者に、本人からの委任状を提出してもらうのが最も安全確実な方法といえます。
ただ、クレームの内容が些細なことであったり、代理人が親族である場合には、委任状を持参している場合はむしろ少ないと思われます。
そのような場合には、代理人を名乗る者の了解を得て本人に連絡をし、本人から交渉を代理人に委任する意思を確認するなどの方法をとります。
3 ②代理人の本人確認
原則としては、運転免許証、マイナンバーカード、パスポート、健康保険証、住民票の写しなど、公的機関が発行した身分証明書によって、本人確認を行います。
もっとも、電話の場合はこのような確認ができませんし、窓口に来た場合でも身分証明書を所持していない場合もあります。
そのような場合には、本人に連絡し、たとえば、「今、当社にお客様のご主人様からご連絡がありましたが、お客様の弊社に対するお申し出について、ご主人様からお話をおうかがいしてもよろしいでしょうか。」などと確認することで代用します。
「身分証明書を見せてください」と言うと、「なぜ見せる必要があるのか」と反発する人も出てきます。
会社としては、手続上、代理人であることの確認が必要であることを丁寧に説明します。
それにもかかわらず、言い合いに発展するような場合には、代理人としての対応を拒否することも可能です。
4 代理人が弁護士の場合
代理人を名乗る弁護士が、本当に弁護士であるかどうかは容易に確認することができます(🔗「弁護士情報検索」日弁連HP)。
本物の弁護士である場合には、委任状を要求せずとも、無権代理行為を行う可能性はほとんどないため、そのまま交渉を行って良いでしょう。
もっとも、電話等で唐突に名乗る場合には、まず委任状の提示を求めるべきです。
意外にも、資格もないのに弁護士を名乗る事例は稀に見受けられます。
第3 代理人がハードクレーマーである場合
1 代理人を認めない決別宣言をする
代理人が出てくることによって、要求内容が過大であったり、要求態様が乱暴であったりする場合があります。
そのような場合には、会社にとってハードクレーマである代理人との交渉を継続するメリットがありませんので、代理人との交渉は一切行わないと宣言し、交渉を拒絶します。
この対応要領は、本人がクレーマーである場合と何ら異なるものではありません。
2 法的手続に移行させる
代理人の対応に手を焼く場合には、本人と代理人とを決別させる手段として、民事調停や訴訟などの法的手続も選択肢として検討できます。
調停や訴訟などの法的手続に対応の場を移すことで、本人、若しくは弁護士等でなければ対応を行うことが法律的にできなくなります。
第4 クレーム対応は日常の備えから ⇒ 顧問弁護士への相談
1 当事務所の考え
不当なクレーム、悪質なクレーマーから会社を守るためには、会社が一丸となり毅然とした対応を行う体制構築が必要不可欠です。
そのためには、継続的な支援が必要不可欠なものと考えており、顧問契約の締結をお願いしています。
【クレーム対応基本プランの提供サービス】
クレーム対応案件における弁護士の活用法は、対応が困難、もしくは判断に迷う事例について、随時ご相談を行います。
そして、定期的に検討会を行い、対応の是非と同種事例への対応策を打合せします。
その上で、これまでに発生した事例に対する検証を行い、それを基にした対応マニュアルを整備します。
法的手続を除いて代理人としての窓口対応業務までも含めていますので、弁護士費用を予算化できますし、コスパ良く外注できる存在としてご活用いただけます。
1~2年の継続により、クレーム対応業務を内製化していき、通常の顧問契約にダウンサイジングしていくことも可能です。
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クレーム対応:基本プラン(6ヵ月~)
クレーム対応:代行特化プラン
弁護士への委任を個々の案件ごとではなく、予算を設定して毎月定額化させたい場合に、特化プランを準備しています。
目安として毎月3件程度を上限に想定していますが、個別相談いたします。
民事全般:基本プラン
上記は、クレーム対応用の特別プランですが、事件対応の一般的なプランもご利用いただけます。
この場合、毎月5万円~の月額顧問料(6ヵ月~)に、以下の事件対応費用(着手金+報酬金)となります。
ご相談予約フォーム
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お問い合わせ
ご相談については、予約制となっております。
来所相談だけでなく、Zoom相談も対応しておりますので、全国対応しております。
お問い合わせフォームまたはお電話にてご連絡ください。
相談時に必要なもの
事前に以下のものをご準備いただくと、ご相談がスムーズに進みます。
- 相談内容の要点をまとめていたメモ
- ご相談に関する資料や書類
ご相談(初回相談料:1時間あたり1万1,000円)
法律上の問題点や採り得る手段などを専門家の見地よりお伝えします。
問題解決の見通し、今後の方針、解決までにかかる時間、弁護士費用等をご説明いたします。
※ご相談でお悩みが解決した場合は、ここで終了となります。
ご依頼
当事務所にご依頼いただく場合には、委任契約の内容をご確認いただき、委任契約書にご署名・ご捺印をいただきます。
問題解決へ
事件解決に向けて、必要な手続(和解交渉、調停、裁判)を進めていきます。
示談、調停、和解、判決などにより事件が解決に至れば終了となります。
終了
委任契約書の内容にしたがって、弁護士費用をお支払いいただきます。
お預かりした資料等はお返しいたします。
クレーム・カスハラ対応には、会社のトップが不当クレームに対して毅然と対応する姿勢を明確にする必要があります。
大きなストレスやうっぷんが溜まっている社会であっても、会社を悪質クレーマーから守る戦いを、専門家としてサポートします。